大学生の強みに関するポジティブ心理学的研究 2015 年度 東京成徳

大学生の強みに関するポジティブ心理学的研究
2015 年 度
東京成徳大学大学院心理学研究科臨床心理学専攻
駒沢
あさみ
本論文では,ポジティブ心理学の中核的な概念の 1 つであり,様々な
領域において注目されている強みに着目して一連の研究を行った。第Ⅰ
部第 1 章では,従来の強みに関する研究の動向を概観し,先行研究にお
ける課題を挙げた。第 2 章ではこれを踏まえて本論文の目的として,第
1 に ,強 み の 理 論 モ デ ル を 構 築 し ,そ の 概 念 的 位 置 づ け を 検 討 す る こ と ,
第 2 に,近年注目を集めている強みの発展や変化の過程に寄与する要因
や 肯 定 的 機 能 を 検 討 す る こ と で ,強 み の 発 展 の 促 進 に 示 唆 を 与 え る こ と ,
第 3 に,本邦の文化的な背景や価値観を踏まえた強みの種類の確立と体
系化を行い,独自の強みの同定ツールを作成すること,そして第 4 に対
人的な側面に着目し,
「 人 の た め 」の 強 み の 活 用 に つ い て 検 討 し ,行 動 促
進のための介入法を開発すること,の 4 つを設定した。
各目的を反映した形で,第Ⅱ部を構成し,第 1 および第 3 の目的に関
し て は 第 3 章 ,第 2 の 目 的 に 関 し て は 第 4 章 お よ び 第 5 章 ,第 4 の 目 的
に関しては第 6 章で検討した。
第 3 章 は 4 つ の 研 究 か ら 構 成 さ れ ,研 究 1 で は ,強 み に 対 す る 意 識 を
探索的に調査し,研究 2 では,本邦の文化的な背景や価値観を反映した
強みの分類,体系化を行い,これに基づく独自の強み同定ツールを作成
した。研究 3 では強みの 3 つの側面(パフォーマンス,活力感,意味付
け)から強みを測定する尺度を作成し,強みの理論モデルの検討を行っ
た。研究 4 では,研究 2 で作成した強み同定尺度によって同定される強
みが強みの 3 つの要素を備えたものであるかを検討し,尺度の利便性を
検討した。
第 4 章は 2 つの研究から構成され,強みの先行要因について,性格特
性 ( 研 究 5) と 日 常 的 な 活 動 や 生 活 習 慣 ( 研 究 6) の 面 か ら 検 討 し た 。
第 5 章は 4 つの研究から構成され,強みの自覚,活用による肯定的な機
能 を ウ ェ ル ビ ー イ ン グ ( 研 究 7 ), レ ジ リ エ ン ス ( 研 究 8 ), キ ャ リ ア 意
識( 研 究 9)の 側 面 か ら 検 討 し た 。こ れ を 踏 ま え て 研 究 10 で は ,強 み の
発展の促進のための介入プログラムを開発し,その効果を検討した。そ
の結果,本プログラムの実施が強みの自覚,活用を促進する効果やウェ
ル ビ ー イ ン グ の 向 上 ,キ ャ リ ア 意 識 の 発 展 に 有 効 で あ る こ と が 示 さ れ た 。
第 6 章は 3 つの研究から構成され,対人場面における,他者のための
強 み の 活 用 行 動 に つ い て 検 討 し た 。 研 究 11 で は , 他 者 の た め に 強 み を
活かす行動を測定する尺度を作成し,向社会行動や援助行動といった類
似 概 念 と の 比 較 検 討 を 通 し て そ の 独 自 性 を 示 し た 。 研 究 12 で は , 他 者
のために強みを活かす行動とウェルビーイングとの関連を検討した。そ
の 上 で , 研 究 13 で は , 他 者 の た め に 強 み を 活 か す 行 動 を 促 進 さ せ る 介
入プログラムを開発し,その効果を検討した。その結果,介入プログラ
ムの実施が強みの自覚や自他のための強みの活用,ならびにウェルビー
イングの向上に効果的であることが示された。
最後に第Ⅲ部では,以上の研究成果をまとめ,本研究の課題や今後の
展 望 を 述 べ た 。本 論 文 を 構 成 す る 研 究 成 果 か ら ,強 み の 概 念 が 整 理 さ れ ,
強みの発展に関わる要因の一部が明らかにされた。また,我が国の文化
的背景を考慮した強みの分類や体系化がなされ,これに基づく独自の強
みの同定ツールが作成された。さらに本邦の文化的背景を加味した,効
果的かつ新たな強みの活用方法が提案され,今後の我が国における強み
の研究に貢献する示唆が得られた。