面接練習の風景 校長 三 輪 秀 文 例年1月に入ってから面接練習を行っていましたが、今年は、三者懇談を控えた 12 月にも 行うことにしました。面接練習は、もちろん受験に向けたトレーニングとして毎年実施してい ますが、進路決定をするこの時期に、もう一度自分を見つめ直す機会になればと考えたからで す。面接官役を務める私にとって、日頃触れることのない、子どもたちの心の世界をのぞくま たとない機会になりました。今回は、1月に行う全員対象の模擬面接ではなく、代表者による 模擬面接をみんなで観察しながら学習するというスタイルをとりました。 模擬面接会場に本番さながらの空気が流れ、入り口の「失礼します」の第一声から、端で見 ている側にも緊張が走ります。息づかいまで伝わってきます。その張り詰めた中でこぼれ出る 言葉や仕草からは、いつもとは違った子どもたちの一面をのぞくこともあります。その反面、 無意識に日頃のクセが出てしまうこともあ ります。そこが面接の興味深いところです。 緊張のあまりに言葉を嚙んでしまって、 「失礼しました。」と改まって言い直す生 徒にさえ、誠意のこもった心が感じられて 立派に思えることさえあります。答える内 容も大切でしょうが、面接場面での答え方 や仕草に人柄が表れるのものです。思いが けない質問に、目を泳がせながら、戸惑いながらも、懸命に答えようとする子どもの姿にも、 一生懸命さや人柄がにじみ出ていて、好感を抱いてしまうこともあります。短い時間の中で、 面接官は人物を見抜こうと懸命です。 面接の応答に正解はありません。「最近読んだ本は?」「最近のニュースで関心のあるもの は?」という質問も、実は本やニュースを通して、どういうことに興味をもっている人物なの かを知ろうとしているからです。だからといって、そつなく、上手に答えることだけがいいと は思っていません。たとえば「本校を選んだ理由を答えてください。」との定番の質問に、よ どみなく「貴校を選んだ理由は…」と答えたとしても、面接マニュアルに書いてあるような通 り一遍の答えでは、面接官の心に残らないかもしれません。 「あなたの尊敬する人はだれですか?」との質問に「ピタゴラスです」などの思いがけない 人物の名前が返ってくると、そう答えた本人に深い興味がわいてくるものです。本人にとって は、自らの体験を通して導き出された答えであることは確かです。常識を越えたような思いも 寄らない回答のほうが、不思議と面接官の心に印象深く残ってしまうものなのです。 1月の全員対象の模擬面接が、いまから楽しみでなりません。3年生の全員が、自分で決め た進路先の面接に、自信と誇りをもって向き合えることを願って、精一杯取り組みたいと思っ ています。
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