4.2 点彩色と4色定理 グラフ彩色に関する二つの問題 H27 グラフ理論 点彩色 辺彩色 隣接している点同士を 別々の色で塗り分ける. 接続している辺同士を 別々の色で塗り分ける. ー第8回ー 彩色問題 1 点彩色に関する用語の定義 2 点彩色の応用(化学薬品の保管問題) グラフ G が k 種類の色で塗り分けられるとき, G は k 彩色可能であるという. G が k 彩色可能でかつ (k-1) 彩色可能でないとき, G は k 染色的であるといい,k を染色数 (χ(G)) と呼ぶ. [例] 2色で彩色可能であるが 1色では不可能 (χ(G) = 2 ) 3色で彩色可能であるが 2色では不可能 ( χ(G) =3 ) 3 n 種類の化学薬品(例えば n=5)を安全に保管したい 薬品によっては化学反応を起こすため同じ場所に 保管できない(酸性とアルカリ性の薬品など) これらを安全に保管するには何カ所の保管場所が 必要か? 4 1 薬品の対応関係 1 1 2 3 4 5 2 3 × × × × × × × × × [グラフ表現] 同じ場所に保管できない ものに辺が定義される 4 5 × × × × × × × 染色数の基本定理 (1)位数 p のグラフ G に対してχ(G) ≦p. 証明:色の数は頂点数以下 2 1 3 5 4 すべての頂点を異なる色で着色すれば かならず塗り分けることができる。 すなわち、χ(G) ≤ p 組み合わせ(x,y)が× ⇔ x,yが隣接(辺がある) ⇔ x,y を別々の色に塗る 右のグラフの彩色数を求めれば 必要な保管場所数がわかる. 図のように彩色数は4なので4つの保管場所が最低必要. 5 染色数の基本定理 (2) H を G の部分グラフとすると,χ(H) ≦χ(G). 6 染色数の基本定理 (3) χ(Kp)=p. 証明:Hの頂点はGに含まれるから 証明:任意の二点に辺があるから ここを赤で塗ると 隣り合う頂点は別の色 H は G の部分グラフであるので G の彩色が H の彩色でもある H K5 任意の頂点は他のすべての 頂点と隣接する G の彩色(染色数3) 7 K5 K5 それまで使った色は 二度と使えない 8 2 染色数の基本定理 (4) Kn が G の部分グラフのとき,χ(G) ≧ n. 染色数の基本定理 (5) G1,…,Gk を G の連結成分とすると, χ(G)=max{χ(G1),…,χ(Gk)}. 証明:上の(2)と(3)より 証明:(2)より G1 G2 χ(G) = max{χ(G1),χ(G2)}= 3 二つの連結成分からなる グラフ G 9 定理4.15 (1) χ(G)=1 ⇔ G=Np. 10 定理4.15 つづき (2) χ(G)=2 ⇔ G は2部グラフであり,G≠ Np. 証明: χ(G)=1 ならば G は辺を持たないから G=Np . 逆もあきらか. 証明:(⇐)G が Np でない2部グラフのときは χ(G)=2 は あきらか.(⇒)また G を彩色するのに1色では不足なら G は Np でない.さらに2彩色されていれば, 同色同士は辺で接続されていないので2部グラフとなる. 辺を持つグラフは2色以上必要 2部グラフ 辺を持たない位数 p のグラフは 空グラフ Np 11 2色で塗り分けることができる ⇕ 辺で結ばれていない2つのグループ に分割できる ⇕ 2部グラフ 12 3 染色数と次数の関係 定理4.17 つづき χ(G)≧3 ⇔ G は奇閉路を含む. 定理4.18: χ(G) ≦Δ(G)+1. 証明: (⇐)奇閉路を彩色するには3色以上必要. (⇒)逆に,Gが奇閉路を含まないならばGは2部グラフ になるのでχ(G)=2になり条件に矛盾する. 奇閉路を含まないグラフは, 偶閉路のみを含むか,閉路を含まない木 であり,図のようにどちらも二分グラフ 奇閉路 (3色必要) 1 2 1 2 1 2 1 1 2 このような辺は 存在しない 1 2 次数の最大値+1 証明 [位数 p に関する帰納法] v を次数 Δ(G) の頂点とすると,G-v は帰納法の仮定により, Δ(G-v)+1 色で彩色可能である. Δ(G-v) ≦ Δ(G) なので,G-v は Δ(G)+1 彩色可能. その色のなかに v の隣接点に現れない色が存在するので, その色で v を塗れば G は Δ(G)+1 彩色可能. × 2 v 1 vの隣接点はΔ(G)+1以下で塗られていて vの次数はΔ(G)以下なので少なくとも1色余る. 13 定理4.25: V(G)={v1,…,vp} とし, deg v1 ≧ …≧ deg vpとする.このとき, 証明:v1,…,vk からなるGの誘導部分グラフが, max 1≦ i≦ k {min{i, deg vi +1 }}色あれば 塗り分けられることを示す.(k に関する帰納法) v1 この定理の意味 v3 v5 v4 頂点を次数の高い順に v1,v2,...と名前を付ける v2 χ(G) ≦ max{ min{1,deg v1 +1}, min{2,deg v2 +1}, min{3,deg v3 +1}, min{4,deg v4 +1}, min{5,deg v5 +1} } = max{1,2,3,4,3} = 4 14 k = 1 のときは1色で塗れるのであきらか. そこで最初の k 個の点が n 色で塗られており, n ≦ max 1≦ i≦ k {min{i, deg vi +1 }}と仮定する.(n ≦k) vk+1 の隣接点でその n 色で塗られていない点が あれば vk+1 をその色で塗れば色数は増えない. そうでないとき n+1 色目で vk+1 を塗る. 15 16 4 (証明のつづき) したがって n+1≦ max 1≦ i≦ k+1 {min{i, deg vi +1 }} ― (1) を示せばよい.(頂点がひとつ増えると染色数もひとつしか 増えないので) (証明のつづき) ここで(2)⇒(1)が成り立つことを示す. αi= min{i, deg vi +1 }と表すと,(1), (2)式は以下のようになる. n+1≦ max{α1, α2, ... , αk+1} ― (1) n +1 ≦ αk+1 ― (2) 常に n≦ k (頂点の数だけ色があれば彩色できる)であるので, 両辺に1を足して n +1≦ k +1 である. (a) αk+1 ≦∃(αi) であるときは, n +1≦ αk+1 ≦ αi ≦ max{α1, α2, ... , αk+1} また,n ≦ deg vk+1であるので,(そうでなければ色が増えない) 両辺に1を足して n+1 ≦ deg vk+1+1. (b) ∀(αi) < αk+1 であるときは, n +1≦ αk+1 = max{α1, α2, ... , αk+1} 以上により, n +1 ≦ min{k +1, deg vk+1 +1} ― (2) となる. 以上によって (2)⇒(1) が成立し,n +1のときも正しい. 17 グラフ彩色を得る比較的よい手法 染色数χ(G)とサイズqに関する定理 定理: 証明: k=χ(G) として,G を k 色で塗り分ける.このとき,異なる 同色集合の頂点間には少なくとも一本の辺がある.そうでない ならば,それら2つの同色集合を同じ色に塗ることができるから. したがって,q ≥ k(k-1)/2 となり,これを k=χ(G) について解く. このような集合をまたぐ辺が ないならば,2頂点は同色で 塗れるはず 18 同色集合 D.J.A ウェルシェ,M.B.パウェル 入力:グラフ G 出力:G の点彩色 方法: ステップ1:まだ塗っていない頂点から最大次数 の頂点 v を選ぶ. ステップ2:これまでに使った色で,v に隣接する 頂点に使われていないものがあったらその色で v を塗り,そうでないなら新しい色で v を塗る. ステップ3:まだ塗られていない頂点があるときは ステップ1へ戻る. ※一般のグラフに対して染色数を計算する良い方法は 知られていない (NP-困難:おそらく不可能) 19 20 5 平面グラフの彩色問題 4色予想:平面グラフは4彩色可能である. 4色予想:平面グラフは4彩色可能である. アッペルとハーケンによる証明のアイディア どのような平面グラフにも必ず含まれるような部分グラフ の集合を考える (不可避集合と呼ぶ) 例えば頂点ひとつだけからなる集合は不可避集合 うまい不可避集合を作れる:その不可避グラフを取り除い たグラフが4色で塗れるなら,グラフ全体も4色で塗れる. (不可避集合の可約性) 不可避集合に含まれるグラフ:これを取り除いて 4色で塗れるならば、Gは4色で塗れる ロシア連邦の塗り分け G’ G 人工的な地図の塗り分け 21 4色定理の証明は非常に複雑であるが,その基本的アイディアは より易しい命題の証明に現れている 4色定理:証明の概略 22 定理: 平面グラフは6彩色可能である. アッペルとハーケンによる証明 不可避集合のすべてのグラフ(およそ2000種類)がすべて 4色で塗り分けることができることを証明 5色必要な平面グラフが存在すると仮定し,そのようなグ ラフで最小のものを G とする. G は不可避グラフを含み,それを取り除いたものを G’ と すると,G’ は4色で彩色できない.(なぜならば,可約性の 対偶も成り立つから) しかしながら,G は4色で彩色できない最小のグラフであ ることに反する(それより小さい G’ が存在する) よって仮定は誤りである 23 証明:帰納法で示す. n-1点以下で成り立つとするとき,n 点の平面グラフは 次数が5以下の点があるので,そのなかの1点を v とし, v を取り除いたグラフを6色以下で塗り分ける. v に隣接する点は5点以下なので,余った1色で v を塗ると n 点のグラフ全体を6色で塗り分けられる. v1 v5 v v4 v2 v3 24 6 定理4.22: 平面グラフは5彩色可能である. v1 から v5 までがそれぞれ1~5までの色で 塗られているとする.色1と3のみで塗られた 頂点からなる部分グラフ H13 を考える. 証明:グラフ G の位数に関する帰納法で示す. 位数が5以下についてはあきらかなので, 位数 p-1 以下について正しいと仮定し,G を位数 p のグラフとする.G には次数が5以下の点 v がある. 仮定より G-v は5色で塗られている. v の次数が4以下ならば1色余るのでその色で v を 塗ることができる.そこで,v の次数を5とし, v に隣接している頂点を時計回りに v1,…,v5 とする. v5 ケース1:v1 と v3 が H13 の 異なる連結成分に含まれるとき.(上図) v3 が含まれる方の成分の 1と3を入れ替えることができ, v1 と v3 は共に色1で塗られるので, v を3で塗ることができる.(下図) v4 v3 2 26 v1 v5 H13 1 1 v2 v v4 v3 3 3 1 3 1 4 1 v1 v5 4 v v2 v 3 3 2 3 v4 1 4 4 1 2 v2 3 v3 2 4 2 1 3 2 2 3 1 3 1 v4 3 1 1 3 4 v3 3 3 ケース2:v1 と v3 が H13 の同じ連結成分 に含まれるとき. v1 から v3 への閉路が存在する.(右図) v2 と v4 はこの閉路によって異なる 領域に分割されるので,前と同様に 色を入れ替えることで1色余り,その色で v を塗ることができる.(下図) (証明終) v4 v4 H13 v2 1 25 1 v 1 1 v3 v2 v v1 3 v1 v1 v5 v5 3 1 4 4 2 3 1 2 4 3 1 H24 27 3 7
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