第1回 皮膚と膜

1. 皮膚と膜 体や臓器を守るしくみ
体の(外界に接する)表面はすべて上皮細胞が被
う。
皮膚と粘膜 どちらも連続した上皮が被う
・膜とは・・・ 曖昧な言葉 通常「膜」という場合、内側と外側を分けるシート
構造を指す。
例)
細胞膜(厚さ12nm の脂質二重膜)
漿膜(単層扁平上皮により体腔表面を
被う膜)
角膜(眼球の光の導入部にあるドーム
上の構造)
・体の外と中を分ける膜構造
上皮組織とその直下の結合組織からなる構造
皮膚 外表面を被う被膜
粘膜 外界と連続する臓器の内腔表面を被う被
膜
漿膜 外界と連続しない体腔表面を被う被膜
(中皮)
その他 髄膜・関節腔など
漿膜 serous membrane 体腔表面やそこに存在する臓器表面を被う
上皮から漿液が分泌され常に潤滑される。
単層扁平上皮で中皮とも呼ばれる。
腹腔
ー 腹膜 (腸間膜)
胸腔
ー 胸膜
心膜腔 ー 心膜
中皮と粘膜,皮膚は基本的に連続しない。
唯一の例外は女性の卵管上皮と腹膜の移行部
粘膜 mucous membrane 外界と交通のある臓器の内腔表面を被う被膜
(後述の皮膚とは連続する)
部位により上皮の形状は変化する。
上皮,粘膜固有層(上皮直下の結合組織)
表面は分泌物(粘液)で潤されている。
消化管内腔
呼吸器内腔
尿管・膀胱・尿道内腔
生殖器内腔
眼の結膜など
耳の中耳(鼓室)など
皮膚 skin 表皮・真皮(・皮下組織)からなる。
外界に直接触れる部分を被う臓器
保護作用,支持作用,感覚器,体温調節
皮膚の構造
表皮 epidermis
角化重層扁平上皮からなる部分。
最表層の細胞は扁平で、もはや生きていない。
ケラチンを含む。
最表層の細胞は日々脱落する。→垢
細胞は基底層で生まれ約一ヶ月で更新
真皮 dermis 乳頭層(表皮直下)
毛細血管や触覚受容器などが存在
血管乳頭 神経乳頭
網様層(真皮の深層)
強靱な結合組織 (スウェード)
コラーゲンの塊みたいなもの!
汗腺・皮脂腺・毛根,立毛筋,圧受容
器など
皮下組織 subcutaneous tissue 真皮の直下
疎性結合組織,脂肪組織(皮下脂肪)からなる。
特に足底では、脂肪組織が強靱な結合組織に
囲まれ、クッションとなる。
皮膚の色
メラニン色素の分布と量により決定
メラニン色素を持つのは
表皮基底層細胞
(メラニン細胞(メラノサイト)が
メラニンの基を作り周囲の細胞に分配)
真皮の色素細胞
カロチン色素やビリルビン色素
によっても黄色が強くなる。
皮膚の機能
保護作用
外界からの侵襲や細菌感染を防ぐ
物理的な保護作用
生物的保護作用
光からの保護
支持作用
体内環境の維持
臓器を支持
水分の蒸散を防ぐ
熱の収支調節
真皮の強度,皮下脂肪
汗,重層上皮,免疫
メラニン色素
感覚器としての皮膚
温痛覚・触覚・圧覚の体性感覚受容器が点在
血管網と汗腺 <体温調節の要>
皮膚の血管には動静脈吻合が多い
→状態の変化により血液を
流したり止めたりできる。
汗腺からの汗は気化熱により体温を奪う。
皮膚の付属器
毛髪
爪
脂腺
汗腺
エクリン汗線(小汗腺)
通常の発汗に関与
アポクリン汗腺(大汗腺)
眼瞼・腋窩・会陰部・乳輪などに分布
アポクリン分泌
体の熱生産と体温
熱の出納
生産量 = 放散量
熱の生産
基礎代謝
運動・ふるえ(筋活動)
褐色脂肪組織
熱の放散
放射(輻射) 60%
熱伝導
3%
対流
12%
水分蒸発
25%
不感蒸泄・発汗
温度を感知する受容器
末梢 皮膚
中枢 視床下部(体温調節中枢)
体温を一定にする仕組み。
決められた体温
体温調節中枢にセットポイント
セットポイントからずれたら調節
下がれば 体温を上げる 熱生産↑ 放散↓
上がれば 体温を下げる 熱放散↓
基礎的代謝が体温を生み出す。
身体内部は約37℃が維持されている。
核心温度
直腸温,鼓膜温などが用いられる。
四肢などの末梢では体温は低い
体温は皮膚から放散
外殻温度
腋窩温は核心温度より0.5℃程度低い
体温変動
生理的変化
概日リズムによる変化
日中午後が最も高い
月経周期による変化
発熱とは?
多くの場合生体防御反応
細菌やウイルスに感染
↓
生体防御反応により炎症
↓
白血球がサイトカイン放出 IL-1,IL-6 等
(外敵侵入の合図)
↓
脳がサイトカインを感知し PGE2 を産生
↓
体温調節中枢に作用(セットポイントの上昇)
↓
熱の放出を抑制 体温上昇