Kominami のコピー

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ICAのSegmental Concept
Segmental Concept of the Internal Carotid Artery
日本医科大学 千葉北総病院 脳神経外科
小南修史
Department of Neurosurgery, Chiba- Hokuso Hospital, Nippon Medical School
Shushi KOMINAMI, M.D.
内頸動脈(ICA)は解剖学的には総頸動脈が頸部で内・外頸動脈に分かれるところから始まり、頸動脈間を
通って頭蓋内に入り、前・中大脳動脈に分枝するまでの左右1対の動脈であるが、元々それぞれ1本の血管
として発生したわけではない。脳外科の教科書ではICAを末梢からC1・C2・C3・・・と分けて記載してい
るが、これはMorphologicalな分け方であり、病変(特に動脈瘤)の部位を表すのに手術アプローチの観点
からは便利ではあるが、Functional Anatomyには少し使いにくい。Pierre Lasjauniasらは発生学的な観
点からICAを7つのsegmentに分けた。このembryonic segmentによる分け方はICAの部分欠損/閉塞 に
おける側副血行路をうまく説明でき、Functional Vascular Anatomy を理解する上で便利なconcept であ
るので簡単に紹介する。
Aortic sacはventral aortaとなり、ここからから6対のaortic archがdorsal aorta につながり、I∼VIの番
号がつけられる。これらのaortic archは順次形成されて消退するが、同時に6対が存在することはない。
Figure 1
Kominami
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Figure1は胎生35日頃の図で、Figure 2はこれをより模式的に表した図であるが、arch Iおよびarch IIはす
でに消退している。Arch I はmandibular arteryとなり、arch IIはhyoid arteryに変化している。Arch
IIIはのちに形成される内頸動脈の起始部となり、arch IVは大動脈弓となる。この時期にはdorsal aorta は
左右2本あって、これらがのちにfusionして大動脈となる。 Longitudinal neural axis も一対あり、これ
らは頭端ではdorsal aortaと吻合し、trigeminal arteryと hypoglossal artery からの血液供給を受けてい
る。 Longitudinal neural axis はのちに吻合してbasilar arteryとなり、trigeminal arteryと hypoglossal
artery はやがて消退してbasilar arteryへの血液供給は vertebral arteryとposterior communicating
artery が取って代わることになるが、Longitudinal neural axisからposterior circulation についてはいず
れ別の機会で述べる。
Figure 2
Figure 3
さて、ventral aorta、aortic archとdorsal aortaにもどるが、内頸動脈系、外頸動脈系はここから複雑な
血管の発生、消退を経て構成される。Figure 3は一側についてその変化を表したものである。この変化の課
Kominami
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程を言葉で表現するのは難しいので、Figure 4に図で示す。
Figure 4
内頸動脈の発生の課程からこの動脈が元々一つの血管ではなく、異なる血管であったものがつながって1本
になったことがわかる。Figure 5は内頸動脈を構成することになるそれぞれの血管(あるいはその
segment)が成人の内頸動脈のどの部分に当たるかを示したものである。これがICAの embryonic
segment で、分枝と分枝の間が一つのsegmentとなる。
このembryonic segmentを理解するとICAの部分欠損やそのcollateralを理解するのに役立つ。
Figure 5
Kominami
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症例を呈示する。
Figure 6はsegment 4の部分形成不全である。Dorsal aortaのarch I と primitive maxillary artery との
間の形成異常と考えられる。
Figure 6
Figure 7はsegment 6のagenesisである。Dorsal ophthalmic artery と外頸動脈系から ventral ophthalmic arteryを介して遠位の内頸動脈系に血流が供給されている。
Figure 7
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Figure 8
Figure 8は外頸動脈の枝が内頸動脈から分枝しているように見えるためnon bifurcating carotid artery と
も呼ばれるが、本態はsegment 1,2のagenesisである。Figure 8に示すような発生をしたものと考えられ
る。
このようにICAをembryonic segmentで分けて理解することはfunctional vascular anatomy を理解する
上で便利である。
Reference
Lasjaunias P, Ter Brugge K, Berenstein A. Surgical Neuroangiography second edition Vol 1,
Chapter 1.1.7 Segmental Vulnerability in Cerebral Arteries: PP10-24; Splinger-Verlag Berlin
Heiderberg 2006
Kominami