システム制御工学Ⅰ 電気電子工学科 2015年度 今日の講義内容 基本伝達関数(1) • 対数とdB表示 • 比例要素 • 微分および積分要素 • 1次遅れ要素 • 1次進み要素 2 対数の効用 𝐴1 (𝜔) 𝐴2 (𝜔) log(𝜔) 𝐴1 (𝜔)𝐴2 (𝜔) log(𝜔) log(𝜔) 縦続接続された伝達関数のゲイン log |𝐴1 𝜔 𝐴2 𝜔 | = log 𝐴1 𝜔 ゲイン特性の乗算 は簡単ではない + log( 𝐴2 𝜔 ) 対数を取れば 加算で済む 3 dB(デシベル)表示(1) 𝒙 (𝒙 > 𝟎) log 𝟏𝟎(𝒙) 𝟏𝟎 log 𝟏𝟎(𝒙) 𝟐𝟎 log 𝟏𝟎(𝒙) 10 1 10 20 2 0.3010 ⋯ 3.010 ⋯ ≅ 3.0 6.020 ⋯ ≅ 6.0 0.1505 ⋯ 1.505 ⋯ 3.010 ⋯ ≅ 3.0 1 0 0 0 1/ 2 −0.1505 ⋯ −1.505 ⋯ −3.010 ⋯ ≅ −3.0 1/2 −0.3010 ⋯ −3.010 ⋯ ≅ −3.0 −6.020 ⋯ ≅ −6.0 1/10 −1 −10 −20 2 工学的には,パワー(電力)が2倍や半分になるところ(電圧・電流が 2倍 や1/ 2になるところ)が重要! 重要な数値は覚えやすい方が良い! パワー(電力)の比率の場合は対数の10倍,電圧・電流の比率の場合は 対数の20倍を使えば,精度2桁の範囲内で数値を整数で近似できる 4 dB(デシベル)表示(2) • 振幅の比率を表す場合のdB表示 20 log10 𝑥 𝑥 が 2 倍になるとdB値は 3dB増加 𝑥 が 2 倍になるとdB値は 6dB増加 𝑥 が 10 倍になるとdB値は 20dB増加 • パワーの比率を表す場合のdB表示 10 log10 𝑥 𝑥 が 2倍になるとdB値は 3dB増加 𝑥 が 10 倍になるとdB値は 10dB増加 5 相対量と絶対量 • dB は単位を持たないもの(比率などの相対 量)に対して用いる – 周波数応答は入力と出力の比率なので,ゲイン は dB で表せる • 一般の量(絶対量)を dB 表示する際には, 基準となる単位を明示する – 1Vを基準(0dB)として電圧をdB表示する場合に は dBV のような書き方をする 6 問 1. 増幅器の電圧ゲインが1000倍とする.電圧 ゲインをdBで表せ. 2. 増幅器の電力ゲインが100倍とする.電力 ゲインをdBで表せ. 3. 1mVをdB表示せよ. 7 伝達関数の一般形 一般に 𝑛 次のシステムの伝達関数は有理式(多項式 の比) 係数の添字は 𝑠 のべき数とは逆順 𝑁(𝑠) 𝑏0 𝑠 𝑚 + 𝑏1 𝑠 𝑚−1 + ⋯ + 𝑏𝑚−1 𝑠 + 𝑏𝑚 𝐺 𝑠 = = 𝐷(𝑠) 𝑎0 𝑠 𝑛 + 𝑎1 𝑠 𝑛−1 + ⋯ 𝑎𝑛−1 𝑠 + 𝑎𝑛 (𝑎0 , ⋯ , 𝑎𝑛 , 𝑏0 , ⋯ , 𝑏𝑚 は定係数) • 通常 𝑛 ≥ 𝑚 とする • 分母多項式 𝐷(𝑠) の根を極(pole),分子多項式 𝑁(𝑠) の 根を零(zero)と呼ぶ 定数,1次式,2次式 因数分解した形 𝐺 𝑠 = 𝐾 𝑙=1(𝑠 は乗算の記号 (共役複素)に分解 + 𝜎𝑙 ) 𝑘=1(𝑠 + 𝛽𝑘 + 𝑗𝜔𝑘 )(𝑠 + (𝛽𝑘 − 𝑗𝜔𝑘 )) 𝑖=1(𝑠 + 𝜌𝑖 ) 𝑗=1(𝑠 + (𝛼𝑗 + 𝑗𝜔𝑗 ))(𝑠 + (𝛼𝑗 − 𝑗𝜔𝑗 )) (𝐾, 𝜌𝑖 , 𝛼𝑗 , 𝜔𝑗 , 𝜎𝑙 , 𝛽𝑘 , 𝜔𝑘 は定係数) 8 伝達関数の要素 • 一般の伝達関数を要素に分けて考える – 比例要素 𝐾 – 微分要素 𝑠 – 積分要素 1 𝑠 – 1次遅れ要素 1 1+𝑠𝑇 – 1次進み要素 1 + 𝑠𝑇 – 2次要素 𝜔𝑛 2 𝑠 2 +2𝜁𝜔𝑛 𝑠+𝜔𝑛 2 −𝜏𝑠 – むだ時間要素 𝑒 9 (例) 3次の伝達関数 2𝑠 2 + 8𝑠 + 6 𝐺 𝑠 = 3 𝑠 + 2𝑠 2 + 4𝑠 + 3 (𝑠 + 1)(𝑠 + 3) =2 (𝑠 + 1)(𝑠 2 + 𝑠 + 3) 1 1+𝑠 1+ 𝑠 3 =6 二次要素 2 1+𝑠 𝑠 +𝑠+3 1 1 3 =2 1+𝑠 1+ 𝑠 3 1 + 𝑠 𝑠2 + 𝑠 + 3 定数ゲイン 一次進み要素 一次遅れ要素 10 問 以下の伝達関数を基本伝達関数の積に分解せ よ. 3(𝑠 + 1)(𝑠 + 3) 𝐺 𝑠 = 2 𝑠 (𝑠 + 2)(𝑠 + 4) 11 比例要素 角周波数に依存しないゲイン(直流ゲイン) 𝑦 𝑡 = 𝐾𝑥(𝑡) 𝑌(𝑠) 𝐺 𝑠 = =𝐾 𝑋(𝑠) 𝐺 𝑗𝜔 = 𝐺(𝑠) 𝑠=𝑗𝜔 = 𝐾 • 電気系なら理想演算増幅器など • 機械系なら梃子(てこ)など • 機械系(位置や角度)から電気系(抵抗値)に変換 するのがポテンショメーター (モーターは,電気系(電流)から機械系(角度)への 変換を行うが,角周波数に依存するので厳密には 比例要素ではない) 12 微分要素 出力が入力の微分 𝑑𝑥(𝑡) 𝑦 𝑡 = 𝑑𝑡 𝑌(𝑠) 𝐺 𝑠 = = 𝑠 (初期値は0と仮定) 𝑋(𝑠) 𝐺 𝑗𝜔 = 𝐺(𝑠) 𝑠=𝑗𝜔 = 𝑗𝜔 • 理想的な微分要素は物理的に実現できない • 実際には近似的に微分要素として振る舞うもの を使用する • 直列CR回路など 13 (例)直列CR回路 𝑥(𝑡) 𝐶 𝑅 𝑦(𝑡) 1 𝑑𝑞(𝑡) 𝑑𝑞(𝑡) 𝑥 𝑡 = 𝑞 𝑡 +𝑅 ,𝑦 𝑡 = 𝑅 𝐶 𝑑𝑡 𝑑𝑡 𝑥 𝑡 ≫𝑦 𝑡 = 𝑑𝑞(𝑡) 𝑅 𝑑𝑡 が成立するなら 𝑥(𝑡) ≅ 𝑑𝑞(𝑡) 𝑑𝑥(𝑡) ∴𝑦 𝑡 =𝑅 ≅ 𝑅𝐶 𝑑𝑡 𝑑𝑡 比例要素と微分要素の積.比例要素は 増幅器などで1に補正すれば良い. 1 𝑞(𝑡) 𝐶 14 時間応答と周波数応答 • ステップ応答 𝑠 𝑡 =ℒ −1 𝐺 𝑠 𝑈 𝑠 =ℒ −1 1 𝑠 = ℒ −1 1 𝑠 = 𝛿(𝑡) • 周波数応答 𝐺 𝑗𝜔 = 𝑗𝜔 = |𝜔| 20 log10 𝐺 𝑗𝜔 = 20 log10 ( 𝜔 ) 𝜔 𝜋 −1 𝜙 𝜔 = tan = 0 2 15 ボード線図とナイキスト線図 傾き20dB/decade 位相は常に+90° 20 0 90 0.1 1 -20 𝜔 = 1のときゲ インが1 (0dB) 10 0 𝜔 Im 10 𝜔 -90 𝜔→∞ 𝜔=0 0 1 0.1 原点から上へ 向かう直線 Re 16 積分要素 出力が入力の積分 𝑦 𝑡 = 𝑥 𝑡 𝑑𝑡 𝑌(𝑠) 1 𝐺 𝑠 = = 𝑋(𝑠) 𝑠 1 𝐺 𝑗𝜔 = 𝐺(𝑠) 𝑠=𝑗𝜔 = 𝑗𝜔 • 理想的な積分要素は物理的に実現できない • 実際には近似的に積分要素として振る舞うものを使 用する • 直列RC回路など 17 (例)直列RC回路 𝑅 𝑥(𝑡) 𝐶 𝑦(𝑡) 1 𝑑𝑞(𝑡) 1 𝑥 𝑡 = 𝑞 𝑡 +𝑅 , 𝑦 𝑡 = 𝑞(𝑡) 𝐶 𝑑𝑡 𝐶 𝑥 𝑡 ≫𝑦 𝑡 = 1 𝑞(𝑡) 𝐶 が成立するなら 𝑥(𝑡) ≅ 1 1 ∴ 𝑦 𝑡 = 𝑞(𝑡) ≅ 𝐶 𝑅𝐶 比例要素と積分要素の積.比例要素は 増幅器などで1に補正すれば良い. 𝑑𝑞(𝑡) 𝑅 𝑑𝑡 𝑥(𝑡) 𝑑𝑡 18 時間応答と周波数応答 • ステップ応答 𝑠 𝑡 =ℒ −1 𝐺 𝑠 𝑈 𝑠 • 周波数応答 =ℒ −1 11 1 −1 =ℒ = 𝑡 𝑢(𝑡) 2 𝑠𝑠 𝑠 1 1 𝐺 𝑗𝜔 = = −𝑗 𝑗𝜔 𝜔 1 1 𝐺 𝑗𝜔 = −𝑗 = 𝜔 |𝜔| 20 log10 𝐺 𝑗𝜔 = −20 log10 ( 𝜔 ) −1/𝜔 𝜋 −1 𝜙 𝜔 = tan =− 0 2 19 ボード線図とナイキスト線図 傾き-20dB/decade 20 0 90 0.1 1 -20 10 0 𝜔 Im 1 0.1 10 𝜔 -90 位相は常に-90° 𝜔 = 1のときゲ インが1 (0dB) 0 𝜔→∞ 𝜔=0 Re −∞から原点 へ向かう直線 20 一次遅れ要素 直列RC回路そのものの伝達関数 1 1 𝑠𝐶 𝐺 𝑠 = = 1 1 + 𝑠𝑅𝐶 𝑅+ 𝑠𝐶 一般的には,𝑇 を定数(時定数)として 1 𝐺 𝑠 = 一次遅れ 1 + 𝑠𝑇 要素 1 𝐺 𝑗𝜔 = 𝐺(𝑠) 𝑠=𝑗𝜔 = 1 + 𝑗𝜔𝑇 21 時間応答と周波数応答 • ステップ応答 𝑠 𝑡 =ℒ −1 𝐺 𝑠 𝑈 𝑠 = 1 𝑡 − −𝑒 𝑇 =ℒ −1 1 1 1 1 −1 =ℒ − 1 + 𝑠𝑇 𝑠 𝑠 𝑠+1 𝑇 𝑢(𝑡) • 周波数応答 20 log10 (|𝐺 𝑗𝜔 |) = −20 log10 (|1 + 𝑗𝜔𝑇|) 𝜔 ≪ 1/𝑇 のとき 20 log10 𝐺 𝑗𝜔 𝜔 = 1/𝑇 のとき 20 log10 𝐺 𝑗𝜔 𝜔 ≫ 1/𝑇 のとき 20 log10 𝐺 𝑗𝜔 =0 ≅ −3 [dB] = −20 log10 (|𝜔𝑇|) 𝜙 𝜔 = − tan−1 (𝜔𝑇) 22 ボード線図とナイキスト線図 1/𝑇 :遮断角 周波数(折点 角周波数) 20 90 1/𝑇 0 0.1/𝑇 0 10/𝑇 𝜔 1/𝑇 0.1/𝑇 10/𝑇 𝜔 -45 -20 遮断角周波数で ゲインは-3dB,位 相は-45度 Im 𝜔→∞ 0 -90 1 𝜔=0 Re ナイキスト線図は半 円を描く 23 ボード線図の折れ線近似 20 90 0.1/𝑇 1/𝑇 0 -20 10/𝑇 0.1/𝑇 𝜔 0 1/𝑇 10/𝑇 𝜔 -90 • ゲイン特性 2本の直線で近似できる.右下がりの直線は角周波数 が10倍になるごとに20dB減少(-20dB/decade) • 位相特性 直線ではあまり良く近似できない.1/𝑇 で階段状に近似 する方法, 0.1/𝑇~10/𝑇 の間を直線で近似する方法, 1/𝑇における接線で近似する方法などがある 24 問 1次遅れ要素 1 𝐺 𝑠 = 1 + 0.1𝑠 のボード線図を折れ線近似(直線近似)で描け. 位相特性については,遮断角周波数の1/10で 位相が0°,遮断角周波数の10倍で位相が − 90°になるものと考えて,その間を直線で近 似する. 25 一次進み要素 直列RL回路 𝐺 𝑠 = 𝑉(𝑠) 𝐼(𝑠) = 𝑅 + 𝑠𝐿 = 𝑅 1 + 𝐿 𝑠 𝑅 一般的には,𝑇 を定数 𝑖(𝑡) (時定数)として 𝐺 𝑠 = 1 + 𝑠𝑇 一次進み 要素 𝐺 𝑗𝜔 = 𝐺(𝑠) 𝑠=𝑗𝜔 𝑅 𝑣(𝑡) 𝐿 = 1 + 𝑗𝜔𝑇 26 時間応答と周波数応答 • ステップ応答 𝑠 𝑡 =ℒ −1 𝐺 𝑠 𝑈 𝑠 = 𝑢 𝑡 + 𝑇𝛿(𝑡) =ℒ −1 1 1 −1 (1 + 𝑠𝑇) = ℒ +𝑇 𝑠 𝑠 • 周波数応答 20 log10 (|𝐺 𝑗𝜔 |) = 20 log10 (|1 + 𝑗𝜔𝑇|) 𝜔 ≪ 1/𝑇 のとき 20 log10 𝐺 𝑗𝜔 𝜔 = 1/𝑇 のとき 20 log10 𝐺 𝑗𝜔 𝜔 ≫ 1/𝑇 のとき 20 log10 𝐺 𝑗𝜔 =0 ≅ 3 [dB] = 20 log10 (|𝜔𝑇|) 𝜙 𝜔 = tan−1 (𝜔𝑇) 27 ボード線図とナイキスト線図 20 90 45 0 0.1/𝑇 1/𝑇 -20 遮断角周波数で ゲインは3dB,位 相は45度 1次遅れ要素と 同様に直線で近 似できる 0 10/𝑇 𝜔 Im 1/𝑇 0.1/𝑇 10/𝑇 𝜔 -90 𝜔→∞ 𝜔=0 0 1 Re ナイキスト線図は 直線を描く 28 問 1次進み要素 𝐺 𝑠 = 1 + 10𝑠 のボード線図を折れ線近似(直線近似)で描け. 位相特性については,遮断角周波数の1/10で 位相が0°,遮断角周波数の10倍で位相が + 90°になるものと考えて,その間を直線で近 似する. 29 複雑な伝達関数のボード線図 • 伝達関数を要素に分解する • 要素ごとに直線近似(折線近似)でボード線図を 描く • 各要素のボード線図の横軸を揃えて縦軸を足し 合わせる 1+𝑠𝑇2 (例) 𝐺 𝑠 = の場合 𝑠(1+𝑠𝑇1 ) 1 1 積分要素 ,1次遅れ要素 𝑠 1+𝑠𝑇1 ,1次進み要素 1 + 𝑠𝑇2 の3つに分けてボード線図を描く 30 問 前ページの例において,𝑇1 = 0.1, 𝑇2 = 1 の場 合のボード線図を実際に描け. 31 練習問題 下図の回路について,以下の問いに答えよ. 1. 伝達関数 𝐺(𝑠) を求めよ. 2. 𝑅1 = 9kΩ,𝑅2 = 1kΩ,𝐶 = 1𝜇Fとする.直線 近似でボード線図を描け. 𝑅1 𝑥(𝑡) 𝑅2 𝑦(𝑡) 𝐶 32
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