観　光 FIT（外国個人旅行者） 2 0 1 5 年の訪日外国人数が３年連続で過去最高となるなど、わが国においてインバウンド需要が高まっています。こうしたなか、個人旅行向けパッケージ商品を利用したり、自ら航空券や宿泊施設の手配を行ったりする外国人旅行者、すなわちF I T（ F o r e i g n I n d i v i d u a l T o u r i s t：外国個人旅行者）が注目されています。訪日外国人の旅行手配方法をみると（図表１）、全体の6 8 . 9％が「個別手配」となっており、F I Tが訪日客の多くを占めることが確認できます。国籍別にみると、欧米諸国は「個別手配」の比率が9 0％超と大きく、F I Tの割合が非常に高くなっています。一方、中国や台湾などアジア諸国は「団体ツアーに参加」の比率が高く、欧米諸国と比べてF I Tの割合はやや低くなっています。 F I Tの特徴として、日本への旅行前や滞在中に、S N Sや口コミサイトなどインターネットを通じた幅広い情報収集を行っていることが挙げられます。そのため、都市部の有名な観光地を周遊することが多い団体ツアー客と比べて、食や文化など様々な面でのニーズがあり、個人の志向に沿った旅行スタイルを選択するとともに、幅広い地域を訪れる傾向がみられます。先行きについて、現在は団体ツアー客の多いアジア諸国でも、中間所得層の増加や、安価で訪日旅行が可能なL C Cの就航便数増加によって、F I Tの増加が見込まれます。幅広い地域を訪れる FI Tの特徴を踏まえると、日本国内の様々な地域により多くの外国人客が訪れると期待されます。もっとも、地方を訪れるF I Tを増加させるうえでの課題もみられます。訪日外国人が日本滞在中にあると便利だと思った情報についてみると（図表２）、無料 W i‐F iや交通手段に関する情報に関して、約半数が不満を抱いていることが窺われます。とりわけ、F I Tは、団体ツアー客と比べて訪日旅行中の公共交通機関利用頻度が高く、訪れた地域の情報を自らインターネットで集めると考えられるため、より不便な状況にあるとみられます。今後、F I Tの増加によって拡大が期待される需要を地域に取り込むためには、地方自治体などが主体となり、S N Sや口コミサイトなどを通じて地域の情報を外国人に分かりやすく発信し、多くの外国人客を地域に呼び込む取り組みが求められます。加えて、通信環境の整備や交通機関・観光地への通訳案内士の配置などを実施し、地域を訪れる外国人客の満足度向上を図ることによって、実際に訪問したF I Tによる口コミなどがインターネットを通じて広がり、さらに多くの外国人客がその地域を訪れるきっかけとなる、といった良い循環を生じさせることが重要といえます。三重銀総研調査部研究員　長井翔吾図表１（％） 100 21.3 80 国籍別にみた旅行手配方法図表２日本滞在中にあると便利だと思った情報 2.3 5.2 4.9 3.2 5.5 2.9 1.2 2.6 5.7 3.0 無料Wi-Fi 交通手段飲食店宿泊施設買物場所観光施設土産物特になし現地ツアー・観光ガイドイベント文化体験プログラムＡＴＭ 9.8 15.8 5.7 18.1 9.7 24.4 42.3 40 93.5 92.5 91.0 91.5 68.9 13.3 78.5 72.2 66.1 44.5 20 41.0 個人旅行パッケージ商品個別手配台湾中国タイ韓国マレーシアカナダ米国フランス英国ドイツ全国籍合計 0 16.0 団体ツアーに参加（資料）観光庁「訪日外国人消費動向調査（2015年１～６月）」を基に三重銀総研作成 Miegin Institute of Research.Ltd All rights reserved. 0 33.3 27.3 26.4 22.0 観光 60 94.7 43.0 9.5 52.7 46.9 12.9 12.1 10.3 10.0 7.9 7.8 10 20 30 40 50 （資料）観光庁「訪日外国人消費動向調査（2015年１～６月）」を基に三重銀総研作成 60 （％） 2015.10 MIE TOPICS 23