西崎 咲月 1 緒方貞子―難民支援の現場から 本書では、NHK の東野真

西崎 咲月 1
緒方貞子―難民支援の現場から
本書では、NHK の東野真さんが国連難民高等弁務官である緒方貞子さんへのインタビュ
ーと独自の取材の成果をまとめたものである。私は、発展途上国へ実際に行き難民を助け
世界的に注目されている日本人女性がどのような人であるのかを知りたいと思いこの本を
手にした。
まず序章では緒方さんの原動力について書かれている。原動力は「怒り」だと言う。こ
の言葉に私は納得した。個人的な話になるが、実は私はアフリカにとても興味をもってお
り様々な本を読みなぜアフリカがこんなにも貧困であるのかを調べたときに怒りを感じた。
それはなぜかというと、アフリカの政府は援助金を食料問題ではなく、政治的な式典や紛
争のための武器に使っていると知ったからである。私は、このことを知りそして怒りを感
じて、大学に入ったら国際ボランティアをしようと決意した。そして、その後も緒方さん
のように怒りを原動力とし、社会貢献していけたらいいなと考えている。緒方さんは任期
中に 31 回もアフリカを訪れたそうだ。アフリカ・ウガンダの難民担当大使はこう言ってい
る。
「後任の人がこの記録を破ってくれることを願います。」と。
第 1 章は緒方さんの国連難民高等弁務官になるまでのことについて書かれており、第 2
章ではクルド難民の発生について書かれている。このクルド難民の中には 140 万人が国境
を越え避難したが、40 万人は国境を越えられなかった。国境を越えられない難民は国内避
難民と呼ばれ、この人達は難民として扱われていないので難民条約によって救済すること
ができない。緒方さんは、慣例に従いクルド人を見捨てるか救済するかという究極の選択
を決定しなければなかった。慣例を破って救済するというのは、とても大きなリスクを負
うことになる。わたしは選択する立場となって考えてみた。危険を恐れて国内避難民を見
て見ぬふりをしてしまうだろうという考えに陥ってしまった。緒方さんはこう言っている。
「彼らが国境を越えようと越えまいと、UNHCR は被害者とともに、そして被害者の傍ら
にいるべきなのです。
」さすがだと思った。緒方さんは常に危険を負う準備ができているの
であった。私には、慣例を破るという発想がまずなかった。私は、日常生活において、自
分がしたいと思うことでも周りにどうせ止められるだろうと思ってしまい、諦めてしまう
ことが多くある。比較的可能性のあるほうへ物事を進めてしまう癖がある。緒方さんは余
程強い意志を持っている人だ。私が、将来本当にアフリカに行くとしたら、アフリカ人を
助けたいという強い意志がないと何も行動を起こせないと悟った。これからは、この緒方
さんの言葉を胸に秘めて生きていきたいと思う。そして第 3 章においても、緒方さんの強
い意志が感じられた。それは、ボスニア戦争で赤十字国際委員会の職員が射殺され、UNHCR
が人道援助を頼まれたときであった。射殺された人がいると聞きながらも、緒方さんは「や
りましょう。
」と言った。
第 4 章では、援助停止事件について書かれている。この事件はとても興味深いものとし
て私の心の中に残った。どういう事件かというと、緒方さんが政治と人道援助を区別する
ように指導者たちに説得しているのにも関わらず、中々解決しないままなので、緒方さん
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が怒り援助停止宣言をしたことだ。これは、序章で述べていた怒りを原動力としているこ
とがよくわかる。私は、この怒りをとても愛のあるものだと捉えた。私は、中学生の時ま
で親に怒られるということは、面倒くさくて気分が悪くなることとしか捉えることができ
ないでいたが、高校生になるにつれて、親が怒る本当の意味がわかってきた。私の将来の
ことを心から考え、愛を持って怒っていることがやっとわかったのである。本当に自分に
とって大切な存在であるから怒ることができるのだとわかった。このように、緒方さんは
心から指導者のことを考え頑張ってほしいと思っているからこそ怒ることができたのだと
思う。国連の関係者たちは、最初は緒方さんの怒りに対して混乱していたが、最終的には
この怒りが成功の道に進んだ。これも緒方さんの愛によってだと捉えた。そして、国際社
会が全力で政治解決を追求していかなければならないと世界に伝えることに繋がったので
あった。
そして第 5 章を読んだとき、私は発展途上国に住んでいる人たちに命の大切さを教えた
いと思った。それは、ティモール難民の帰還活動の職員が殺された事件である。亡くなっ
た職員の一人が殺される前に友人に送ったEメールにはこんなことが書かれていたそうだ。
「民兵達がここへ向かっている。この事務所を叩き潰すつもりだ。彼らは何も考えずに行
動するし、蚊を殺すように簡単に人を殺す。僕たちは敵を待っている。武器もなく、ただ
座って、攻撃の波に襲われるのを、餌食になるのを待っている。
」私は、幸いなことに命の
大切さを教えてくれる日本に生まれ育ったが、この人達には教えてくれる人がいない。や
はり人間として生まれてきたからには、教育が必要不可欠であるのだ。全世界の子供たち
が教育を受けられるようにするのは、とても大変なことだとは思うがこの問題を解決しな
いといつまでも発展途上国の政治は安定しないだろう。私は少しでも良い方向へともって
いきたいと思う。必ず私にもできるようなことがあるだろうから、小さなことでも進んで
取り組んでいきたい。そして、より多くの人がこの問題について考え行動してほしいと願
う。
そして第 8 章に様々なことがまとめて書かれている。1 日 1 ドル以下で暮らす貧困人口は
約 12 億人いて、
約 1 億 2000 万人の就学すべき児童が学校に行っていないのが事実である。
この数字はおそらく誰が見ても多いと感じるだろう。日本に住んでいるから関係ないと思
っている人が多くいると思うが、世界の中の日本というだけであって、全員が世界に住ん
でいる人間だ。日本にもいつ戦争が始まるかテロがいつ来るかなんてわからない。世界に
住む日本人として様々な国の問題と向き合っていかなければならないことがこの本を読ん
でより一層思いが深まった。もっとたくさんの人に読んでほしい一冊である。