平成 27 年度 有機化学 I 小テスト 第 14 回 【問題】生体内で利用される

平成 27 年度 有機化学 I 小テスト 第 14 回
【問題】生体内で利用されるアミノ酸のグリシンとアラニンのうち不斉炭素をもつものは
どちらか。また、考えうるエナンチオマーを正確に書き、不斉炭素を R,S 表記で示せ。
H
H
NH2
H3C
H
CO2H
NH2
CO2H
立体化学の問題である。不得意とする人が出やすい部分なのでしっかり復習してください。
まず、異性体の定義から。異性体とは同じ分子式(同じ分子量)で表される構造で異なる
ものを指します。この異性体の中にはまず、構造異性体があります。例えば、1-プロパノ
ールとイソプロパノールや、1-ヘキセンやシクロヘキサンはそれぞれ同じ分子式ですが、
全く異なる化合物です。沸点や融点などの物性も全く違います。異性体には構造異性体以
外に立体異性体があります。立体異性体はさらに2つに分類されて一つは幾何異性体です。
(授業の黒板の字が間違ってました。すいません。)幾何異性体はすでに学んだ通り、シ
ス-トランス異性体や E/Z 異性体が入ります。ここは復習しておいてください。さて、今回
のメインは光学異性体(鏡像異性体、エナンチオマーともいう。)です!! -
1
OH
-
C3H8O
C6H12
OH
-
平成 27 年度 有機化学 I 小テスト 第 14 回
2
H
CH3
H3C
CH3
H3C
H
H
H
H3C
)
Cl
H
Cl
CH3
H3C
CH3
(
-
(
-
H
さて、光学異性体がどのような場合に存在しうるのか考えてみよう。光学異性体とは鏡像
異性体ということからもわかるように、まさに鏡に写した構造を持つ化合物である。例え
ば、ある炭素にそれぞれ異なる官能基 A〜D がついたと仮定する。この分子を鏡に映すと図
のように A と A,D と D が向かい合うような一見同じに見える構造が描ける。ではこれは
同じ化合物だろうか?右側の構造をひっくり返して B と C を重ねるような構造に書き直し
てみる。比べると、A と D がどうしても重なり合わないのがわかるだろうか?つまり、こ
の2つの分子は我々の右手と左手の関係にあり、親指同士を重ねたとしても小指は絶対に
重ならない。このような分子を光学異性体(もしくは鏡像異性体、エナンチオマーという)。
また、このエナンチオマーを持つ炭素を不斉中心(もしくは不斉炭素、キラル中心、キラ
ル炭素)という(いずれの呼び方も覚えてください。)。不斉中心には米印のようなマー
クをつけるのが通例である。 C
B
C
C
D
A
D
A
B
B
A
D
D
A
C
∗
B
C
B
D
A
D
C
A
C
B
A
D
D
では、どのような場合にエナンチオマーを持つのか今回の問題を例に考えて見る。まず、
グリシンにエナンチオマーはあるだろうか?まず、グリシンの光学異性体を書いてみよう。
右側の分子をひっくり返してカルボン酸を合わせてみると一見違う化合物に見えます
が。。。。炭素とカルボン酸の結合を軸に回転してみると。。。赤と青の H が入れ替わっ
た全く同じ分子になります。色は違いますが、当然同じ H であることに変わりはないわけ
で、この描かれた2つの分子は全く同じものである。したがって、グリシンにエナンチオ
マーはない!重要なことは、不斉炭素の条件は一つの炭素に4つ異なる官能基(置換基)
が付いていることである(一部例外を除く;そのうち説明します)。 平成 27 年度 有機化学 I 小テスト 第 14 回
H
HO2C
H
NH2
H
H
H
H2N
CO2H
NH2
H
HO2C
H
HO2C
H
HO2C
H
NH2
H
H
NH2
HO2C
H
NH2
さて、ではアラニンはどうであろうか?鏡に写した2つの構造を書いて片方をひっくり返
してカルボン酸とメチル基を合わせると。。。重ならない!つまりこの2つの関係はエナ
ンチオマーである。もちろん、炭素についた4つの官能基はすべて異なっていることがわ
かる。(メチル、アミン、カルボン酸、水素) CH3
H
HO2C
NH2
H
H2N
CH3
NH2
HO2C
H
CH3
CO2H
CH3
H
HO2C
NH2
CH3
NH2
HO2C
H
さて、これまでエナンチオマーがあるかどうか見分ける方法について述べてきた。当然で
はあるが、化学の世界ではそれぞれのエナンチオマーを命名しなければならない。この命
名にはルールがある。なお、それぞれのエナンチオマーは R 体、S 体で表され、RS 配置と
いう。では、RS 配置の決め方について学んでいこう。アラニンの不斉炭素に付いたそれぞ
れの官能基に優先順位をつける。これは幾何異性体の時と同じで原子番号の大きい元素が
優位となる。それでは、下の図の青色の番号1から比べていく。ピンクの H は原子番号1、
黄色の炭素は原子番号12、緑のカルボン酸の1は炭素で12、水色のアミンは原子番号
14ということでこの中で最も優先順位が高いのはアミンである。また、もっとも優先順
平成 27 年度 有機化学 I 小テスト 第 14 回
位が低いのは水素である。それでは、メチル基とカルボン酸はどうであろうか?青番号1
の段階では同等であり、その先を見る必要がある。青番号2に着目して考えるとメチルは
水素が3つであるのに対して、カルボン酸は酸素原子が2つ付いている。(なお、C=O 結
合は C に対して O が2つ付いていると認識して考える。)したがって、カルボン酸の方が
優先順位が高い。この結果、優先順位は①アミノ基②カルボン酸③メチル基④水素となる。 次に、もっとも優先順位が低いものを紙面奥側に配置する。そして、①〜③が時計回り(右
回り)か反時計回り(左回り)かを判断する。今回の場合、時計回りであり、時計回りの
場合を R 配置とする。なお、R の書き順を考えると曲線部分が右回りであり一致するので
覚えましょう。化合物名としては(R)—アラニンという。 2
H
2H
H2
C1
1
H
C
2 1
1 H2
HO C
N
O2
H
2
H
H
H
C
H
C
HO C
O
H
N H
H
H
H
C
H
C
HO C
O
N H
H
R
では、逆のエナンチオマーについても考える。優先樹には先ほどと同じである。先ほどと
同様に H を奥にして①〜③の順番を見ると先ほどとは逆の反時計回り(左回り)であるこ
とがわかる。この場合を S 配置という。なお、S の曲線と同じ回り方をするので覚えやす
い。化合物名としては(S)—アラニンという。 H
H
H N
H
H
H
C
H
H
C
H N
H
C OH
O
H
H
C
H
C
H
C OH
O
H
H
C
C
H N
H
C OH
O
S
なお、優先順位を付ける際、二重結合は炭素が2つ付いていると考え、三重結合は炭素が
3つ付いていると考える。 1 2
C C
2
1C
C
C
2
1 2
C C
2
1C
C
C
C 2
2
学籍番号 名前