要素は呼応し、動態をみちびく - 建築要素+環境要素 -

居住環境デザイン第7回
第6章「建築の要素」
居住環境デザイン第7回 第6章「建築の要素」
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要素は呼応し、動態をみちびく - 建築要素+環境要素 -
文責/学部4年 吉本萌
協力/修士2年 佐藤友香
修士1年 成塚翔太
□「屋根+丘」/花みどり文化センター 伊東豊雄 設計(2006年)
■はじめに
私たちの生活を支える建物は屋根や柱、窓などの建築を構
屋根という建築要素は、雨や雪、強い日差しから人を守る役割がある。屋根という建築要素と、丘という環境要素が関係し合うことで屋根の可能性を広げる。
築する部材である建築要素と、敷地の与条件や周辺環境な
公営昭和記念公園は広場を囲うように芝生の丘が広がっている。
どの建築を取り巻く環境要素の集合体で成り立っている。
その中に建つ花みどり文化センターは屋根に芝生や植栽が植えられ、その屋根は地面が隆起し、丘と連続するような形状をしている。
建物内部にいる人は屋根の上での行動が見えることで、内部から屋根へ、屋根から丘へ、丘から公園へと行動を広げる。
建物が建っている場所や利用者の特徴である環境要素と
屋根という建築要素と丘という環境要素が関係することで屋根の役割は人を守るだけでなく人の動きを誘う役割へと拡張される。
それに応じた建築要素を組み合わせ、お互いが関係し合う
ことで更なる要素の可能性を見出すことができる.
以下では、周辺環境に応じた建築要素が利用者にもたらす
行動の変化を紹介する。
▲
トイレ
エレベーター
展示室
エレベーター
会議室
建築要素
人
丘が隆起してできあがったような空間。
環境要素
外観写真
倉庫
インフォメーション
カフェ
▲
トイレ
建築要素と環境要素の関わり方
遊歩道へ
公園へ
丘と同様に屋根の上にも芝生や植栽が広がる
自動販売機
外へ
中へ
建築要素…建築を構成する部材
環境要素…建築を取り巻く環境
上にいる人、下にいる人の動きをみて
お互いの行動に誘われて建物内部、公
園全体へと行動が広がる。
□花みどり文化センター配置図
内観は森の中を散歩するような感覚を思わせる
2015.05.18
居住環境デザイン第7回
第6章「建築の要素」
文責/学部4年 吉本萌
居住環境デザイン第7回 第6章「建築の要素」
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要素は呼応し、動態をみちびく
- 建築要素+環境要素 -
協力/修士2年 佐藤友香
修士1年 成塚翔太
□「軒下+水」/神奈川県立美術館 坂倉準三 設計(1951年)
□「階段+狭い土地」/西落合の家 谷尻誠 設計(2011年)
軒下は屋根と壁、2つの建築要素から成り立っている。
階段という建築要素は人々を高低差のある場所へ移動させる役割を持っている。
屋根は雨や雪、強い日差しから人を守る役割がある。壁は室と室を隔てる役割がある。軒下という建築要素と
階段という建築要素と、狭い土地という環境要素を関係させることで階段の可能性を広げる。狭い土地での
、水という環境要素を関係させることで軒下の可能性を広げる。
階段が普段の使われ方では、階段はデッドスペースとなってしまう。踏面を広くすることで、階段で行われる
神奈川県立美術館は鶴岡八幡宮に隣接する美術館である。
この美術館は鶴岡八幡宮の池に囲まれ、その池
行動は上り下りだけではなくなり、そこで立ち止まり本を読んだり、横になるなどして行動が変化するように
に対応するように誰でも入ることのできる軒下が設えられている。水に映し出される揺らめきや反射する太
なる。
陽光は美術品である。軒下へ水の揺らぎが反射し、軒下は美術品となる。美術品に人が誘われるように軒下
階段という建築要素と狭い土地という環境要素が関係することで階段は人が滞留するような豊かな空間と
へも人が誘われる。
なる。
軒下という建築要素に水という環境要素が関係することで軒下の役割は拡張され、人を守ったり室を隔てる
だけではなく、人を誘う役割を担うようになる。
5500
?
!
33m
2
6000
美術館と聞くと敷居が高く、
美術品を楽しむ行動が内部で
ベンチに座って時間の経過によ
美術館の外の景色も美術品とし
建築面積 33m
階段は上る、降りるという縦
家が狭いため階段に用途を持た
限られた人が楽しむイメー
とどまってしまっている。
って水が跳ね返す光の加減や
て楽しむことでイメージが払拭
住宅の中では狭い。
動線の役割を果たす。
せる。
木の見え方をゆっくりと楽しむ。
できるとともに行動が広がる。
ジを持つ人は、少なくない。
外観写真
2
狭いながらも豊かな空間となる。
軒下でも美術品を楽しむ
外観写真
■おわりに
□参考
建物の形ばかりにとらわれていると自己満足で収束してしまうと考える。、建築要素が用いられた背景や設計
花みどり文化センター/新建築2006年7月号
者の意図や考えを汲み取るには、環境要素との関係性を理解する必要がある。そうすることで、それが自らの
casa BRUTUS/2014年vol167.
設計に生きていく。
環境デザイン講義 内藤廣 著 階段でも人が滞留する
階段を見下ろす
同様に、要素の本質を十分に理解し周辺環境や利用者の動きを考えることで思い描く建築、空間が実現する
。
2015.05.18