Topics JAグループ群馬自己改革の取り組み JAグループ群馬は1月26日(月) 、昨年7月から検討・協議を重ねてきた自己 改革の取り組みを決定しました。自己改革については、県域総合審議会、専門委員 会、検討委員会の3つの会議体で、営農経済関連事業の実現可能な対応策を中心に 検討を重ねました。 その他の自己改革すべき項目は、今年11月に開催予定の第40回JA群馬県大 会まで継続・検討し、大会議案の策定に反映させることにしております。 なお、農協改革の柱の一つである中央会改革については、全国における検討に沿 って対処することとしております。 【自己改革骨子】 ①農業所得増大と農業生産拡大のための改革 ②信用・共済事業の強化対策 ③その他生活関連事業の強化対策 ⑤事業改革を行うための体制整備 ⑥JA合併の推進 1 農協改革県域総合審議会 報 告 書 平成 27 年 1 月 JA群馬中央会 2 目 1.はじめに 次 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.県内農業・JAの現状と課題 1 ・・・・・・・・・・・・ 2 (1)農業の情勢 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (2)JAの情勢 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 3.対応策・JAグループ群馬の自己改革骨子 (1)改革の目的 ・・・・・・ 12 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 (2)農業所得増大と農業生産拡大のための改革 (3)信用・共済事業の強化対策 ・・・・・ 12 ・・・・・・・・・・・・ 15 (4)その他生活関連事業の強化対策 ・・・・・・・・・・ 16 (5)事業改革を行うための体制整備 ・・・・・・・・・・ 17 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 (6)JA合併の推進 3 農協改革県域総合審議会報告書 1.はじめに 平成 26 年 6 月に閣議決定された規制改革実施計画において、JA グループの自主・自立の組織運営の根幹を揺るがしかねないJAの組 織・事業・運営全般にわたる改革が提言された。 政府が行う農協法や関連制度の改正については、全中の総合審議会 における答申を踏まえ、JAグループ群馬としても的確な対応を行う 必要があるが、一方で、政府や規制改革会議等に言われるまでもなく JAが抱えるさまざまな課題に対して、自ら積極的に自己改革に取り 組み、今まで以上に組合員をはじめ地域住民さらに広く国民から支持 されるJAグループを構築しなければならない。 そこで、本県においては、平成 26 年 7 月に農協改革に関する本県 総合審議会、専門委員会、検討委員会の3つの会議体により、JAグ ループ群馬として取り組むべき自己改革について、とりわけ営農経済 関連事業の実現可能な対応策を中心に検討を行うこととし、同年 9 月 の第1回本県総合審議会・専門委員会合同会議を皮切りに、数次にわ たり検討を重ねてきた。 なお、農協改革の柱の一つである中央会改革については、全国にお ける検討に沿って対処することとした。 それぞれの会議体では、 「本県JAグループの現状と課題」 「課題解 決のための対応方策・重点取り組み事項」「JAの目指すべき姿」に ついて、営農経済関連事業、信用・共済事業、その他生活関連事業の 3分野に区分して検討を行った。 このたび、本県総合審議会において一定の方向性が確認できたので、 総合事業を前提とした営農経済関連事業の改革に重点を置いた自己 改革の報告書としてとりまとめることとした。 なお、その他の自己改革すべき項目は、今後、平成 27 年 11 月開催 予定の第 40 回JA群馬県大会まで継続・検討し、大会議案の策定に 反映させることとする。 また、自己改革を必ず実践するためにPDCAにもとづく自己改革 工程表で進捗管理するとともに、JAグループ群馬の自己改革の取り 組みに関する積極的な情報発信に努める。 4 2.県内農業・JAの現状と課題 本県は、豊富な水資源や耕地が標高 10~1,400mの間に分布し、首 都圏に位置するなど農畜産物の流通に有利な立地条件を活かした多 彩で多様な農業が展開され、特に野菜や畜産(豚、生乳)の生産が盛 んとなっている。 一方、県内のJA数は、昭和30年の223JAから組織、事業、経営 基盤の強化を目的とした合併等の進展により、平成26年度末現在15 JAとなっている。 農業・JA事業が減少傾向にある中、JAグループとしては、担い 手の育成とともに総合事業を前提とした農業者の所得増大、農業生産 の拡大、地域の活性化が喫緊の課題であり、JAの自己改革の中心は 営農経済事業である。 また、JA組織基盤である正組合員と准組合員の員数が逆転し、多 様化する組合員ニーズに合致した事業展開に努めるとともに、経営面 ではより迅速な意思決定と高度化・専門化に対応する業務執行体制を 確立する必要がある。 (1)農業の情勢 ① 農家数(ヒト) 平成22年の総農家数は、57,252戸、うち販売農家数31,914戸、 自給的農家数25,338戸で、自給的農家が4割を超える一方、販売農 家は主業農家ほど大きく減少している。また、販売農家における 農業就業人口は57,084人で、この5年間で約14,600人減少し、平均 年齢は65.9歳(5年前は63.7歳)となっている。 農 家数の 推移 17,762 16,628 17,581 24,019 36,248 25,338 31,070 第2種兼業 29,107 15,751 12,840 平成2年 14,459 自給的 20,295 16,405 8,618 7,612 4,515 10,822 10,259 10,601 10,994 平成7年 平成12年 平成17年 平成22年 5 第1種兼業 専業 県内の農家数を平成 2 年(82,601 戸)と 22 年(57,252 戸)の 20 年間で比較すると 69%に減少したが、うち専業・兼業農家とも減少 する一方で、自給的農家が 142%に激増している。 畜産農家に限ってみると、飼養戸数が平成 2 年(8,870 戸)と 25 年(1,701 戸)を比較すると 2 割まで激減しているが、飼養頭羽数 はそれほど減少せず、一戸あたりの大規模化が進んでいることがう かがえる。 畜産飼養戸数の推移 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 平成2年 平成7年 平成12年 平成17年 乳用牛 平成22年 肉用牛 平成23年 肉豚 平成24年 平成25年 採卵鶏 なお、平成 25 年の認定農業者数は 4,694 人で、平成 7 年に比べ て 3,358 人の増加となっている。 認定農業者数の推移 6,000 5,000 4,858 4,715 4,650 4,694 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 4,179 4,000 2,858 3,000 2,000 1,336 1,000 0 平成7年 平成12年 平成17年 6 平成 25 年の新規就農者数は 192 人で、平成 7 年に比べて 113 人の 増加となっている。 一方、平成 22 年の 39 歳以下の農業就業者数 3,927 人に対する平 成 25 年の農協青年部員数は 1,493 人で、比較年次が異なるものの 青年部への加入状況が低迷している。 新規就農者数の推移 250 200 195 204 平成22年 平成23年 平成24年 192 152 136 150 190 79 100 50 0 平成7年 平成12年 平成17年 平成25年 ② 耕地面積(モノ) 平成25年の耕地面積73,300haのうち、田は27,400ha、畑は 45,900haと他県に比較して畑の比率が高い。年間、約500ha のペー スで減少しており、減少の主な理由は宅地等への転用や耕作放棄に よるものとなっている。 また、平成22年の耕作放棄地は13,901ha、耕作放棄地率は18.4% で、特に中山間地域では深刻な状況となっている。 県内の耕地面積を平成 2 年(93,900ha)と 24 年(73,900ha)の 22 年間で比較すると 2 割減少している。 耕地面積の推移 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 100,000 34,700 39,000 平成7年 32,900 41,500 12,100 平成12年 31,500 44,800 5,400 平成2年 43,000 17,600 平成17年 29,400 平成22年 28,100 41,800 3,810 平成23年 27,800 41,300 3,730 平成24年 27,600 41,000 3,660 平成25年 27,400 40,600 3,590 田 普通畑 7 樹園地 牧草地 4,210 また、耕作放棄地は、平成 2 年(3,662ha)と 22 年(13,901ha) の 20 年間で 4 倍弱まで激増し、年々増加傾向のため耕作放棄地の 解消が進んでいない。 耕作放棄地面積の推移 16,000 14,000 13,779 13,901 平成17年 平成22年 12,000 10,000 8,000 7,082 6,000 4,000 3,662 4,531 2,000 0 平成2年 平成7年 平成12年 ③ 農業産出額(カネ) 県内の農業産出額は昭和58年の3,281億円をピークにその後減少 し、平成24年は2,220億円で前年の2,213億円を7億円上回った。 都道府県別順位では順位を下げ、全国15位となっている。 平成24年における県内の農業産出額の上位品目は、豚、生乳、米、 きゅうり、鶏卵、キャベツ、こんにゃくいも、肉用牛、ほうれんそ う、トマトの順で、全国でも上位にある野菜と畜産物で農業産出額 の全体の約8割を占めている。 また、県内の農業産出額を、平成 2 年(2,955 億円)と 24 年(2,220 億円)の 22 年間で比較すると 75%に減少している。 一方、全国値の農家所得でみると、平成 2 年(6,282 千円)と 24 年(2,900 千円)の比較でみると 46%に減少している。 農 業産出 額の 推移 平成2年 431 1,092 平成7年 449 1,066 平成12年 310 平成17年 266 1,131 909 1,012 860 909 933 127 107 93 平成22年 162 1,045 921 99 平成23年 199 988 914 112 平成24年 221 991 890 118 耕種 園芸 畜産 8 その他 301 (2)JAの情勢 ① 組合員数 平成25年度末の総合JAの組合員総数182,074人(152,439戸)、 うち正組合員数84,654人(74,691戸)、准組合員数97,420人(77,748 戸)で、組合員総数は平成18年から増加しているが、正組合員数は 減少している。なお、平成23年度に正組合員と准組合員の員数が初 めて逆転した。 JAあたり平均組合員数でみると、組合員加入運動等により平成 5 年(11,301 人)と 25 年(12,139 人)の 20 年間で 838 人増加し、 うち正組が 1,566 人減少する一方で准組は 2,404 人増加している。 さらに、一支所支店あたりでは、支所支店の統廃合等により平成 5 年(700 人)と 25 年(1,206 人)の 20 年間で 506 人増加し、うち 正組が 114 人、准組が 392 人増加している。 県 内JA 組合 員数の推 移 平成5年度 108,145 平成15年度 61,359 98,567 平成25年度 71,663 84,654 97,420 正組合員数 准組合員数 平 均組合 員数 の推移 4,091 4,777 6,495 7,210 6,571 5,644 平成5年度 平成15年度 准組合員数 正組合員数 9 平成25年度 一 支所支 店あ たり組合 員数 平成5年度 448 平成15年度 460 平成25年度 254 334 559 643 正組合員数 准組合員数 ② 役員数 県内JAの役員数は、理事が 310 人、監事は 85 人、合計 395 人、 1JAあたりの平均役員数は 26.3 人となっている。 県 内JA 役員 数の推移 335 監事数 1,207 理事数 151 600 85 310 平成5年度 平成15年度 平成25年度 役員数を平成 5 年(1,542 人)と 25 年(395 人)の 20 年間でみ ると、1,147 人減少し、うち理事が 897 人減少、監事は 250 人減少 している。 また、一JAあたり役員数では、平成 5 年(26.1 人)と 25 年(26.3 人)の 20 年間、ほぼ同水準で推移している。 10 一 JAあ たり 平均 役員 数 平成5年度 20.5 平成15年度 5.7 25.0 平成25年度 6.3 20.7 5.7 理事数 監事数 ③ 職員数 職員数は、男性 2,506 人、女性 1,125 人、合計 3,631 人、1J Aあたり平均職員数は 242 人となっている。 また、営農指導員数は 404 人、TAC(営農経済渉外)は専任 60 人、兼任 87 人で合計 147 人となっている。 職員数を平成 5 年(5,664 人)と 25 年(3,631)の 20 年間でみる と、2,033 人減少し、うち購買部門が 1,018 人減少で最も多く、続 いて販売部門が 527 人減少していることから、経済事業の合理化に 取り組んだことがうかがえる。 一方、共済部門は 326 人増加している。 さらに、平成 25 年度のJA部門別職員構成比でみると、共済が 24%で最も多く、続いて信用 23%、購買 21%、その他 17%、販売 9%、指導 7%の順。 JA部門別職員数の推移 2,000 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 信用事業 共済事業 平成5年度 指導事業 平成15年度 11 購買事業 平成25年度 販売事業 その他 ④ 事業取扱高 主要事業の取扱高は、貯金 1 兆 4,557 億円、貸出金 2,726 億円、 長期共済保有高 4 兆 9,145 億円、販売品販売高は 1,303 億円、購買 品供給高は 725 億円となっている。 JA貯金・貸出金、貯貸率の推移 1,600,000,000 貯金残高 25.0 貸出金残高 1,400,000,000 20.0 1,200,000,000 1,000,000,000 15.0 800,000,000 10.0 600,000,000 400,000,000 5.0 200,000,000 0 0.0 平成5年度 平成15年度 平成25年度 また、平成 5 年と 25 年の 20 年間で比較すると、貯金が 115%、 貸出金が 130%とそれぞれ増加した一方、販売品販売高は 66%に減 少、購買品供給高は 51%まで半減し、うち 20 年間で生産資材が 60%、 生活物資が 39%に減少している。 JA販売品販売高・購買品供給高の推移 0 50,000,000 100,000,000 平成25年度 200,000,000 193,326,071 平成5年度 平成15年度 150,000,000 141,167,229 137,921,865 105,067,037 130,328,715 72,522,004 12 販売品販売高 購買品供給高 ⑤ 農業関連部門、営農指導事業の部門別損益 平成 25 年度のJA農業関連部門、営農指導事業の部門別損益は、 営農指導事業が全てのJAで赤字(平均△245 百万円) 、農業関連部 門では 5JAが黒字、10JAが赤字となっており、合算すると嬬恋 村を除く 14JAが赤字である。 結果として、JAは総合事業によって農家組合員の農業経営にか かわる営農経済部門のコストを補っており、収支改善が課題である。 JA農業関連部門・営農指導事業損益の状況 ▲ 400,000 ▲ 300,000 ▲ 200,000 ▲ 100,000 0 100,000 200,000 300,000 400,000 赤城たちばな 前橋市 佐波伊勢崎 たかさき はぐくみ たのふじ 甘楽富岡 碓氷安中 北群渋川 あがつま 嬬恋村 利根沼田 にったみどり 太田市 邑楽館林 農業関連部門 平均 13 営農指導事業 【参考】農業者のJAに対する期待 農業者からみてJAに最も強化して欲しい事業は、 「営農指導」 「販 売事業」「購買事業」の順に、約8割にあたる回答が営農・経済事業 に集中している。特に、営農指導で技術指導や販売支援、販売事業で 「販売力の強化」、購買事業で「価格引下げ」の要望が多い。 【農業者のJAに対するニーズ】 資料:「農業協同組合の経済事業に関する意識・意向調査」(平成 25 年 12 月 農林水産省) 【JAの販売事業が実施すべきと農業者が考えているもの(上位 10 項目)】 項目 回答率 実需者との契約栽培の推進 35.7% 新技術・新品種・新手法の開発、普及 30.1% 買取販売の実施・拡大 27.2% 出荷規格の簡素化 20.6% 実需者からのオーダーに応じた出荷規格・数量対応 17.8% 農協自らによる農畜産物の加工販売 16.9% 通販、インターネットを利用した消費者への直接販売 16.8% 環境保全型農業や有機農業の推進 14.7% 出荷卸売市場の選別 12.8% 地域団体商標の登録等によるブランド管理 11.5% 資料:「農業協同組合の経済事業に関する意識・意向調査」(平成 25 年 12 月 農林水産省) 14 3.対応策・JAグループ群馬の自己改革骨子 (1)改革の目的 JAグループ群馬は「食と農を基軸として地域に根ざした協同組 合」として、「持続可能な農業」と「豊かで暮らしやすい地域社会」 の実現を目指し、総合事業を通して農業者の所得増大、農業生産の 拡大、地域の活性化のための自己改革に取り組む。 とりわけ今回の改革では、農業生産の減少や農業従事者の高齢化 など厳しい農業情勢を踏まえ、農業所得の増大や担い手育成などを 実現するためJAの営農経済事業を強化することに重点を置いた 改革に取り組む。 また、組合員や地域住民の要望を基に、JAの強みである総合力 を発揮し専門性の高い事業運営の確立をめざす。 (2)農業所得増大と農業生産拡大のための改革 ① 販売力強化のための取り組み ア.市場出荷での有利販売を実現するために、JAグループ群馬 の農産物販売戦略を策定し、共同計算品目を拡大するとともに、 県内JAの連携によるリレー出荷や複数品目をまとめたセット での出荷を推進する。 イ.担い手の経営安定のため、契約出荷を拡大する。 ウ.中食・外食を中心とした惣菜・カット向けの加工・業務用需 要の拡大に伴い、生産・流通・加工・販売に係るJAグループ 独自のバリューチェーンの構築を図る。 エ.JA直売所の端境期等における品揃え対策として、直売所間 の連携取引を推進する。 オ.インターネット通販として「JAタウン」の取り扱いを拡大 する。 ② 生産資材供給対策 ア.他業態に負けない生産資材価格の実現 15 取引条件に応じた弾力的な価格設定や大口奨励等を強化する。 担い手経営体に対する特別支援対策を強化する。 定期的な店頭価格調査を行い、奨励等を価格算入することに より、生産資材価格の引き下げを実現する。 イ.広域物流拠点・配送体制の整備 県下JAにおける物流体制の合理化を加速し、JA域を超え た県域物流拠点ネットワークを確立することにより、物流コス トの低減をはかるとともに、生産資材価格の引き下げを実現す る。更に、県域を越えた広域物流拠点の設置に取り組み、物流 コスト低減の拡大を図る。 ウ.低コスト生産技術等によるトータルでの生産コスト引下げ 土壌診断に基づく適正施肥及び施肥コスト抑制の推進や農作 業省力化技術の普及、農業施設や農業機械のリース事業の拡大 等により、農業経営全体としての生産コスト引き下げによる農 家手取りの増大対策に取り組む。 ③ 営農指導の充実・強化 農家組合員からは、営農指導の充実・強化に関する要望が最も 多い。 JAグループ群馬は、営農指導の充実・強化をはかるため、次の ことに取り組む。 ア.県域営農センター機能の充実・強化 共通部署として、平成 19 年より中央会・群馬県・信連・全農 による担い手支援センターを設置し、水田農業の担い手育成、 法人化等を取り組むとともに、平成 20 年より中央会と全農によ る営農総合支援センターを設置し、JAの野菜生産の拡大をは じめ、食の安心・安全対策や出向く営農経済事業渉外担当者の 育成などに取り組んでいる。 今回の改革では、担い手支援センターと営農総合支援センタ ーの業務内容や体制を見直し、全農の販売事業と直結した名実 ともにJAグループ群馬営農販売事業の司令塔としての役割を 16 発揮する県域営農センター機能を再構築する。 そのため、県との連携を強化するとともに、JAからの出向 等も視野に入れた体制整備を行う。また、農産物の全農への共 同出荷による有利販売実現のため、JAグループ群馬農産物販 売戦略を立案し、その実践に向けてJA毎の販売戦略の策定、 生産農家に対する生産規模拡大指導、生産資材の普及推進等を 支援する機能を充実・強化する。 また、県域営農センターは、専門的な担当者を養成するため の研修会や会議を通して担当者の資質向上や情報提供を行う。 イ.出向く営農渉外体制の充実強化 農業所得増大、農業生産拡大を実現するには、消費者ニーズ を優先した農産物生産が求められる。このため売れるモノづく りのために市場調査を強化するなどJAの販売事業拡大に軸足 を置いた営農指導事業を再構築する。 JAは、営農指導員とTACの業務内容を再編・充実した上 で、出向く営農指導体制を確立する。専任営農渉外担当者とし て、G-TAC(仮称)を専門職として位置づけ、販売高 10 億 円につき1人、県下全体で 150 名の専任体制を構築する。 業務内容は、県域営農センターや県農業指導センターと連携 し、JAの販売戦略にもとづく生産指導や生産資材の供給拡大、 担い手経営体(農業生産法人等を含む)、新規就農者に対する農 地の利用集積や担い手金融リーダーと連携した農業金融、共済 事業、会計指導など総合的な農業経営管理について支援する。 ウ.JA営農センターの整備充実 農家組合員の営農相談の拠点として、JA営農センターの整 備・充実を図る。 エ.JAグループ群馬の総合力を発揮した担い手支援の充実強化 中央会・各連合会等は、関係機関や関連団体と連携し、新規 就農までの経営計画の策定、農業技術指導、生産資材の調達、 生産物の販売、農業金融・共済加入など、JAグループの総合 力を発揮した総合的な農業経営に対する支援を行う。 17 また、担い手経営体の労働力確保対策に取り組む。 さらに、全国連と連携し、農業所得増大・地域活性化応援プ ログラム等を活用した担い手への総合的な支援を実施する。 オ.農地の有効活用・担い手への集積対策 担い手経営体の農地集積を支援するために、農地中間管理機 構の業務受託や農地利用集積円滑化事業に取り組む。 カ.営農アドバイザー制度の導入 担い手の農業技術の向上や農業経営の改善を支援するために 農業経営士などを活用した営農アドバイザー制度を導入する。 ④ JA出資型農業生産法人の積極的展開 農地の有効活用、新規就農者の技能取得、新技術・新規作物等の 普及拡大や地域の雇用対策、担い手支援のための作業受託等につい て、地域の実情に応じた農業者の営農支援としてのJA出資型農業 生産法人を設立する。 また、地域のおけるモデル的な農業生産法人として独立採算での 黒字経営を目指す。 ⑤ 営農販売施設の効率的な運用 農畜産物の消費・販売・流通の変化に対応し営農販売施設の集約 や効率運営をすすめるために、複数のJAやJAと連合会による施 設の共同運営・共同利用を促進する。 (3)信用・共済事業の強化対策 ① 信用事業運営体制の整備と担い手経営体への金融サービス等の 強化 JAグループの信用事業は、平成 13 年の系統信用事業再編強化 法の改正以降、農林中央金庫と信連、JAが一体となってJAバ ンクシステムの構築を進めてきた。その結果、JAバンクは我が 国でも最も安心安全度の高い金融機関の一つとして内外より評価 されるようになってきた。 今回の改革では、この取り組みをさらに推し進め、組合員や地 18 域住民から信頼される金融機関として事業の専門性強化に取り組 むとともに、JA・中央会・各連等と連携し、信用事業の面から 担い手経営体や新規就農応援、人材育成支援等を強化し、農業と 地域・利用者をつなぐ金融サービス提供を行う。 また、そのために財務基盤の強化やコンプライアンス態勢の充 実、不祥事防止対策の徹底などJAバンク自主ルールの遵守に取 り組む。 さらに、信用事業における店舗機能、運営体制の整理、事務の 集約等の検討を行い、JAの信用事業にかかるリスク・負担を軽 減する等の環境整備を行う。 ② 共済事業の専門性の強化と事務負担の軽減 共済事業は平成 12 年の全国連と県連合会の統合以来、LA体制 の強化や共済金支払い審査体制の整備等を進め共済事業の高度 化・専門化を推し進めてきた。その結果、JAの共済事業は他の 保険会社に負けない事業規模と共済金支払いサービスの充実を実 現してきた。 今回の改革では、この取り組みをさらに推し進め、組合員や地 域住民から頼られる高度な共済事業の提供を実現する。 また、共済事業においては、仕組みの簡素化や電算システムの 再構築などにより事務負担を軽減する。 (4)その他生活関連事業の強化対策 ① ライフラインとしての生活関連事業の取り組み 生活関連事業のうち、Aコープ及びガソリンスタンド等の拠点 型事業については、経済事業改革の一環として収支改善や施設の 統廃合に取り組んできた。その結果、本県においては、全農への 事業移管や全農との一体化経営がすすみ、現在、県内に残る店舗 数はAコープ 14 店舗、ガソリンスタンド 46 箇所となっている。 近年の高齢人口増加や過疎の加速化により、これらの事業サー ビスが地域住民に対する重要なライフラインであるとの認識が高 まっている。JAグループは、これら拠点型事業の収支均衡をは かりつつ地域住民へのサービスを継続して提供する。 なお、ガス事業に関しては、規制緩和が進み同業他社との競争 19 激化が進む中、系統ガス事業の利用促進を図るための新たな事業 体制を検討する。 また、地域に根差した葬祭事業は、組合員はもとより地域住民 に信頼される事業として伸長しているので、引き続き全農と連携 した取り組みを強化する。 ② 高齢者福祉関連事業等の取組み 生活関連事業のうち介護・高齢者福祉事業は、高齢社会の進展 に伴い、事業利用者に喜ばれる事業として発展してきた。 しかし、これらの事業についても、昨今、競合事業者の進出も 多く、また専門的な対応が求められる事業でもある。 今後、厚生連と連携し、さらなる職員教育の徹底や事業の専門 的な対応を強化する。 ③ 生活事業の子会社化について 生活関連事業の子会社化については、経済事業改革や員外利用 規制への対応の一環として、一部のJAで取り組まれてきた。 今後は、生活関連事業の専門性を強化する観点から、子会社の 設立や設立後の管理について検討する。 (5)事業改革を行うための体制整備 ① 事業運営方式の改革 JAは幅広い事業を行い利用者に総合的なサービスを提供する という強みがある反面、個々の事業を遂行する上で専門性に欠ける ことが課題とされている。 今回の改革では、JAの総合力を維持しつつそれぞれの事業の 専門性を高めることが求められており、そのために類似の事業をグ ループ化し、そのグループごとに経営管理の高度化や人事管理面で の専門化を追求する必要がある。 事業グループとしては、信用事業と共済事業を金融事業本部とし、 それ以外の事業を経済事業本部とする2事業本部制や、さらに営農 関連事業分野を独立させ金融・営農・生活事業の3つの事業本部に 分ける方法が考えられる。 なお、事業運営の高度化・専門化を追求する一方で、総合事業を 20 兼営することによって事業全体に相乗効果が得られることや固定 資産投資や財務管理、管理費支出などJA全体の経営管理を総合的 に行うことによって総合JAとしての強みが発揮できることを明 確に認識すべきである。 ② ガバナンスの改革 ア.常勤役員の執行体制 平成 13 年の農協法改正で、業務執行体制の強化策として信用 事業を行う組合については信用事業専任理事1名を含めた常勤 理事3名体制が義務化された。 JAの業務量の増大や業務内容の高度化・複雑化に対応した専 門的業務執行体制として、組合長―専務―常務の3層を基本とす る常勤理事体制を確立し、事業毎に業務分担を明らかにするとと もに、日常業務の多くを専務や担当常務に任せ、組合長はそれら の常勤役員を指揮・監督する常勤役員体制を構築する必要がある。 イ.営農経済事業にかかる業務執行体制の強化 営農経済事業については、営農経済担当常勤理事を明確にする とともに営農経済委員会等を設置し、営農経済関係の事業運営に ついて専門的な検討を行い、迅速な意思決定を行うことが可能な 業務執行体制を整備する。 ウ.担い手・女性の意思反映 農業経営体の規模拡大や集約化により少数となった担い手や 多様化する組合員・女性のニーズを的確に把握し、事業運営に反 映させるため、担い手・女性の意思を反映する業務執行体制を構 築する。 具体的には、理事等に「青年部等の担い手枠」や「女性枠」を 設定・拡大する。 ③ 事業グループ別人事管理制度の導入推進 本県では、全てのJAで能力主義人事管理制度(職能資格制度、 人事考課制度、職能給制度、別テーブル退職金制度)を導入し、職 場の活性化に取り組んでいる。 21 しかし、JAの事業が多岐にわたるため専門的な人材養成が、な かなか進まないことが大きな課題となっている。 今回の改革では、職員の専門性の向上をはかるために、事業本部 ごとに人事異動や職員教育の在り方を決める人事管理制度を導入 する。 ④ 専門性強化のために職員教育の徹底 JA事業を取り巻く経営環境は、他の競合企業との競争が激化し ており、それらの競合企業に劣後しない専門的で質の高いサービス が求められている。 そのため、職員の人事管理においては専門性を高める人事異動や 職員教育の徹底が重要であり、営農指導員、TACへの職員教育や 信用事業の「JAバンク群馬中期人材開発計画」、共済事業の「普 及研修計画」を着実に実践する。 また、専門性を高めるためJA間およびJAと連合会との人事交 流制度の仕組みづくりに取り組む。 (6)JA合併の推進 ① 合併の目的 JAにとって合併目的は、急激な環境変化に対応できるリスク 耐久力の確保、内部牽制の効いた自己責任による経営管理体制の構 築、組合員等の期待に応える高度で効率的な事業機能の具備である。 JAグループ群馬は、JAをめぐる情勢を踏まえ、改めてJAグ ループ群馬の合併構想について検討する。 ② 合併の考え方 JAの総合性と専門性を両立し、組合員の高度な要望に応えるた めには、総合事業を前提に専門性を高めるための体制を確立するた め、地域特性、組合員数、事業量、収益性、財務基盤、職員数など の指標等にもとづき総合的に検討する。 例えば、営農経済事業を強化するうえでの職員数の指標として、 JA全体の職員数で 500 人以上、うち営農経済事業 200 人、うち専 任の営農渉外担当職員 10 名以上の配置などが考えられる。 また、販売品販売高という事業量での指標としては、法人化や経 22 営管理支援が可能なJAの販売品販売高の規模は少なくとも 100 億 円以上が考えられる。 県内総合JA数の推移 95 93 93 75 59 45 45 45 41 41 39 34 30 30 24 23 23 23 22 22 20 23 平26 平25 平24 平23 平22 平21 平20 平19 平18 平17 平16 平15 平14 平13 平12 平11 平10 平9 平8 平7 平6 平5 平4 平3 平2 平1 16 15 15 15 15 以上
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