伝える力をはぐくむ作文指導の工夫

沖縄県立教育センター
研修報告集録
第 28 集
1−6
2000 年 9 月
<国語>
伝える力をはぐくむ作文指導の工夫
――説明文の基礎的な文章形式を活用した指導を通して――
那覇市立松川小学校教諭
Ⅰ
仲 地 千 佳
いたこと,そして発見したこと,これらが与える感
テーマ設定の理由
動が深ければ深いほど,何とかして自分の思いを伝
えるために表現しようとするのである。作文指導の
国語科では,
「互いの立場や考えを尊重して言葉で
伝え合う能力を育成」し,
「論理的に意見を述べる能
原点がここにあると考える。
力」及び「目的や場面などに応じて適切に表現する能
作文指導で大切なことは,ものを見る目を育てる
力」を育てることを重視している。そのことを踏まえ
ところにある。取材の目が育てば,思いがけない発
て,
「A話すこと・聞くこと」
「B書くこと」
「C読む
見も多くなる。発見があれば感動があり,他者に伝
こと」の三領域と「言語事項」で構成されている。
えたくなるのが本来の姿である。伝えたいという願
また,実践的な指導の充実を図る観点から言語活動
いがある限り,何とかして自分の思いを相手に分か
例が示され,1,2学年「B書くこと」においては,
ってもらうための方法を子ども自ら必要とする。そ
「伝えたい事を簡単な手紙などに書くこと」,
「 先生や
の時,表現の技能が要求される。自分の思いや考え
身近な人などに尋ねた事をまとめること」
などの書く
を適切に伝えるために,構成を工夫することの必要
ことによって伝える力を育てる活動例が示されてい
性を感じ,言葉の使い方等を工夫するようになる。
る。この言語活動例を具体化するためには,子どもの
段落意識や構成メモの必要性が子ども自身にないと
実態に即した言語活動の工夫が必要である。
き,その効果は期待できない。
作文を書くことによって,自分の考えや思いを伝
伝えたい事柄を発見し,伝えたい欲求がもてるよ
える力をはぐくむためには,子どもの作文力の実態
に即した意図的・継続的な作文指導が大切である。
うにすること,そして何よりも書く喜びを味わわせ
ることが,良き表現者を育てることになる。
子どもが見たことやしたことをおっくうがらずに書
2
ける文章表現力を身に付けさせ,伝えたいことを簡
伝える力をはぐくむ作文指導
自己教育力とは「自己学習,自己形成,自己啓発,
単な作文に書く,実践的な言語活動を展開したい。
自己陶冶などの概念を総合したもの」で,そのため
今回は,2学年において見たことや聞いたことを
には「学習意欲・意志を養う」(国語教育研究大辞典,
伝えるため,作文を書く指導を通して,
「伝え合う力」
1991)ことが必要であるといわれている。子どもたち
の初歩的な技能・能力をつけたいと考え,本テーマ
に,ある特定の作文技能を習得させようとする場合
を設定した。
には,その学習に自主的・主体的に取り組ませるこ
<研究仮説>
とが大切である。子どもが,自らの課題や問題とし
1
て学習活動に取り組まない限り,習得された技能は
目的意識をもって取材する場を設定すれば,進
んで伝えようとする意欲が育つであろう。
2
知識の段階にとどまり,生活の中で生きて働くもの
説明文の文章形式を活用することにより,自分
にはなりにくい。子どもの学習の必 要性や有用性を
の思いや考えを書くことができ,伝える力が育つ
実感した上でなされる学習の場と,学習内容として
であろう。
の技能が,子どもの中で結びついたときに,書くこ
Ⅱ
1
とが生きて働く力となると考える。
学習内容としての技能の習得には,
「思考スキルの
研究内容
直接学習も効果的」 (国語教育研究大辞典 )とある。
伝える力をはぐくむ
スキルとは,一般に「技能」と訳され,物事をなし
「子どもは,本来,表現の才能をもっている。」(中
とげるための手腕・熟練であり,技術・技能である。
西,1996)といわれている。子どもは自分の思いを
つまり,仕事のこつで,言葉に関して言えば,言葉
相手に分かってもらうために,泣く,笑うも含めて,
を使う術である。何をどのように書いたらよいか分
五感を使って表現しようとする。うれしいこと,驚
からない子どもには,ある程度,基本的な形式にあ
-1-
てはめて書かせることが,作文の技能の習得につな
低学年向けの戦争パネルを選択する視点としては,
がる。
そこで,作文におけるスキル学習を次のように考
①
写真の中に子どもがいること。
②
写真(場面)の中から,子どもの様子や行動が
えてみた。
はっきり分かること。
③ 子どものおかれた状況がはっきり分かること。
やさしいモデルの例文を繰り返し書かせる。
④ あまり残虐でないもの。
↓
以上の四点から「子どもがかわいそう」,「せんそ
例文の通りに,自分にあてはめて書かせる。
うはこわい」,「せんそうはいやだ」などの気持ちが
↓
深まり,自分の思いや考えを伝えたくなるような写
真パネルを選択し,教材化する。
例文をもとに内容を膨らませて詳しく書かせる。
↓
4
論理的な文章を自力で書かせる。
表現の技能を高める説明文の活用
(1) 説明文の活用
このようなスキル学習を作文の指導に取り入れ,
説明文の文章は,
「物事の性質・状態・関係を論理
スキル 1,スキル2と基本的な形式にあてはめた学
習を積み重ね,論理的な文章が書けるようになる。
的にとらえ,客観的な尺度を使って述べるために基
伝えたいことを適切に表現する力が育成できる。
礎的な文章形式をもっている。
」
(市毛,1997)
3
作文の指導においては,説明文の基礎的な文章形
伝える力をはぐくむ場の設定
式にそった文章の書き方を指導するのが良いと考え
(1) 合科的・関連的な作文の学習活動
学習指導要領においては,各教科・領域等の関連
を図った指導を行い,横断的・総合的な指導を推進
る。伝えたいことを的確に伝えるとなれば,論理的
していくことが必要であるとしている。また,知識
ある。子どもが文章の型(形式)を知って,型通り
と生活との結び付きや知の統合化の視点が重視され
に文章を書く練習をすると,多くの子どもが論理的
ている。そこで,
「道徳の時間」に戦争パネル展を行
な文章を自力で書くようになる。その文章の型をモ
い,国語の作文指導と関連させて扱うことにした。
デルとして,作文の指導過程に取り入れて,スキル
戦争の写真パネルの見学という感動体験を生かして,
学習を図る。
(2) 説明文の基礎的な文章形式
文章が最適であり,そのベースとなるのは説明文で
事柄の順序を考えて書く「せんそうのことをつたえ
論理的な文章とは,
「説明文の文章にみられる四つ
よう」の作文単元を構成する。また,単元にかかわ
るパネルの説明文を作成し,書く活動に密着させて
の段落を単位とし,その四つにつながりとまとまり
作文の内容を膨らませる指導を考える。スキル学習
をもたせた一つの文章」
(市毛)である。さらに,
「各
としての「はじめ・なか・おわり」という基本的な
段落には一つ一つ名称と役割がある。」(市毛)とされ
文章形式を用いた指導を通して,まとまりとつなが
ている。
(表1)
りのある作文を書かせる。
「道徳の時間」の指導内容と国語科の指導内容の
「はじめ・なか・まとめ」に対応する「はじめ・なか・
この四つの構成要素(段落)を基盤に 2 年生には
関連化・統合化を図り,国語の表現力と道徳の学習
で得た知識・考え方等(道徳既習知)を関連させて,
おわり」を全体構成として用いることにする。
「知の総合化」を図るのである。その具体化は,第
に沿う書き表し方がきちんとわかるように指導する。
この論理的な構成の基本形を用いて各部分の役割
表1
1学年及び第2学年の,道徳の内容「3の(2)生
説明文の基礎的な文章形式
きることを喜び,生命を大切にする心をもつ。
」と,
は
国語の「書こうとする題材に必要な事柄を集めるこ
じ
こに結論や考察めいた内容を書かない。
論理的
と。」
(
「B書くこと」のイ)を関連させることである。
め
な文章の書き方,文章を順序正しく書く書き方
を身に付けさせる。
(2) 戦争パネルの選択と教材に生かすための視点
文章の内容の予告,あらまし等を述べる。こ
一つの段落に,具体例を一つだけ詳しく書く
沖縄戦の「写真パネル」
(那覇出版社刊)を 教材化
して,写真の全体的な印象からとらえた「かわいそ
な
段落である。
「なか」は,なか①なか②という
う,こわい,いやだ」などの気持ちを感覚的な言葉
か
二つの形式段落にまとめさせる。具体例として
は筆者の見たこと・聞いたことを書かせる。
で表すだけでなく,写真に見る事実・事象を分析的
にとらえ,文章化できるようにする。
-2-
ま
具体例二つに共通する筆者の思いや考えを
った」と「少しつらかった」の2つにして,その中
と
表現する段落である。
筆者の思いや考えを表現
から,自分の気持ちに合う主題を選ばせた。
「はじめ」
め
する語句を一つに絞り込ませる。
(その語句が
にはあらまし,
「なか」には見たことやしたことを,
キーワードとなる。
)
「おわり」には気持ち(思いや考え)を書くこと等
む
を説明し,作文用紙に書かせた。
文章を締めくくる部分である。
前の段落「ま
す
とめ」の中で述べた筆者の思いや考えをさら
び
に一般化して,普遍的な価値があると主張す
(1) 作文の評価の観点と方法
この春の遠足についての作文を,次のような観点
で評価してみた。
る部分である。
①
(市毛,1997,改変)
この四つの構成要素を基盤に,
「はじめ・なか・お
作文の組み立て方の評価は,はじめ・なか・
おわりという,各部分の役割に沿って書かれて
いるかをもとに,よい(◎),大体よい(⃝)
,
わり」を基礎的な文章形式として用いることとする。
努力を要する(△)
,記述なし(×)とした。
(3) 作文の学習指導の工夫
②
単元「せんそうのことをつたえよう」において作
言語事項についての評価は,よい(◎),大体
よい(○)
,努力を要する(△)とした。
文を書く学習を以下の点に留意して指導する。
①
③
②
伝える相手をはっきりさせる。
その他に,作文の全体的なよさ,問題点など
を文章で記述した。
パネルについての資料を読んで,気付いたこと
(2)
や考えたことから,
「いちばん書きたいこと」(主
観点ごとの評価による学習状況と課題
観点ごとの評価による学習状況は,以下の通り
題)は何かを決める。写真を見て,強く感じたこ
とや思ったことをもとにして,作文の「だい」に
であった。
する。
①
作文の組み立て方「はじめ・なか・おわり」
の役割に沿って書いた子は,男子6名,女子7
③ 誰に伝えるかはっきりさせて,
「はじめ・なか・
名であった。作文を書く時間を多くとらなかっ
おわり」の構成メモを書く。
たにもかかわらず,38 名中,13 名の子が「はじ
④ 書いたメモについて加除・修正する
⑤ メモを生かして作文を書く。
⑥ お互いの作文を読 みあう活動において,自分や
め・なか・おわり」で書けるようになった。
② 主題を一つに絞らせてから書かせたので,板
友だちの良さを発見し,次の作文を書く意欲につ
書した事柄の中から,自分の思いや考えにあう
なげる。
「なか」の文章が選択しやすかった。
課題としては,
Ⅲ
1
単元
2
指導の経過
指導の実際
①
構成メモを書くワークシートが必要であるこ
と。ワークシートには伝える相手と中心文を
せんそうのことをつたえよう
記述する欄も設けて,作文を書く目的意識を
持たせること。
スキル1としての作文単元「春の遠足のことをつ
②
たえよう」では,作文の組み立て方「はじめ・なか・
「なか」で使う重要な語句を増やしたり,作
文活動を促すための資料説明文が重要であるこ
おわり」の指導をした。
と。
まず,作文を書くための材料集め(取材)をさせ
以上の実態と課題を踏まえ,スキル2として単元
た。遠足で見たこと,したことを発表させ,教師が
「せんそうのことをつたえよう」の指導計画を立て
板書していった。
「大きなすべり台があった。
」
「雨が
た。
ふってきて,あまり遊べなかった。」「お弁当は教室
3
でお友だちと食べた。」などさまざまな出来事が出さ
指導計画(3時間扱い)
目
れた。
次に,主題(書きたいこと)について話し合った。
一番書きたいこと,つまり主題を明確に持たせるた
標
主
な
学
習
活
動
1 〇戦争について話し ①「戦争を考える写真と資料
取 合うことができる。 展」を見学し,教師の説明を聞
めに,具体的な言葉を考えさせた。
「たのしかった。
」
材
や「つらかった。
」
「おもしろかった。
」など,子ども
(道徳の時間)
いて,戦争のことについて話し
合う。
たちから出されたが,ここでは,主題を「たのしか
-3-
目
標
主
な
学
習
活
動
○読み返して直すこ ①書いた作文を読み返す。
2
記述
︵本時︶
○写真パネルを見
①①「写真パネル 18・19」を見た
3
とが分かり,自分の ②友達の作文と比べて,表現な
たり,資料説明文を り,資料説明文を読んで,いち
推
作文を直すことが出 どについて話し合う。
読んだりして,書き ばん書きたいこと(主題)を決
敲
来る。
たいこと(主題)を めて,構成メモ(ワークシート)
・
○ 友 だ ち や 自 分 の かったことをもとに作文を書き
見 つ け て 作文 を 書 に書く。
清
作 文 の よ い と こ ろ 直す。
くことができる。
書
を 見 つ け る こ と が ④友だちの作文を読み,よく書
(国語科)
②伝える相手と「はじめ・なか・
できる。
おわり」の順序を考えながら書
(国語科)
く。
③話し合って気付いたことや分
けているところを発表する。
⑤自分の作文で,よく書けてい
るところを発表する。
4
本時の学習指導(2/3)
(1) 本時の目標
①「写真パネル 18,19」を見たり資料説明文を読んだりして,書きたいこと(主題)を見つけることができる。
② 全体の組み立て方「はじめ・なか・おわり」の順序をたどって作文を書くことができる。
(2) 本時の展開
目
標
学
習
活
動
教師の支援・個への手立て
評
価
導 ・
「写真パネル」を見たり, 1「写真パネル 18.19」を見 ・作文を書く手立てになるよ ・書きたいこと
入 資料説明文を読んだりして, て,写真に出てくる子どもの様 うに,子どもの見つけたこと を見つけること
書きたい事を見つけること 子や場面の状況について話し を黒板に書き出す。
10 ができる。
合う。
・写真パネルに合わせた資料
分
2
本時のめあてを読む。
説明文を掲示する。
3
資料説明文を読みあう。
4
構成メモを書く。
ができたか。
展 ・構成メモに「はじめ・なか・
・構成メモを書
開 おわり」の基礎的な形式で,
くことができた
あらましや様子,気持ちを書
か。
30 くことができる。
・資料説明文にある語句や文
分
章を材料とさせる。
・構成メモを活用して,作文 5
を書くことができる。
構 成 メ モ の 組 み 立 て 方 ・構成メモを活用させ,作文 ・作文を書くこ
「はじめ・なか・おわり」をた を書かせる。
とができたか。
どって,作文を書く。
ま
「名前」
「はじめ・な ・子どもの興味を引くような ・順序よく書か
と ・作文を読んで,自己評価を 6 「題」
め することができる。
5
か・おわり」が順序よく書かれ シールを貼らせ,自分で作文 れているか確か
ているか確かめながらシール の見直しをさせる。
めることができ
を貼る。
たか。
分
-4-
5
仮説の検証
し,写真パネルや資料説明文を取材の手立てとするこ
(1) 仮説1の検証
とによって,子どもの取材の目,ものを見る目が育っ
写真パネル展で見た「写真パネル 18,19」
(那覇出
たと考えられる。
(2) 仮説2の検証
版社刊)にでてくる子どもの様子や場面の状況につい
て話し合わせた。その際,子どもが見つけたことを,
基礎的な説明文の文章形式を用いて,作文指導をし
教師が黒板に書き出していった。その結果,子どもた
たことの効果を明らかにするために,
「春の遠足をつた
ちが見つけた内容は述べ数にして 15 あり,
「旗を持っ
えよう」と「せんそうのことをつたえよう」の2つの
ている。
」
「戦車が走っている。
」
「草木がない。
」といっ
作文単元を比較して検証した。
た事実に関わる内容であった。また,
「こども(女の子)」
「はだし」という2枚の写真に共通する事実から,
「痛
2つの作文単元において,共通の形式を用いること
により,各部分の役割に沿う書き表し方が分かり,き
そう。
」
「かわいそう。
」という情意にかかわる内容も出
ちんとできるようになった。また,
「はじめ」にはあら
された。すなわち,写真パネル展をみせて,気づいた
まし,「なか」には見たことやしたこと,「おわり」に
ことを話し合わせたことが気づきや書くことへの動機
は気持ちというように,スキル的に学習することで,
づけとなったと考えることができる。
論理性のある文章の書き方が分かったようである。
また,
教師が作成した低学年向きの
「写真パネル 18,
① 作文の組み立て方
19」の資料説明文が子どもの取材の手がかりとなり,
「春の遠足をつたえよう」と「せんそうのことをつ
意味の理解をも促進したことが分かる。
たえよう」の2つの作文単元について,作文の構成
を比べてみると,以下の通りとなった。(表2,表3)
<教師が作成した「写真パネル 18」の説明文>
表2 「春の遠足をつたえよう」の作文の構成
せんそうがつづいているところで,白いはたをあげるこ
とは,どのようないみが,あるのでしょうか。
春の遠足をつたえよう
せんそうのとき,あげる,白いはたには,もうたたかい
40
ません。だから,けがをさせたり,ころしたりしないでく
37
35
30
25
ださい,といういみがあります。
せんじょうであげる白いはたは,てきにしたがうことを
あらわすしるしです。
白いはたをもった女の子は,アメリカぐんのよういした
あんぜんなばしょへあるいていったそうです。
5
0
<教師が作成した「写真パネル 19」の説明文>
20
19
20
15
10
11 11
9
5
1
5
0 0
はじめ
よい
このようなときに,小さな子どもをおぶった女の子や,
14
2
1
なか1
なか2
作文の組み立て
遠くの方から,ばくだんやたいほうの音が聞こえてきま
す。まだ,せんそうがつづいているのです。
16
大体よい
要支援
おわり
記述なし
表3 「せんそうのことをつたえよう」の作文の構成
おとなの人は,アメリカぐんのよういした,あんぜんなば
しょへ歩いて行くところのようです。
せんそうのことをつたえよう
実際,下記の通り,子どもたちの作文には,資料説明
文で使用されていた「白いはた」
「子ども(女の子)
」な
35
ど,写真の意味を理解する上で重要な言葉や文が含まれ
30
ていた。
25
32
29
28
24
20
<子どもの作文の抜粋>
15
・白 い は た をもっている女 の 子 がいたよ。
10
・ア メ リ カ ぐ ん のせんしゃにかこまれているよ。
5
・あかちゃんをお ぶ っ て ,あるいているよ。
0
・はだしであるいてあ ん ぜ ん な ば し ょ へ いった。
11
9
0 0
はじめ
・せ ん そ う が つ づ い て い て ,かわいそう。
このように,道徳の時間と関連させて作文単元を設定
よい
-5-
8
6
2 1
0 0
なか1
なか2
作文の組み立て
大体よい
要支援
1 1
おわり
記述なし
表2,表3からも分かるように,作文の構成を共通の
るようになったといえる。
形式で書き重ねることにより「はじめ・なか・おわり」
表4 作文のまとまりとつながり
の各部分の役割が分かり,多くの子どもがおっくうが
スキル1・2
らずに作文が書けるようになってきた。また,資料説
明文に使われていた言葉や文が文章表現に生かされ,
観
春の遠足を
せんそうの
つたえよう
ことをつた
点
えよう
「よい」の子どもの数も増えてきた。
1
伝えたい事(中心文)や伝える相手をはっきりさせ
各部分の役割に沿
いまとまりとつながり
るために,下記のような構成メモを活用した。
のある作文が書けた子
<構成メモ>
13名
27名
5名
8名
8名
0
2「なか」と「おわり」
のみ,つながりのある作
文が書けた子
3 「なか」と「おわり」
の混入書きをした子
スキル学習を通して,事柄だけを羅列した文章に終
始した子どもたちの作文が,まとまりとつながりのあ
る作文になった。また,出来上がった作文を友だちや
家族に読んでもらったことによって,自分の考えや思
「題」「伝える相手」「書く順序(はじめ・なか1・
いを「分かってもらった。
」
「伝えられた。
」という喜び
なか2・おわり)」を構成メモに書かせることによって,
になり,次への作文を書く意欲につながったようであ
作文全体の組み立て方が分かり,論理的な文章が書け
る。
ている。これらのことから,基礎的な文章形式にあて
Ⅳ
はめて,スキル学習をしたり構成メモを活用したり,
することによって,低学年なりに論理的な文章が書け
まとめと今後の課題
伝える力をはぐくむ作文指導の工夫をテーマに,説
ることを検証できた。
② 文のまとまりとつながり
明文の基礎的な文章形式を活用した指導を通して,実
「春の遠足をつたえよう」と「せんそうのことをつ
践研究してきた。
文章を書くことの初歩的な段階にある子どもたちが,
たえよう」の2つの作文単元をまとまりとつながりか
表4の1の項目では,スキル1,スキル2と書き重
作文全体の組み立て方や各部分の役割とそれぞれの書
き方について指導を重ねることにより,筋道立ててま
ねることで,まとまりとつながりのある作文が書ける
とまりとつながりのある論理的な文章が書けるように
子が 13 名から 27 名と増えた。
「はじめは.
.
.
なかは.
.
.
なった。また,子どもたちが自分の思いや考えを伝え
おわりは」と,子どもたちは口癖のように唱えながら,
るためにおっくうがらずに作文を書くようになった。
ら比べてみた。
(表4)
今後の課題は,
「なか」を膨らませるための資料説明
分かりやすく伝える作文を書いていた。
3の項目の「春の遠足のことをつたえよう」では,
文活用の工夫,個に応じた支援の仕方や時間配分の工
「なか」と「おわり」の混入書きをする子が,8名い
夫,年間計画に位置付けた指導である。作文を通して,
たが,
「せんそうのことをつたえよう」の単元ではいな
伝える力をはぐくむために,子どもの実態に即した系
かった。したがって,「はじめ・なか・おわり」の形式に
沿ったまとまりとつながりのある論理的な作文が書け
統的な作文指導を工夫し,意図的,継続的に指導して
いきたい。
<主な参考文献>
相澤秀雄
1999
「伝え合う力の的確な理解と確かな言語の技能・技術を」
『国語技術別冊』584
市毛勝雄
1997
『作文の授業改革論』
中西一弘
編
1996
国語教育研究所
編
『作文指導の方法』
明治図書
1991
光村図書
『国語教育研究大辞典』
421 頁
-6-
明治図書
明治図書