わかりやすい土地読本 - 一般財団法人 土地情報センター

《目 次》
はじめに
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化 ……………… 1
1. 不動産市場を取り巻く我が国経済の動向 …………………… 2
2. 地価の動向 ……………………………………………………… 4
3. 土地取引の動向 ………………………………………………… 11
4. 不動産投資市場の動向 ………………………………………… 14 第2節 さまざまな土地政策 ………………………………………… 17
1. 土地政策の経緯と今後の方向 ………………………………… 18
2. 土地情報の整備・提供の推進 ………………………………… 22
3. 土地の適正な利用の推進 ……………………………………… 44
4. 土地や建物に対する税制 ……………………………………… 46
5. 不動産鑑定評価制度の充実 …………………………………… 48
6. 公共用地の取得 ………………………………………………… 50
はじめに
土地は、国民生活や企業の活動などに不可欠な基盤であり、貴重
な資源です。土地が適正に取引されなかったり、有効に利用されな
かったりすれば、我が国の経済・社会にとっても望ましいことでは
ありません。
では、現在の我が国の土地がどのような状況にあり、どのような
施策が講じられているのか、ご存じでしょうか?
本書はそれらをわかりやすく説明することを目的として作成され
ました。皆様が土地についてあらためて考え、土地政策に対するご
理解を深める機会として、広くご活用いただければ幸いです。
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
第1節
社会経済の変化と
土地に関する動向の変化
ここでは、これまでの社会経済の変化によって、
土地市場がどのような影響を受けてきたかをみて
いきます。あわせて、地価や土地取引の動向や、
土地利用をめぐる新たな動きや取組についてみて
いきます。
1
1.不動産市場を取り巻く我が国経済の動向
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
地価、土地取引等不動産市場の動向は、人口や世帯数、産業構造等の構造
的要因に加え、その時々の景気や、企業・家計の活動状況等の短期的要因に
左右されます。
平成26年度の我が国経済の動向を振り返ると、消費税率引上げに伴う駆
け込み需要の反動減等により、年度当初に個人消費等に弱さが見られたもの
の、年度を通じて緩やかな回復基調が見られました。
平成26年度における我が国の景気について、実質GDPの推移を見ると、
平成26年4-6月期及び7-9月期には前期比でマイナス成長となったものの、
10-12月期以降はプラス成長となっています(図表1-1)。
企業の資金調達環境については、日本銀行による金融緩和の拡大等を背景
に状況の改善が続いています。日本銀行の「全国企業短期経済観測調査(日
銀短観)」における資金繰り判断DIの推移を見ると、全産業では、平成22
年10-12月期以降、18四半期連続してプラスで推移しており、不動産業に
ついても前年に引き続き堅調に推移しています(図表1-2)。
また、企業の設備過剰感については、生産・営業用設備DIの推移を見る
と、製造業・非製造業ともに平成21年から低下傾向が続いています(図表
1-3)。
図表1-1 実質 GDP 成長率と寄与度の推移(前期比)
消費
住宅
設備投資
在庫品増加
公的需要
輸入
輸出
実質GDP成長率
(%)
4 2.7 2 1.7 0.7 1.7 1.5 1.5 1.1 0 1.0 0.2 0.1 -­‐0.5 -­‐1.2 -­‐1.1 -­‐0.6 1.3 0.7 0.5 -­‐0.1 -­‐0.5 -­‐0.4 1.0 0.3 -­‐0.5 -­‐1.7 -­‐1.9 -­‐2 1.1 -­‐0.2 -­‐3.3 -­‐4.0 -­‐4 -­‐6 -­‐8 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ (期)
平成20 21 22 23 24 資料:内閣府「四半期別GDP速報」(平成27年1月-3月期(2次速報値)) 2
25 26 27 (年)
図表1-2 資金繰り判断 DI の推移
全産業 不動産業 第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
(%ポイント)
15 12 10 10 10 6 5 0 4 4 4 4 3 0 2 2 -3 2 2 2 2 1 0 -9 -10 -11 0 -5 -6 -2 -2 -4 -8 -5 -5 7 10 4 4 2 -1 9 6 5 2 -2 -5 -5 1 8 8 7 3 4 0 -4 -7 -12 -17 -9 -13 -15 -15 -16 -15 -20 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ 平成20 21 22 23 24 25 26 (期) 27 (年)
資料:日本銀行「全国企業短期経済観測調査」 注:DIは「楽である」(回答社数構成比)-「苦しい」(回答社数構成比)。 図表1-3 生産・営業用設備 DI の推移
製造業
(%ポイント)
40 36 36 35 非製造業
34 30 30 25 25 19 20 14 15 10 5 0 -5 6 0 2 14 14 8 9 8 7 7 6 2 2 0 1 12 13 12 10 10 11 11 14 14 12 10 8 5 5 4 3 2 4 3 3 3 3 2 1 2 1 0 0 0 -­‐1 -­‐3 -­‐4 -­‐2 -­‐2 -­‐2 -­‐2 -10 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ (期) 平成20 21 22 23 24 25 26 27 (年) 資料:日本銀行「全国企業短期経済観測調査」 注:DIは「過剰」(回答社数構成比)-「不足」(回答社数構成比)。 3
2.地価の動向
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
(1)地価の長期的な動き
まず、地価の長期的な動きを表す下の図を見てみましょう。
図表1−4 長期的な地価の動向
①戦後1回目の地価高騰:高度成長に伴う第2次産業の急速な発展、旺盛な民間企業の設備
投資
大都市、工業地中心の地価上昇
②戦後2回目の地価高騰:列島改造ブームの中、企業の事業用地取得や大都市への人口集中
等による旺盛な土地需要の発生、投機的な土地需要の増大
農林地を含め全国的に地価上昇が拡大
土地神話の一般化
4
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
③戦後3回目の地価高騰:金余り状況を背景とし、(1)東京都心部での業務地需要の増大、
(2)周辺住宅地における買換え需要の増大、(3)投機的取引の増大
東京都心部から周辺住宅地へ、さらには大阪圏、名古屋圏、地方
圏へと波及
実線:地価公示(東京圏・全用途平均)対前年変動率(国土交通省)
※地価公示は昭和 45 年から始まりました。
破線:市街地価格指数(六大都市全用途平均)各年9月末の対前年変動率
((財)日本不動産研究所)
5
(2)昭和 30 年代、40 年代の地価上昇と「土地神話」の形成
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
6
昭和 30 年から平成3年までの地価動向について見ると、ほぼ一貫して地
価が上がっていることがわかります(図表 1-4、1-5)。その中でも、地価
が大きく上がった時期が3回ありました。
1回目の地価高騰は、高度経済成長を背景として、昭和 30 年代半ばに起
こりました。この時期に第2次産業が急速に発展し、民間企業が積極的に設
備投資を行い、
工業用地の需要を急速に拡大させたことなどによるものです。
2回目の地価高騰は、昭和 47 年・48 年を中心に起こりました。企業の
事業用地に対する需要、大都市への人口集中に伴う宅地需要の増大に加え、
国際金融情勢に由来する過剰流動性(注 1-1)や、当時の「列島改造ブーム」
を受け、開発により地価が上がることを見越しての投機的な土地需要が増大
したことなどがその要因とされています。
こうして、土地は持っているだけで価値が上がる有利な資産だという「土
地神話」が形成されていきました。
(注 1-1)当時経済力の低下していたアメリカが、金やその他の資産とドルとの交換を停
止した(ニクソン・ショック)ため、ドルの信用が下がり、ドルを売って円を
買う動きが起こり、これに対応した通貨政策の過程で、通貨が正常な経済活動
に必要な量以上に出回り(過剰流動性)、貨幣価値が下がり、物価が大きく上が
りました。
(3)バブル期の地価上昇とその後の地価動向
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
3回目の地価高騰は、昭和 60 年代のいわゆるバブル経済によって起こり
ました。それまでに定着していた「土地神話」はバブル経済の発生・拡大に
大きな影響を及ぼし、地価が上がることに対する過剰な期待感から、企業等
による投機的な土地取引が頻発しました。
その後バブルの崩壊に伴い地価が下がりはじめ、全国平均では平成4年か
ら 15 年連続で下がり続けた後、平成 19 年・20 年地価公示において2年連
続しての上昇を見せましたが、平成 21 年地価から再び下落に転じ、27 年
では、商業地が横ばいに転じています。(図表 1-4、1-5、1-6、1-7)。
図表1-5 全国における地価の変動率
7
図表1-6 三大都市圏における地価の変動率
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
8
図表1-7 地方圏における地価の変動率
(4)最近の地価の動き
図表1-8 平成 27 年地価公示 対前年変動率
全国
三大都市圏
東京圏
大阪圏
名古屋圏
地方圏
平成
25 年
△ 1.6
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.9
0.0
△ 2.5
住宅地
平成
26 年
△ 0.6
0.5
0.7
△ 0.1
1.1
△ 1.5
平成
27 年
△ 0.4
0.4
0.5
0.0
0.8
△ 1.1
平成
25 年
△ 2.1
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.3
△ 3.3
商業地
平成
26 年
△ 0.5
1.6
1.7
1.4
1.8
△ 2.1
図表1-9 半年毎の地価変動率の推移
住宅地
商業地
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
①地価の変動率
地価公示制度については 34 ページをご覧ください。
平成 27 年1月1日時点の地価公示によると、全国では平成 26 年1月以
降の地価は、住宅地が下落率は縮小し、商業地は横ばいとなっています。
半年毎の地価動向を都道府県地価調査(7月1日の地価を調査)との共通
の調査地点でみると、全国の住宅地は前半 0.3%の上昇、後半は 0.2%の上昇。
また、商業地は前半・後半ともに 0.5%の上昇となっています。
(単位:%)
平成
27 年
0.0
1.8
2.0
1.5
1.4
△ 1.4
(単位:%)
26 公示
27 公示
26 公示
27 公示
前半 後半 前半 後半 前半 後半 前半 後半
全国
0.1
0.3
0.3
0.2
0.1
0.4
0.5
0.5
三大都市圏
0.5
0.6
0.5
0.4
0.9
1.3
1.1
1.2
東京圏
0.6
0.6
0.5
0.4
0.8
1.2
1.2
1.2
大阪圏
0.1
0.2
0.3
0.2
0.9
1.4
1.2
1.1
名古屋圏
1.2
1.2
0.9
0.7
1.1
1.3
0.9
1.0
地方圏
△ 0.4 △ 0.2
0.0
0.0 △ 0.8 △ 0.5 △ 0.2 △ 0.1
9
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
②主要都市の高度利用地地価動向報告(地価 LOOK レポート)
国土交通省では、四半期に一度、全国の主要都市の地価動向を先行的に
表しやすい高度利用地のうち 100 地区を対象に地価動向を調査し公表して
います。100 地区には、高層住宅等により高度利用されている地区や店舗、
事務所等が集積している地区が選定されています。
平成 27 年第1四半期の地価動向は、金融緩和等を背景とした高い不動産
投資意欲や、生活利便性が高い地区におけるマンション需要等により、上昇
地点数が全体の約8割強を占め、地価の上昇基調の継続が見られます。(図
表 1-10)
図表1-
10 総合評価(変動率)地区数一覧
〈総合評価 上昇・
横ばい・下落の地区数一覧
(全地区)〉
上昇
四半期
6%以上
3%以上
6%未満
横ばい
0%超
3%未満
0%
0%超
3%未満
3%以上
6%未満
6%以上
9%未満
9%以上
12%未満
横計
12%以上
19年第4
5(5.0%) 47(47.0%) 35(35.0%) 11(11.0%)
2(2.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
100(100.0%)
20年第1
0(0.0%)
5(5.0%) 36(36.0%) 50(50.0%)
7(7.0%)
1(1.0%)
1(1.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
100(100.0%)
20年第2
0(0.0%)
0(0.0%) 13(13.0%) 49(49.0%) 28(28.0%)
8(8.0%)
2(2.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
100(100.0%)
20年第3
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%) 22(14.7%) 79(52.7%) 43(28.7%)
6(4.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
20年第4
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
2(1.3%) 33(22.0%) 74(49.3%) 25(16.7%)
12(8.0%)
4(2.7%)
150(100.0%)
21年第1
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
2(1.3%) 37(24.7%) 67(44.7%) 36(24.0%)
4(2.7%)
4(2.7%)
150(100.0%)
21年第2
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
3(2.0%) 67(44.7%) 55(36.7%) 22(14.7%)
3(2.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
21年第3
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
3(2.0%) 81(54.0%) 53(35.3%)
9(6.0%)
3(2.0%)
1(0.7%)
150(100.0%)
21年第4
0(0.0%)
0(0.0%)
1(0.7%)
5(3.3%) 88(58.7%) 46(30.7%)
9(6.0%)
1(0.7%)
0(0.0%)
150(100.0%)
22年第1
0(0.0%)
1(0.7%)
1(0.7%) 25(16.7%) 86(57.3%) 36(24.0%)
1(0.7%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
22年第2
0(0.0%)
1(0.7%)
3(2.0%) 41(27.3%) 92(61.3%) 13(8.7%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
22年第3
0(0.0%)
1(0.7%)
1(0.7%) 61(40.7%) 82(54.7%)
5(3.3%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
22年第4
1(0.7%)
0(0.0%) 15(10.0%) 54(36.0%) 75(50.0%)
4(2.7%)
1(0.7%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
23年第1
0(0.0%)
0(0.0%)
2(1.4%) 46(31.5%) 92(63.0%)
5(3.4%)
1(0.7%)
0(0.0%)
0(0.0%)
146(100.0%) (注1)
23年第2
0(0.0%)
0(0.0%)
7(4.8%) 53(36.3%) 85(58.2%)
1(0.7%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
146(100.0%) (注1)
23年第3
0(0.0%)
0(0.0%) 11(7.3%) 61(40.7%) 78(52.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
23年第4
0(0.0%)
0(0.0%) 16(10.7%) 70(46.7%) 63(42.0%)
1(0.7%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
24年第1
0(0.0%)
1(0.7%) 21(14.0%) 80(53.3%) 48(32.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
24年第2
0(0.0%)
1(0.7%) 32(21.3%) 82(54.7%) 35(23.3%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
24年第3
0(0.0%)
1(0.7%) 33(22.0%) 87(58.0%) 29(19.3%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
24年第4
0(0.0%)
3(2.0%) 48(32.0%) 74(49.3%) 25(16.7%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
25年第1
0(0.0%)
2(1.3%) 78(52.0%) 51(34.0%) 19(12.7%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%) (注3)
25年第2
0(0.0%)
2(1.3%) 97(64.7%) 41(27.3%) 10(6.7%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
25年第3
0(0.0%)
1(0.7%)106(70.7%) 34(22.7%)
9(6.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
25年第4
0(0.0%)
3(2.0%)119(79.3%) 22(14.7%)
6(4.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
26年第1
0(0.0%)
1(0.7%)118(78.7%) 27(18.0%)
4(2.7%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%) (注4)
26年第2
0(0.0%)
2(1.3%)118(78.7%) 28(18.7%)
2(1.3%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
26年第3
0(0.0%)
2(1.3%)122(81.3%) 26(17.3%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
26年第4
0(0.0%)
2(1.3%)123(82,0%) 25(16.7%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
150(100.0%)
27年第1
0(0.0%)
2(2,0%) 82(82,0%) 16(16.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
0(0.0%)
100(100.0%) (注5)
※※四半期は、第1:1/1~4/1、第2:4/1~7/1、第3:7/1~10/1、第4:10/1~1/1
※数字は地区数、
( )はその割合
※ は、各期・各圏域ごとに最も地区数の多い変動率区分、
は、2番目に地区数の多い変動率区分
10
下落
(注1) 4地区(仙台市3地区及び浦安市1地区)を除いて集計している。
(注2) 対象地区を7地区変更した(東京圏3地区、大阪圏1地区及び地方圏3地区。
商業系地区が1地区減少し、住宅系地区が1地区増加)。
また、1地区(名古屋圏)
を商業系地区から住宅系地区に変更した。
(注3) 対象地区を1地区変更した(地方圏の商業系地区1地区)。
(注4) 対象地区を2地区変更した(東京圏の商業系地区1地区と住宅系地区1地区)
。
(注5) 対象地区を50地区廃止した(商業系地区38地区と住宅系地区12地区)
。
3.土地取引の動向
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
①売買による土地取引件数
土地取引について、売買による所有権の移転登記の件数でその動向を見る
と、平成 26 年の全国の土地取引件数は 125.7 万件(対前年比 1.9%減)と
なり、3年ぶりに減少しました(図表 1-11)
。
図表1- 11 売買による土地取引の件数の推移
東京圏
(万件)
大阪圏
名古屋圏
地方圏
全国
400 350 351 329 300 250 200 150 100 50 0 288 290 281 276 265 260 251 250 254 256 242 241 227 226 221 226 222 219 213 215 213 200 196 196 192 189 182 177 184 185 185 171 167 165 169 174 167 170 172 170 164 163 160 161 160 158 155 156 148 148 145 142 144 140 135 131 136 138 129 128 126 126 120 120 120 118 112 118 115 114 120 103 100 96 92 88 86 84 82 79 75 69 62 61 59 63 68 67 57 55 57 52 49 47 52 50 49 49 52 48 48 47 46 46 45 45 45 44 43 42 42 42 41 38 41 44 43 43 40 42 41 38 36 35 3
4 33 33 36 37 36 33 31 32 32 32 27 25 27 28 31 27 26 26 24 24 23 24 26 23 24 22 28 21 21 22 25 19 23 22 20 21 21 20 20 21 21 21 20 18 16 14 14 14 15 15 15 17 23 15 19 14 14 15 15 15 15 14 13 12 12 12 12 13 12 12 20 12 16 11 15 10 9 10 10 10 10 9 10 9 9 9 8 9 9 9 9 8 7 7 7 7 8 8 昭和 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 平成 2 45 元
3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (年)
資料:法務省「法務統計月報」 注:地域区分は以下のとおり。 東 京 圏:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県 名古屋圏:愛知県、三重県 大 阪 圏:大阪府、京都府、兵庫県 地 方 圏:上記以外の地域 11
②企業の土地取引状況に関する意識
企業の土地取引に関する意識について、国土交通省が実施している「土地
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
取引動向調査」によると、現在の本社所在地の土地取引の状況に対する判断
に関する DI(活発と回答した企業の割合から不活発と回答した企業の割合
を差し引いたもの)は、東京 23 区内ではほぼ横ばいですが、大阪府は低下し、
平成 27 年2月調査においては、東京 23 区内で 23.7 ポイント、大阪府内
で 7.1 ポイントとなっています。
図表1- 12 現在の土地取引状況の判断に関する DI
(%ポイント)
東京23区
大阪府
60
40
46.0 39.8 39.0 31.7 (%ポイント)
東京23区
60
20
40
0
20
-20
0
-40
-20
13.4 -2.2 -13.9 31.7
15.5 13.3
-2.2
-13.9
-8.4 -33.4 -47.5 15.5
-100
15.5 11.0 7.1 3.4
-10.0
-8.4
-18.7
-56.0 -60.4
-63.2
-40-62.6
-1.6 -24.3 -10.0 -18.7 -34.5-33.4
25.1 24.8 23.7 9.4 3.4 36.737.5
30.1
-47.5
-34.5
-62.6-52.6 -60.4 -63.2
-63.1 -60
-52.6
-80
-72.9-70.5
-63.1
-76.6 -80
-70.5
-76.6-72.9
-60
大阪府
36.7 37.5 46.0
39.8
39.0
30.1 -40.0 -42.3-37.6
-24.3
-25.9
-28.0
-28.0
-47.5 -40.0 -42.3
-53.4 -56.0
-67.2
-68.9
-66.1-79.1
-48.2-50.0
-53.4
-52.9
-63.9
-67.2
-68.8
-68.1 -47.5
-37.6
-25.9
-48.2-50.0
-52.9
-79.1
-63.9
-77.6
-66.1
-68.1
-83.5 -77.5
-83.5
-100
平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成
3 15年
9 16年
3 16年
9 17年
3 17年
9 18年
3 18年
9 19年
319年
920年
320年
921年
321年
922年322年923年23年
3 24年
9 24年
3 25年
9 25年
3 26年
8 26年
2 (月)
14年14年15年
27年
3月9月3月9月3月9月3月9月3月9月3月9月3月9月3月9月3月9月3月9月3月8月2月8月2月8月2月
平成14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
(年)
資料:国土交通省「土地取引動向調査」
注1:DI=「活発」-「不活発」
注2:「活発」、「不活発」の数値は、「活発」と回答した企業、「不活発」と回答した企業の全有効回答数に
対するそれぞれの割合(%)。
12
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
また、同調査の結果から企業の土地取引に対する意識を見てみると、今後
1年間の土地の購入・売却の意向に関する DI(
「土地の購入意向がある」と
回答した企業の割合から「土地の売却意向がある」と回答した企業の割合を
差し引いたもの)は、平成 27 年2月調査で全国では -6.9 ポイント(平成
26 年2月調査は -8.3 ポイント)に推移しました(図表 1-13)。
図表1- 13 今後 1 年間の土地の購入・売却意向に関する DI(物件所在地別)
5 0 全国
全体
(%ポイント)
東京23区
東京23区
大阪府
その他の地域
大阪府
その他の地域
5
-­‐0.6 -­‐0.3 -­‐0.6 -­‐0.7 0
0.3 0.3 -0.7
0.3
0.3
-­‐1.3 -­‐1.6 -­‐1.6 -0.6 -0.3 -0.6
-1.0 -1.3
-2.1 -1.3 -0.6 -1.3
-­‐2.5 -­‐2.7 -­‐2.1 -0.7 -1.5
-1.9 -2.0 -2.1-­‐0.6 -­‐0.7 -1.8
-­‐1 -­‐3.3 -­‐3.4 -­‐3.4 -2.7 -2.5 -2.7-­‐1.3 -­‐1.3 -­‐1.5 -2.9
-­‐1.8 -­‐1.5 -­‐1.7 -3.4 -3.3 -3.4 -3.4 -­‐1.9 -3.4 -­‐2 -­‐2.1 -4.3 -3.5 -­‐2.7 -­‐3.4 -­‐3.5 -­‐3.4 -­‐5 -5
-­‐4.3 -­‐6.6 -­‐1.9 -1.9
-­‐2.9 -­‐8.4 -­‐10 -10
-8.4
-­‐9.2 -8.7
-­‐7 -­‐9.4 -9.3
-­‐9.6 -9.2
-­‐7.9 -9.6
-­‐10.3 -10.3
-10.1
-­‐8.7 -10.5
1.4 0.9 0.1 0 0.3 0.2 0.3
-­‐0.2 -­‐0.7 -­‐0.6 -­‐0.8 0.3
-0.6 -0.2 -0.6
0.0
-0.4
0.6 -0.6
-0.7
0.3 -1.5 -1.6
-1.0
0.1 0 -­‐0.3 -1.4
-­‐0.4 -0.8
-­‐0.6 -1.6 -­‐0.6 -­‐1.4 -1.7 -­‐1 -­‐6.5 -7.4
-6.5
-­‐7.5 -­‐7.4 -­‐7.4 -7.1
-­‐5.8 -­‐8.2 -7.4
-7.4 -­‐6.5 -­‐6.5 -­‐6.9 -7.5
-­‐7.1 -­‐7.4 -9.4
-­‐9.9 -9.9 -10.3 -9.4
-­‐10.3 -­‐8.3 -­‐10.6 -­‐10.9 -10.4-­‐10.7 -10.8 -9.9 -10.7 -10.3
-10.6 -10.9-­‐9.4 -­‐9.9 -­‐10.3 -­‐10.4 -­‐10.8 -­‐13.1 -­‐13.4 -7.9
-6.6
-7.0
-­‐9.3 -­‐10.1 -­‐10.5 -­‐12.9 -12.9
-­‐13.5 -13.4
-­‐13.5 -13.5
-14.6 -14.0 -13.5
-14.5 -14.7
-­‐14.6 -14.6
-15
-­‐15.2 -15.2
-­‐15.4 -15.4
-­‐13.4 -­‐16.1 -16.1 -15.8
-­‐15 -­‐14 -16.6
-16.8 -­‐14.5 -­‐14.7 -­‐14.6 -­‐17.1 -17.1
-18.6 -­‐15.8 -­‐16.6 -­‐16.8 -20
-­‐19.7 -19.7
3
9
3
9
3
9
3
9
3
9
3
9
3
9
3
9
3
9
3
9
3
8
2
-­‐18.6 -­‐20 15
16 H17/9 17 H18/9 18 H19/9 19H20/9 20
21 H23/3 22 H24/3 23 H25/2 24H26/2 25
平成14
H14/3 H14/9 H15/3 H15/9 H16/3 H16/9 H17/3 H18/3 H19/3 H20/3 H21/3 H21/9 H22/3 H22/9 H23/9 H24/8 H25/8 (月)
(年)
資料:国土交通省「土地取引動向調査」
注1:DI=「購入意向」-「売却意向」
注2:「購入意向」、「売却意向」の数値は、土地の購入意向が「ある」と回答した企業、土地の売却意向が「ある」と回答した企業の全有効回
答数に対するそれぞれの割合(%)。
13
4.不動産投資市場の動向
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
不動産投資市場において、不動産証券化というスキームを用いて組成され
る投資商品が発達を遂げてきました。ここでは、不動産証券化について詳し
くご紹介いたします。
①不動産の証券化とは
不動産の流動化・証券化は、資金調達の一手法であり、オフィス、商業施
設やホテルなどの賃貸不動産が生み出す賃料や売却益などの収益に着目し、
これを裏付けとして証券を発行し、不動産から得られる収益を投資家に分配
する仕組みです。投資家からすれば、少額でも不動産に投資することが可能
となる仕組みと言えます。
②不動産証券化の意義
不動産証券化は、金融・資本市場から不動産市場への資金の流入を活発化
させ、都市・地域再生の促進を行うとともに、投資家に多様な投資機会を提
供してきました。
また、不動産の所有者にとっても、不動産の証券化によって不動産保有を
目的とする器に不動産を譲渡し、バランスシートから切り離す(オフバラン
ス)ことができます。
資金調達の意義としては、例えば良質な資産を保有しており、当該資産の
信用力が所有者の信用力よりも高い場合に当該資産の信用力を用いた資金調
達も可能となります。
③不動産証券化市場の動向
国土交通省が実施している「不動産証券化実態調査」の結果から不動産証
券化の状況を見てみると、平成 26 年度に不動産証券化の対象として取得さ
れた(証券化ビークル等(注 1-2)が取得した)不動産又はその信託受益権
の額は約 5.5 兆円で、5年連続の増加となっています。これは、リートや
GK-TK スキーム等による取得額が、それぞれ約2兆円と高水準であったこ
とが大きく影響しています。
(注 1-2)リート、特定目的会社、GK-TK スキーム等における GK 等及び不動産特定
共同事業者をいう。リートには非上場の投資法人を含む。
14
証券化のフロー図
図表1- 14 不動産証券化のフロー図
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
図表1- 15 不動産証券化の実績の推移
産証券化の実績の推移
(J-REIT)市場について
東京証券取引所に不動産投資信託(Jリート)市場が開設され、
人投資家にとっても資産運用の幅が広がりました。平成 22 年3月
れ、約 972 万口、時価で約2兆 9514 億円の投資証券が流通して
に下落基調に転じたJリート市場ですが、Jリートの物件取得額
から、保有物件数については平成 21 年下期から増加に転じてい
21 年度には新規上場は見られませんでしたが、Jリート創設以来
り、Jリート市場の再編が進められています。
15
第1節 社会経済の変化と土地に関する動向の変化
④ J リート(J − REIT)市場について
平成 13 年に東京証券取引所に不動産投資信託(J リート)市場が開設さ
れ、機関投資家だけでなく個人投資家にとっても資産運用の幅が広がりまし
た。平成 27 年 3 月末時点で 51 銘柄が上場し、時価総額は、平成 27 年 5
月末時点で約 10 兆 8,600 億円に達し、市場創設以来、過去最高を更新しま
した。なお、平成 27 年 4 月以降、2 銘柄が上場し、平成 27 年 7 月末時点
では 53 銘柄が上場しています。
さらに、J リートによる資産取得額を見ると、平成 26 年は約 1 兆 6,000 億
円となり、過去最高であった平成 25 年(約 2 兆 2,000 億円)に及ばない
ものの、依然として堅調でした。
図表1- 16 Jリートの物件取得額の推移
<Jリートの資産取得額の推移
(平成15年第2四半期~平成26年第4四半期)>
(億円)
H25合計
9,000 22,334
8,000 7,000 H26合計
6,000 15,763
5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
(不動産証券化協会HPを基に作成)
16
第2節
第2節 さまざまな土地政策
さまざまな土地政策
バブル崩壊後の地価の下落を経て、土地政策の
目標は、かつての「地価抑制」から「土地の有効
利用」へと大きく転換しました。この目標を実現
するため、さまざまな土地政策が実施されていま
す。ここでは、土地をめぐる状況の変化にも触れ
つつ、個々の土地政策をご紹介していきます。
17
1.土地政策の経緯と今後の方向
(1)
地価抑制のための土地政策と土地基本法の制定
第2節 さまざまな土地政策
バブル期には土地への投機的な投資が行われたため、様々な社会的、経済
的な問題を引き起こしました。このため、当時の土地政策の目標は地価の抑
制でした。
例えば、投機的な土地取引を規制するために、昭和 62 年の国土利用計画
法改正において監視区域(注 2-1)制度を創設し、指定された区域内では、
それまで届出制の対象となっていなかった小規模な土地取引等についても、
届出を義務づけることができることとしました。
また、土地に対して、株式など他の資産よりも重い税を課しました。課税
対象は、土地の保有そのもの(保有課税)、土地を譲渡した時の利益(譲渡
益課税)
、新しく土地を取得した場合(取得課税)など、土地取引のあらゆ
る場面にわたっています。
平成元年 12 月には「土地基本法」を公布・施行し、次のように、土地に
ついての基本理念を明らかにしました。
(1)土地についての公共の福祉の優先
(2)適正な利用及び計画に従った利用
(3)投機的取引の抑制
(4)価値の増加に伴う利益に応じた適切な負担
(注 2-1)地価が急激に上昇するか上昇のおそれがあり、そのために適正で合理的な土地利
用の確保が困難となるおそれがあると認められる地域に対して、都道府県知事等
が5年以内の期間を定めて監視するように指定した区域のことです。
18
(2)「地価の抑制」から「土地の有効利用」へ
第2節 さまざまな土地政策
バブル崩壊後、地価が下がり続ける過程で、土地市場が実際の利用価値に
基づいた市場へと変化しています。この変化に対応し、ゆとりある住宅・住
環境の形成、快適で安心できるまちづくり・地域づくりを行っていくために、
土地政策の新たな展開が強く求められています。
政府は、平成9年2月に「新総合土地政策推進要綱」を閣議決定し、土地
政策の目標を地価の抑制から土地の有効利用へと転換するとともに、次のよ
うに、今後推進していくべき土地政策の基本的指針を示しました。
(1)適正な土地利用推進のための土地利用計画の整備・充実
(2)土地の有効利用の促進
(3)土地の有効利用に向けた土地取引の活性化の促進
(4)土地の有効利用促進のための土地税制等
(5)機動的な地価対策のための体制の整備等
(6)国土政策との連携
(7)土地に関する基本理念の普及・啓発
(3)「土地政策の再構築」について
平成 17 年 10 月に、国土審議会土地政策分科会企画部会において、それ
までの土地政策を検証した上で、新たな社会経済のニーズを踏まえた今後の
政策の方向性について検討が行われ、「土地政策の再構築」としてまとめら
れました。
その中では、我が国が国民の暮らしの質を高め、持続的な経済成長を実現
していくためには、さまざまな活動の基盤となる資産である土地が、真に適
正に利用しようとする意思と能力のある個人や企業へと円滑に移転し、次の
ように再編・再生されていくことが示されました。
①幅広い市場参加者が確保され、円滑な取引が行われるようにするため、
透明で効率的な土地市場の整備を進める。
②環境や景観といった、市場の機能では十分対応できない効用も総合的に
考慮し、適正な土地利用の実現のための施策を進める。
19
(4) 今後の土地政策の方向
~「土地政策の中長期ビジョン」について~
平成 21 年7月に、国土審議会土地政策分科会企画部会において、不動産
に対する需要の変化など今後の日本の不動産の姿を描きつつ、国民生活を豊
かにするための不動産や市場のあり方、政策の方向性について、以下の概要
のとおり、
「土地政策の中長期ビジョン」をとりまとめたところです。
第2節 さまざまな土地政策
1.現在、利用価値を中心とする不動産市場の形成や人口減少・少子高齢化
等といった土地をめぐる状況の変化に対応し、豊かな国民生活の実現を
図るため、国民の不動産に対する多様なニーズに応える質の高い不動産
を形成していく、すなわち、不動産の利用価値を高めていくことが求め
られています。
2.また、不動産は我が国経済の中で量的に大きな存在である(総資産約
8,428 兆円のうち、不動産は約 2,267 兆円(平成 21 年度))が、既存ストッ
クの質は必ずしも十分ではない(例えば、旧耐震基準のビルが、主要都
市の大規模ビルの 32%を占める(平成 21 年度))。また、莫大な個人
金融資産(約 1,504 兆円(平成 21 年度))のうちストック再生などの
不動産に回る資金は限定的であります。
3.このため、
○個人の市場行動の変化に対応するための、消費者の視点に立ったス
トックの活用
○企業・行政の市場行動の変化に対応するための、CRE・PRE 等の普
及推進
○地域の課題に対応し、まちの価値の維持・向上を図るためのエリアマ
ネジメントの推進などを図っていく必要があります。
20
第2節 さまざまな土地政策
4.また、市場の機能変化に対応し、
○不動産に関する情報の整備・提供
○不動産市場における中長期の安定的な資金の確保
○不動産市場を支えるビジネス・人材の育成
○不動産税制の再構築、不動産に関する法制度の検討・見直し、急激な
地価変動への対応
などについても図っていく必要があります。
5.さらに、新たな政策課題とその対応として
○環境、安全・安心、景観など新しい不動産価値の創出
○不動産の適正管理の推進など守るべき不動産価値の保全についても諸
施策を講じる必要があります。
21
2.土地情報の整備・提供の推進
(1)国土調査の推進
第2節 さまざまな土地政策
22
1)地籍調査
1 地籍調査の概要
土地の境界は、通常、登記所の地図を見れば分かりますが、全国には地図
が未整備の地域が多くあります。このような地域では、暫定的に地図に準ず
る図面(いわゆる「公図」
)が備え付けられていますが、公図は、一般的に
正確な境界を示していません。そのため、土地取引に支障をきたすことがあ
ります。これを改善するためには、個々の土地の境界や面積を明らかにする
ことが必要です(図表 2-1)
。
地籍調査は、市町村等が一筆ごとの土地の地目、境界及び面積等を調査・
測量して行うものです(図表 2-2)。地籍調査により作成された「地積図」と「地
籍簿」は、その写しが登記所に送付され、登記所の正式な地図として備え付
けられます。これにより、土地境界をめぐるトラブルを防止し、災害復旧等
も迅速に行うことができるようになります。事業費は、市町村が地籍調査を
実施した場合は、国が 1/2、残りを都道府県と市町村が 1/4 ずつ負担しま
すので、住民の費用負担はありません。
図表2-1 地籍調査前の公図と地籍調査後の地籍図
公図
字限図
あざぎりず
《地籍調査の実施前》
《地籍調査実施前》
(地図に準ずる図面)
(土地の位置等を把握するための参考図としての位置付け)
第2節 さまざまな土地政策
地籍図
《地籍調査の実施後》
《地籍調査実施後》
200
(2/ 5-2
2)
(不動産登記法第14条の地図として登記所に備え付けられる)
(不動産登記法第
14 条の地図として登記所に備え付けられる)
1995(2/2)
2004-1(2/2)
1994
04
-4
2007-1
(2/2)
2008-4
(2/2)
20
2005
1992
2007
-2
2008-7
-3
06
20 2
60
20
2007-4
1993
1985
1716
-2
道
1989
3-3
198 3-2
198
1984
-1
1990
1991
162
1987
1
1984-
1983-1
1989-2
1715
-2
23
図表2-2 地籍調査の流れ
第2節 さまざまな土地政策
24
調査に先立って、
土地所有者の立ち会いなど
住民への説明会を
により、個々の土地の境界、
実施します。
面積等の確認をします。
土地所有者等によって
地籍簿と地積図の案を
確認された境界を測量
閲覧にかけ、誤り等を訂
し、面積を計算します。
正する機会を設けます。
①土地を購入し、改めて測っ
て み た ら 登 記 簿 の 面積と
違っていた。
第2節 さまざまな土地政策
2 地籍調査が未実施の場合に起こる問題
地籍調査が実施されていない場合には、以下のような様々な問題が発生し
ます。
① 土地の境界が不明確であるため、土地取引等を行う際にリスクを抱えます
地籍調査の未実施地域では、不明確な土地境界により、土地売買やロー
ンの設定が円滑に進まない場合があります。境界を明確にするには多大な
時間と費用を要し、その経費は、土地所有者が自己負担する必要がありま
す。さらに、境界が明確にならない場合には、売却等を行うことさえでき
ない場合もあります。
また、個人が土地取引を行う回数は限られており、不明確な土地境界に
よるリスクが十分認識されていないと、多くの場合、このようなリスクは
潜在的なものにとどまっています。
しかしながら、このリスクが顕在化した場合には、土地をめぐるトラブ
ルに巻き込まれ、大きな問題を抱えることになります。
②塀をつくり替えようとした ③相続を受けた土地の正確な
ら、隣の土地の所有者から
位置がわからなかった。
「境界が違う」と言われた。
25
第2節 さまざまな土地政策
② 都市再生への支障となります
土地区画整理事業や市街地再開発事業のような面的事業や道路整備、マ
ンション建設等の民間開発事業など、まちづくりを進めていく上で、土地
の境界確認の作業が必要となります。
しかし、地籍調査が未実施の場合、特に都市部では関係者が多く、土地
の境界確認完了までの期間が長期化する場合があります。また、土地の境
界確認に要する多額の費用等を事業者自身が負担せざるを得ないことか
ら、円滑なまちづくりの支障となります。
③ 災害復旧の遅れが心配されます
災害が発生した場合、道路の復旧、上下水道等ライフライン施設の復旧、
住宅の再建等が急務ですが、地籍調査の未実施地域では、災害復旧工事の
前に土地境界の確認から始める必要があります。
津波等により土地境界を示す杭が無くなったり、移動した場合には、立
会い等により土地所有者等の確認を得るなど、工事前に多くの時間と手間
が必要となるため、被災地の復旧・復興が遅れる要因になります。
26
第2節 さまざまな土地政策
④ 公共用地の適正な管理の支障となります
市町村等では、道路や各種公共施設等の公共用地を適正に管理する必要
があり、隣地の所有者等からの求めに応じた境界の確認も行っています。
しかし、地籍調査の未実施地域では、不明確な境界のために、管理すべき
範囲を正確に把握できないとか、境界確認申請処理が多くなる等の問題が
行政側に発生します。また、住民側にも、境界確認申請に伴う労力と費用
等の問題が生じます。
このような問題は、地方分権一括法により法定外公共物(注 2-2)が市
町村に譲与されたこともあり、市町村等にとって、より深刻な課題となっ
ています。
(注 2-2)法定外公共物とは、道路法、河川法等の適用又は準用を受けない公共物をいい、
代表的なものとして「里道」「水路」があります。
27
⑤ 課税の公平性の課題が生じます
土地の所有者に対して課税されている固定資産税は、原則として登記簿
の面積により課税されています。そのため、地籍調査の未実施地域では、
必ずしも正確ではない情報により課税されている場合もあり、課税の公平
性の確保が課題となっています。
第2節 さまざまな土地政策
28
⑥ 適切な森林管理等への支障となります
森林は、地球環境の保全、土砂災害の防止、水源のかん養などの多面的
機能を有しています。地籍調査を実施していない山村部では、不明確な境
界が一因となって、必要な間伐等が行われず、森林の管理が不十分な場合
があります。
第2節 さまざまな土地政策
3 地籍調査の現状と促進に向けた取組
①地籍調査の現状
地籍調査は昭和 20 年代から実施されていますが、平成 26 年度末時点
における全国の進捗率は 51%にとどまっています。特に都市部(DID:
人口集中地区)の進捗率は 24%、山村部も 44%と進捗が遅れており、不
明確な土地境界のままとなっている地域が少なくありません(図表 2-3)。
また、地籍調査は、市町村等が実施主体ですが、平成 26 年度末時点にお
いて、地籍調査を未着手の市町村、休止中の市町村は全体の 28%となっ
ています(図表 2-4)
。
地域別に見ますと、地籍調査の進捗率や着手率は、関東・中部・北陸・
近畿地方において低く、これらの地域では地籍調査の遅れが目立っていま
す(図表 2-5)
。
②東日本大震災の被災地の地籍の状況
今回の東日本大震災で大きな被害を受けた青森、岩手、宮城、福島、茨
城の各県における地籍調査の進捗率は、全国平均 49%(平成 22 年度末
現在)と比べて高く、津波による浸水地域の約9割で地籍調査を実施して
いたことから、登記所備え付け地図が相当程度整備されていました(図表
2-6)
。これにより、境界確認のために多くの時間を費やすことなく復興
事業を進めることが可能となっています。
今回の地震では、水平方向に最大で約 5.4m もの極めて大きな地殻変動
が生じましたが、これによるズレを修正して地籍調査の成果を再生するこ
とにより、迅速な災害復旧・復興に貢献しました。
29
第2節 さまざまな土地政策
30
③国土調査事業十箇年計画に基づく地籍調査の促進に向けた取組
地籍調査は、国土調査事業十箇年計画に基づいて計画的に行われており、
平成 22 年5月には、第6次国土調査事業十箇年計画が閣議決定されました。
平成 22 年度からは、地籍調査を実施する市町村等の負担軽減を図るこ
とを目的に、都市部における官民境界の基礎的な情報を整備する「都市部
官民境界基本調査」、過疎化や高齢化の進む山村部の境界情報を簡易な方
法で広範囲に保全する「山村境界基本調査」を国の事業(基本調査)とし
て実施しています。
これらについては、第6次十箇年計画にも位置付けられており、地籍調
査の促進に向けて計画的に実施することとしています。
第6次十箇年計画には、地籍調査に未着手・休止中の市町村の解消を図
ることも目標として掲げられており、このような取組を通じて地籍調査の
さらなる促進を図ることとしています。
④地籍調査以外の測量成果を活用した地籍整備の推進
民間開発や公共事業等に伴って様々な測量成果が整備されていますが、
これらの中には地籍調査と同等以上の精度や正確さを有しているものもあ
ります。このような測量成果等を地籍整備に活用するための仕組みが国土
調査法にあります。この仕組みを活用すると、測量成果は登記所に送付さ
れ、登記所に備え付けられている地図が正確なものとなります。
平成 22 年度からは、民間事業者や地方公共団体が行う土地の境界情報
に関する調査・測量について、国が補助金制度を創設し、さらに平成 25
年度からは、民間事業者等に補助金を直接交付することが可能となりまし
た。これらにより、さらなる地籍整備の促進を図ることとしています。
図表2-3 調査対象面積に対する実施状況
(昭和 26 年度~平成 26 年度)
合
I
用
H26 年度
末実績面積(㎢)
H26 年度
末進捗率(%)
D
地
地
地
12,255
17,793
72,058
184,094
2,884
9,484
52,435
80,928
24
53
73
44
計
286,200
145,731
51
第2節 さまざまな土地政策
D
宅
農
林
対象面積(㎢)
(注 1)対象面積は、全国土面積(377,880km2)から国有林及び公有水面等を除いた面積である。
(注 2)宅地、農用地、林地については、DID 以外の地域を分類したもの。
(注 3)都市部官民境界基本調査と山村境界基本調査の実績分を含む。
図表2-4 市町村の着手類型別実施状況(平成 26 年度末)
市町村数
地籍調査着手市町村(A+B+C)
完了市町村(A)
調査実施中の市町村(B)
休止中の市町村(C)
地籍調査未着手の市町村
合 計 (全市町村)
比率(%)
1,543
(481)
(768)
(294)
198
89
(28)
(44)
(17)
11
1,741
100
31
図表2-5 都道府県別進捗率及び着手率(平成 26 年度末)
①都道府県別進捗状況
②都道府県別市町村着手状況
着手率 (%)
完了率 実施率 休止率
進捗率 (%)
0%
50%
全 国 第2節 さまざまな土地政策
32
北海道 青 森 岩 手 宮 城 秋 田 山 形 福 島 茨 城 栃 木 群 馬 埼 玉 千 葉 東 京 神奈川 新 潟 富 山 石 川 福 井 山 梨 長 野 岐 阜 静 岡 愛 知 三 重 滋 賀 京 都 大 阪 兵 庫 奈 良 和歌山 鳥 取 島 根 岡 山 広 島 山 口 徳 島 香 川 愛 媛 高 知 福 岡 佐 賀 長 崎 熊 本 大 分 宮 崎 鹿児島 沖 縄 100%
0%
50%
全 国 51% 63% 93% 91% 89% 61% 49% 61% 67% 22% 36% 31% 14% 22% 13% 34% 29% 15% 14% 30% 38% 16% 24% 13% 9% 13% 8% 10% 23% 12% 37% 27% 49% 85% 52% 61% 33% 84% 80% 53% 75% 98% 64% 79% 61% 65% 78% 99% 北海道 青 森 岩 手 宮 城 秋 田 山 形 福 島 茨 城 栃 木 群 馬 埼 玉 千 葉 東 京 神奈川 新 潟 富 山 石 川 福 井 山 梨 長 野 岐 阜 静 岡 愛 知 三 重 滋 賀 京 都 大 阪 兵 庫 奈 良 和歌山 鳥 取 島 根 岡 山 広 島 山 口 徳 島 香 川 愛 媛 高 知 福 岡 佐 賀 長 崎 熊 本 大 分 宮 崎 鹿児島 沖 縄 100%
17
44
28
46
14
88
32
13
9
9
17
24
31
25
33
58
74
48
37
28
31
29
44
41
57
76
14
11
6
13
3
7
7
5
6
60
29
15
61
22
31
5
12
58
13
40
42
63
53
53
53
52
15
35
2
67
14
63
44
79
89
27
11
13
15
4
26
10
45
34
21
11
23
49
12
88
5
10
11
16
28
90
84
79
36
5
30
17
70
70
9
58
42
21
67
13
41
45
53
55
6
27
13
10 5
85
15
58
85
57
43
36
64
6
8
72
62
22
31
42
58
85
2 12
図表2-6 被災地における地籍調査の実施状況
風間浦町(100%)
大間町(100%)
むつ市(90%)
東通村(94%)
六ヶ所村(100%)
三沢市(81%)
おいらせ町(100%)
南三陸町(98%)
第2節 さまざまな土地政策
八戸市(76%)
階上町(100%)
洋野町(100%)
久慈市(100%)
野田村(100%)
普代村(100%)
田野畑村(93%)
岩泉町(100%)
宮古市(35%)
石巻市(95%)
女川町(100%)
東松島市
(92%)
松島町(96%)
七ヶ浜町(100%)
塩竃市(100%)
多賀城市(79%)
仙台市(29%)
名取市(93%)
山田町(32%)
大槌町(43%)
釜石市(44%)
岩沼市(94%)
大船渡市(100%)
亘理町(100%)
山元町(100%)
陸前高田市(100%)
新地町(90%)
気仙沼市(89%)
相馬市(98%)
南三陸町(98%)
南相馬市(100%)
浪江町(97%)
双葉町(100%)
凡例
浸水地域のうち地籍調査実施
双葉町(100%)
大熊町(100%)
富岡町(100%)
楢葉町(100%)
広野町(95%)
いわき市(67%)
北茨城市(14%)
高萩市(32%)
日立市(77%)
東海村(58%)
ひたちなか市(36%)
大洗町(25%)
鉾田市(90%)
浸水地域のうち地籍調査未実施
地籍調査実施地域
19条5項指定地域
土地区画整理事業等により地籍が
ある程度明確化された地域
国公有地
国有林野
(データは平成22年度末時点)
鹿嶋市(11%)
33
(2)
地価公示制度
第2節 さまざまな土地政策
34
土地は衣服や食品のように頻繁に取引されるわけではなく、全く同じ土地
というものは二つとないという特性があります。また、取引する人の事情や
動機によって価格が左右されがちです。そのため、土地の適正な価格がいく
らであるか、一般の人にはわかりにくくなっています。
そこで、全国の標準地(地域において土地の大きさ、利用状況などが標準
的な土地)について、特殊な事情等のない自由な取引において通常成立する
と考えられる価格を、国土交通省土地鑑定委員会が公示し、一般の人が取引
の際に、土地の適正な価格を判断するにあたっての客観的な目安として活用
いただけるようにしています。
公示価格は、毎年1月1日時点において各地点を更地(建物や使用収益を
制限する権利が存在しない状態の土地)として評価したときの1㎡当たりの
価格であり、図表 2-7 のように公示されます。
価格を知りたい土地と公示地点を比較することにより、例えば公示地点と
比べ駅から遠いので安くなるとか、大通りに面し交通の便がよいので高くな
るというように、
条件を比較しておおよその価格を判断することができます。
また、地価公示はこのほかにも、不動産鑑定士による不動産の鑑定評価や
公共用地の取得価格を決める際のよりどころとなるなど、いろいろな役割が
あります。さらに、相続税評価や固定資産税評価の目安として(図表 2-8)、
また、企業会計における資産の時価評価等にも活用されています。
なお、公示価格は1月1日現在のものなので1月 1 日以降の地価動向も
考慮する必要があります。国が行う地価公示のほかに、毎年7月1日時点で
の土地の価格を都道府県が調査・公表する都道府県地価調査があり、地価公
示とあわせて、全国にわたって標準的な地価及び地価動向に関する情報を提
供しています(図表 2-9)
。
図表2-7 地価公示の例
(地価公示の例) ① 標準地
番 号 ② 標準地の所在及び地番並
びに住居表示 ③ 標準地の1
平方メート
ル当たりの
価格(円) ④ 標準地 の地積 (㎡) ⑥ 標準地の
利用の現
況 台形 1:2 共同住宅 中層マンション、一般住宅 東8.2m区道 水道、ガ RC3F1B 等が混在する住宅地域 ス、下水 後楽園 1中専 270m (60,300) 準防 共同住宅 一般住宅のほかアパート等 南西3.8m 水道、ガ RC3 も混在する住宅地域 区道 ス、下水 東大前 1住居 300m (60,300) 準防 共同住宅 中高層マンションに事務所 北18m都道 水道、ガ RC9F1B 等が見られる住宅地域 ス、下水 江戸川橋 1低専 400m (60,150★)
準防 ※ 小石川2丁目19番19 文京 「小石川2-9-13」 -14 780,000 335 向丘1丁目152番12 15 「向丘1-15-7」 631,000 146 1:2 関口2丁目57番9 16 「関口2-4-19」 736,000 936 台形 1:2 住居表示 ※印は都道府県地価調査の
基準地と同一地点となって
いる代表標準地であること 1月1日時点の 1㎡当たりの価格 ⑦ 標準地の周辺の土地の利用
の現況 ⑨ 標準地に ついての 水道、ガ ス供給施 設及び下 水道の整 備の状況 ⑩ 標準地の 鉄道その 他の主要 な交通施 設との接 近の状況 ⑪ 標準地に係
る都市計画
法その他法
令の制限で
主要なもの この土地の最寄り駅は江戸川橋
駅でこの駅から道なりに 400m
のところにあること 現在この土地には鉄筋コンクリート造 9階建地下1階の共同住宅が建ってい
ること この土地は北側にある
18m の都道に接してい
ること 間口と奥行の割合 間口1に対し、奥行が 2 の
台形の土地であること 所在地 ⑧ 標準地の前
面道路の状
況 第2節 さまざまな土地政策
⑤ 標準地
の形状 こ の 土 地 は 第 一 種 低 層 住 居 専用地域にあり、建ぺい率 60% 容積率 150%であるが、★は指定
容積率を上回る容積率を使用す
ることを前提に価格を決定した
標準地であること また、準防火地域の指定がなされ
ていること 図表2-8 公的土地評価一覧表
区 分
地
価
公
示
相
続
税
評
価
固 定 資 産 税 評 価
1一般の土地取引価格 相続税及び贈与税課税 固定資産税課税のため
の指標
目
的
等
のため
2不動産鑑定士等の鑑
定評価の規準
( 平成 4 年分の評価か
3公共事業用地の取得 ら公示価格の水準の 8
価格の算定の規準等
評 価 機 関
価 格 時 点
国土交通省
土地鑑定委員会
割程度 )
国…税…局…長
( 平成 6 年度の評価替
から公示価格の 7 割を
目途 )
市…町…村…長
1月1日
1月1日
1月1日
( 毎年公示 )
( 毎年評価替 )
(3 年に 1 度評価替 )
35
図表2-9 地価公示と都道府県地価調査との比較
調 査 名
地 価 公 示
都道府県地価調査
根拠法等
地価公示法
国土利用計画法
第2節 さまざまな土地政策
実施機関
国土交通省土地鑑定委員会
都道府県知事
調査結果の性格
各標準地の正常な価格
各基準地の正常な価格
対象地域
全国の都市計画区域その他の
土地取引が相当程度見込まれる
区域
全 国
調査地点数
価格時点
12~13年
14年
15~16年
17~18年
19年
20年
21年
22年
23年
24年
25年
26年
27年
31,000 地点
31,520 地点
31,866 地点
31,230 地点
30,000 地点
29,100 地点
28,227 地点
27,804 地点
26,000 地点
26,000 地点
26,000 地点
23,380 地点
23,380 地点
各年1月1日
12~15年
16年
17年
18年
19年
20年
21年
22年
23年
24年
25年
26年
27,725 地点
27,577 地点
26,521 地点
25,346 地点
24,374 地点
23,749 地点
23,024 地点
22,701 地点
22,460 地点
22,264 地点
21,989 地点
21,740 地点
各年7月1日
①一般の土地の取引価格に対す ①国土利用計画法による価格審査
る指標の提供
の規準
②不動産鑑定士等の鑑定評価の ②国土利用計画法に基づく土地の
規準
買収価格の算定の規準
③相続税評価、固定資産税評価 ③地価公示の①から③についても、
の目安
ほぼ同様の役割を果たしている。
法令等に基づく ④公共用地の取得価格の算定の
目的・役割
規準
⑤収用委員会の補償金の額の算
定の規準
⑥国土利用計画法による価格審
査の規準
⑦国土利用計画法に基づく土地
の買収価格の算定の規準
36
創設年度
昭和44年度
昭和50年度
鑑定評価を行う
不動産鑑定士
2人
1人
(3) 不動産取引価格情報の整備・提供の推進
不動産の取引については、多くの方が「難しくてわかりにくい」、「なんと
なく不安」なものと感じています。この大きな原因の一つとして、取引の
際の判断材料となる不動産情報が不足していることが考えられます(図表
2-10)
。
図表2- 10 不動産取引に対する印象
48.3
なんとなく不安
21.4
特に不安はない
第2節 さまざまな土地政策
その他 0.5
難しくてわかりにくい
分からない
23.6
5.3
分かりやすくて簡単 0.9
国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」(平成24年度)
※全国の20歳以上の者3,000人(無作為抽出)を対象に実施
このような状況を踏まえ、国土交通省は、平成 18 年 4 月から、不動産市
場の信頼性・透明性を高め、不動産取引の円滑化、活性化を図ることを目的
として、不動産の買主に取引価格等を尋ねるアンケート調査を実施し、この
回答に土地の形状、前面道路、最寄駅等の情報を付加し、これらの情報を個
別の物件が容易に特定できないように加工し、四半期毎に国土交通省ホーム
ページ(http://www.land.mlit.go.jp/webland/)で公表しています ( 図表
2-11)
。
37
図表2- 11 不動産取引価格情報の提供内容
第2節 さまざまな土地政策
<対象地域>
<提供情報項目>
全国(平成 19 年以降)
所在地(※町・大字レベル)
<対象物件の種類>
取引価格(※有効数字2桁)
更地(宅地)、建付地(土地・建物一体取引)、
土地の面積・形状
中古マンション等、農地、林地
建物の用途・構造、床面積、建築年、
前面道路、最寄駅、用途地域、建ぺい率等
<提供件数(累計)>
約 240 万件(平成 27 年5月 22 日現在)
この不動産取引価格情報の整備・提供については、これまで以下の取組を
行ってきました。
・対象地域の拡大(三大都市圏の政令指定都市等→全国)
・前面道路、最寄駅、建ぺい率等の提供情報項目の追加
・英語版の整備・提供
・ダウンロード機能・並び替え機能等の追加
・主要都市土地取引価格の基本統計量(土地単価の平均値、中央値等)の
整備・提供 ( 図表 2-12)
・地価公示・都道府県地価調査のホームページから不動産取引価格情報の
ホームページへのリンクの設定
・ユーザーの利便性に配慮したデザイン等への改善
38
図表2- 12 不動産取引価格情報の提供内容
第2節 さまざまな土地政策
その結果、
不動産取引価格情報を提供するホームページのアクセス数(ペー
ジビュー)は、年間約8千5百万件となっており、不動産取引の際に参考に
する情報の一つとして有効に活用されています。
39
(4)
土地基本調査
法人土地・建物基本調査は、法人における土地・建物の所有及び利用の状
況等に関する実態を全国及び地域別に明らかにすることにより、土地政策の
ために必要な基礎資料を得ることを目的として、5年に一度実施している基
幹統計調査です。第5回調査を平成 25 年に実施し、平成 26 年に速報集計
結果を公表しました。平成 27 年には確報集計の結果を公表する予定です。
第2節 さまざまな土地政策
土地所有率・建物所有率は下げ止まりの傾向
○平成25年1月1日現在、土地を所有
する資本金1億円以上の会社法人は
1万8570法人で、総数3万1210法人に
対する土地を所有する法人の割合(土
地所有率)は59.5%であった。
○建物を所有する資本金1億円以上の
会社法人は1万9420法人で、総数に対
する建物所有率は62.2%であった。
○土地・建物とも平成20年までは所有率
は低下していたが、
「下げ止まり」の傾
向がうかがえる。
土地・建物を所有している法人の割合の推移
(平成5年~平成25年)
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社宅・従業員宿舎等の福利厚生施設用地の減少幅が鈍化
○資本金1億円以上の法人が所有する
社宅・従業員宿舎やグラウンドなど福
利厚生施設用地の件数は、3万1430
件と平成20年に比べ11.1%減少した。
○平成5年から減少傾向が続いている
が、減少幅は鈍化している。
福利厚生施設用地の件数の推移
(平成5年~平成25年)
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新耐震基準導入以前に建築された建物の耐震診断や耐震補強等が進展
建築時期が昭和55年以前の建物の
新耐震基準適合状況別件数割合
(平成20・25年)
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第2節 さまざまな土地政策
○建築基準法の改正により現行の耐震
基準(新耐震基準)が導入された昭和
56年より前(昭和55年以前)に建築さ
れた建物のうち、資本金1億円以上
の会社法人が所有している新耐震基
準を満たしている建物は22.6%と、平
成20年に比べ7.9ポイント上昇した。
(%#)
○一方、新耐震基準を満たしているかどうか未確認の建物は52.0%と、平成20年に比べ9.8ポイ
ント低下しており、耐震診断等が進んでいることを示唆している。
世帯土地統計は、世帯における土地の所有及び利用の状況等に関する実態
を全国及び地域別に明らかにすることにより、土地政策のために必要な基礎
資料を得ることを目的として、総務省が行った平成 25 年住宅・土地統計調
査の結果から取りまとめ、平成 27 年に結果を公表する予定です。
土地を所有する世帯は約2,560万世帯、
現住居の敷地を所有する世帯は約2,460万世帯
○平成20年10月時点で、土地を所有
している世帯は全国に約2,560万世
帯あり、普通世帯(5,013万世帯)に
占める割合は51.1%となっている。
48.9%
5,013 51.1%
○土地を所有している世帯のうち、現
住居の敷地を所有している世帯は
2,460万世帯で、世帯全体の49.1%
となっている。
○また、現住居の敷地以外の土地を 所有している世帯は800万世帯で、 16.0%となっている。
0
2,560
49.1%
16.0%
14.0%
100%
41
(5)
土地総合情報ライブラリーによる不動産情報の提供
第2節 さまざまな土地政策
42
国土交通省は、平成 9 年度から、国土交通省のホームページである土地
総合情報ライブラリー(http://tochi.mlit.go.jp/)で、土地に関わる各種の
制度や地価公示、土地白書、法人土地基本調査等の土地に関する各種情報を
提供しています。
平成 19 年度からは、我が国の不動産市場への海外資金の流入を期待して、
土地総合情報ライブラリー英語版を整備し、提供しています。また、平成
21 年度には、不動産鑑定評価関連のページを、平成 22 年度には、環境不
動産ポータルサイト(環境価値を重視した不動産市場の形成に向けて様々な
情報を提供)などをコンテンツとして追加しました(図表 2-13)。
平成 21 年度に、不動産情報のニーズを把握するためのアンケート調査を
行ったところ、
情報取得の容易性、利便性(インターネットで取得できる等)、
情報の一覧性(全体の内容が簡単に把握できる等)についてのニーズが高い
ことがわかりました。
この結果を受けて、平成 22 年 4 月にコンテンツのアクセスランキングを
掲載し、情報取得の利便性を高めるとともに、ユーザーの利便性に配慮して
平成 23 年 3 月に土地総合情報ライブラリーを、平成 24 年2月に土地総合
情報ライブラリー英語版をそれぞれリニューアルしました。
今後とも、土地総合情報ライブラリーをユーザーの視点からさらにわかり
やすく使いやすいように改善してまいります。
図表2- 13 土地総合情報ライブラリー
【土地総合情報ライブラリー】
【土地総合情報ライブラリー
( 英語版 )】
第2節 さまざまな土地政策
43
3.土地の適正な利用の推進
(1)土地取引の規制
第2節 さまざまな土地政策
一人の人が土地を利用すれば、その影響はその人だけにとどまらず地域の人々
の生活や周囲の自然環境にも及びます。このため、土地は地域全体の住みやすさ
や自然環境の調和などを考えて、適切に利用することが大切です。
乱開発や無秩序な土地利用を防止するために、一定面積以上(注 2-3)の大規
模な土地の取引をしたときは、権利取得者(売買の場合であれば買主)は、契約
を結んだ日から2週間以内に、土地の所在する市・区役所、町村役場に土地の利
用目的などを届け出る必要があります。
(注 2-3) 届出が必要となる土地取引の規模 ・…市街化区域・・・・・・・・・・・・…2,000㎡以上
・…市街化区域を除く都市計画区域・・・…5,000㎡以上
・…都市計画区域以外の区域・・・・・・10,000㎡以上
届出書は都道府県知事(政令指定都市の長)に送付され、届出を受けた知事(市
長)は、様々な土地利用に関する計画に照らして、土地の利用目的について審査
を行い、必要に応じて助言や勧告を行います。
このように、届出制度には、開発許可等に先んじて土地取引という早期の段
階から、計画に従った適正な土地利用がなされるようチェックすることによ
り、快適な生活環境や暮らしやすい地域づくりを推進する役割があります(図表
2-14)
。
図表2- 14 土地取引に係る事後届出件数の推移
地方圏
(件数)
三大都市圏
総土地取引件数に占める割合
(%)
1.1 22,000 20,000 1.03 1.05 18,000 0.94 1.02 0.95 0.91 0.87 16,000 0.9 0.91 0.86 0.8 0.82 14,000 0.76 0.73 0.74 0.7 0.67 12,000 0.63 10,000 0.6 0.61 9523 9981 10238 9984 9112 8137 7982 8685 8,000 7023 6,000 7029 7262 6728 8348 0.4 7098 6574 0 44
0.5 9216 0.3 0.2 4,000 2,000 1 2741 6108 4769 3743 3388 3156 3454 12 13 14 15 4157 6374 4852 4833 3018 3905 4437 4085 4137 23 24 25 1178 平成10.9 ~平成10.12 11 16 17 18 19 20 21 22 4831 0.1 0 26 (年)
(2)土地利用基本計画
第2節 さまざまな土地政策
近年、生活の質や景観等がより重視されるようになってきているなか、計
画的な土地利用に対する関心も高まっています。土地利用基本計画は、都道
府県の区域における土地利用を総合的に計画していこうとするものであり、
都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域及び自然保全地域の5地域(注
2-4)に関する縮尺5万分の1の計画図と、土地利用の調整等に関する事項
(土地利用の基本方針等)を文書で表した計画書で構成されています。この
計画は、都道府県が国土交通大臣との協議を経て定めるもので、土地取引や
開発行為の規制の基準としての役割を果たしています。
(注 2-4) 5地域の内容
・都 市 地 域 …一体の都市として総合的に開発し、整備し及び保全する必要がある地域
です。
・農 業 地 域 …農用地として利用すべき土地があり、総合的に農業の振興を図る必要が
ある地域です。
・森 林 地 域 …森林の土地として利用すべき土地があり、林業の振興又は森林の有する
諸機能の維持増進を図る必要がある地域です。
・自然公園地域…優れた自然の風景地で、その保護及び利用の増進を図る必要がある地域
です。
・自然保全地域…良好な自然環境を形成している地域で、その自然環境の保全を図る必要
がある地域です。
(3)土地利用調整総合支援ネットワークシステム
( 通称“LUCKY”)
土地利用基本計画の適正な管理・運営のため、計画図を電子化して管理し、
併せて最新の計画図がインターネットで閲覧できるシステムです(平成 14
年度から公開開始 (http://lucky.tochi.mlit.go.jp/))。
45
4.土地や建物に対する税制
第2節 さまざまな土地政策
46
土地やその上に建っている建物には、買うとき、持っているとき、売ると
きなど、それぞれの段階で税が課されます。例えば、買うときには登録免許
税や不動産取得税などが、持っているときには固定資産税などが課されます
(図表 2-15)
。
バブル景気時には、土地の投機的取引が地価の高騰を招き、地価抑制の観
点から、土地建物の所有や取引を対象にした課税の強化が行われました。
しかし、バブル崩壊後、長期にわたる地価の下落が、金融機関における不
良債権処理に影響を与え、景気回復の動きを緩やかなものにとどまらせてい
る一因となりました。そのため、不動産の収益性の向上や、土地の流動化・
有効利用に向けた税制の見直しが講じられました。
平成 20 年のリーマンショック以後、地価や土地取引件数は下落傾向が続
いていましたが、近年、三大都市圏では地価が上昇に転じている地点も見ら
れるようになりました。今後、人口減少・少子高齢化が進むなかで、低未利
用地の増加が懸念されることなどを踏まえながら、社会・経済情勢に即した
税制を講じられるよう、引き続き検討していくことが必要です。
図表2- 15 土地や建物にかかる税金
取得段階
課税対象
土地・建物
不 動 産 取 得 税
土地・建物
相続税・贈与税
土地・建物
消 費 税
建物
第2節 さまざまな土地政策
登 録 免 許 税
保有段階
課税対象
固 定 資 産 税
土地・建物
都 市 計 画 税
土地・建物
事業所税(既設分)
建物
譲渡段階
課税対象
所 得 税
土地・建物
法 人 税
土地・建物
住 民 税
土地・建物
47
5.不動産鑑定評価制度の充実
第2節 さまざまな土地政策
48
① 不動産鑑定士について
不動産の経済価値を判定し価格として表すことを「不動産の鑑定評価」と
いい、そのような不動産の鑑定評価を行う国家資格者のことを「不動産鑑定
士」といいます。
不動産の価格は、取引等の必要に応じて個別的に形成されるのが通常であ
り、しかもそれは個別的な事情に左右されがちなものであるため、不動産は
適正な価格を形成する市場を持つことが極めて困難であると言われていま
す。このため、不動産の適正な価格については専門的知識・経験を有する者
による鑑定評価が必要とされ、また、不動産の鑑定評価に関する国家資格と
して不動産鑑定士が設けられているのです。
② 不動産鑑定評価基準について
「不動産鑑定評価基準」とは、不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行うに
あたって、そのよりどころとなる統一的な基準であるとともに、不動産の鑑
定評価に関する法律に基づき、不当な鑑定評価に対する懲戒処分を行う際の
判断根拠となるものです。
不動産の鑑定評価を行う際には、原価法、取引事例比較法、収益還元法の
3手法を用いることとなっています。不動産投資市場においては、投資家保
護の観点から、不動産鑑定評価の役割はますます重要なものとなっており、
証券化対象不動産の鑑定評価においては、DCF(Discounted Cash Flow)
法の適用が義務付けられています。
第2節 さまざまな土地政策
③不動産鑑定評価制度に関する検討について
不動産の証券化等の進展や企業会計における不動産の時価評価ニーズの増
大といった環境変化の中で、不動産鑑定士に期待される役割が増しています。
このような社会のニーズに的確に応えるため、国土交通省では不動産鑑定
評価制度に関する検討を行い、以下のような制度の改正・充実を行ってきて
います。
・平成 16 年度:不動産の鑑定評価に関する法律の改正
→不動産鑑定士試験制度、不動産の鑑定評価以外の新たな業務の位置づ
けを明確にしました。
・平成 19 年度:不動産鑑定評価基準の改正
→証券化対象不動産の鑑定評価手法を統一しました。
・平成 19 年度:海外投資不動産鑑定評価ガイドラインの策定
→ J-REIT などが海外の不動産へ投資する際の鑑定評価の方法を定めま
した。
・平成 21 年:価格等調査ガイドラインの策定など
→不動産鑑定評価基準に則ったものも簡易なものも含め、不動産鑑定士
が価格等の調査を行う場合の最低限のルールを定めました。
・平成 26 年:不動産鑑定評価基準の改正
→国際評価基準との整合性の向上、建物評価に関する規定の充実等を行
いました。
④鑑定評価モニタリングについて
鑑定評価の信頼性を向上させるため、平成 20 年度より、不動産鑑定業者
に対する立入検査や証券化対象不動産の鑑定評価等に関する業務の状況の実
態調査などを内容とする鑑定評価モニタリングを実施しています。
49
6.公共用地の取得
(1)公共用地取得の概要
第2節 さまざまな土地政策
50
私たちが安心して便利に生活するためには、豊かで魅力あふれる住みよい
地域づくりが必要です。その実現に向けて、災害を防ぐために堤防を築いた
り、渋滞の緩和のために道路を整備することや、また人々が憩うことができ
る緑豊かな公園を整備するなどといった目的で、公共事業が日々行われてい
ます。
これらの事業を推進するためには、事業のための土地(公共用地)が必要
となり、地権者の皆様には、土地の提供と建物等の移転をお願いしなければ
なりません。
公共用地を取得し、建物等を移転していただくためには、公共施設の完成
により利益を受ける国民の皆様全体の公平の負担において、地権者の皆様に
「正当な補償」を行うことが必要となります。
「正当な補償」とは、日本国憲法第 29 条第3項に規定されているように、
「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」
という財産権に対する損失補償の原則をいいます。
このような「正当な補償」を、どの地域においても公平・適正に行うこと
を目的として、
「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱(昭和 37 年閣議
決定)
」が定められ、これを規範に公共事業主体が補償基準を策定し、統一
的な補償が行われています。
例えば、取得する土地の価格は、近傍類地の正常な取引価格によるものと
されており、取引事例価格、公示価格、基準価格、不動産鑑定評価格などを
基にして適正に算定します。また、取得する土地に建物等がある場合には、
移転先地において従前の価値及び機能を失わないように、土地と建物の位置
関係、種類、構造、用途、経過年数等の条件を勘案して、通常妥当と認めら
れる移転工法を設定し、当該移転に要する費用を補償します。このほか、移
転期間中の営業休止に係る補償や引っ越し費用等の補償も行います。
国土交通省は、必要な公共事業を実施するために、皆様のご理解をいただ
きながら、適正な補償を行いつつ、公共用地の円滑な確保に努めてまいりま
す。
(2)公共用地取得手続の流れ
事業計画から土地・建物等の補償に至る手続は概ね次のとおり行われます
( 図表 2-16)。
図表2- 16 用地取得のあらまし
1 事業計画などの説明
第2節 さまざまな土地政策
事業を円滑に進めるため、地域のみ
なさまに計画の概要、施行計画など
の説明を進めます。
2 用地幅杭の打設
説明会が終わりますと、事業に必要
な土地の範囲を明らかにするため用
地の幅を示す杭を打たせていただき
ます。
3 土地や建物などの調査
幅杭が打ち終わりますと、みなさま
からお譲りいただく土地の面積、移
転していただく建物、塀や看板など
の工作物、庭木や果樹などの立木を
詳しく調査します。
4 土地調書・物件調書の確認
調査結果にもとづき、お譲りいただ
く土地や移転していただく物件の数
量などについて調書を作成し、内容
を確認していただきます。
51
5 補償の説明
ご確認いただいた調査結果をもと
に、適正で公平な補償を行うため、
国が定めた「補償基準」により補償
金を算定し、補償の内容についてご
説明いたします。
第2節 さまざまな土地政策
6 契 約
補償の内容、建物移転、土地の引渡
し時期等についてご了解いただきま
すと、書面で契約させていただきま
す。また、事業用地の登記手続きは
国で行いますので、登記に必要な書
類を提出していただきます。
7 補償金の支払い(前金払い)
契約が締結され、必要書類を提出し
ていただいたのち、前金払いの必要
な方には契約金額の 70%の額をお
支払いします。
8 建物などの移転・土地の引渡し
建物、工作物、立木などを移転して
土地を引き渡していただきます。
9 補償金の支払い(残金払い・一括払い)
土地の所有権移転登記が完了し、土
地の引渡が完了した後、( 土地の上
に物件がある場合は、物件の移転完
了後となります ) に、前金払いを既
に受けられた方には、後払い金とし
て残額を、前金払いを希望されな
かった方には、補償金を一括してお
支払いいたします。
52
Memo
53
54
国土交通省土地・建設産業局総務課
一般財団法人 土地情報センター
〒102-0084 東京都千代田区二番町6番地3
平 成 2 7 年 9月発 行