エステートケミカル株式会社

会員企業訪問
エステートケミカル 株式会社
生き生きと美しい心と身体へのために
化粧品の「良質」への飽くなきこだわりを追求し、
真心が結晶する製品づくりを目指します。
今月の会員企業訪問は来年 11 月で創業 30 年を
るうちに色々な発見があり、薬液にアレンジを加
迎えるエステートケミカル㈱です。本社兼工場は
えたものを知り合いの美容院で試してもらいまし
医薬品メーカーや、その関連企業が集中する三重
た。その結果、
「大変素晴らしい、すぐにでも店で
県伊賀市にあります。同社は創業以来、化粧品・
使いたいので、是非とも売って欲しい」と言われ
医薬部外品 OEM の専業メーカーとして活躍して
たそうです。これをきっかけに、父は独立を決意
います。本日は代表取締役社長の鴻池直弘氏に、
しました。
会社の沿革や新製品の開発、職場での取り組み等
についてお話を伺いました。
その後、独立した会社は順調に成長しましたが、
会社の成長と共に、化学技術者としてものづくり
が好きで始めた会社で、ものづくりをする時間が
取れなくなったことに悩み、その会社を人に譲り
新たな商品を世に送り出す夢を追って、OEM 専
業メーカーとしてエステートケミカルを創業する
事になりました。
それから常にお客様に如何に喜んでいただくか、
驚かせるかという熱い想いで製品を開発・提供し
続けた結果、お客様の支持を得て創業後 10 年ほ
どで 2 つの工場を新設することが出来ました。
インタビューに答える鴻池社長
また、その後本社工場の移転と研究所を新設す
ることにより、パーマ液だけではなく化粧品全般
―会社の生い立ち~成長期
~熱い想いで企業として成長~
の開発・製造が出来る体制を構築することができ
ました。
元々某化学薬品メーカーの研究者であった父で
あり現会長の鴻池専慈がパーマ液を製造する会社
を設立したのが当社の始まりです。
父は元々はパーマ液ではなく、染料の研究をし
ていました。ある日、薬液を使ってパーマをかけ
ることができるという話を偶然耳にしました。当
時はロッドを巻いて電気で加熱する方法が主流で
あり、それは非常に画期的な発明でした。父は化
学技術者としてその話に大変興味を持ち、すぐに
薬液を入手して成分の分析を試みました。解析す
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本社兼工場の外観
―「色々な情報を取り入れること」
「先見の目を持つこと」
「挑戦すること」
―研究開発型企業としての
更なる発展を目指して
紙パック製容器のパーマ液は予想をはるかに超
平成 7 年頃にはパーマ液だけではなく、それを
える売れ行きとなりました。安定した生産が始ま
詰める容器についても凸版印刷様が開発した紙パ
り 1 年で、同様の設備を追加導入しないと生産が
ック容器を導入し、凸版印刷様と共同で改良を手
追い付かないほどです。しかし、喜んでばかりも
掛けるようになりました。
いられませんでした。パーマ液が液体からクリー
パーマ液は空気に触れると酸化するため、気密
ムタイプへと代わってきていました。このように
性が高くなければなりません。当社では創業以来、
商品のライフサイクルは非常に短期化しており、
塩化ビニル性のプラスチックボトルを使用してい
最近では 2~3 年と言われています。それだけに、
ましたが、これらを焼却するとダイオキシンが発
次代を見越した新製品の開発や新規事業の育成に
生することが知られていました。ダイオキシンが
は、特に力を入れています。
発生しないプラスチック容器への切り替えを検討
昨年 12 月に、これまでの常識にとらわれない
しましたが、当時は非常に高価であったため、業
製品の開発を目指す、未来型商品開発部門
務用のボトルに使うと採算が取れませんでした。
ZeroLabo を新設しました。商品開発の基礎とな
その時に目をつけたのが紙パック製の容器です。
る原料の分析や、提案型製品の研究など、幅広く
紙パックであれば畳んで捨てられるため、ゴミの
展開している研究開発部門がありますが、全く新
量が格段に減りますし、燃えるゴミとして出すこ
しい製品の開発という点で切り分けを行っていま
とができます。環境とコスト、この両立が可能で
す。パーマ液の業界はマーケット規模が縮小傾向
ある紙パック製容器の導入は、環境意識の高い大
にあり、またグローバル競争も激しいため、枠組
手企業を中心に取引が増えることは想定していま
みにとらわれない商品の開発が必須であると考え
したが、導入は一筋縄にはいきませんでした。
ています。しかし、まだ新設から数ヶ月ですから、
当時はプラスチックボトルに充填するのが主流
今は種を蒔く段階だと思っています。ですので、
でしたから、当然専用機もありません。そこで、
1 年間はノルマを与えず、また細かな条件を指示
紙パック容器を成型・充填する機械の購入を検討
せず、情報収集に努めてもらっています。
しましたが、その装置が 1 億円と高額でした。売
上が 5 億円の時代に、それほどの設備投資をする
のですから、当時は疑問視する人も多くいました。
しかし、この先環境に配慮した容器の導入は必須
であると考え、充填機の導入を決意しました。
設備導入後、今度はパーマ液が漏れるという問
題に直面しました。パーマ液は浸透圧が高いため、
飲料の紙パック容器と同じ素材、構造では液漏れ
を起こしてしまいます。そこで素材や形状につい
て試行錯誤し改良を繰り返しました。また、子供
によるパーマ液の誤飲を防ぐため、注ぎ口のキャ
ップを容易に開けられないような安全対策を施し、
やっとの思いで完成しました。安定して生産する
まで 3 年の歳月が過ぎていました。
研究開発の様子
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―会社で行う様々な取り組み
~社員のモチベーションアップで活気のある職場へ~
―最後に
会社が成長してきた過程をお話ししたので、お
当社では特に 5S や現場改善に力を入れていま
分かりかと思いますが、当社は利益ばかりを追求
す。10 年以上前から、「工夫アイディア制度」と
する企業ではありません。一つの目標に向かって
いうものを行っています。改善提案の枠組みを広
みんなでワイワイと楽しく知恵を出し合って進み、
げたものと理解していただければ良いと思います。 それが結果として自己成長やお客様の喜びにつな
「こういう治具を作ったらいいんじゃないか」と
がれば良いという考えです。当社の理念である
『喜
か、
「こういう製造方法がいいんじゃないか」など、
びの創造』のもと、今後もお客様の役に立つ商品
考えついたものを提出してもらっています。ただ
を創造していきたいと考えています。
し、1 つだけ条件があります。必ず、自分自身で
考え抜いたワンポイントが盛り込まれていること
喜びの創造
です。単なるシステムの導入や、他人の真似をし
1. 商品を使用されるお客様をはじめとして当
社の商品に関わる全ての人々の健康と安全
を最優先します。
ただけの改善は認められません。製造部門だけで
なく、開発、営業、事務部門全てで行っています。
このことで普段から問題意識を持って、さらに良
い方法がないか考える癖がついたと思います。
その他には「1 番コンテスト」を実施していま
す。5S やタイピング速度など、社員が自由にテー
マを決め、競争者を募り、切磋琢磨し合います。
自己啓発から資格取得につながるテーマであれば、
それに越したことはありませんが、全員が何かし
らの分野で 1 番を取ること、そこから研究開発型
企業らしい真面目な雑談が自然と生まれる職場を
目指しています。私は、従業員一人ひとりがイキ
イキと活躍できる環境づくりが大切であると考え
ます。当社では、全従業員の毎月の給与明細に、
私の直筆メッセージを添えています。価値観や想
いを少しでも共有できればと思っています。
2. 製造する商品の品質はもちろんの事、全ての
仕事においてお客様の要望を超える品質を
目指します。
3. 常に創意工夫を怠らず、独創的な仕事で、お
客様に驚きと感動を与えることのできる企
業を目指します。
4. 廃棄物・水質汚濁物質を重点に、私たちの仕
事を通じて発生する全ての環境負荷を低減
し続けます。
5. 日常におけるさまざまなリスクを想定し将
来予想される環境汚染の予防に努めます。
6. 現状を継続的に改善することにより、従業員
と会社が共に成長し続けます。
7. 当社にかかわる法令及び当社が同意する決
まりごとを確実に遵守します。
8. 従業員教育を通じてこの方針を全従業員に
周知徹底するとともに一般の方々にも開示
します。
エステートケミカル 株式会社
所在地
三重県伊賀市ゆめが丘 7 丁目 6-16
資本金
4,550 万円
従業員 150 名
事業内容 化粧品・医薬部外品の研究開発及び製造
― 本日は誠にありがとうございました。
(文責:事務局)
現場の掲示板
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