インバウンド巡航速度入り4000万人も視野(PDF

リサーチ TODAY
2016 年 9 月 5 日
インバウンド巡航速度入り4,000万人も視野
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
8月17日の日本政府観光局の発表では、今年7月の訪日外客数は、前年比19.7%増の229.7万人と過去
最高となった。これは、訪日旅行需要がピークを迎える夏季休暇シーズンに、クルーズ船の大幅な寄港増加
や航空路線の新規就航・増便に加え、これまでの訪日プロモーション効果が寄与した結果とされる。国別で
は、韓国(同+30.0%)、中国(同+26.8%)、香港(同+16.3%)、マレーシア(同+25.3%)などアジア諸国
が引き続きけん引した。下記の図表は、訪日外客数の伸びの推移である。ビザ要件緩和など政策効果のは
く落から、中国を中心として2015年に見られたような一時の勢いはないものの、訪日外客数は順調に増加し
ていると評価できる。今や、インバウンドの伸びは巡航速度に収束してきたと言っていいだろう。
■図表:訪日外客数の伸び推移
180
全体
(前年比、%)
韓国
中国
160
140
120
100
80
60
40
20
0
-20
14/6
14/12
15/6
15/12
16/6
(年/月)
(資料)観光庁「訪日外国人消費動向調査」、日本政府観光局(JNTO)より、みずほ総合研究所作成
2015年の訪日外客数は1,974万人と前年を5割も上回る大幅増となったが、2015年度後半以降インバウ
ンド消費の減速感が強まっているため、訪日外客数が巡航速度になったなか、インバウンド消費に対しても
新たな対応が必要になっている。次ページの図表は訪日外客の推移と展望を示している。今年1~7月ま
での訪日外客数の累計は1,401万人に上り、前年比では26%増である。このトレンドが年内続くと、2016年
の訪日外客数は2,501万人となり、2015年を約500万人上回ることになる。今後、年間500万人ペースで増
加すれば、2020年の訪日外客数の政府目標(4,000万人)も十分達成可能となる。実際、図表のように2016
年並みの増加がこのまま続くと2020年の訪日外客数は4,608万人に達する計算となる。
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2016 年 9 月 5 日
■図表:訪日外客の展望
5000
(万人)
2016年並みの増加
テンポが続いた場合
4500
4608
4000
3500
3000
1-7月前年比で先延ばし
2500
2501
2000
1500
1000
1-7月
実績
500
0
2012
13
14
15
16
17
18
19
20 (年)
(資料)観光庁「訪日外国人消費動向調査」、日本政府観光局(JNTO)よりみずほ総合研究所作成
下記の図表は世界各国の外国人訪問者数を示す。日本が2020年のターゲットとする4,000万人の水準と
は、図表から欧州のイタリア、トルコ、ドイツ並みであることが分かる。今後、世界の人口の上昇はアジアが
中心となり、さらに当該地域の中産階級の増加で一層観光需要が高まることを展望すれば、日本にとって
訪日外客数4,000万人という水準は既に視野に入ってきたと考えることができる。今後は2020年の東京オリ
ンピック・パラリンピックを含め訪日外客数4,000万人に対応し、受け入れのためのインフラはどうあるべきか
を幅広い観点から考える必要があろう。
■各国の外国人訪問者数(2015年)
順 位
国
名
訪問数(万人)
1
フランス
8,450
2
米 国
7,750
3
スペイン
6,820
4
中 国
5,690
5
イタリア
5,070
6
トルコ
3,950
7
ドイツ
3,500
(資料)世界観光機関
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