2016/ グローバル・マクロ・ トピックス 3/4 投資情報部 シニアエコノミスト 吉川 健治 中国:製造業PMIが7ヵ月連続の50割れと過去最長 2016年2月の製造業PMIは、生産(前月比▲1.2ポイント)や新規受注(同▲0.9ポイント)等の悪 化により、前月比▲0.4ポイントの49.0と2011年11月以来の低い水準で、2005年の統計発表以 来最長の7ヵ月連続の50割れとなった。過剰設備の解消が2016年経済工作の5大任務の第1 項目に掲げられており、今後、構造改革が本格化すれば、製造業への影響が強まろう。 2月は国家統計局の 製造業PMIの50割れ に歯止めがかからな い。大企業が6ヵ月ぶ りの50割れ 2016年2月の国家統計局の製造業購買担当者指数(製造業PMI)は、生産(前月 比▲1.2ポイント)や新規受注(同▲0.9ポイント)等の悪化により、前月比▲0.4ポイント の49.0と2011年11月以来の低い水準で、2005年の統計発表以来最長の7ヵ月連続 の50割れとなった。 規模別内訳では注目の大企業PMIが前月比▲0.4ポイントの49.9と3ヵ月連続低 下で6ヵ月ぶりに分岐点の50を割った。先行して景気対策効果を享受する大企業の 景況悪化が製造業の厳しさを示唆している。中型企業PMIは同横ばいの49.0と7ヵ 月連続の50割れ、小型企業PMIが同▲1.7ポイントの44.4と大幅に低下、19ヵ月連 続の50割れになった。一方、財新製造業購買担当者指数(民間の中小企業が中心) が同▲0.4ポイントの48.0と低下、12ヵ月連続して50割れとなった。国家統計局製造 業PMI構成指数の内訳をみると、生産が大幅な低下で50.2と分岐点に接近、新規受 注が48.6と2ヵ月連続の50割れ、雇用が前月比▲0.2ポイントの47.6と45ヵ月連続の 50割れ、サプライヤー納期が同▲0.7ポイントの49.8と12ヵ月ぶりに50割れとなった。 また、原材料在庫が同+1.2ポイントの48.0と上向くも37ヵ月連続の50割れであった。 中国の製造業PMIと企業規模別PMI 中国の製造業PMIの構成指数 (月次:2010/1~2016/2) 58 (月次:2011/1~2016/2) 60 財新製造業PMI 56 国家統計局製造業PMI 54 うち、中型企業PMI 生産 新規受注 原材料在庫 雇用 サプライヤー納期 うち、大企業PMI 55 うち、小型企業PMI 52 50 50 48 [景気拡大・後退の分岐点50] 46 45 44 10 11 12 13 14 15 16 (年) 11 12 13 14 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 (注) 国家統計局製造業PMIの企業規模別PMIは2012年2月から 出所:中国国家統計局資料、マークイット資料、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 15 16 (年) 2016/3/4 グローバル・マクロ・トピックス 製造業PMIはリーマ ンショック時と比較し 鉱工業生産の 大幅 鈍化に追随しないも のの、実体は厳しい 2005年1月以降の製造業PMIと鉱工業生産の動きをみると、2008年9月発生の リーマンショックの2ヵ月前の7月に48.4と50割れになり、9月を除き09月2月まで7ヵ月 間、50割れが続き、08年11月には38.8まで大きく低下した。その間、鉱工業生産も 大幅に鈍化し、08年11月には前年同月比+5.4%となった。一方、今回は製造業PMI が15年8月~16年2月まで7ヵ月連続の過去最長の50割れとなるものの、前回のよう な大きな低下ではなかった。しかし、鉱工業生産の鈍化に歯止めがかからず、15年 10月には同+5.6%と前回の最低水準に近い状況に悪化している。 中国の製造業PMIと鉱工業生産 (%) (月次:2005/1~2016/2) 60 20 製造業PMI(左目盛) 58 鉱工業生産(右目盛) 56 54 15 52 50 48 46 10 44 42 40 38 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 5 16 (年) (注)鉱工業生産は前年同月比、毎年1~2月は累計の前年同期比で2015年12月まで 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 今後の製造業PMIは 過剰設備の 解消が 一方、鉱工業生産、輸出、固定資産投資の動き(左下グラフを参照)をみると、今 回の固定資産投資の前年同月比伸び率がリーマンショック時よりも大幅に鈍化し、 本格化すれば、一層 悪化しよう 輸出はリーマンショック時よりも減少幅が大きくないものの、厳しい状況にあり、鉱工 業生産に大きな影響を与えていると言えよう。確かに消費主導型成長方式への転 換が進展しているものの、緩やかなペースであり、投資輸出主導型の成長モデルに 限界がみえてきた。今回は製造業PMIの伸び率が鉱工業生産の大幅な鈍化に追 随していないが、前回と同様、厳しい製造業景況感であると考えられる。今後、過剰 設備の解消が本格化すれば、製造業PMIも一層悪化しよう。 中国の鉱工業生産、輸出、固定資産投資 (%) (%) (月次:2005/1~2016/1) 40 50 鉱工業生産(右目盛) 35 30 固定資産投資(左目盛) 40 輸出(右目盛) 30 中国の製造業PMI(その他指数) 69.3(2011/1) 70.1(2011/2) 68.3(2011/3) 66.2(2011/4) 60.3(2011/5) 60 (月次:2011/1~2016/2) 購入量 新規輸出受注 原材料購買価格 輸入 製品在庫 55 [景気拡大・後退の分岐点50] 20 25 10 20 50 0 15 ▲ 10 10 ▲ 20 5 ▲ 30 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) 45 40 11 12 13 14 15 16 (年) 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 (注)前年同月比、毎年1~2月は累計の前年同期比。2016年1月だけは輸出が前年同月比 固定資産投資は2008年1月から2015年12月まで、鉱工業生産が2015年12月まで 出所:中国国家統計局資料、海関総署資料、CEICデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2016/3/4 グローバル・マクロ・トピックス 製造業デフレ傾向が 続くなか、コストの上 昇・高止まり等をうけ て減益に転落 生産、在庫と輸出の動向をみると、生産伸び率は2014年下半期以降、政府目標 を下回り調整局面に入った。これは①需要低調のなか、2014年以降の実質の製品 在庫の積み上がり、②2015年以降の輸出の減少、等により需給関係が悪化したた めである。この間、生産者物価伸び率は直近2016年1月まで、47ヵ月連続のマイナ スと製造業デフレが強まった。これを受けて、工業企業の主要業務収入が2015年に は前年同月比で1ケタ台前半に低下、利益総額が賃金上昇等のコスト増も加わり、 同マイナスに転じた。 2016年以降の中国経済は、2/29の人力資源・社会保障部の尹部長の記者会見 での「鉄鋼・石炭の過剰生産能力の解消を行えば、合計180万人の余剰人員の配 置換えが必要となる」との発言等を考慮すると、構造改革の本格化にともない景気 下押し圧力が一層強まろう。 2015年以降の積極財政や金融のリフレ政策は、今後一層強まることが予想される が、政策効果に過大な期待はしがたく、景気減速の動きは続こう。 過剰設備の解消が 2016年経済工作の5 大任務の第1項目に 掲げられ、製造業へ の影響が高まろう 今回の3/5開幕の全人代は第13次5ヵ年計画(2016~20年)の具体的な内容およ び数字目標、2016年の政治工作報告等による経済社会目標が公表される重要な 会議であり、特に経済成長率目標(5ヵ年平均の経済成長率と2016年単年度の経済 成長率の2つの目標)が前年比+6.5%程度に引き下げられるか、注目される。また、 2015年12月開催の中央経済工作会議で採択された2016年経済工作の5大任務の うち、第1項目に掲げられた「過剰設備の解消」に関する構造改革の計画や、失業 対策と財政負担規模、景気支援策について、中国の最高指導部や閣僚の発言に も注目したい。 工業企業の経営環境は、過剰な設備の解消等の構造改革や輸出の低迷、製造 業デフレの定着等、厳しい状況が続く方向にあるため、リストラの機運が高まろう。こ れをうけて、景気支援期待が大きい消費動向にどの程度影響を及ぼすのかについ ても、注目したい。 中国の生産、在庫と輸出 (%) 25 実質の製品在庫(左目盛) 輸出(右目盛) 貿易総額の 政府目標 15 10 生産の政府目標 ▲5 ▲ 10 ▲ 15 5 11 12 13 14 15 (%) 40 35 30 25 20 15 10 5 0 鉱工業生産(左目盛) 20 中国の工業企業の売上高・利益と物価 (%) (月次:2011/1~2016/1) 16 (年) (%) (月次:2011/1~2016/1) 40 8.0 利益総額の増減率(左目盛) 30 主要業務収入の増減率(左目盛) 6.0 4.0 生産者物価PPI(右目盛) 20 2.0 0.0 右目盛のゼロ 10 ▲ 2.0 0 ▲ 4.0 ▲ 10 11 (注)前年同月比、実質の製品在庫は(製品在庫)-(生産者物価)による計算で、鉱工業生産と ともに2015年12月まで。鉱工業生産と輸出は毎年1-2月が累計の前年同期比、ただし、 2016年1月だけは輸出が前年同月比 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 12 13 14 15 ▲ 6.0 16 (年) (注)主要業務収入と利益総額は年初来の前年同期比、毎年1~2月は累計の前年同期比で 2015年12月まで。生産者物価PPIは前年同月比 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2016/3/4 グローバル・マクロ・トピックス 金融商品取引法に係る重要事項 ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料 をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税 込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-160304-14 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4
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