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肥満
どのような場合、肥満といわれるのですか?
肥満は本来体脂肪の異常増加を意味しますが、一般的には体重の増加を言います。多数の検診受診者を調査した結
果、BMI(肥満指数)(体重kg÷身長m÷身長m)=22が最も健康であることがわかりました。そこで、身長
m×身長m×22 → 最適体重(kg)としました。 つまり、165 cm の人は、1.65×1.65×22=5
9.9 kg が最適体重です。 BMI は、男性 18.5~25未満(最適値22),女性は 約20~25未満(最適
値 21)の範囲にあると望ましいのです。
一方、従来使われていた肥満度というのは{ (実測体重-標準体重)/標準体重 } ×100 として求め、+20%以上を肥
満症として診断します。標準体重(Kg)は、(身長-100)×0.9 で求めます。
肥満には“食べすぎ”と“運動不足”が原因となって起きる単純性肥満(90%)と内分泌疾患や遺伝性疾患などの病
気が原因で起きる症候性肥満があります。
肥満は健康に悪いのでしょうか?
肥満は糖尿病、高血圧、高脂血症、心臓病(狭心症、心筋梗塞)、脳卒中などの生活習慣病や胆石症、通風、呼吸
異常(イビキ、睡眠時無呼吸症候群)、腰痛、変形性膝関節症などをもたらします。実際、肥満とともに死亡率が
増加します(例えば、米国女性では BMI 27以上で全死亡率が1.2-1.5倍、心血管死が 2-4倍 になると言
われています) 。肥満によるこれらの合併症を持つもの、あるいは将来これらの合併症をきたす可能性がある程度
の肥満を“肥満症”と呼び、是非とも減量しなければなりません。
体重だけでなく、体型、スタイルについてはどうでしょう?
体型(脂肪蓄積部位)は、病気に関連する重要な要因です。上半身型(リンゴ型、内臓脂肪型)肥満の方が、下
半身型(洋なし型、ヒップ型)肥満に比し、病気の発生率が高いことが知られています。上半身型肥満の人は、高
血圧、糖尿病を合併する率が高いのです。肥満の方の3分の2近くの方に高脂血症が見つかります。太れば太るほ
どコレステロール値、中性脂肪値が高くなり、善玉コレステロール値(HDLコレステロール)が低くなります。
これら脂質異常症は、高血圧、脳卒中、心筋梗塞への注意信号です。最近、内臓脂肪型肥満は、メタボリックシン
ドロームとよび、注意が喚起されています。メタボリックシンドロームとは、おなかの中に貯蔵された脂肪から分
泌されるホルモンがインスリン抵抗性を引き起こし(血糖値を下げるインスリンが効かなくなること)、食後の高
血糖、さらには糖尿病、高血圧、高脂血症がおこり動脈硬化が進展し、、高血圧、脳卒中、心筋梗塞を引き起こす
のです。
どうして肥満になるのですか?
食事などで摂取するカロリーが、消費するカロリーより多い場合、肥満になります。言い換えれば、食べすぎ、あ
るいは運動不足が肥満の原因です。ただ、成人期の肥満の方の25%は小児期から肥満です。したがって、75%
の方はこのライフスタイルの変化から肥満になったものです。日本人の摂取カロリーは30年と比べても各年代で
約10%も減少しています。それにもかかわらず肥満になるのは運動不足と食事内容の変化からです。最近では若
者を中心に外食による脂肪摂取が増えており、なんと驚くことに日本人のコレステロール値はアメリカ人と同等に
なっています。肥満者では、太れば太るほど、食欲抑制ホルモン(レプチン)がうまく働かなくなっているのです。
それが、悪循環になって、どんどん太ってしまうのです。
肥満症の治療は?
まず、ダイエットと運動を長く続けて行うことが重要です。 例えば、3 kg の減量のためには 27、000 kcal
のカロリー消費が必要です。だから、一朝一夕に痩せることなんか到底無理です。
1)食事のカロリー制限 標準体重× 22-25Kcalに制限します。 特に脂肪を制限し、蛋白質は十分に取る必
肥満
要があります。 いろいろな、ダイエット法が大流行ですが、まずは試して続けてください。持続は力なりです。
2)食習慣の改善:まとめ食い(朝食抜き)したり、テレビを見ながらあるいは新聞を読みながら食べたり、夜食、
間食、早食い、などは肥満を来しやすいのです。 ゆっくりよくかんで(一口30回噛みましょう)、食事を楽し
むようにしましょう。 残業中のお菓子類、カップ麺、夜遅くなっての“まあまあ一杯いこう”と居酒屋での食事はご
法度です。
3)運動療法: 中程度の運動(壮年者では1分間の脈拍が138-(年齢÷2)程度になるような運動を毎日最低
30分、1週間3~6回程度行うとよいでしょう。ダイエットとともに一日300Kcal程度消費する運動を行
うと、効果があります。300 Kcal というとちょうど約30分のジョギングで消費するカロリーです。血糖、脂
質異常症、高血圧症にも好影響をもたらします。中程度以上の運動を、急に開始すると肉離れを起こしたり、膝を
痛めます。また、コントロールの悪い糖尿病では眼底出血など悪いことも起こることがありますので、ぜひ医師に
相談してから運動を始めるようにしてください。
4)薬物療法:食欲抑制剤、 カロリー制限開始時に補助的に短期間使用することがあります。これは、高度肥満
の方に限られ行われるべきです。 肥満者は『自己コントロールのできない人』というレッテルを張られがちで
すが、医者の立場から言わせていただきますと『肥満は遺伝的および環境的原因による相対的なカロリーの過剰摂
取の結果、脂肪の異常蓄積を来した病態』です。このような、科学的認識に立って、全人的アプローチと患者サ
ポートが必要となります。