ブランケットとITERの工学的利用

ブランケットとITERの効率的利用
大阪大学
堀池寛、京都大学
小西哲之
核融合ブランケットの開発では、ITERに
受けた第19期では、ITERの建設サイト決定を間
おけるテストブランケットモジュール計画が
近に控え、大阪大学堀池教授を小委員長とする
重要なマイルストーンになる。ITERでは、
小委員会を組織して検討に当たった。委員会は2
国際協力で建設、運転する本体部分と異なり、
004年7月に第1回会合を行い、以後2005年3
テストモジュール試験は各極の核融合エネル
月まで、7回にわたってわが国のブランケット研究、
ギー開発計画に基づいたそれぞれ独自の概念
関連する核融合工学研究、およびITERへの参
について、ITERのスケジュールに従った、
加と取り組みについて議論を重ねた。第19期日
いわゆる day 1st を当面の目標とした開発が進
本学術会議核科学総合研究連絡委員会核融合
められる。わが国でも、原研が中核となって主
専門部会の委員および、設置された「核融合ブラ
案としての水冷却ベブルベッドを開発する一
ンケット研究のあり方とITERの効果的利用検討
方では、大学等が中心となって進めている各種
小委員会のメンバーを表1(a)、(b)に示した。
主な審議内容は、
の先進ブランケット研究について、各極の進め
るITER/TBMとの関係、国際協力も視野
・ ITER への全日本的な参加とその効率的利用
方策の検討
に入れたモジュールに向けた開発が考えられ
ている。ここでは、ブランケット研究とITE
・ ブランケット総合工学の構築
Rの効率的利用について、第19期日本学術会
・ エネルギー源としての社会的受容性のある核
議において小委員会を設置して検討された内
融合の開発と、その早期実用化方策の検討
容について報告する。
であり、はじめにITER-TBWGの現状、
日本学術会議では、第17期までの検討の結
わが国の固体増殖水冷却モジュール計画の報
果として、わが国における核融合工学の研究の
告があり、ついで各ブランケット概念について
進め方とその体制について検討し、エネルギー
検討を進めた。一方ITERの建設期の実施体
を指向した学術体系の構築と、全日本的な研究
制、材料研究計画についても現状の分析と今後
基盤の組織化の必要性を指摘してきた。さらに
の展望について発表があり、2004年末から
18期においては、我国における核融合研究の
各専門の小委員が分担して報告書の原案を執
あり方について、プラズマ物理を中心とする核融
筆し、以来報告書の審議を行った。
検討の中心となった課題は以下の点である。
合研究の進め方を検討し、具体的に提言する中
で、それらと並行して進められる国際熱核融合実
・ ITER への全日本的な参加とその効率的利
用方策
験炉(ITER)建設活動への取組みと、システム工学
研究および、ITER にて試験する原型炉用ブラン
・ブランケット総合工学の構築
ケット開発の進め方についての国際的な議論へ
・ITER-TBM について、大学を中心とした先
の対応についての検討が重要な課題として申し
進ブランケット研究の取り組み体制
送り事項となって第19期の課題とされた。それを
・核融合工学の全日本的取り組み体制
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(iii)ことに外国における ITER 本体への建設活動
・ITER の工学分野での効率的な利用
結果は報告書の形でまとめられたが、19期
への参加による知見の蓄積、日本国内における
学術会議の各活動の終盤となる2005年6
研究基盤の構築、およびブランケットを含めた広
月、ITERの建設サイトに関する参加極の合
範な材料・工学研究と統合システム研究の強化が
意の発表があった。専門委員会および小委員会
必要となる。
では、この新たな事態を受け、報告内容の若干
(iv) このためには国際的な開発への寄与も含め
の修正を行った。報告書に示された考えの基本
た、わが国の叡智を集約する最も有効な体制を
は大きな変更はなく、ITER建設サイトがカ
整えることが重要となる。
ダラッシュに決定してもわが国の核融合研究
(2) 改善策、提言等の内容
としての取り組み体制について得られた結論
(i) ITER の建設とその経験の下での原型炉開発
に違いはない。しかし、特に日欧の交渉の過程
という新たな展開に柔軟に対応するために、核
で明らかになってきた、ITERの non-host
融合エネルギーの早期実現の観点と学術的な
の役割については、さらに積極的に、ITER
観点を十分に活かすことのできる組織を形成
を補完し、核融合エネルギーの実用化に向けた
し、議論を深める事を基本とすべきである。
研究をわが国が中心となって推し進めるべき
(ii) わが国の主体性・指導性の下での ITER 画
であることから、より具体的な対応が迫られる
の推進と、それを通して原型炉の早期実現を期
との認識を持つにいたっている。
すには、 ITER 計画への長期に亘る人材の量的
な貢献は言うまでもなく、卓越した人材による
以下、専門委員会により報告された検討結果
質的な貢献が必要不可欠である。このためには
人材の活用・確保・育成が十分に達成されるこ
の内容の要約を転記する
とが必要で、これまでの ITER 活動を牽引して
(1) 現状および問題
きた日本原子力研究所(H17 年 10 月より日本
(i) 第 18 期日本学術会議以前に本専門委員会
原子力研究開発機構)が中核となることに加え
が示した、核融合炉工学の全日本的な取り組み
て、原型炉を目指す活動を軸とするわが国アカ
体制についての具体的な対応が、まだ十分議論
デミアからの貢献を統合強化出来るシステム
されていない。一方、ITER の建設活動への参加、
の整備が必要であ。
わが国における核融合研究を取り巻く状況の変
(iii) いわゆる「幅広いアプローチ」に代表さ
化への早急な対応が必要とされる。
れる、核融合エネルギー実現に向けた包括的な
(ii) 前期報告では ITER が目指す核融合エネルギ
研究開発を積極的戦略的に推進し、それを軸に
ーの実証に加えて、「核融合エネルギーの早期実
国内研究基盤を構築すること、その一方で
現」のための活動を強化する必要性を強調してい
ITER 計画の推進に主導的な貢献を果たす中で
るが、その重要性が国際的な議論の中でクローズ
情報と経験を最大限まで獲得すること、それら
アップされている。核融合エネルギーの早期実現
を原型炉の開発に生かして行くことによって、
のために、実験炉(ITER)と並行して、原型炉(デ
核融合の早期実現を我国にて目指すことが肝
モ、発電実証炉)に照準を合わせた総合的な研究
要である。
開発戦略を構築し、整合性よく進める必要があ
る。
以上に引用したように、ITERの建設期に入
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る核融合研究において、わが国の核融合工学、
特にブランケット工学は、核融合エネルギーの
(b)
実現に向け、ITERの利用との緊密な関係、
第19期核科学総合研究連絡委員会核融合専
特にテストブランケット計画への取り組みを
門委員会
軸とした全日本的な体制の確立が提言されて
「核融合ブランケット研究のありかたと ITER
の効果的利用検討小委員会」検討小委員会
いる。今後、原子力学会核融合工学部会として
も、ここに示された考えを具体化すべく、主体
的かつ積極的な対応を求められることになる
であろう。
小委員長
堀池 寛
(大阪大学大学院工学研究科教授)
幹事
小西 哲之
(京都大学エネルギー理工学研究所教授)
居田 克己
(自然科学研究機構核融合科学研究所教授)
表1
(a)
第19期核科学総合研究連絡委員会核融合専
門委員会
委員長 香山 晃
(京都大学エネルギー理工学研究所教授)
幹事
堀池 寛
(大阪大学大学院工学研究科教授)
関 昌弘
(日本原子力研究所那珂研究所所長)
笹尾真実子
(東北大学大学院工学系研究科教授)
委員
柴田 徳思
(第 4 部会員・日本原子力研究所)
木村 逸郎
(第 5 部会員・原子力安全システム研究所・技
術システム研究所長)
豊田 淳一
(第 5 部会員・八戸工業大学工学部教授)
嶋田 隆一
(東京工業大学原子炉工学研究所教授)
田中 知
(東京大学大学院工学系研究科教授)
高村 秀一
(名古屋大学大学院工学研究科教授)
日野 友明
(北海道大学大学院工学研究科教授)
藤原 正巳
(核融合科学研究所名誉教授)
清水昭比古
(九州大学大学院総合理工学研究院教授)
委員
木村 晃彦
(京都大学エネルギー理工学研究所教授)
相良 明男
(自然科学研究機構核融合科学研究所教授)
寺井 隆幸
(東京大学大学院工学系研究科教授)
乗松 孝好
(大阪大学レーザーエネルギー学研究センタ
ー教授)
秋場 真人
(日本原子力研究所那珂研究所次長)
野田 信明
(自然科学研究機構核融合科学研究所教授)
深田 智
(九州大学大学院工学研究科助教授)
長谷川 晃
(東北大学大学院工学系研究科教授)
橋爪 秀利
(東北大学大学院工学系研究科教授)
松井 秀樹
(東北大学金属材料研究所教授)
西谷 健夫
(日本原子力研究所那珂研究所室長)
高津 秀幸
(日本原子力研究所那珂研究所次長)
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