重症COPDへの慢性安定期NPPVの真の効果を導くために

重症COPDへの慢性安定期NPPVの真の効果を導くために
医療法人社団愛友会 いきいきクリニック
武知 由佳子
2013年6月Cochrane Database Syst Rev.では、少なくとも3ヶ月の慢性安定期COPDへの
夜間NPPVは、
ガス交換、運動耐用能、HRQoL、
呼吸機能、
呼吸筋力または睡眠効率で臨床的
にも統計学的にも効果がなかったと結論され、更に長い12ヶ月の装着でも同様であったと報告
された。しかし、
それ以前の2002年Dr. Windischらが慢性安定期に対するNPPVの効果が導き
出せないのはIPAPが低すぎるからであるとHigh-intensity NPPVについて提唱した。2006年
ATSで私自身の自験例において、欧米と日本のCOPD患者のBMI(体型)の違いから、High
IPAPは呑気を誘発させ実現不可能であり、
更に先行の報告でのEPAPの設定が器械の最低値
もしくはかなり低い設定であり、
内因性PEEPに見合う至適なEPAPの設定が必要であることを
報告した。
そして2014年Dr. Windischを含むドイツとオーストリアのグループによる多施設、RCT
により、標準的な治療に加え、PaCO 2を低下させるようなNPPVの設定を行えば、生存率は改善
依頼演題
することが報告された。
近年のNPPV器機の進歩は著しく、
その一つに内蔵メモリー機能の進歩がある。一呼吸一
呼吸ごとの圧波形、
フロー波形、
一回換気量、
リーク量など、
ログデータがメモリーされ、圧波形の
形やリズムをみて、至適設定を追求できる。COPDとはいえ、患者ごとに呼吸機能は違い、
体型も
違う。だからこそ同じ設定では本当のNPPVの効果を論じることはできない。抗がん剤の効果を
論じる際も、患者の体型や腎機能などを用いて至適用量が決められる。同様にNPPVの効果を
論じるなら、患者ごとにログデータを解析し、患者ごとにふさわしいNPPVの設定を行う必要が
ある。効果的にNPPVが設定され、
実際行えているのかを確認できて初めて、真のNPPVの効果
を論じることができると思う。
更に一歩踏み込み、
それでは何が至適設定なのか?人工呼吸療法の目的は1.病態を改善し、
より良い換気を行う。→酸素化の改善、換気を良くしてCO2を排出。気管支の閉塞があるなら、
至適なEPAPを設定し、
開存させ、昼間過膨張になった肺を改善させる。夜間低換気には必要な
換気量を確保するようなIPAPを設定する。2.昼間は酷使している弱った呼吸筋を夜間は十分に
休める。→呼吸仕事量の軽減、
器械に完全に乗せるような設定である。
日本においては坪井先生
がT-modeでNPPVを行い、PaCO2低下例ほど継続率もよく、
導入一年間の命にかかわる急性増
悪入院が有意に減ったと報告し、
まず目標とすべきは、夜間N PPV装着後の日中のPaCO 2が
60torr以下にすることであると述べている。
ログデータを用い、完全に器械に乗ってしまうような至適設定でNPPVを施行すると、
一回換
気量保証モードで行うI PAPmaxはWindischらの報告と同様、25cmH 2 O以上必要であり、
PaCO2はかなり低下する。適切な時期に至適設定を行ったNPPVを導入すれば、
アドヒアランスも
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良く、昼間は運動療法も行うことができ身体活動性も向上、栄養療法も併用し体重も保たれ、
高
いIPAPでも呑気は防げる。一症例のログデータを提示し、至適設定に関して多くのご意見を頂
ければと思い、
報告する。
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メモ ‒
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