第4章 脳と神経細胞(ニューロン)について 脳は誠に複雑な構造をしているが,おおむね神経細胞(ニューロン)の集合体 と考えて良く、それらの機能を説明しないと神経細胞(ニューロン)の働きを説 明したことにならないが,ここでは神経細胞で起っている・・・波動の共鳴,共 振、干渉などという現象に焦点を当てるために,極めて限定した説明をするに とどめたい。脳に関する気軽な本としては、「世界一受けたい<脳科学>の授 業」(茂木健一郎監修、富永裕久著、2010年6月、PHP文庫)がお勧め品 である。 下図において、脳の一部である後頭葉という部位に注目願いたい。 「後頭葉」は、視覚情報を担う。目で見た情報(目に入るものは光だが,光 の形態は波動である。)は、網膜でまず電気信号に変換されてからここに送ら れ、ここから脳のさまざまな部位に伝達される。また、視覚的なイメージもここ で処理される。「後頭葉」は、視覚情報を担う。 大脳には各機能をになう「部位」があり、それぞれ「野(や)」と呼ばれてい る。視覚は後頭葉の視覚野、聴覚なら頭頂葉の聴覚野で処理される。頭頂の頭 頂連合野は「外界と自己の関連を認識」し、前頭の前頭連合野は「思考・意 思・創造」や「発語の管理」を行い、そして側頭連合野は「記憶の貯蔵」や「言 語の意味を理解」などをするなど、「私は私である」ことに大きく関与するの である。 (26) 大脳の「野(や)」は、私たち人類の持つ新しい脳のなかにあるが、その下に ある古い脳と繋がっており、新しい脳単体で独立して情報(波動)を処理するこ とはできない。かならず古い脳と連動している。古い脳がまず外界の情報を感知 し、それにもとづき古い脳はあらたな情報(波動)を発生させる。その波動を素 早く統合的により高次に処理すること、これが、大脳の「野(や)」の主な仕事 である。 古い脳は、恐竜の脳と呼ばれたりする「は虫類型脳」の上に原始哺乳類型脳が 覆いかぶさってできている。私たちの脳・新ほ乳類型脳はさらにその上に覆いか ぶさっているのである。クジラや犬などの原始哺乳類型脳は、喜怒哀楽や感情を (27) つかさどる。恐竜などの「は虫類型脳」は欲望や自律神経をつかさどっており、 どうも生命力の源はここにあるらしい。濱野恵一は、人生を楽しくさせるのは 「は虫類型脳」だと言っており、は虫類型脳を活性化させる生活術を提案してい る。彼の著書「あなたの脳は退屈している」(1993年7月、ごま書房)は、 人生を楽しく過ごすためにも、また脳というものを正しく理解するためにも、非 常に参考になるので是非読んでもらいたい。お勧めする。 神経細胞(ニューロン)は波動の伝達機能を直接になっている細胞で、木の枝 のように突起の沢山ある細胞体(受容体)と、そこから伸びた長い線維(軸索) の姿をしている。軸索は長くなると1mにも及び、脳内ではこの神経細胞約140 億個で、ネットワークが形成されている。140億ですよ。凄いですね。 ニューロンは受容体から信号が伝達されると、細胞の膜が電気的に「興奮」す る。この電気的な興奮は、後ろに伸びた軸索を「活動電位」となって伝達してい き、末端(シナプス前末端)に達したところでグルタミン酸などの「神経伝達物 質」を放出される。 (28) この神経伝達物質が次のニューロンの受容体に信号として伝達されると、次々 と信号をリレーすることでネットワークを形成していく。このネットワークは, 脳の機能(役割)ごとに数多くのものがある。人間社会と同じように,いろんな ネットワークがあるということだ。これをニューロンネットワークという。 脳にはいろんなニューロンネットワークがあり、それぞれ独特の律動をしており 波動を発振している。すなわち、脳には脳波(アルファー波,ベーター波,デル ター波,シーター波)があるということだ。このことは誠に重要なことであるの で,しっかり頭に入れておいて欲しい。脳波の発生メカニズムは,あえてここで は取り上げないが,興味のある方は是非「脳の中身が見えてきた」(甘利俊一, 伊藤正雄,利根川進、2004年9月、岩波書店)を読んでいただきたい。 ところでこのニューロンネットワークは驚くべき機能を持っている。選択性が あるのである。シナプスにその秘密があるようだ。シナプスは単純に情報を中 継しているだけでなく、種々の情報の中から,自分たちのニューロンネットワー クが必要とするものだけを,受け取るのである。つまりニューロンネットワーク には一定の律動パターンがあって、外部からの情報である刺激パターンがそれに 似ていない限り,シナプスは外部情報を中継しない。とはいっても,複数の ニューロンネットワークは,いつもこのように固定的なものではない。ここの ネットワークは別のネットワークと樹状突起で繋がっている。その結果,他の ネットワークの影響を受けて,ニューロンネットワークが持つ律動パターンが変 調するという。ものすごい柔軟性があるということだ。この神経細胞のニューロ ンネットワークが持つ選択性というものは、固定的なものではなくとても柔軟 性があるということだ。このことは、誠に重要なことであるのでよく覚えておい てもらいたい。 冒頭にも言ったが,脳は以上に説明したように神経細胞(ニューロン)の14 0億個の集合体であるが,「祈りの科学」を考える際にもっとも大事なのはこの 神経細胞(ニューロン)が持つ素晴らしい機能にあるようだ。 脳の皮質構造は、とても複雑だし、私の論理展開とはあまり関係がなさそう なので、ここでは要点だけを紹介するにとどめておく。詳しく知りたい方は、下 記の要点に出ている専門用語をキーワードにネットで検索して勉強してもらいた い。 大脳の表面に当たる「皮質」をつくっている神経細胞には、細胞体がピラミッ ドのような形をした大きな「錐体細胞」、小さな丸い「顆粒細胞」など、10種類 ほどがある。錐体細胞は長い軸索を持ち、処理した情報を脳のほかの部分へと伝 (29) 達している。顆粒細胞は、局所的な情報処理にかかわる。このように神経細胞 は、種類によって形も働きも違っている。そして種類ごとに集まり、6層の層構造 をつくっている。 「小脳皮質」では、「プルキンエ細胞」など5種類の神経細胞が3層の層構造を つくっている。 神経細胞が種類ごとに集まって層をつくることによって、秩序 だった神経回路が構築され、情報の伝達はより効率的になる。その結果、認知、 運動、感情、記憶、学習といった高度な情報処理を実現できるのである。 さて,神経細胞(ニューロン)をご理解いただいたところで、問題はここからで ある。意識というものは果たしてどのように生起するのか?この基本的な問題につ いてはいろいろな説があるが,今ここではそれらをすべて取り上げることはあえて しないで,私がもっとも科学的だと考える説に焦点を絞って話を進めて行きたい。 私がもっとも科学的だと考える説というのは,第2章に取り上げた考案の答えにな るかどうかである。 私の考えでは、波動の共鳴,共振、干渉などという現象を説明することのできる 量子物理学の知見にもとづかない限り,第2章に取り上げた摩訶不思議な現象を科 学的に説明できないと考えている。判断基準のキーワードは波動の共鳴,共振、干 渉である。響き合いと言っても良い。それでは、次に,そういう話を少しずつ始め ることとしたい。少しずつの勉強だ。前途は長い。 (30)
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