マイクロ写真技術 第6章 2.文書情報マネジメントにおけるマイクロ写真の役割 文書情報マネジメントにおいて、マイクロ写真をどのように使用したらよ いかは、現在、次のように考えられている。 (1) 電子化文書登場までマイクロ写真が果たしてきた役割 マイクロ写真は日本においては昭和20年代から図書の分野を皮切りに利 用され始め、昭和30年代においては新聞・図面・小切手・官公庁・一般 企業のさまざまな文書やさまざまな分野でマイクロ写真が利用されるように なった。 昭和40年代に入るとさらに利用は拡大し、マイクロ写真を作成する手段 も、紙からだけではなくコンピュータデータをダイレクトにマイクロ写真に するCOMという装置も開発され、紙と並ぶ情報の記録媒体として使用され るようになった。 昭和50年代にマイクロ写真は最盛期を迎え、一番の問題であった検索の 部分をコンピュータを利用することにより効率化を図り、完成された形態と なってオフィスオートメーションの一角を担う形で利用された。 第 一方で昭和50年代半ばに光ディスクという新しい記録メディアにスキャ ナを使って文書情報をデジタル記録する電子ファイリングというシステムが 6 章 登場し、その性能が向上していくにしたがい電子ファイリングシステムの利 用が増加した。 現在、マイクロ写真の利用は最盛期よりは大分減少した状態であるが、す べて置き換わったわけではなく、マイクロ写真のメリットが大きいと思われ る部分については現在もマイクロ写真が使用されており、今後も使用され続 けていく見込みである。 97 id3_143701_6章.indd 97 15.6.3 2:37:03 PM 第6章 マイクロ写真技術 (2) 電子化文書とマイクロ写真の特性比較 表 6 −1 電子化文書とマイクロ写真の比較 マイクロ写真 ◎ ○ ◎ ○ ◎ ○ ○ ○ △ × △ △ 大量情報の高速入力 複製・配布の容易さ 規格の統一 法的証拠性 保存性 画像品質 記録密度 検索性 ネットワーク 画像編集 即時処理 追加更新 電子ファイル ◎ ◎ △ ○ △ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ (3) 文書情報マネジメントにおけるマイクロ写真の役割 現在、マイクロ写真が電子ファイルよりメリットがある点は、保存性がもっ とも大きいことである。 保 存性に関して媒体自体の期待寿命はマ イクロ写真が 500 年、電子ファ イルで代表的なメディアであるCDは 100 年とも言われているが、電磁記 録の場合、媒体・機器・ソフトの進歩が早く、10 年程度で過去の機器・ソ フトが購入できない状況が生じている。記録したものを将来的に利用すると 10 年程度でつねに新しい媒体にマイグレーション(媒体移行)しなければ ならない現状である。 その点、マイクロ写真は今後新しい形式のものが出現する可能性はほとん どなく常に同じ形式の機器が購入できることから、媒体寿命がそのまま利用 可能な寿命であると言える。 このため、電子化したデータを保存目的のため自動的にマイクロ写真化す る装置(デジタル - マイクロ・アーカイブ)も出現してきており、文書情報 マネジメントの中で長期に文書を保存する目的には今後もマイクロ写真が使 われていく可能性が高いと考えられる。 98 id3_143701_6章.indd 98 15.6.3 2:37:04 PM
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