厚生労働科軸究補助金 城育疾患克服等次世イゼ育成基綱究事業) 重刷

H24厚科成育基盤
周産期ネッ ト藤村班
厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)
重症新生児のアウトカム改善に関する多施設共同研究
分 担 研 究 報 告 書
Consensus2010に基づ<新しい日本版新生児蘇生法ガイドラインの確立・普及と
その効果の評価に関する研究 (9)
「在胎24週未満の治療戦略に関する全国アンケート調査報告」
研究分担者 田村正徳 埼玉医科大学総合医療センター
研究協力者 國 方 徹 也 埼玉医科大学病院
研
究
要
旨
在胎22週児は、その生存率がやっと50%を超えたところであり、生存しても後遺症発生率
が高いことから、個々の救命蘇生処置の適応に関しては、 まだまだ様々な意見があり、実際そ
の 対 応 に は 施 設 間 格 差 が あ る 。
日本周産期・新生児医学会が定める全国の周産期(新生児)専門医制度の135基幹研修施設
(以下基幹)、142指定研修施設(以下指定)の指導医を対象に、2012年1月にアンケート調
査を実施した。 回収率は基幹79.2%、指定71.1%であった。
在胎22週においては入院数に占める生存退院の割合は106/195例で54.3%、 入院数に占め
る正常発達見込の割合は60/195例で30.7%、生存退院数に占める正常発達見込は60/106例で
56.6%であった。 在胎23週においては入院数に占める生存退院の割合は353/487例で72.5%、
入院数に占める正常発達見込の割合は226/487例で46.4%、生存退院数に占める正常発達見込
数は226/353例で64.0%であった。在胎22週の診療方針にっいての調査では、胎児適応の帝王
切開を『する』は有効回答施設の5.9%、『条件付きで施行する(以下条件付き)』同39.9%、
『しない』同43.3%であった。在胎23週では、同じく順に27.2%、44.6%、17.3%であった。
小児科医の分娩立合いに関しては、在胎22週で同じく順に54.0%、26.2 %、9.9%、在胎23
週では71.6%、13.2%、5.4%であった。人工呼吸を含む積極的治療にっいては、在胎22週に
関して順に34.2%、46.5%、9.9%、在胎23週に関しては63.7%、21.4%、5.5%であった。
今回の日本の主要な周産期施設へのアンケート結果を前回調査と比較すると、 生存退院率は着
実に改善したが、 生存退院に占める正常発達見込率は横バイであることがわかった。 診療方針
に関しても『条件付きで対応する』条件として、約9割が『ご両親の希望』を挙げており、両
親の意見が重要とされていることが今回の調査でも認識された。
A.研究目的
周産期医療の進歩は極めて未熟な超低出生
'
体重児の生存率の向上をもたらした )。 しかし、
在胎22・23週で出生した児をどこまで積極的
2
3
H24厚科成育基盤
周産期ネッ ト藤村班
図 1 能22週児の分娩から予後
に治療するべきか、世界各地の新生児医療の現
場で議論されている。国内においても各施設に
おける診療方針は必ずしも一様ではない。 在胎
22・23週の予後が少しずっ明らかになるにっ
れて、その対応にっき医学的・倫理的側面から
議論されっつある。その議論のもととなるデー
タを集積し、以前の報告 2 ) と比較することが今
回の目的である。
B.研究方法
日本周産期・新生児医学会が定める全国の周
図 2 在胎23週児の分娩から予後
産期(新生児)専門医制度の135基幹研修施設
(以下基幹)、142指定研修施設(以下指定)
の指導医を対象に、2012年1月にアンケート
調査を実施した。アンケート内容は、2009・2010
年に出生した在胎22・23週の出生児の診療実
績と診療方針である。 その結果を当グノレープの
山口らが行つた前回調査 2 ) (出生2006・2007
年) などと比較した。
C.研究結果
在月台23週は (図2) 死産77例、 生産466例、
アンケート送付数と回答数を下表に示す。
基幹
指定
送付数
135
142
回答数
107
101
入院487例(院外出生が加わるため)、生存退
回 収 率 ( %)
79.2
71.1
院353例、アンケート時点での正常発達見込み
が226例であった。入院数に占める生存退院の
割合は353/487例で72.5 %、入院数に占める
正常発達見込の割合は226/487例で46.4 %、
1 、 在胎22, 23週の予後
症例数は(図1)在胎22週が死産115例、
生存退院数に占める正常発達見込数は226/353
例で64.0%であった。
生産216例、入院195例、生存退院106例、ア
ンケート時点での正常発達見込みが60例であ
った。
2 、 診療方針(図3、4)
入院数に占める生存退院の割合は 106/195
能 2 2 週 の 診 療 方 針 にっいての調査では、胎
例で54.3 % 、入院数に占める正常発達見込の
児適応の帝王切開を『する』は有効回答施設の
割合は60/195例で30.7 %、生存退院数に占め
5.9 %、『条件付きで施行する(以下条件付き)』
る正常発達見込は60/106例で56.6%であった。
同 3 9 . 9 %、『しない』同43.3 % であった。在胎
23週の診療方針にっいての調査では、胎児適
応の帝王切開を『する』は有効回答施設の
27.2 % 、 『 条 件 付 き 』 同 4 4 . 6 %、 『 し な い 』 同
17.3% であった。小児科医の分娩立合いに関し
ては、在月台22週で同じく順に54.0%、26.2 %、
124
H24厚科成育基盤
周産期ネット藤村班
a
9.9 %、 在 台23週では71.6%、 13.2 %、 5.4 %
であった。人工呼吸を含む積極的治療(図4)
分娩立合い
a
m n s n n
図 5 帝王切開
にっいては、在胎22週に関して順に34.2 % 、
46.5 %、9.9 %、在月台23週に関しては63.7%、
21.4 %、 5.5 % であった。
図 3 胎児適応帝王切開
分娩立合い
1
-
,
図6
積極的治療
図 4 積極的治療
胎児適応の帝王切開・分娩立合い・積極的治
療のいずれにおいても、前回と今回で大きな相
違点を見いだせず、『ご両親の希望に沿う』と
いう方針が最も多かった。
図 7 在H台22週の分娩から予後
(前回調査との比較)
3 、 『条件付き』 のその条件とは?
『条件付き』帝王切開・分娩立合い・積極的
治療の条件を在ll台22週で前回調査と比較した
(図5,6)。
125
さ
H24厚科成育基盤
D
.
れ
た
。
周産期ネット藤村班
考
『ご両親の希望』 を挙げており、 両親の意見が
察
重要とされていることが今回の調査でも認識
人ロ動態調査からみた在胎24週未満の出生
数は出生数450前後で推移している。今回のア
ンケート調査では2009・10年の2年間で在胎
22・23週が682例出生しており、人口動態調
F.
査の76%を占めていることがわかる。
特
健 康 危 険 情 報
に
な
し
また、図3、4に示すように、診療方針を在
胎22・23週で比較すると、明らかに在胎23週
参 考 文 献
が胎児適応帝王切開・分娩立合い・積極的治療
1)板橋家頭夫、超低出生体重児の短期予後の
推移、 日周新医2008;44;804-7
すべてにおいて前向きであった。
2) 山口文佳、田村正徳、新生児医療における
在胎22週児の診療方針を前回2)と比較した
(図5,6)。胎児適応の帝王切開・分娩立合い・
生命倫理学的調査結果報告、 第一部
積極的治療のいずれにおいても、前回と今回で
一
大きな相違点を見いだせず、 『ご両親の希望に
学 誌 2 0 0 9 ; 4 5 ; 8 6 4-71
在胎22週出生児への対応 、 日周新医
一
3)0ishiM,NishidaH,Sasaki T: Japanese
沿う』という方針が最も多かった。救命率が改
善していても診療方針は大きく変わっていな
experience with micropremies weighing
いということがわかる。
1ess than600 grams born between1984to
1993.Pediatrics1997;99:e6
前回調査2)と比較するために、在胎22週児
に限つた分娩から予後までを図7に示す。入院
4)廣間武彦、上谷良行、中村友彦、他、全国
数に占める生存退院は36.2%から54.3%に、
調査の結果からみた成育限界、 小児科、
入院数に占める正常発達見込は 23.0%から
2 0 0 5 ; 4 6 ; 2 0 8 7-9 2
30.7%に改善していたが、生存退院に占める正
5) 日本小児科学会新生児委員会新生児医療
常発達見込は63.6%から56.6%とやや低下し
調査小委員会、我が国の主要医療施設にお
ていた。 これは予想以上に救命率が改善したと
けるハイリスク新生児医療の現状(2001
考えることができるかもしれない。ただし、調
年1月)と新生児死亡率(2000年1月~12
査時点での『正常発達見込』はその定義があい
月)、 日児誌2002;106;603-13
6) 上谷良行.2000年出生の超低出生体重児3
まいであり、解釈には注意を要する。
歳時予後の全国調査集計結果. 厚生科学研
E . 結 1 l l 論
究費補助金平成16年度研究報告書2005
7)KusudaS,FujimuraM,Sakuma I,et a1.
在胎22週児は、その生存率がやっと50%を
超えたところであり、生存しても後遺症発生率
Morbidity and Mortality of Infants With
が高いことから、個々の救命蘇生処置の適応に
Very LowBirth Weight in Japan:Center
関しては、まだまだ様々な意見があり、実際そ
Variation. Pediatrics 2006 ; 118 ;
の対応には施設間格差がある。
e
1
1
3
0- 8
8)Itabashi K,Horiuchi T,KusudaS et al:
今回の日本の主要な周産期施設へのアンケ
ート結果を前回調査と比較すると、生存退院率
Mortality rates for extremely1ow birth
は着実に改善したが、生存退院に占める正常発
weight infants born in Japan in2005.
達見込は改善していない。診療方針に関しても
Pediatrics2009;123;445-50
『条件付きで対応する』条件として、約9割が
126