風 のかたち No.27 安田小学校長 安田小学校長 新田 哲之 2016 年 2 月 29 日 「あと少し」と「いいぞ」 子どもの日記に返事を書くとき、何気なく使うことばでも、子どもへの届き方が違ってくる ことがあります。お母さんに頼まれたおつかいをしたという日記に、 「いい子だね」と書くこと もあれば、「お母さんは助かっただろうね」と書くこともあります。「いい子」のほうは、親と の約束を果たしたことに対することばです。それに対して「助かった」は、忙しいお母さんを 知っての子どもの行動を教師が受け止めていることばです。お母さんの返事も同様に、 「ありが とう。助かったよ。 」と書けば、感謝が子どもに伝わります。テストの○つけをしていたときの ことです。惜しいミスがあり、それさえなければ満点だったときに、 「あと少し」と書いていま した。惜しいなあ、がんばれよと思ってみたり、なんでこんなつまらないミスをするのだろう と思ってみたりの「あと少し」でした。この「あと少し」の返事を続けていました。3 ヶ月たっ ても半年たってもミスは減りませんでした。ミスを減らしたいのなら子どもの心に届く働きか けがあったはずです。 「先生に書いてもらった日記の返事を読むのが楽しみでした。 」と卒業生が言ったことがあり ます。それは、「いいぞ」という返事でした。「早く走ることができたとか、友達に親切にして 気持ちが良かったとか、そのときの返事は、いいぞでした。いいぞと書いてあると力が湧いて きました。それから、テストの点数が悪くてもいいぞのときがありました。これでいいんだな と思いました。テストでどこをどう間違えたのか考えるようになりました。 」 ことばを大事にするということは、 「ことばに心をこめる」ということだと思います。人にも のを教えてもらったときは、 「ありがとうございます」が言えること。人に辛い思いをさせたと きは、 「ごめんなさい」が言えることです。 「ありがとうございます」 「ごめんなさい」があれば、 けんかしても仲直りができます。相手を許すことができます。いじめ、暴力など新聞やテレビ に取り上げられ、識者と言われる人たちのコメントを見聞きします。問題の起きた学校は、ど う対応し、教育を変えていくのか問われています。その一方で、日々先生たちは子どもと向き 合い、子どもの学びの姿に眼差しを向けています。子どもの日記を読み、テストの○つけをし て、どう子どもに返していくかを考えています。 「思いやりの心を持とう」を繰り返すのでは変 わりません。 「あと少し、相手の気持ちを考えれば問題は起きなかった」と注意しても子どもに は届きません。教師自らが「ありがとうございます」 「ごめんなさい」をやって見せ、子どもが 言えるようにすれば、問題は大きくならないのではないかと思います。 「いいぞ」と言われた子どもは、一歩前に踏み出そうとします。 「ありがとうございました」 が言える子どもは、人に温かい眼差しを向けるようになります。 「ごめんなさい」が言える子ど もは、過ちを繰り返さない決意を持ちます。ことばを大事にすれば、心が育ちます。
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