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1) Original Article
2) Transient middle cerebral artery occlusion model in the Macaca fuscata using a novel intravascular technique
3)
Okuma Yu, M.D.,
1,2,3
Sugiu Kenji, M.D.,
1
Liu Keyue, M.D.,
3
Nishino Shigeki, M.D.,
Hishikawa Tomohito, M.D.,
Hirotsune Nobuyuki, M.D.,
2
Nishibori Masahiro, M.D., and
3
1
Date Isao, M.D.
2
4) ①Department of Neurological Surgery, Hiroshima City Hiroshima Citizens Hospital, Hiroshima, Japan.
②Department of Neurological Surgery, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and
Pharmaceutical Sciences, Okayama, Japan.
③Department of Pharmacology, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and
Pharmaceutical Sciences, Okayama, Japan.
5) Corresponding author: Yu Okuma, MD, Ph.D.
Department of Neurological Surgery, Hiroshima City Hiroshima Citizens Hospital, Hiroshima, Japan
7-33 Moto-machi, Naka-ku, Hiroshima, Hiroshima, Japan 730-8518
Tel:, E-mail: [email protected]
6) middle cerebral artery occlusion model, Macaca fuscata, Bovine arch, Azygos anterior cerebral artery
7) All authors pledge that this manuscript does not contain previously published material and is not under
consideration for publication elsewhere.
1
2
【和文要旨】
【目的】これまでサルを用いての一過性脳梗塞モデルは、侵襲性
が高い上、脳梗塞領域を一定化するのが困難であった。そこで、
今回我々はヒトにおける脳神経血管内治療のテクニックの応用
を試みた。【方法】ニホンザルを用い、全身麻酔下に右大腿動脈
に 5Fr シ ー ス を 留 置 、 5Fr カ テ ー テ ル を Bovine arch を 経 由 し 右
Internal Carotid Artery(ICA)に 、 同 軸 上 に 4Fr カ テ ー テ ル を
Posterior Communicating Artery (Pcom A)分 岐 部 以 遠 に 留 置 し 、
triple co-axial に 、 遠 位 塞 栓 防 止 用 に 従 来 用 い る balloon 付 カ
テ ー テ ル を 中 大 脳 動 脈 M1 起 始 部 に 誘 導 し た 。 ヘ パ リ ン 化 に て 血
栓 予 防 し た 上 で 、b a l l o o n に て 2 時 間 閉 塞 し た 上 で 、解 除 し た 後 、
4 8 時 間 後 に 神 経 学 的 評 価 と 組 織 評 価 を 行 っ た 。【 結 果 】 術 後 左 片
麻 痺 を 認 め る と 共 に 、 閉 塞 血 管 領 域 の border zone に あ た る 尾 状
核頭部周辺に脳虚血病巣が生じていることが病理組織学的に確
認された。【結論】血管内アプローチを用いた一過性脳梗塞モデ
ルは、今後低侵襲でかつ、再現性の高いモデルとなりうる。
【緒言】
虚血性脳損傷の研究において、より人間に近い霊長類であるサル
で 一 過 性 脳 梗 塞 モ デ ル を 作 成 す る 際 、従 来 は t r a n s o r b i t a l M i d d l e
Cerebral Artery occlusion (MCAo) model や transient global
ischemic model と い っ た モ デ ル が 使 用 さ れ て き た 。 こ れ ら は 、 侵
襲性が高い上、閉塞後再開通をさせても、血栓形成に伴う副次的
な 梗 塞 が 生 じ 、脳 梗 塞 領 域 の 一 定 化 が 困 難 と さ れ て き た 。そ こ で 、
本 稿 で は 我 々 は 血 管 内 ア プ ロ ー チ で 遠 位 塞 栓 防 止 用 balloon 付 カ
テ ー テ ル を 用 い 、 よ り 低 侵 襲 に transient MCAo model を サ ル で
作成できる方法について、サル特有の解剖学的特徴も交えて報告
する。
【対象と方法】
本実験は、当施設の動物実験委員会のガイドラインに従って施行
された。プロトコールは動物実験倫理委員会によって承認された。
( # OKU- 2011166)
1 、 体 重 5-7kg の オ ス の ニ ホ ン ザ ル を 用 い た 。 こ の 際 、 こ れ 以 上
に小型だと、下記鼠径部の穿刺に苦慮する。
2 、 ケ タ ラ ー ル 10mg/kg を im 投 与 し 、 睡 眠 導 入 す る 。 そ の 後 、
ア ト ロ ピ ン 0.2mg/kg/iv、 ペ ン タ ゾ ジ ン 1mg/kg/iv 投 与 し 、 サ ル
を 手 術 台 に 仰 臥 位 で 固 定 し 、 酸 素 49%、 笑 気 50%、 イ ソ フ ル レ ン
1%に て 、 吸 入 麻 酔 で 維 持 し 、 手 術 を 行 う 。
3 、 右 鼡 径 部 の 剃 毛 後 、 2cm の 皮 膚 切 開 を 加 え 、 大 腿 動 脈 を 露 出
さ せ た 後 、大 腿 動 脈 へ カ ニ ュ レ ー シ ョ ン し 、ヒ ト 血 管 造 影 用 の 5F
シースを挿入する。
4 、移 動 型 外 科 用 d i g i t a l s u b t r a c t i o n a n g i o g r a p h y( D S A )装 置 ;
BV-29 を 用 い て 、 腹 部 大 動 脈 か ら 大 動 脈 弓 を 経 由 し 、 サ ル 特 有 の
B o v i n e a r c h( F i g u r e 1 )か ら 分 岐 す る 右 I C A へ 5 F r E n v o y( C o d m a n ,
R a y n h a m , M A , U S A )( F i g u r e 2 ) を 、 カ テ ー テ ル の 安 定 性 を 高 め
る た め に 同 軸 上 に 4Fr Optiflash( Terumo, Tokyo, Japan) を 、
Pcom A 分 岐 部 よ り 遠 位 部 ( Figure 3) に 留 置 す る 。
5 、同 部 よ り 冠 動 脈 用 P e r c u s u r g e ( M e d t r o n i c , M i n n e a p o l i s , M N ,
USA) を 、 MCA M1 ま で 進 め た 上 で 、 バ ル ー ン を 3mm に 拡 張 し 、 2
時 間 遮 断 す る 。遮 断 中 、ヘ パ リ ン に よ り Activated Clotting Time
を 250 秒 以 上 に 延 長 さ せ 、 血 栓 形 成 の 予 防 を 行 う 。
6、血流再開の時間がきたら、バルーンを収縮させ、血流の再開
を確認する。カテーテルを抜去し、用手圧迫した上で皮膚を縫合
し 、 体 温 ( 37℃ ) を 保 っ て 覚 醒 さ せ る 。
7 、 再 灌 流 後 48 時 間 後 、 ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル 100mg/kg の 静 注 で
安楽死させ、脳を取り出し、病理組織学的評価を行う。
【結果】
術後、十分な覚醒が得られ、安楽死させるまでは神経学的所見と
して左片麻痺を確認できた。
剖 検 に お い て 、血 管 評 価 で は 、 大 動 脈 弓 部 に B o v i n e a r c h( F i g u r e
1 )を 認 め た 。ま た 、前 方 循 環( I C A - M C A - A n t e r i o r C e r e b r a l A r t e r y
(ACA) ) に 比 し 、 後 方 循 環 ( Vertebral
Artery(VA)-Basilar
artery(BA)-Posterior Cerebral Artery (PCA)-Pcom A ) の 血 管
の 発 達 が 目 立 ち 、 ACA は Azygos ACA の 形 態 を と っ て い た ( Figure
4 )。 脳 の 組 織 学 的 評 価 と し て は 、 マ ク ロ で は h e a d o f t h e c a u d a t e
nucleus に 梗 塞 所 見 ( Figure 5) を 認 め た 。 ミ ク ロ で の 組 織 を 評
価 す る と 右 MCA の 支 配 領 域 の 脳 組 織 で は pyknotic cell を 認 め
( F i g u r e 6 )、 t r a n s i e n t M C A o に 伴 う 脳 梗 塞 が 出 来 た と 考 え た 。
【考察】
虚血性脳損傷は、世界中の死亡および障害の主要な原因であり、
そのメカニズム解明並びに効果的な治療法開発については、現在
も 多 く の 研 究 が な さ れ て い る (1,2)。
動物実験では、多くがげっ歯類を用いているが、げっ歯類で素晴
らしい結果を得られた薬剤が、ヒトにおける臨床試験においては
有意な効果を得られなかったという例が多くを占める。そこで近
年、よりヒトに近いとされる霊長類であるサルを用いての動物実
験 で の 結 果 が 重 要 視 さ れ る よ う に な っ て き た (3,4)。
サルにおいて、従来の一過性脳梗塞モデルである
transorbital
MCAo model や transient global ischemic model は そ の 手 技 上 、
侵襲性が高い。また、ヘパリン化が難しく永続的な閉塞となりや
す い (5,6)。 更 に 、 近 年 出 て き た 、 開 頭 動 脈 瘤 ク リ ッ ピ ン グ 術 と
同 様 の 手 順 で M1 を 遮 断 す る 、 transsylvian MCAo model で あ っ て
も、大気と脳が触れる環境という、本来の脳梗塞では考えにくい
状 態 を 呈 し て い る 。一 過 性 で 再 現 性 の 高 い M C A o m o d e l 作 成 に は 、
高 い 水 準 の 技 術 が 必 要 で あ っ た (7)。
そこで、今回ヒトでの脳神経血管内治療のテクニックを応用し、
低侵襲で容易かつ簡便に、再現性の高いモデル作成を試みた。
今回のモデル作成において、血管解剖の理解は不可欠であり、サ
ルとヒトとの違いをよく理解しておかなければならない。まず、
腕 頭 動 脈 と 左 総 頚 動 脈 が 共 通 幹 を な す Bovine arch と な っ て い る
ことを理解する必要がある。ヒトでの場合ではあるが、このパタ
ーンの血管分岐において、大腿動脈経由で左総頚動脈にアプロー
チすることは困難な場合がしばしばあり、頚動脈ステント留置時
に 合 併 症 が 多 い こ と が 報 告 さ れ て い る こ と か ら ( 8 )、 今 回 は 右 側
で の transient MCAo model 作 成 と し た 。 ヒ ト と 比 べ る と 、 前 方
循 環 ( ICA-MCA-ACA) に 比 し 、 後 方 循 環 ( VA-BA-PCA-Pcom A) の
血 管 の 発 達 が 目 立 ち 、 ま た 、 ACA は Azygos ACA の 形 態 を と る 。 そ
の た め 、 ACA へ は 比 較 的 カ テ ー テ ル が 迷 入 し に く い 一 方 、 Pcom A
への迷入は注意が必要である。そこで、ガイディングカテーテル
を Pcom A 分 岐 部 以 遠 ま で 誘 導 す る こ と で 、 Percusurge の 迷 入 を
防 い だ (6,9)。
サ ル の 一 過 性 M C A o モ デ ル で は 、d e e p b o r d e r z o n e に 該 当 す る h e a d
of the caudate nucleus 周 辺 で 比 較 的 明 確 な 梗 塞 所 見 を 認 め や す
い (5,13)。 ま た 、 組 織 学 的 に pyknosis 変 化 は 、 脳 梗 塞 を 示 唆 す
る 所 見 に 合 致 す る (10)。
今 回 我 々 は Percusurge を 用 い た が 、 Percusurge は low profile
である上、操作性も比較的良く、サイズ調整も容易であり、長時
間にわたっても、比較的確実な閉塞が得られることから、脳神経
血管内治療において、頚動脈ステント留置術でのバルーン型
Embolic Protection Device と し て 用 い ら れ る 。 こ れ ま で に も 、
サルでの一過性脳梗塞モデルに対してヒトでの脳神経血管内治
療のテクニックを応用する報告はいくつかあり、マイクロカテを
wedge さ せ る 報 告 や 、 コ イ ル を 使 用 す る 報 告 を 認 め る 。 し か し な
がら、サイズ調整が容易な上、長時間の確実な閉塞や、しっかり
し た 再 開 通 を 考 え た 場 合 、Percusurge を 用 い る と と も に 、閉 塞 中
しっかりとしたヘパリン化を行い、副次的な血栓形成を予防する
こ と が 肝 要 と 考 え る (11,12,14,15)。
今 回 は 、 3mm で も 安 全 か つ 確 実 に 閉 塞 可 能 と さ れ る 冠 動 脈 用 の
P e r c u s u r g e を 用 い た が 、こ ち ら の 製 品 は 現 在 販 売 中 止 と な っ て お
り 、 今 後 は 頚 動 脈 用 の Percusurge Guardwire Plus を 使 う 必 要 が
あ る 。 た だ し 、 こ ち ら は 添 付 文 書 上 5mm 以 上 が 推 奨 で あ り 、 小 径
でも大丈夫とされるが、可否を何度か試す必要があると考えられ
る (11,12)。
サルを用いる実験の費用、規模、煩雑さもあり、神経学的所見や
梗塞領域等を、統計学的に解析できるまでの数は作成できていな
い。そのため、サルの一過性脳梗塞モデルにおける虚血部位の個
体差については,作成経験をさらに重ねながら解析していく必要
がある。今後、上記を解析するとともに、神経保護効果があると
考えられる薬剤投与など、虚血性脳損傷の治療法の開発に着手し
たい。
【結語】
血 管 内 ア プ ロ ー チ の 上 、 遠 位 塞 栓 防 止 用 balloon 付 カ テ ー テ ル を
用い、長時間一定かつ血管に傷害を与えない程度の閉塞圧で作成
しえ た
transient MCAo model は 、 今 後 低 侵 襲 で 再 現 性 の 高 い
model と な る 可 能 性 を 秘 め て お り 、 作 成 経 験 を さ ら に 重 ね た い 。
【利益相反開示】
無し。
【文献】
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box
1
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2, Zhang J, Takahashi HK, Liu K, et al. Anti-high mobility
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ischemia-induced
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【図表の説明】
Figure 1
剖 検 で の 摘 出 し た Aortic arch。 Bovine arch を 認 め る 。
Figure 2
ICA, External Carotid Artery 分 岐 部 の 血 管 撮 影 像 。
Figure 3
Percusurge( PS) を triple co-axial に 誘 導 し て い る 様 子 。 5 Fr
カ テ ー テ ル 、 4 Fr カ テ ー テ ル の 先 端 は 矢 印 が 示 す 通 り 。
Figure 4
剖 検 脳 の 血 管 。 後 方 循 環 の 血 管 径 が 相 対 的 に 太 い 。 ま た 、 ACA が
Azygos ACA の 形 態 と な っ て い る 。
Figure 5
剖 検 脳 の 肉 眼 的 断 面 。 右 大 脳 半 球 皮 質 の 淡 い 虚 血 性 変 化 と 、 head
o f t h e c a u d a t e n u c l e u s( 黄 色 矢 印 ) の 強 い 虚 血 性 変 化 を 認 め る 。
Figure 6
剖 検 脳 の 組 織 像 。g l i o s i s と 、p y k n o t i c c e l l を 認 め る 。s c a l e b a r s
= 10µm。
Fig.1
Fig.2
Fig.3
Fig.4
Fig.5
Fig.6