蟯虫の検査 検肛法 蟯虫は常々盲腸の付近にすんでいて、卵を産むほどに成長してくると、下におりて肛門の外 に這い出し、そのまわりの皮膚に卵を産みつける。この卵をセロファンテープなど粘着性のも のではりつけてとってきて、これを顕微鏡でしらべる。 採卵の仕方 実際に当たっては、朝起きぬけにこの検査紙の粘着面の中心をしっかり肛門に当てて、数回 上から抑えこむようにして、確実に虫卵を付着させるようにしてからはがすことが大切である。 このことをよく守るか怠るかによって検査結果が大きく違ってくる。 蟯虫が肛門から這い出して産卵するのは、全身の筋肉がゆるみ、肛門をしめている括約筋も ゆるんで、その周辺も温かく、適度の湿り気がある時=夜のうちが主なので、その一夜が明け た朝起きぬけにということが重要なポイントになる。勿論、用便にゆく前に。 また、セロファン紙の糊の粘着性を十分に活用し、皮膚のヒダに産みつけられている虫卵を 効率よくとるために数回押えこみようにすることが必要である。 連続検査 蟯虫は雌一匹で 7,000∼ 10,000の卵を産みつけてしまうと、力尽きてその場で死ぬか、再び肛 門の中に戻りそこで死ぬという一生なので、ちょうど検査日の前夜に卵を産みつけて出てきた のでなければ、虫卵はみつからない。従って確実に蟯虫寄生の有無を知ろうとすれば、毎日連 続して 10日間以上も検査しなければ本当のことがわからない。 研究者によっては若干の違 いはあるが、1回検査では全体の 40%位、2回検査では 60%位、3回検査では 80%位、 10回検 査で 90%位みつかるといわれる。 できれば3回検査を実施したいところであるが、実際に3日間以上も連続して検査をするこ とが、集団検査としては困難なことが多いので、現在では2回採卵式蟯虫検査セロファンを使 って、2日間連続の検査を行うことが常識になっている。 また、採卵の仕方の上手下手で虫卵陽性率が大きく変わる。 鏡検 採卵がしっかりできていれば、あとは顕微鏡で覗くことになるのであるが、 40倍(接眼レン ズ 10×、対物レンズ4×)で全視野くまなく探し、疑わしい判断を要するものを 100倍(接眼10×、 対物 10×)または400倍(接眼 10×、対物 40×)に切り換えて検査する。 駆虫後の検査 駆虫薬服用後虫体が出てしまうのに一週間位かかり、駆虫後新たに蟯虫が感染し産卵するま でに成長するのに 50日位かかるので、服用後の効果判定のための検査は、服用後2週間を経て から7日間連続採卵して検査することになっている。 駆虫効果があり陰性化したというためには少なくとも7日間連続検査して虫卵が見つからな いことが必要だということである。研究的な調査時以外は仲々実施しがたいことである。幸い 現在の蟯虫の薬は非常によく効くことが確かめられているので、一般的には前述の2回法検査 で済ませることが多い。 なお、駆虫薬は親虫にしか効かないので、初回の服用後2∼3週間を経て幼虫が成長した頃、 再度服用すれば体内の蟯虫は殆んどいなくなる。効果判定の検査はこの2回目の服用後2週間 を経て実施すればよい。 (蟯虫の正しい検査法:静岡県衛生検査協会 事務局次長 石黒 満)より
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