4140 アルケンの合成 代表的なアルケンの合成方法を説明します. 脱離

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4140 アルケンの合成
代表的なアルケンの合成方法を説明します.
脱離反応による合成
置換アルカンからの E1 および E2 脱離反応による合成(図 1).ここで X は,ハロゲンま
たは OH 基です.E2 反応では,脱離する X と H はアンチペリプラナーの配座であることが
必要です.
律速
X
E1
C
C
C
C
C
C
C
B
H+
X−
+ B
H +
X−
+
B
X
X
E2
C
H
H
出発分子の濃度が反応
速度を決める
+
C
C
C
C
H
H
B
例
出発分子とB: の2分子
の濃度が反応速度を決める
XとHがアンチペリプラナー
であ ること
CH3
H
CH(CH3)2
Cl
H3C
Cl
- Cl−
H
H
H
EtO
H3C
CH(CH3)2
CH(CH3)2
−
図 1.置換アルカンからの E1 および E2 脱離反応によるアルケンの合成.
とは一重結合を挟んだ 2 つの置換基が互いに 180
度の角度を持つ配座です.0 度の場合はシンペ
シンペリプラナー(syn pe
periplanar)といいます(図
2)
.結合が解離する条件はその結合の反結合性軌道に電子が入る必要があります.つまり,
反結合性軌道に電子が入ることによって結合が解離するのです.置換基が互いにアンチペ
リプラナーの関係にあるとき,結合軌道と相手の反結合性軌道と平行関係にあり,軌道が
重なるため C-X または C-Y の結合電子が反結合性軌道へ入りやすくなります.
Y が脱離する理由は,C-X の結合電子対が C-Y の反結合性軌道に移動するためです(図 2
の a).逆に X が脱離するのは,C-Y の結合電子対が C-X の反結合軌道に移るためです(b).
アンチペ
アンチペリプラナー(anti periplanar)
-
-
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X
X
B
B
A
B
syn periplanar confomation
anti periplanar conformation
X
a
b
Y
C
anti-bonding orbitals
図 2.アンチペリプラナー配座(A)とシンペリプラナー配座(B).それぞれの結合の
軌道の反結合性軌道(C の青色で示した軌道)は互いの結合性軌道(赤線)と平行にな
り重なりあう.
vic-ジハロ体の脱ハロゲン化による合成
ジハロ体の脱ハロゲン化による合成
昔から知られている方法ですが,反応機構はよくわかっていません.vic-ジハロ体は,金属
の Zn の粉末や NaI で脱ハロゲン化反応を起こします.なお,“vic-”は隣という意味です.
C
C
Br
Br
Zn
C
C
C
C
Br
Br
NaI
C
C
図 3.vic-ジハロ体の脱ハロゲン化によるアルケンの合成.
炭素-炭素三重結合の還元による合成
炭素-炭素三重結合を持つ化合物(アルキン類(後述))を,Ni,Pd,Pt などの金属触媒を
用いて還元する接触還元法(接触水素化法ともいう)があります.
一般に,二重結合の方が三重結合より還元されやすいため,二重結合で止めることはで
きません.しかし,リンドラー触媒
リンドラー触媒 または P-2 触媒 を用いると二重結合で止めることがで
きます.このとき,アルキン(三重結合)へ H 分子を付加するとシス体を与えます.
金属溶解還元法という手法があります.これは,液状の NH に金属の Na,あるいはアル
1
2
2
3
1
2
パラジウム(Pd)触媒に触媒毒である酢酸鉛とキノリンで Pd 触媒の活性を弱めた触媒.
ホウ素化ニッケル.3840 を参照.
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キルアミンとアルカリ金属(Na,K 等)の反応で発生する H(ラジカル)で三重結合を還
元する方法です.この方法はトランス体を与えます.
一般に接触水素化法はシス付加体を与え,金属溶解還元はトランス体を与えます.
アルドール縮合による合成
アルドール縮合による合成
2分子のアルデヒドまたはケトンが脱水縮合してアルケンをつくります.このとき少なく
とも一方の分子のカルボニルの α 位に H が必要です.
OH
H2
CH3 CH C CHO
CH3CHO + CH3CHO
- H2O
CH3
H
C
H
C
CHO
図 4.アルドール縮合による二重結合の生成.
Wittig(ウィッティッヒ)
ウィッティッヒ)反応
ハロゲン化アルキルにトリフェニルホスフィン(Ph P)を作用させリンイリド(ホスホラ
ンともいいます)をつくり,カルボニルに縮合させアルケンを作ります.
3
R3
R1
C O
R2
+
R1
R3
+ (C6H5)3P C
−
O P(C6H5)3
+
R
R2
4
リンイリド
ホスホランともいう
R4
図 5.Wittig 反応.
なお,リンイリドはハロゲン化アルキルとトリフェニルホスフィンから次の反応で得ます.
R R CH-Cl + (C H ) P → R R CHP (C H ) Cl
+ LiC H
→
(C H ) P -C R R +
LiCl + C H
3
4
3
6
4
5 3
5 3
-
6
+
6
+
-
3
5 3
6
4
6
6
5