平成28年度予算文部科学省概算要求に対する日高教書記長見解 平 成 2 7 年 9 月 1 日 日本高等学校教職員組合 書記長 飯 塚 智 樹 文部科学省は、8月28日、平成28年度概算要求を発表した。要求総額は、「新しい日本のための優先 課題推進枠」8,403億円を含め、5兆8,552億円となり、前年度予算額比9.8%(5,249億円)増であった。 また、文教関係予算は4兆3,704億円で、同7.6%(3,103億円)増であった。 義務教育費国庫負担金については、社会や子供の変化に対応する新たな学校教育の実現として、1 兆5,163億円を要求した。具体的には、創造性を育む学校教育の推進に1,440人、学校現場が抱える課 題への対応に940人、チーム学校の推進による学校の組織的な教育力の充実として660人、合計3,040 人の定数改善を計上するとともに、平成36年度までの定数改善予定数を示した。 高校教育関係では、高等学校教育、大学教育及びそれらを接続する大学入学者選抜の抜本的な改革 に向け、高大接続改革の推進として前年比71億円増の72億円が要求された。また、補習等のための指 導員等派遣事業については、高等学校分として前年比200人増の1,200人の4.9億円が計上されたのみ で、学校現場の実情に見合った満足できる配置人数とは言えない。その他、チーム学校の実現に向け た業務改善の推進、教育課程の充実、キャリア教育・職業教育の充実、SPH指定校の拡充、情報通信 技術やICTを活用した事業など、施策の拡充が見受けられるが、公立高校の定数改善に対する主要な 項目はなく、学校現場で日々様々な教育課題に対峙している教員の実態を顧みない概算要求であり、 到底納得できない。日高教は、真に望まれる高校教育の実現をめざし、引き続き定数改善や勤務環境 の充実に向けた取り組みを行っていく。 学びのセーフティーネットについては、総合的な子供の貧困対策の推進として、スクールソーシャ ルワーカーの配置拡充に前年比4億円増の10億円、そして、高校生等への修学支援に3,909億円と前年 同額を維持した。高等学校等就学支援金については、所得制限の年次進行による対象生徒数が減少す ることから、前年比減となる一方、低所得世帯の教育費負担の軽減を図ることを目的とした、高校生 等奨学給付金の対象者数が前年度の34万人から47.2万人に拡充された。その他、学び直しへの支援や 特別支援教育就学奨励費、平成28年1月からスタートするマイナンバーに対応した事務処理システム 等が計上された。加えて、大学等奨学金事業の充実として、無利子奨学金事業の拡充を目的に貸与人 員を3万8千人増員、また、国立・私立大学の授業料減免、加えて専門学校生の授業料負担軽減事業に ついても拡充されたことは、進学をめざす生徒の進路選択の幅を広げる施策として評価できるが、日 高教は、教育の機会均等を保障し、全ての意志ある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会の実現 のため、高校授業料無償制度の復活及び高校における無利子奨学金や給付型奨学金の制度拡充を引き 続き求めていく。 特別支援教育の充実等については、前年比18億円増の164億円が要求された。そのなかで、新規事 業としては、インクルーシブ教育システム推進事業費補助に15億円、発達障害の可能性のある児童生 徒に対する支援事業に6億円、その他、特別支援教育就学奨励費負担等の拡充など、これまでの日高 教の要望を踏まえた施策も認められた。しかし、特別支援学校の高等部に通う生徒数は過去最高とな り、教室不足等の様々な課題が山積しているのが現状である。日高教は、引き続き障がいのある児童 生徒等が十分な教育を受けられる環境の構築に向け、特別支援教育に係る予算の拡充等を求めていく。 教育は、未来への先行投資であり、我が国が、真の「教育立国」をめざすためには、教育予算の大幅 な拡充が強く望まれる。特に、喫緊の教育課題への対応や教職員の多忙化解消など、学校現場の課題 解決を早急に図らなければならず、そのための施策や人材確保などを担保する教育予算を、国の責任 において確保することが必要である。日高教は、東日本大震災の被災地における教育の復興と、わが 国の成長・発展のため、平成28年度予算編成において、概算要求における全ての事項が要求通り認め られ、予算の増額が図られることを強く要望する。
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