HyperWorks を用いた歯車結合要素の力学特性解析

HyperWorks を用いた歯車結合要素の力学特性解析
何帥(1)、周欣偉(1)、鈴木海斗(1)、佐藤慶太(1)、趙希禄(2)
(1)
埼玉工業大学 工学部
(2)
埼玉工業大学大学院
機械工学科
システム工学専攻
本 研 究 で は、 歯 車 結合 要素 の 接 触 応力 分 布 など 力学 特 性 を 検討 す る ため 、 汎 用 解 析 ソフ ト
HyperWorks を利用して、歯車結合要素の静的応力解析を行い、更に有限要素法の解析結果を理論解に
比較して、解析結果の妥当性について検討を行う。
1
はじめに
方向に 50Nm の回転トルクをかける。一方、図 1
歯車は駆動の負荷と伝動する動力を耐える
の右側にある大歯車は受動歯車であり、その軸穴
主要部品であるので、最も故障が生じやすい部品
(1)
の内表面を完全拘束とする。
の一つである 。統計によると、各種の機械故障
表 1.歯車の基本パラメータ(mm)
の中で、歯車の損傷によるのは全体の 60%以上
小歯車
大歯車
モジュール
12
12
歯数
21
42
ピッチ円直径
252
504
円ピッチ
37.699
37.699
歯幅
40
40
を占める。また、歯表面の破壊はその最も重要な
原因と指摘されている。
ただし、歯車結合要素の歯表面の接触圧力分
布および接触強度などに関する研究はまだ十分
に行われていないのは現状である。
本研究では、歯車結合要素の応力解析問題を
378
中心距離
扱い、HyperWorks を用いて歯車結合要素の接触
軸径
30
30
問題を考慮した上で応力解析を行い、接触応力の
全歯たけ
27
27
頂げき
3
3
圧力角
20
20
分布などについて詳細な検討を行う。
2
解析モデルの設定
表 1 に示す歯車データを使い、図 1 に示す解
析モデルを作成した。歯車結合要素の材料は構造
用鋼であり、ヤング率は 200GPa、パァソン比は
0.3 で あ る 。 歯 車 の す く い 面 の 接 触 に は
HyperWorks の接触解析機能から「FREEZE」を選
択し設定した。「FREEZE」接触解析機能は、接触
パーツ間の接触挙動は完全固定着となっており、
アセンブリ全体が一つの連続した構造物と見な
される。
図 1 の左側にある小歯車は駆動歯車であり、
軸穴の内表面に、軸を回る回転自由度をフリーに
する以外全ての自由度を拘束して、軸を回る回転
図1
歯車結合要素の解析モデル
3
解析結果
Hyperworks の静的解析における「FREEZE」
接触解析機能では、非線形接触解析の反復計算を
省いて、接触面法線方向の自由度間に制約条件を
課せることによって接触条件を取り入れるため、
接触問題を線形問題として直接に解析すること
ができる。
よって、本研究での応力解析は、通常の非線
形接触解析より速く解析結果が得られ、その応力
分布の結果を図 2 に示す。図 2 により、本研究で
扱う 2 個の歯車の大きさはかなり差があること
に起因して、最大応力点は図中に示す小さい駆動
歯車の接触部位にある歯の表面にあたる。これは、
小さい駆動歯車にかける回転トルクと、大きい受
動歯車による歯表面接触圧力と共に作用して、比
較的に大きな引張応力が生じるからである。その
最大応力は 50.91MPa である。
更に歯表面に沿って接触応力の分布を調べ
図3
4
歯表面に沿う接触応力分布
考察
るため、図 3 に示すように小さい駆動歯車の最大
前節の解析で得られた最大応力値と、文献
応力が生じる歯表面に沿って節点の点列を取っ
(2)の歯車接触面の応力計算式を用い計算した結
て、その点列での最大応力の分布は図 3 のように
果と比較して、その結果を表 2 に示す。
なった。図 3 により、小さい駆動歯車の歯の表面
表 2.接触応力の解析精度確認
に最大応力が生じて最も破損しやすいと思われ、
本文解(MPa) 文献解(MPa)
受動歯車に接触しない小さい駆動歯車の歯先部
50.91
分に応力がゼロになることも確認できる。
48.63
誤差
4.4%
表 2 の結果により、本研究の解析結果が妥当
であることが判った。
5
まとめ
(1) 接触を考慮した歯車結合要素の応力解析に
HyperWorks を適用して妥当であることが確認で
きた。
(2) 最大接触応力は小さい駆動歯車の歯表面の
根元付近に生じることが判った。
参考文献
(1)須藤亘啓,機械の設計,東京電機大学出版
局,2006 年 3 月,PP.144-159
(2)日本機械学会編,機械実用便覧,丸善書店,
図2
接触応力の最大値
2011 年 9 月,PP.531-532