(株) 市場経済研究所 2015 年9月7日(月) Market Economy Research Institute Ltd. 週刊レポート マーケットα <第 124 号> (株)市場経済研究所 主幹 岡本匡房 真偽不明、中国の金保有 「一体、中国はどの程度の金を保有しているのだろうか」―こんな疑問が感じられる。世 界の株式は中国経済の先行き不安から大きく揺れ動いているが、金も中国の情報開示がは っきりしないことが大きな影を落としている。 中国の金保有は 1,658 トン? 7月7日、中国人民銀行は「外貨準備として保有している金は 1,658 トン」と発表、世 界を驚愕させた。中国人民銀行は 2009 年に「過去 6 年で 454 トン増え、1,054 トンになっ た」と発表している。これ以降、6 年間で 604 トン、年平均 100 トン強しか増えていないこ とになる。 中国は世界最大の金生産国であり、金の消費量もインドと並んで世界 1、2 を争っている。 それだけに、「2009 年以降も金の保有は急増している」と世界は見ていた。ブルームバー グでは 4 月に「中国人民銀行の保有量は 3,510 トン」という数字を出していた。それだけ に 1,658 トンという数字は一般の予想より 2,000 トン近くも少ない。 これをみて、金の国際相場は下落、さらに、原油、銅など国際商品の下落にも影響され、 5 年振りの安値に落ち込み、一時、1 トロイオンス 1,100 ドルを割り込んだ。同行では8月 14 日に「19 トン増やし 1,677 トンにした」と発表したが、それでも一般の予想とは大きく 乖離している。 急増後、急減した中国の金需要 金の宣伝普及期間WGC(ワールドゴールドカウンシル)によると、中国の金需要は 2010 年以降、毎年 500 トンを上回っている。2012 年にはインドを抜いて世界一になり、2013 年には 1,300 トン以上に達した。2014 年は急減したが、それでも 800 トンを上回っている (グラフ参照)。 中国人民銀行の保有量が発表通りだとすると、年間数百トン、全体では数千トンの金を 政府ではなく、民間が保有したことになる。もちろん、この間、中国は年率 7%以上の経 済成長が続き、個人、特に共産党幹部や企業の経営者に巨額の富を蓄えた人が数多く生ま れているので、彼らが金を買い込んだことも十分に考えられる。だが、「中国人民銀行の 発表はウソ」と見る向きも多い。 今年も中国需要は減少も もし、全体で推定数千トンの金が民間に保有されているとなると、中国経済の減速と経 済的な混乱が続いているだけに、それが市場に出る可能性がまったくないわけではない。 事実、上海黄金交易所では毎週のように数十トンの金の現物が引き出されている。それ 1 がどこに行ったかは分からないが。 一方、6 月の中国人民銀行の買い増しが 19 トンとすると年率では 223 トンでしかない。 もし、民間の買い付けが急減すると、昨年 800 トン以上だった中国の買いは数百トン減る 公算もある。 中国政府の発表は当てにならないことが多いので、即断は出来ないが、中国の経済混乱 で「金に資金が逃避する」か「金買いが急減するか」、その答えはもうすぐ出そうだ。 中国とインドの金需要の推移(WGC調べ) 《執筆者紹介》 岡 本 匡 房(おかもと まさふさ) 市 場経済 研究所 取締 役主幹 。 1964 年慶 応義 塾大学 経済学 部 卒 。同 年日 本 経済 新聞 社入 社 。編集 局 整理 部 、商品 部 記者 、編 集局 商品 部次 長 、産業 第 三部 次長 などを経 て、市場 経済 研究所 主幹 。<主 な著書 >「国際 商品 市場 の手 引き」(共書 、日本 経済新 聞社 刊 )、「ゴールドハンドブック」(共 書 、紀伊 国 屋書 店 刊)、「商 品 先物 市 場 と日 本経 済 」(ゼネックス刊 )、 「商品ファンドと先物市場」(共書、経済法令研究会刊) 【免責事項】 「週刊レポート マーケットα」(以下、本情報と略記)は、株式会社市場経済研究所が提供す る一定の条件の下で執筆者が作成したレポートです。 利用者は、本情報を 利用者ご自身でのみご覧いただくものとし、ご自身の判断と責任においてご 利 用 く ださ い 。本 情 報 は一定 の 情 報を 提 供す る も のに過 ぎ ず 、特 定 の銘 柄 、 金融商 品 、商 品 価 格 な どについての投資・購買に関する助言や勧誘を目的としたものではありません。また、市場経済研 究所は、投資助言・代理業を一切行っておりません。 利用者は、本情報に関して、第三者への提供や再配信、再配布、独自に加工すること、複写もし くは加工・印刷したものを第三者に譲渡または使用させることはできません。また、本情報のウェ ブページへのリンクは禁止します。その他 、市場経済研究所が適当でないと判断する行為をした場 合には、利用を停止させて頂くことがあります。 本情報の利用にあたり、利用者が故意または過失により、市場経済研究所および当該執筆者に対 して、何らかの損害を与えた場合には、市場経済研究所等は損害賠償請求をすることがあります。 2
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