「長崎発〝医療観光モデル〟を推進し 異業種との連携で新ビジネス創出を」

国際医療座談会
「長崎発〝医療観光モデル〟を推進し
異業種との連携で新ビジネス創出を」
ビジット・ジャパン
社長
長崎市立病院機構 理事長
長崎みなとメディカルセンター市民病院 院長
祥仁会 西諫早病院
理事長・院長
井上 智樹氏
兼松 隆之氏
千葉 憲哉氏
1976 年 7 月 29 日生ま
れ。2001 年創価大学法
学 部 法 律 学 科 卒 業。04
年中国で金之橋貿易有限
公司設立。08 年金之橋
ヒューマンブリッヂ設立。
13 年にビジット・ジャパ
ンを設立し、メディカル
ツーリズム事業を展開し
ている。
1945 年 7 月 8 日生まれ。71 年長崎
大医学部卒業。同年九州大医学部第 2
外科入局。91 年長崎大医学部第 2 外
科教授。2002 年長崎大学医学部長。
02 年長崎大大学院医歯薬学総合研究
科移植・消化器外科教授。11 年長崎
大を定年退職。12 年から地方独立行
政法人長崎市立病院機構理事長。元日
本外科学会会長。厚生労働省医道審議
会医師分科会会長。
1946 年 11 月 30 日生
ま れ。76 年 長 崎 大 医
学部卒業後、長崎大医
学部第 2 外科入局。88
年救急西諫早病院設
立。医療法人・社会福
祉法人祥仁会理事長・
院 長。 民 間 病 院として
長崎県内初の PET/CT
を導入した。
●いのうえ・ともき
●かねまつ・たかし
●ちば・けんや
近年、日本の医療界にも国際化の波が押し寄せている。その一つがメディカルツーリズム
である。日本では海外と異なり、
健診と旅行を組み合わせた「医療観光」として認知されたが、
本来はより良い治療を求めて海外の病院に行くことを指す。中国・大連市との間で、治療を
含めた国際的な連携体制を構築し、新たな医療観光のモデルを推進する 3 人のキーマンに
登場してもらい、将来的な展望について語ってもらった。
(場所:諫早観光ホテル道具屋)
(司会進行 企画編集部 鳥海 和史)
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ィカルツアーの実証実験で、中国
千葉 年の医療観光は長崎
市が中心となって進めた国のメデ
られていますか。
課題などについてどのように捉え
けですが、
「医療観光」の現状と
実施したのが西諫早病院だったわ
︱2010年 月 日に国内
初の「医 療 観光 」の実証 実験を
から本来のメディカルツーリズム
れは独特の捉え方なのです。です
組み合わせを指していますが、こ
観光と訳して健診と観光といった
ではメディカルツーリズムを医療
出向いて受診することです。日本
療を安く受けられるように他国に
けですが、これは本来、良質の医
ズムは世界中で展開されているわ
です。そもそもメディカルツーリ
るを得なかったのが正直なところ
合わせることには違和感を感じざ
としては正直、医療と観光を組み
た一方で、医療界に身を置く立場
いない様子でした。
光客を受け入れる必要性を感じて
の問題など手間が掛かる中国人観
けでも忙しいのに、わざわざ言葉
すが、日常の日本人患者の受診だ
を持つ病院が集積しているわけで
した。特に福岡市にはPET施設
じたのは医療界の保守的な姿勢で
すが、この事業を始めてすぐに感
ーの受け入れを行っているわけで
けています。主にPET診断ツア
療観光旅行)に関する事業を手掛
層向けのメディカルツーリズム
(医
ワークを基盤にして、中国の富裕
て外国人の受け入れはまったく未
いう問題があります。全てにおい
療費は日本人と同じでいいのかと
が必要となりますが、そもそも治
国人患者の場合、少なくとも通訳
合、全額自己負担となります。外
なっていますが、海外から来た場
また、日本では基本的に保険料
で医療費が賄われることが常識と
て適切に対応する必要があります。
違ったりと、両国の事情に合わせ
病状進行そのものの区分、概念が
国によって表記の単位が違ったり、
に置き換えればいいわけではなく、
言葉や習慣など壁高く
受け入れ態勢は未整備
人観光客を受け入れる医療機関
るとこれからだという印象を強く
人がPET健診を受け私が通訳を
上海に出向き、PET健診の事前
日の日程でした。訪日前には中国・
社長でした。
会ったのがビジットジャパンの井上
できたわけですが、そんな時に出
などを通じてその実現に取り組ん
合会に加入して、医療問題懇談会
も考えました。そこで九州経済連
一緒にやっていく必要性があると
るならば観光業者など他の産業と
なりません。また、医療観光をや
て、患者を受け入れる段階から苦
日 本のメディカルツーリ ズム
は、海外と比べて非常に遅れてい
ことができました。
たちと業務提携を結んでいただく
識が高く、まったく実績のない私
んな貢献ができるのかといった意
さんのために日本の医療技術でど
する意義だとか、海外にいる患者
れなどの医療を通じて海外と交流
らいましたが、海外の患者受け入
を難しくする素地になっていまし
て外国人の患者を受け入れること
すし、そうしたところが日本とし
の壁や習慣なども大きく変わりま
ろうかと思います。例えば、言葉
決していくことは難しい場合もあ
た問題を国際的な関係のなかで解
う部分が大きいですから、こうし
薬や処置にしても常にリスクを伴
兼松 医療というのは医療その
ものがリスクを伴うものです。投
感じています。
として参画しました。これは健診
介し説明しました。この時は健診
井上 ビジット・ジャパンは
年福岡市に設立したばかりの会社
労しているのが実態です。特に医
た。しかし、昨今のグローバリゼ
整備で、医療観光は日本全体でみ
を実施するならば、診断だけでな
その点、千葉院長の西諫早病院
とは、 年夏以降に話をさせても
の結果も含め特に問題点もなく成
ですが、本業は中国・大連と深圳
療界の日常では日本語以外はあり
ーションのなかで、さまざまな国
院のPET/CTを用いた健診と
功に終わりまして、その後も断続
に拠点を置き人材紹介ビジネスの
えませんので、言葉の問題は大き
に行き来するのが当然の時代にな
説明会を開催しました。合計で
的に中国人観光客のPET健診ツ
人が来崎しましたが、そのうち
泊
アーを受け入れています。
仕事をやっております。現在、大
な壁です。ただ単に言葉を外国語
しんせん
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4
9
3
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温泉地の雲仙などを巡る
長崎市は歴史的にみても中国と
縁が深い街ですので、中国人客を
連・深圳を中心に構築したネット
く治療を含めた形でやらなければ
30
と観光を組み合わせたもので、当
1
受け入れることに違和感がなかっ
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ていく観光客をみていると、比較
どはいかがですか。
しました。今 後の展開や課題な
者で構築
井上 収益事業になるどころ
か逆に大変だと思いますね。海
的高齢者の割合が高いことがわか
たことで、改めて日本の医療制度
医療現場を初めて知る機会を得
差や診療レベルの実態など海外の
ませんし、併せて中国での医療格
療を通じた国際貢献などはでき
を意識して高めておかなければ医
病 院であっても世界の医 療水準
な課題の一つです。たとえ地方の
光を実施して改めて感じた重要
しなければならないことは医療観
療もワールドスタンダードを意識
千葉 兼松先生が言及された
グローバリゼーションのなかで医
ているのではないかと思います。
きな問題として近年、浮上してき
ばいいのかということは非常に大
どのようなことに取り組んでいけ
のとなっています。私ども長崎み
兼松 医療の国際化は街づく
りという点からも避けられないも
くことは大事だと思います。
ではなく、長期的な視点でみてい
と思いますので、目先の収益だけ
速度的に増えていくのではないか
れ制度が整備されてくれば、加
感があります。日本側の受け入
国の医療に対して、根強い不信
ものがあります。中国では、自
の医療観光の潜在的需要は高い
外の立場からみると中国の日本へ
しれません。ただ、私のように海
はないのはある意味当然なのかも
院が受け入れにあまり好意的で
比ではありませんので、多くの病
の掛かり方は日本の患者さんの
の通訳を行っています。
ですので、その人が中国人の方へ
卒業した中国人が当院で研修中
ます。例えば中国語では医学部を
として対応できる体制を整えてい
医師、職員、事務スタッフが通訳
フランス語などの外国語ができる
中国人観光客の患者が増えている
欧米やアジアなどいろんな国か
ら来られていますし、特に 年は
際に患者を受け入れています。
来に取り組んでおり、 年から実
ません。そのため積極的に国際外
十分な備えができているとはいえ
際観光都市を標榜する街としては
る施設を作っておかなければ、国
上の心配がある方などを受け入れ
者が急病になられたり、少し健康
系企業と何らかの縁のある人、そ
学したことのある人、あるいは日
人とも言われ、その他、日本へ留
企業で働いている推定人口が 万
力を入れていたこともあり、日系
えるため、英語、中国語、韓国語、 かつての市長が日系企業の誘致に
のが特徴です。そうした状況に備
してその家族、知人を合わせると
い関わりがありますが、現在も中
日本とは地理的にも歴史的にも深
に行く距離とさほど変わりません。
ます。その距離は、大連から上海
行機で実質
最南端に位置し、福岡市から飛
(遼寧省・吉林省・黒竜江省)の
連市は地理的には中国東北地域
井上 まずは大連市について簡
単にご説明したいと思います。大
大連市の病院を含め
る外国人観光客、または長 期滞
外からの患者さんの場合は単純
の良さを見直すことにもつながり
なとメディカルセンターでは国際
ますが、船から降りて街中に流れ
在して日本で暮らされる外国人も
に考えても通訳が入りますので、 ります。そうした海外からの高齢
ました。学 会とは別な意味で医
医療を病院の看板として掲 げて
りました。日本にも観光で来られ
確実に増えていますので、医療界
療の世界水準という部分に目を
いますが、理由の一つとして長崎
万人もの海外から
倍の時間が掛かります。手間
向けさせてくれたことは収穫だっ
市には年間
としても訪日する外国人に対して
たと思います。ただ、一般的には
の宿泊客が訪れていることが挙げ
国一の親日都市として有名です。
日本語習得において中国一評価
の高い大学があるのも大連ですし、
相当の方々が等身大の日本を知っ
ていることが、中国の中でも大連
が群を抜いて親日都市である大き
な理由だと思われます。反日デモ
千葉 今回の治療を含めた医
療観光を進めるにあたり、重要だ
も大連ではありませんでした。
︱そういった医療観光の実 態
を踏まえて、昨 年、治 療を含め
ったのは現地病院の選定だったわ
現地の病院と相互連携
信頼関係の構築が重要
ひょうぼう
医療観光を受け入れることで経
られます。
時間半ほどで行け
営的に恩恵を被っているのではと
1
た医 療観光のスキームを中国・
思われがちですが、収益的なメリ
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特に当院のすぐ近くにある長崎
港には、大型クルーズ船が接岸し
ットは全くありません。
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国際医療座談会
続きや事前の打ち合わせを行いま
観光の希望者を募集して、入国手
スキームの流れを簡単に説明し
ますと、井上社長のところで医療
作ることが重要です。
り出す側もしっかりとした基盤を
なりますから、受け入れる側も送
ます。単なる旅行ではなく医療と
用できたことが大きかったと思い
いた現地のネットワークをフル活
通し、井上社長がすでに築かれて
けですが、これは現地の事情に精
兼松 今回の医療の相互連携
を進めるに当たり 昨年 回ほど
ために長期滞在が難しいためです。 ながら進めていけば、非常に素晴
ビザではありませんので、治療の
れる人もいます。これは滞在医療
は中国に一度帰国して再度訪日さ
していくわけです。当然、なかに
らば、そちらに患者を移して治療
ーに相談して受け入れられるのな
理事長のみなとメディカルセンタ
当院はPET健診ですので、兼松
などが見つかった場合には例えば
者とともに説明を聞きます。疾患
らしい医療交流が可能になるので
崎側が双方の良いところを選択し
固めていく方針です。大連側、長
のなかでどんなことができるのか
材交流を深めることで、相互連携
リスタッフなどが大連に行って人
崎側からも医師・看護師・リハビ
況を理解してもらうとともに、長
師などに長崎に来て医療現場の状
ていませんが、今後、大連側の医
療レベルなのか今ひとつ判然とし
が可能になると思います。来日し
こが改善されるともっと深い交流
とは厳しいと感じました。逆にそ
境の違いから、動画などを使うこ
の時の試験では、両国のネット環
たことがあります。残念ながらそ
活用して確認できないか試験をし
前に患者の病状などを、ネットを
井上 遠隔医療のようなイメ
ージだと思うのですが、来日する
ないのが現状です。
てもそのデータのやり取りができ
はどんな病院が良いのか当院を含
かを選別します。健診をする場合
だけなのか、それとも両方やるの
院を見学し、実際に現地の医師と
なる予定の大連医科大学 第二病
連に行き、中国側のパートナーと
千葉院長、井上社長とともに大
りの問 題もあります。いきなり
題に加え、患者の画像のやり 取
の問題のほか、先ほどのビザの問
千葉 このスキームのポイント
がいくつかあるわけですが、言葉
はないかと期待しています。
てフォローアップしてもらう。そ
後、画像や治療情報を中国に送っ
療を行う、または患者さんの帰国
い、その上で、来日して適切な治
てからすべてが始まるのではなく、
す。そこで健診だけなのか、観光
めていろんな病院を紹介し、実際
も交流いたしました。 回の訪問
では大連の病院がどのくらいの医
す か ら、 画 像 診
った方が効率的で
得てから来てもら
も 事 前に情 報 を
訪日してあれこれ診断するより
でしょう。ただ、 回目の訪問で
兼松 この国際医療連携が進め
ば日本国内でもまれな事例となる
発化すると思います。
中国との医療交流も飛躍的に活
ういったシステムが構築できれば
ある程度の病状の把握を中国で行
の健診にはビジット社の中国人ス
タッフが通訳をかねて帯同し、患
断のやり取りは重
国でMRIやCT
きなかったり、中
時にうまく受信で
も中国に送信する
本で画像診断して
要なのですが、日
本来、中国でできる医療を日本で
はできないことです。そうしないと
レベルをきちんと把握しないことに
療交流は日中の病院の互いの医療
先ほども申し上げましたように医
たことには少なからず驚きました。
交流に関する草案が用意されてい
2
の画像診断を行っ
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2
す。ともあれ、両国の医療交流の
病院は関心を高めていますし、そ
をどのように増やしていくか、各
市周辺になると保険診療だけでは
ついても都心の病院だけが忙しく、
大連側の熱心さや本気度といった
のかもしれませんが、少なくとも
ば何ら不思議なことではなかった
実績があります。大連側からすれ
師が実際に外科手術を行っている
ただ大連側はすでにドイツの病
院と協定を締結して、ドイツの医
要なことではない
医療界にとって必
イを増やすことは
ど 自 由 診 療のパ
患 者 受け入れな
ています。海外の
ち行かなくなる恐れが指摘され
︱国による社会医療費の抑制
で従来の医療経営は将来的に立
厳しくなっています。長崎市内に
でも福岡から離れるにしたがって
とが単に国際化だけの問題ではな
いった経験を各病院が経験するこ
べきことも大いにあります。そう
とも外国はすでにやっていて学ぶ
てば、日本ではまだわからないこ
とが必要です。国際的な視野に立
領域に挑戦しながらやっていくこ
井上 東京や福岡市の病院で
は、当 社が最 初に海 外 客の受け
くて、その病院の医療レベルをア
酬は実質的にマイ
入れを要請しましたが全然相手に
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Zaikai Kyushu / MAR.2015
やりましょうと提案する恐れも出
ためにも、今年はぜひ協定の締結
態があります。これはいずれ日本
てきますし、どんな病状が中国で
程度踏み込まざるを得ません。当
全体に広がってくる動きになるで
経営が成り立たなくなっている実
然、そこには外国人の健診も含ま
しょう。そのためにも次の展開を
のためには自由診療の部分にある
れてきます。
まで進めればと願っています。
異業種との積極的な連携
「医療経済」
の潜在性追求
治療が難しく日本で治療する必要
があるのか、その患者さんにとって
メリットのある選択を見極めなけ
ればなりませんので、まずは互い
どうするか常に考えておくことが
ものは伝わってきました。
でしょうか。
ップすることにも寄与してきます。
井上 通訳、保険の問 題など
がクリアになってから受け入れた
千 葉 その 考
え方はこれからの
各病院が特徴を持って医療レベル
を良く知り合うことが大事です。
だと思います。一方、中国は急速
病院経営にとって
を高めていくことが今後はますま
肝心です。 人口の多い都会は現行の保険制
度で潤っているわけですが、九州
な経 済 成 長に伴い、国、医 療 機
非 常に重 要 な 意
す重要になってくるでしょう。
兼松 まったく同感です。従来
の医療だけではなくて何か新しい
関が医療のインフラ整備に力を入
味を持っています。
医療設備を整えるとともに医師、
ナス改定となりま
してもらえませんでした。おそら
いというのが日本の医療界の常識
れております。国から相当の支援
スタッフを海外に派遣して、積極
したし、もはや保
くしばらくは必要ないのでしょう。
年 度の 診 療 報
的に海外の技術・知識を学ぼうと
険診療に頼ってい
ただ問題は地方です。国も受け入
を受けて、医療機関では最先端の
しています。長く中国にいる私に
るだけでは病院経
呼んで自由診療を拡大することで、
とって、中国につかり過ぎている
業環境となってい
病院経営を安定させ医療技術や
れ制度充実などを図り海外客を
どうしても物事を早く進めてしま
ます。保険外収入
せいか、タイミングを逃してはと、 営が安定しない事
おうと焦りがちになってしまいま
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国際医療座談会
なっていくのではないでしょうか。
とは、今後の医療の新たな方向に
医療設備の維持につなげていくこ
営的な備えにはなると思います。
て国際医療に手を出しておけば経
題になってきます。その点におい
事業展開をしていくのか重要な問
れ、公立、私立に関係なくどんな
州よりも東京などの大都市に目が
なことに中国人は中央志向が強く、
実は医療界は内容的にも経済
的にも医学の進歩に付いていくの
豊富に存 在します。しかし残 念
アに近いですし良質な観光資源も
行ってきました。
要だと思いさまざまな働き掛けを
するとしています。例えば、その
伺いしたいと思います。
︱この国際医療連携モデルの
意義と将 来的な展 望についてお
ナイフなど、最 先 端の医 療 技 術
カルセンターには最新のサイバー
九州には重粒子線施設や陽子
線施設のほか、長崎みなとメディ
向いてしまいがちです。
これは農業の話と似ています。最
界としても発展できると思います。
たな発想が生まれるなどして医療
もらい、互いに刺激を受ければ新
そうした閉塞感を打開するために
が精いっぱいの状況に陥っています。
国内では北京や上海、日本では九
また、日本を訪れる海外観光
客数は 年は1300万人を突破
なかの %の人たちが交通事故や
兼松 まずは長崎から小さな
核を作り上げていき、そこから拡
が集積しています。そうした医療
し、 年には2000万人を突破
と、単純に100万人の患者に対
充していく方針ですから、その意
病気などで患者になると仮定する
も異 業 種に医 療界に目を向けて
応する病院が必要となるわけです
が、今後、保険制度が変わってく
る余力がなく関心は低いわけです
国人などの外国人患者を相手にす
いても都会の病院は保険診療で中
つながってきます。医療観光につ
は地域の医療水準を保つことにも
が自由診療の拡大に取り組むこと
千葉 兼松理事長と井上社長
がおっしゃったように地方の病院
欠の重要課題のはずです。
療観光の整備は緊急かつ必要不可
際社会を標榜するのであれば、医
らに言えば、日本が観光立国を国
益につながると信じています。さ
大局的な視点で、医療 観光は国
また、医療観光の仕事を通じて実
すが、病院経営をしっかり行って
する傾向があるように感じていま
井上 病院が収益を稼ぎ出す
ことに対して医 療 界はタ ブー視
続けていきたいと考えています。
医療水準を保ちながら今後とも
ます。国際外来についても良質な
非常に大切なことだと認識してい
ル化の一環として取り組むことは
なることはないですが、グローバ
今後、国際医療が医療のメーンに
ではなく、観光事業者など他の産
観光の推進のためには医療界だけ
つながります。その点からも医療
って新たなモノを生み出すことに
種が接点を持つことは、刺激とな
が密接に結びついています。異業
が、逆に米国では医療界と産業界
千葉 日本では医療と経済は
別個の世界と捉えられがちです
けると信じています。
世界一魅力ある地域に変わってい
︱今回の座談会を契機に、国
際医療のさらなる進展が図られ、
性化の一翼を担いたいと思います。
し、そうすることで九州経済の活
価値ある取り組みとはなりません
力を呼びかけ拡散していかなれば
体の医療機関や関連産業にも協
療連携モデルを核として、九州全
裕層だけでも膨大です。今回の医
九州は地理的には良いシチュエ
ーションにありますし、中国の富
結果、新たな価値を創出すること
て国内だけで需要を満たしてきた
後、国際医療のモデル地域として、 ありました。これまで国が保護し
ように努めたいと思います。また、 州が一体となってPRすれば、今
りますし、ロールモデルとなれる
ると考えていましたし、医療界の
在として重要なことだと考えます。 業と一緒にやっていく必要性があ
いくことは社会インフラを担う存
壁、地域間の壁を乗り越えた形で
新たな地域活性化策のけん引役
な値段で取引されたというものが
を香港に持っていったところ高価
資源を単独で売り出すのではなく、 近、あるニュースで東北のりんご
るなかで、自分の病院はどんな特
感するのは相手から喜ばれる仕事
進めていくには九州経済連合会な
となることを期待しています。
が、現状では追いついていません。 味では良い形が出来上がりつつあ
徴を持って、どんな診療ができる
であり必要とされる存在だという
どの経済界の力を借りることが重
各 病 院・機 関が連携を結び、九
のかが問われる時代になってきま
ことです。九州は地理的にもアジ
ができなかったといえるわけです。
す。その時に都会であれ地方であ
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