ろうを生きる難聴を生きる 2016 年 3 月広報 子どもに未来を与えたい 旅

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ろうを生きる難聴を生きる
放送(土)20:45-21:00 ETV
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2016 年 3 月広報
再放送(金曜日)12:45-13:00 Eテレ
子どもに未来を与えたい
(担当:文化福祉/原 PD)
聴覚障害者の自立のため、海外で様々な活動を行っている女性がいる。ろうの
廣瀬芽里さん(42)だ。数カ国の手話が操れる廣瀬さんは、海外で多くのろう者
と出会ってきた。その中で、教育を受けられないため、筆談も手話もできない人
が多いことを知り、支援の必要性を痛感したという。
2002 年には、19 ヵ国から集まった聴覚障害者と共にロサンゼルスからワシント
ンまでを自転車で横断、聴覚障害者のための奨学金を集めた。2013 年には、JICA
の海外青年協力隊に応募、ドミニカでろう学校の教師となった。
今、広瀬さんが取り組んでいるのが、ドミニカの聞こえない子どもたちの就労
を助けることだ。かき氷屋を立ち上げるため、この冬、一時帰国。イベントを主
催して資金を募り、必要な品々を購入しようとしている。
番組では、山田賢治アナウンサーが、帰国中の広瀬さんを訪ねる。インタビュ
ーで、ドミニカの聴覚障害者の現状と、支援にかける思いを伝える。
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旅がくれた生きる勇気
(担当:文化福祉/原 PD)
名古屋市に住む映画監督の今村彩子さん(36)は、ドキュメンタリー映画の監督
だ。生まれた時から難聴で補聴器がないと全く聞こえない。今村さんは、小学生
の時から映画監督になるのが夢だった。これまで被災地の聴覚障害者を取材する
など、ろう者を取り上げたドキュメンタリーを多数制作してきた。
2014 年、そんな今村さんが映画制作に対する情熱を失いかける出来事が起きた。
自分を支えてくれた母の加代子さんが亡くなったのである。気分が落ち込み、生
きる気力すらなくなったという。心の隙間を埋めてくれたのが、クロスバイクだ
った。自転車に乗ると元気がわき、少しずつ自信を取り戻していったという。そ
して友人の「映画と自転車をくっつけたら?」という一言に、自転車で日本列島
を縦断し、そこでの出会いを映画にしようと決意した。難聴でコミュニケーショ
ンがとりにくい自分自身を、旅の中で見つめ直し、障害を乗り越える勇気を再確
認しようと思ったのだ。去年 7 月に沖縄をスタート。2 ヶ月かけて北海道の宗谷岬
まで横断した。今は春の映画公開に向け、編集作業の真っ最中だ。
番組では、山田賢治アナウンサーが、編集に励む今村さんを訪ね、インタビュ
ーで作品への思いを伝える。
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幸せは自分が決める
(担当:文化福祉/鈴木 PD)
盲ろう者支援の雑誌編集やイベントを主催するなど、今注目を集めている女性
がいる。NPO理事の荒美有紀さん、26歳だ。
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荒さんは、目が見えず、さらに耳も全く聞こえない「全盲ろう」
。しかしかつて
は、見えて、聞こえていた。中学校の時には海外にも留学。CAになるのが夢だ
ったという。しかし16歳で難病“神経繊維腫症Ⅱ型”を発症し、大学在学中の
22歳の時、視力も聴力も完全に失ってしまった。一時は生きる意味がないと絶
望したが、ある臨床心理士との“ブログ文通”をきっかけに、勇気を持って自分
の可能性を広げることを決意した。
荒さんは、普通の 20 代の女の子として、プライベートも大事にしたいと考えて
いる。そんな思いに応え、交際している彼や友人たちも、荒さんと話すために「指
点字」を勉強し、一緒に楽しめるにはどうすればいいか一緒に考え、笑い合う時
間を大切にしてきた。
番組では、
“盲ろう者の若手リーダー”と普通の女の子という、二つを大事にし
ながら日々を駆け抜ける荒さんに密着。今の思いに迫る。
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震災から5年「孤立を防ぐために」
(担当:文化福祉/長嶋 PD)
1 万 8000 人の犠牲者を出した東日本大震災。中でも聴覚障害者の死亡率は
2%、障害を持たない人の 2 倍にのぼった(NHK 調べ)。
また被災地の自治体の多くには手話通訳者がおらず、日常的に聴覚障害者へ
の支援が行われていなかった。そのため安否確認が難航したうえ、家の外には
出たことがない、学校にすら通っていなかった高齢ろう者が発見されるなど、
地域で孤立している聴覚障害者の実態があらわになった。
こうした教訓も踏まえ、国は 2013 年に「災害対策基本法」を改正。各自治
体へ「避難行動要支援者」の名簿作成を義務づけた。しかし NHK が全国 923 の
市町村に行ったアンケート調査の結果によれば、名簿の作成は始まった一方
で、そのほとんどが「要支援者」への具対策を打ち出すに至っていない。
そうしたなか、当事者団体や関係者で自ら支援方法を考える動きが広がって
いる。三重県聴覚障害者情報センターは、災害が起きたときに、伊勢市から要
支援者の名簿提供が受けられる協定を締結。手話での支援・相談にあたれるよ
う、災害支援サポ-ターの養成にも着手した。また兵庫県聴覚障害者福祉事業
協会は、阪神淡路大震災をきっかけに、孤立させないことが減災につながると、
聴覚障害者専門の老人ホームや介護支援センターを相次いで開設させている。
震災から 5 年、次なる災害に、聴覚障害者はどう備えていけば良いのか。各
地の取り組みからヒントを探る。