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平成27年度有機化学IV
前半第二回目講義
宮地 弘幸
カルボン酸誘導体の加水分解
カルボン酸誘導体は加水分解を受けてカルボン酸を生じる。エステルの塩
基性加水分解をけん化という。アシル誘導体の分極の程度が大きいほど,
反応性も大きくなる。
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カルボン酸誘導体の加水分解
反応性の高い酸誘導体は反応性の低いものに変えることができる。
酸塩化物をエステルやアミドに変えることができるが,アミドやエステルを酸塩
化物に変えることはできない。
(反応性の順序を覚えることは,多くの反応を覚えるうえで役に立つ)。
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カルボン酸誘導体の加水分解
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カルボン酸誘導体の加水分解
1)酸塩化物のカルボン酸への変換(RCOCl → RCO2H)
酸塩化物は水と反応してカルボン酸となる。
生成した四面体中間体は HCl を失って生成物
を与える。
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カルボン酸誘導体の加水分解
2)エステルのカルボン酸への変換(RCO2R’ →RCO2H)
エステルは,塩基または酸により加水分解されて,
カルボン酸とアルコールを与える。
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カルボン酸誘導体の加水分解
酸性加水分解
塩基性加水分解
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エステルの合成
酸触媒存在下のカルボン酸とアルコールの反応
Fischer エステル化 (Fischer esterification)
酸性(硫酸、塩酸、トシル酸等)にするのは,反応を触媒
するだけでなく,カルボン酸が求核剤と反応するように
酸性型に保つため。
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エステルの合成
酸触媒存在下のカルボン酸とアルコールの反応
1) カルボキシ基プロトン化
2) アルコールの攻撃
四面体中間体
3) 水分子の脱離
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エステルの合成
活性化剤存在下のカルボン酸とアルコールとの脱水縮合
縮合剤を用いてカルボキシル基を活性化後アルコールと反応
ジシクロヘキシルカルボジイミド (DCC),カルボニルジイミダゾール,BOPCl (塩
化ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸),2-クロロ-1-メチルピリジニウ
ムなどが脱水縮合に用いられる。
R'
..
O
H
O
..
O H
N
C
R
O
O
+
N
-
R
O
+
O R'
R
NH
N
R
N
O
C
N
-O
..
O
R
OR'
HN
+
O
NH
H
H
N C N
O
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アミド(カルバモイル)基を含む医薬品の例
O
NH2
N
CH3
N
ウリトス:
杏林製薬(現:キョーリンホールディングス)の宮地等により
創製された過活動膀胱治療薬。膀胱のムスカリン受容体に
拮抗的に作用し、自分ではコントロールできない膀胱平滑
筋の過剰な収縮を抑え、膀胱に尿をためやすくします。通
常、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿および切迫性
尿失禁の治療に用いられます。
アイデア発想: 1992年
テ-マ開始: 1993年
特許出願:
1995年
小野薬品参画:2000年
承認申請:
2004年
承認:
2007年
エーザイ参画: 2012年
ちなみに
特許切れ:
2015年
14年
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アミドの合成
酸ハロゲン化物とアミンとの反応によるアミドの合成
塩化アシル(酸ハロゲン化物)はアミン類と反応してアミドと塩酸を生成する。
アミンやアンモニアがすべてのハロゲン化アシルと反応するには,塩化アシルの
2 倍量のアンモニアやアミンが必要。
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アミドの合成
カルボン酸とアミンとの反応による縮合剤存在下でのアミドの合成
ペプチド合成(RCONHR’)は,酸や塩基に敏感な官能基の存在やラセミ化の防止
のためできるだけ緩和な反応条件下で行う。
酸である 1 はカルボジイミドと反
応し、O-アシルイソ尿素中間体 2
を生成する。2 はカルボン酸の活性
エステルであり、2 がアミンと反応
した場合、目的の化合物である 3
と尿素誘導体である 4 を生成する。
これ以外にも 2 を出発点とした異
なる反応が起き、副生成物が生成す
る。化合物 2 がカルボン酸 1 と反
応した場合、カルボン酸無水物であ
る 5 を生成する。この化合物 5 は
活性が高いためアミンと反応し化合
物 3 が生成する。不要な副生成物
が生成する場合もあるが、この場合
は化合物 2 が転位反応を起こし、
安定な N-アシル尿素である化合物
6 を生成する。誘電率の低い溶媒で
あるクロロホルムを用いた場合、こ
のような副反応を最小限に抑えるこ
とができる。
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アミドの合成
ペプチド合成時の注意事項
活性化酸成分を R−COX と表すとき一般にHX の酸性が強いほど反応性が高い。ただし
反応性の高い方法はラセミ化など副反応を伴うこともある。特にαアミノ酸からペプ
チドを合成する場合、α位のラセミ化が問題となるのでこの点を留意する。
BaseO
R2
H
Base-
H
Cl
N
RHN
オキサゾロン環の形成が起る!
O
R1
O
R2
-
N
RHN
O
N
R1
H
-
O
N
H+
下面攻撃
O
R2
O
R2
R1
NHR
O
N
R1
NHR
H
O
R2
H
O
N
R1
NHR
R1
NHR
R2
R2
NHR3
O
R1
NHR
N
H
H2N R3
O
O
N
R1
H2N R3
H+
R2
O
RHN
上面攻撃
O
O-
R2
O
H
等量の混合物
(ラセミ体)
NHR3
O
N
H
R1
NHR
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ニトリルの合成
アミドの脱水反応によるニトリルの合成
脱水剤;塩化チオニ
ル(SOCl2),五酸化
二リン(P2O5),塩化
ホスホリル(POCl3),
無水酢酸 等シアン
化物イオンの求核置
換反応によるニトリル
合成(後述)が難しい
場合にはこの合成法
が有効である。
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酸ハロゲン化物の合成
カルボン酸のヒドロキシ基をハロゲン化物イオンで置換する。
反応剤はSOCl2,PCl3,PCl5, (COCl)2 , PBr3 など。 カルボン酸と反応剤とから
カルボン酸の無機混合酸無水物が中間体として生成する。ハロゲン化物イオンを求
核剤とする酸触媒による付加-脱離機構で反応が進行する。
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酸無水物の合成
ジカルボン酸は,五員環か六員環をもつ環状無水物を形成できる場合には
,加熱すれば容易に脱水する。
高温加熱する!
という意味
塩化アセチルや無水酢酸存在下で加熱する。
P2O5 (五酸化二リン)のような強力な脱水剤と処理する。
環状無水物をもっと容易に合成できる。
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