中国を発端とする最近の市場急落に関する見解

機関投資家向け資料
Market Update
2015年9月
中国を発端とする最近の市場急落に関する見解
ティム・アーマー/
Tim Armour
ポートフォリオ・マネジャー
経験年数:32年
在籍年数:32年
ロサンゼルス・オフィス
ロブ・ラブレス/
Rob Lovelace
ポートフォリオ・マネジャー
経験年数:29年
在籍年数:29年
ロサンゼルス・オフィス
中国経済の成長鈍化に対する投資家の懸念を背景に、8月後半の数
日間で世界の株式市場が急落しました。中国の株価急落と予想外の
人民元切り下げは、同国の見通しが悪化しており、そうした状況が日
本や欧州、そして最終的には米国を含む貿易相手国の経済成長を損
なうとの不安をさらにかき立てました。ただし、中国の政府当局が投
資家の不安を鎮めると同時に、経済を支えるため、金利と銀行の預金
準備率を引き下げた結果、先進国市場は月末にかけては安定した模
様です。こうした状況を背景に、弊社グループのポートフォリオ・マネジ
ャーで、経営委員会のメンバーでもあるティム・アーマーとロブ・ラブレ
スに、現状に関する見解をヒアリングしました。主なポイントは次のと
おりです。
⿠今や中国は世界のGDPの約15%を占めているため、
⿠
世界経済にかつてな
いほど大きな影響を及ぼす
⿠中国の予想外の通貨切り下げが金融市場にショックをもたらしたことが
⿠
株安の最大の原因
⿠オーストラリア、
⿠
香港、日本、欧州など、貿易面で中国との結びつきが強
い先進国経済は、予想される輸出減退への対処が必要に
⿠一方で、
⿠
原油を含む資源価格の下落に加え、想定される金利低下は、世
界経済を下支えするプラス材料
中国を発端とする最近の市場の動揺につ
いて、どのように考えていますか。
ラブレス: 米国株式は強気相場が続いて
いました。欧州と日本も、いく分「期待」先
行ながら、株価は上昇してきました。しか
アーマー: 米国株式は強気相場が6年間 し、エマージング市場では株価はほとんど
続いており、その他の地域の株価も概ね 上昇しておらず、世界の資本市場がすべて
上昇してきました。米国市場の株価水準 の地域で例外なく上昇してきたわけでは
は概ね適正と思われますが、一部の銘柄 ありません。これは、2008年に発生した
やセクターは割高となっていたため、今回 世界的な金融 危機の直前との大きな違
の株価の調整は予想外の事態とは考えて いです。今回の調整は世界的な金融危機
いません。周期的な調整は、一部の行き の再来ではなく、むしろ1994年のメキシコ
過ぎを解消するための健全な市場メカニ 金融危機(「テキーラ・ショック」)や1998年
ズムです。
のロシア・LTCM危機などの時に経験した
下落相場に類似していると考えています。
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また上記の運用実績及びデータ等は過去のものであり、将来の成果を保証するものではありません。
当資料中に示された予測や見通しにつき
ましては、資料作成日現在における当社及び当社グループの見解であり、今後につきましては経済及び市場の変動に伴う変化が予想されますため、予告なく変更される可能性がありますことをご了承ください。
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2015年9月
米国の経済と金利に関する見解を教えて
ください。
一の原動力で、主要国のなかで中国経済
だけが金融危機の間も休むことなく成長
を続けました。およそ3年前に米国経済が
アーマー: 今年も後半に入りましたが、経 上向き始めると、一時はこの2大経済大国
済指標はまちまちで、米国経済は大方の が世界経済の成長に寄与しましたが、そ
予想ほど成長していないようです。それで の後に追随すると期待された欧州と日本
も、FRBは間もなく利上げを行うと予想さ にそうした確実な兆候がまだ見られませ
れてきました。ゼロに近い低金利は往々に ん。そのため、中国経済の減速が鮮明に
して投資家に過剰なリスク・テイクを許す なった時点で、投資家が極めて悲観的な
ことがあるため、私は依然としてFRBが利 反応を示したのでしょう。
上げに踏み切る必要があると考えていま
す。短期金利が徐々に上昇し始めること 中国の経済成長が減速からゼロ成長また
は長期的な経済の健全性を高めます。ま は実質的な景気後退に陥るならば、世界
た、資金は適正なリターンが得られる地 経済に極めて深刻な影響を及ぼすことに
域に向かい、銀行はある程度の利鞘を稼 なります。経済規模が世界第2位である中
ぐことができるため、金融システムの強化 国の影響は、かつてないほど大きくなって
にもつながります。
います。1980年代に「奇跡の経済成長」を
遂げた日本を例にとって比較すると、絶
中国が実際に今回の株安の原因なのでし 頂期の日本が世界のGDPに占める割合
ょうか。その他にも要因がありますか。
は10%未満でしたが、今日の中国はすで
に15%を超えています。そのため、中国に
ラブレス: 中国が主な原因だと見ていま 対する懸念と動揺が、日本をはじめとする
す。同国は、しばらくの間、米国、欧州、日 アジア諸国に加え、欧州、そして最終的に
本、そしてその他のエマージング市場すべ 米国に波及しているのです。
てを含む世界経済の成長をけん引する唯
株式市場は2009年の底値から著しく上昇
昨今の株安を長期の視点で見る必要があり
ます。株式市場は、短期的に変動しても、長
期的には著しく上昇してきました。
リターン(米ドルベース)、2009年3月9日=100
400
350
300
250
S&P500
MSCI欧州
MSCIエマージング・マーケッツIMI
MSCI日本
MSCI中国IMI
200
150
100
‘09/3/9
出所 : RIMES
‘10/2/8
‘11/1/10
‘11/12/12
‘12/11/12
‘13/10/14
‘14/9/15
‘15/8/17
(年/月/日)
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中国A株市場の下落と直近の通貨切り下
げは、世界同時株安にどれほどの影響を
及ぼしたでしょうか。
らです。各企業にとって中国がどれだけ重
要な市場かを考慮したうえで、企業の損
益状況を分析し、本格的な景気後退を想
定すれば、これまでの株価下落の大きさ
は概ね妥当なところだと考えられます。
ラブレス: A株市場が今回の世界同時株
安の主な要因ではないと思います。A株市
場の活況は、一部の市場インデックスに 中国が実施しなければならない改革と直
含まれるとの憶測が要因となったもので 面する課題を考慮すると同時に、中国が
あり、その憶測が外れたためA株市場が 世界経済の成長に果たす役割を勘案する
急落したに過ぎません。それよりも大きな と、市場心理は間もなく好転すると予想
問題は、多くの新興国通貨が低迷してい すべきでしょうか。
たことに加え、中国が人民元の切り下げに
踏み切ったことです。この切り下げは予想 アーマー: 現在の中国は、閉鎖的で投資
外で、市場を驚かせました。中国は、競争 主導の経済から、より開放的な消費主導
力を強めるために通貨を切り下げざるを の経済へ移行する過程で、痛みが増大し
得なかったのかもしれませんが、実際の ている状況と考えられます。依然として金
経済成長が想定された以上に悪いので 融・財政政策、銀行や多くの企業といった
はないかとの懸念を投資家に抱かせまし 経済チャネルの大半を政府がコントロー
た。それが市場を動揺させたのだと見て ルしている中国に、伝統的な市場開放型
います。
の先進国経済の分析に使われる手法を
適用することは困難です。したがって、現
こうした中国の状況が世界全体の金融シ 在起きている経済の変容が障害を伴うこ
ステムに加え、中国で事業を展開する企 とに備えるばかりでなく、その過程で生じ
業に、どのような影響を及ぼすでしょう る市場の混乱を捉えて優良企業に投資す
か。
べきです。
ラブレス: これまでに起きていることは金
融市場内の調整にとどまると思われます。
世界の銀行システムに金融危機を示唆す
るようなストレスの兆しは見られません。
ラブレス: 世界金融危機後、株価が底打ち
した2009年前半においてさえ、多くの投
資家が、過剰なレバレッジの解消には10
年かかり、住宅市場と住宅ローン市場の
行き過ぎにより危機の発端となった米国
中国の金融システムは厳格に管理され 、 の場合、20年を要する可能性があると語
実質的に閉鎖されているため、本格的な っていました。しかしながら、そうした人々
金融危機が生じても、政府がそれを自国 の懸念に反し、実際の変化ははるかに迅
内に封じ込め、国外への連鎖を回避する 速に進み、株価も回復してきました。そう
ことが可能だと思います。中国のように規 考えると、中国に関する悲観的な声が聞
模が大きく、管理された経済においてこ こえるようになった現在は、そろそろサイク
れほど大幅な景気減速が見られたことは ルの底に近づきつつあるのではないかと
かつてないため、世界経済にどれほどの の確信を私は強めています。
波及効果があるかないかを判断すること
は困難です。それでも、中国が調整を経 一方、中国が数年前ほど消費していないこ
験することは重要です。経済が障害にぶ とを考えれば、中国向け輸出の多い日本や
つかることなく成長を続けることはありえ 欧州のほか、ブラジルやオーストラリアな
ず、中国においても、過剰な信用供給を含 どの資源輸出国、商品市場などに影響が
む多くの行き過ぎが解消されているところ 及ぶことはある程度は避けられないでし
だからです。
ょう。ただし、中国の輸入統計が示すよう
に、世界の需要のけん引役としての同国の
個別企業に対する影響については、もう 役割は既に過去数年間に低下してきてお
少しシンプルで把握がしやすいのではな り、言い換えれば、世界経済の同国への
いでしょうか。これまでのところ、打撃を 依存度はかなり調整が進んでいると見る
受けている企業とその打撃の程度を見る ことができます。
限りでは、市場が概ね合理的だと思うか
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2015年9月
今回の株安のなかで、中国国内と中国以
外の両方において、投資機会が生じてい
る具体的な分野がありますか。
私たちはこのような時こそ、基 本に立ち
返るべきだと思います。すなわち、企業は
生活に必要な財・サービスを生み出し続
けるのです。例えば、航空機は満席状態
アーマー: 一つの明白な分野は中国のイ です。旅行や出張する人が増えていますが、
ンターネット企業です。同国のインターネ 航空会社は旅客輸送能力をあまり増やし
ット企業は今日、世界的な大手となってい ていません。ここに投資機会があると見
るにもかかわらず、現在は様々なバリュエ ています。それは、繰延需要の顕現により、
ーション指標において、米国企業をはじめ 受注が爆発的に増加する航空機メーカー
とする他の大手インターネット企業よりも かもしれませんし、大手航空会社の旅客
魅力が高まっています。投資機会が見出 シェアを奪って成長するLCC(低コスト航
せる水準まで株価が調整したからです。
空会社)かもしれません。あるいは、予約
の取りにくい航空機からクルーズ船に一
売上げの多くが中国で生じている多国籍 部の旅行需要がシフトすることなども考え
企業はどうですか。
られるでしょう。また、バイオテクノロジー
では、100年に1度の現象がまさに今生じ
アーマー: 中国の経済成長率は低下して
ています。画期的な技術革新により、極め
いますが、依然として多くの先進国より高
て重要な分子が開発されており、がんな
い成長を維持すると予想されます。ですか
どの重大疾病の治療法の改善などを通じ
ら、多国籍企業は引き続き中国での売上
て、生活の質を著しく向上させる可能性が
げを伸ばすと考えられ、景気サイクルに
あります。こうした企業活動や技術革新は、
順応して収益機会とするでしょう。
最近の市場急落などを受けても途切れる
ことはありません。
現在の環境下、グローバル投資において
何を念頭に置くべきでしょうか。
アーマー: 金融システムは、特に先進国に
ラブレス: 不安がピークに達している現
在の状況は、一般的に投資機会が最大と
なる時だと思います。2009年に市場が底
入れした時には、人々は投資を控える傾
向にありましたし、回復を始めた時でさ
え、量的緩和が機能し、米国が問題を解
決する方法を見つけると確信する人はほ
とんどいませんでした。また、米国株式が
その後数年以内に高値を更新するとも誰
も思いませんでしが、現実には全て実現し
たのです。
おいて、2008年の金融危機前よりはるか
に強化されています。米国と欧州の銀行
は、自己資本比率を大きく向上させており、
抱えていた問題債権をきれいに取り除い
ています。だからこそ、私たちは現在の不
安定な局面が投資機会になりうると捉え
ています。弊社グループに所属する世界中
の運用担当者が、この局面を捉え、優良
企業に魅力的な価格で投資することによ
り、お客様の資産形成の一助となり得るこ
とを誇りに思っています。
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※時点の記載がない場合は2015年8月17日現在の情報または見解です。また、当資料は、キャピタル・グループ全体ではなく、個人の意見や見解を含みます。
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商号
関東財務局長(金商)
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