④自閉症者援助技術 - 日本知的障害者福祉協会

知的障害援助専門員養成通信教育
優秀レポート
38 期生
知的障害者入所更生施設 支援員
④自閉症者援助技術
課題: 「氷山モデル」の概念にもとづいた行動理解とその支援の実践例を述べなさい。(事例)
通所2年目になる授産施設でクリーニング
の作業訓練を受けている 20 代の男性の実践
例。
とを見つける。
・「何を期待されているか」本人に理解できる
よう、場面・課題設定・支援方法を整理する。
(1)自閉症の特性を理解する
クリーニング作業場で見られる行動には、
次のような特性がある。
に基づき、評価結果をまとめると、
◎スキル:手先が器用である。几帳面である。
プライドが高く、ほめられると乗りやすい。
・自傷:自分の思うとおりにならないと、突発的
にカッターナイフで手首に傷をつける。
◎得意:掃除はすみずみまで時間をかけて行
う。手先を使った作業は長時間継続できる。
・利用者との相性:特異な行動により、特定利
用者が刺激を受け、暴力をふるわれることが
ある。
◎不得意:利用者と一緒に長時間の共同作業
が苦手である。
・注意を引く:職員の注意を引くように、特異な
◎興味関心:水に関心がある。休憩時間におも
行動をとる。
ちゃなどで一人遊びが好きである。
・シングルフォーカス:水にこだわり、窓や人に
②評価に基づいて対応を検討する
向けて放水する。いつも水を使って掃除をした
がる。
自閉症の障害特性を理解し、個別の評価か
ら、その人のできること・できないこと、得意な
こと・苦手なこと、興味関心などを把握し、そ
・感覚の過敏さ:物音や話し声など耐えられな
の人に合った妥当で必要不可欠な支援を導く
い刺激が気になり、作業場を勝手に変わった
り、はなれたりする。
ようにしている。
・集中時間にムラがある。
個別プログラムの中での重点テーマは、次
である。
(2)個別の評価に基づく
・得意なことを活かし、苦手なことを補う。
①インフォーマルな評価
・できる(できそうな)こと、強み、興味のあるこ
・好きなこと、興味関心の高い活動や場面を大
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事にして、前向きな姿勢を大切にする。
・どういう伝え方だと予定を理解できるか。そ
具体的には、クリーニング作業の中で、
の日の作業全体スケジュールを、文字で白板
・手先の器用さを活かして、納品物のたたみ作
業を行う。
左半分に明示し、右半分に個人用のスケジュ
ールを時間帯毎にマグネットで表示している。
・たたみ作業をペアで行う場合は、相性の良い
・いつもと同じやり方でスケジュールを確認す
利用者と一緒に行う。
る。
・納品車の洗車を週間スケジュールに組み入
れる。
朝礼時に、固定の場所でスケジュールを確
認し、変更時は理由を説明し、納得してもらい
作業を進めている。
(3)周囲の環境を整える(過ごしやすい環境
を用意する)
施設の作業場で、自閉症の人が落ちつけず
・活動にめりはりをつける。
やるべき作業である納品物のたたみ作業と楽
イライラしたり何をしていいかわからないよう
な環境にならないように、「作業場環境とスタ
ッフ対応のチェックリスト」を参考に、作業場を
しい活動であるホースを使った納品車の洗車
を組み合わせ、見通しを伝えている。
見直した。見直し項目は次である。
(5)スタッフの対応の統一
職員の対応を統一するために、次のような
取り組みを行っている。
・作業場全体の整理・整頓
(カッターナイフ・はさみなどの自傷につなが
る道具の置き場を決める。)
・短期:作業面では得意なことを活かし、興味
関心で前向きな姿勢を引きだしている。集中
・作業場の機械設備を定期的に点検し、騒音
や異常な熱の発生を抑える。
して作業を行えた時は、ほめている。問題行動
発生時は、適宣原因を把握し対応策を講じて
いる。
・作業席をできるだけ固定する。
・中長期:自立へ向けた取り組み結果や課題を
(4)見通しを伝える
個別支援計画書へ反映している。
一人ひとりの理解レベルに合わせて個人用
のスケジュールを作成し、自閉症の人に見通し
を持って過ごせるように次の工夫を行ってい
る。
講評:事例が、しっかりと書かれています。理論、現状分析、応用、検証が光っています。
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