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農業後継者が求める労働条件と就農条件 : 新規学卒
就農者と離職就農者の比較分析
土屋, 太志
平成12年度帯広畜産大学特別研究報告(15): 16-17
2001-03-19
http://ir.obihiro.ac.jp/dspace/handle/10322/3218
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帯広畜産大学学術情報リポジトリOAK:Obihiro university Archives of Knowledge
農業後継者が求める労働条件と就農条件
新規学卒就農者と離職就農者の比較分析
土屋太志
1
. 調査目的
就農を決めた後継者は、農業高校、農業大学等を卒業
後すぐに就農する者(以下、新規学卒者)と、一度農業以
外の職に就き、数年後就農するタイプ(以下、離職就農
者)に区別できる。この場合、離職就農者は、新規学卒
者と比較して農業経営に「出遅れ J たようにみえるが、
岩手県花巻市で行われた認定農業者の就農条件調査では
結果的に逆の調査報告がなされている。しかしこれは、
岩手県の水稲を中心とした地帯での調査事例であり、北
海道のような大規模農業地帯でも同じ結果がでるとはい
えない。
そこで本研究では、芽室町を事例として、農業後継者
が就農した農家を対象に、新規学卒者と離職就農者が考
える就農後の作業分担過程及び規模拡大の意向、労働条
件整備や後継者の重視する就農条件整備のあり方につい
て比較分析した。
1
1
. 調査方法
畑作を中心とする芽室町において、現在営農活動を
行っている新規学卒者、離職就農者を各 5名選定し聞き
1月 4日から 1
1月2
9日ま
取り調査を行った。調査期間は 1
でである。
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1
1
. 調査農家の家族構成と経営概況
後継者の年齢と家族構成を表 lに表した。
後継者の経歴は、新規学卒者の 5名中 4名が農業高校も
しくは農業大学が最終学歴となっている。離職就農者は
4名が普通科高校を卒業後、専門学校や大学等へ進み、
その後農業とは直接関係のない職を経て就農している。
新規学卒者の既婚者は 3名いるが、その住居方法は、
アパート暮らし等 3名とも普段の生活では仕事以外の時
間に両親と会う機会の少ない住居方法となっている。離
職就農の既婚者 2名は両親との同居生活であるロ家族同
居での生活と、別居もしくは二世帯住宅での生活では家
族同居の方が明らかに生活費を抑えることができるであ
ろう。
I
V 家族聞の出役割合
0戸ともに、後継
家族問の出役割合を表 2に表した。 1
者の出役割合は相当に高く、続いて父親、さらには母親
も父親とほぼ等しい数字が表れた。要するに、従来のよ
うに父親のもとで後継者や母親が働くといった家父長的
な作業関係ではなく、各自全員が農作業の中心人物であ
1
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り平等的な作業分担が成立していることがわかる。
であり
委の出役割合では、新規学卒者は 3名とも 0%
その理由は育児のためという答えが多く、離職就農者の
0
%
. 70%と高い。この決定的な差の理
妻の出役割合は 4
由は、離職就農者は家族同居のため子供を祖父母に預け
ることができ、妻も作業に出役しやすい点にある。家族
が同居することは、生活費を抑えることができるだけで
なく、委の農作業への労働提供にもつながる利点を持っ
ていたのである。新規学卒者は、仕事以外の時間は自分
もしくは夫婦の時間を重視し、離職就農者は、より生活
費を抑えるといったコスト削減を重視している傾向が読
みとれる。
V
. 就農後の部門分担過程及び規模拡大
1)後継者の部門分担過程
表 3に後継者の作業分担を表した。
資金決定で、離職就農者に I名ではあるが就農 4年目
で資金決定を任されている者がいる。この方は、農家出
身ではなく農家に婿として就農している。これは親同士
の話し合い等の理由で錆に入ったのではなく、自ら農業
が好きで婿に入ることを希望し就農を決めたのである。
現在は、経営者の名義こそは義父であるが、実際の主導
権を持ち営農活動を行っているのであるロいかに農業と
いう職を希望し意欲的に農業に取り組むこと、そして就
農以前の職で得た経営感覚というのも非常に重要である
いう点が Jさんのケースから示される。
2
) 就農後の規模拡大
離職就農者には後継者主導による農閑期を利用したシ
イタケの栽培を導入した Jさんがいる。畑作物の平均所
前後だが、ゾイタケの平均所得率は 45%
前後
得率は 30%
であり、労働時間こそ多いものの収益性が高い作物であ
る。農閑期は休暇として過ごす畑作農家が多い中で、こ
のように労働力の有効活用を行い、積極的な経営展開を
行っている者が離職就農者にみられた。
V
I 労働条件の整備状況
新規学卒者は全戸が給料制を導入しているのに対し、
離職就農者では 3戸までしか給料制を導入していない。
残る給料制を導入していない Gさんと Hさんは、ある程
度の給与は寅つてはいるが不定期であり、現金での支給
となっている。しかも、給料制に対して固執する傾向は
あまり強くない。
帯畜大別科研報. N
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5要約. 2
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