補強土(テールアルメ)壁工法 盛土高 20mを超える適用における 設計

補強土(テールアルメ)壁工法
盛土高 20mを超える適用における
設計・施工ガイドライン
平成 27 年 6 月
日本テールアルメ協会
無断転載禁止(日本テールアルメ協会)
目次
はじめに ..................................................................................... 1
1.適用範囲について .......................................................................... 1
2.盛土高さとテールアルメ適用上の課題 ........................................................ 2
2.1 盛土高さについて............................................................................................................................................................................................................... 2
2.2 高壁高テールアルメでの課題......................................................................................................................................................................................... 3
2.3 その他のテールアルメにおける課題 ............................................................................................................................................................................... 3
3.課題への対応について ...................................................................... 4
3.1
3.2
3.3
3.4
3.5
高壁高テールアルメ........................................................................................................................................................................................................... 4
テールアルメの挙動の影響について .............................................................................................................................................................................. 4
テールアルメに主眼をおいた照査項目について ........................................................................................................................................................ 5
テールアルメと道路の離隔が広い場合 ....................................................................................................................................................................... 5
共通した留意点 ................................................................................................................................................................................................................ 6
4.テールアルメの設計手順について ............................................................ 7
5.排水対策について .......................................................................... 9
5.1 テールアルメの排水計画 ................................................................................................................................................................................................. 9
5.2 谷埋めテールアルメの排水対策 ................................................................................................................................................................................. 10
5.3 嵩上げ盛土の排水対策 .............................................................................................................................................................................................. 10
6.施工における留意点 ....................................................................... 11
6.1 盛土の締固め管理 ........................................................................................................................................................................................................ 11
6.2 壁面の出来型管理 ....................................................................................................................................................................................................... 11
6.3 盛土工事全般 ................................................................................................................................................................................................................ 11
7.維持管理における留意点 ................................................................... 12
7.1 テールアルメの安定性 .................................................................................................................................................................................................... 12
7.2 テールアルメの保全 ......................................................................................................................................................................................................... 12
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はじめに
「補強土(テールアルメ)壁工法設計・施工マニュアル
第4回改訂版」
(以下,
「マニュアル」
と記す)では,マニュアルの適用範囲として盛土高 20m までの補強土(テールアルメ)壁の調
査・計画,設計,施工及び維持管理に適用することが明確にされた。
本ガイドラインは,盛土高 20m を超えるテールアルメに関し,調査・計画,設計,施工及び
維持管理における留意点や検討項目について整理したものである。なお,発注機関によっては適
用高さの定義が異なるが,数字を読み替えて摘要できるものとする。
1. 適用範囲について
ここでいう適用範囲とは,マニュアルの適用範囲を示すものであり,テールアルメの適用限
界を示すものでは無い。この点は,第 3 回改訂版より変わるところでは無いが,マニュアルの適
用範囲に関する記載内容にはいくつかの変更点がある。
新旧マニュアルにおける記載内容の変更点は表-1.1 のようである。
表-1.1 マニュアルの適用範囲の変更点
第3回改訂版
第4回改訂版
特に記載なし
道路
盛土高 20m程度
盛土高 20m
設計,施工
計画・調査,設計,
施工,維持管理
① 用途
② 高さ制限
③ マニュアルの適用項目
用途が道路に特化されたのは,性能設計の枠組みの導入に伴い,テールアルメに要求される性
能を明記する必要があり,この部分を「道路土工-擁壁工指針」
(平成 24 年度版)に準拠したこ
とによる。もちろん,その他の用途であっても道路に準じた性能で問題がなければマニュアルに
よる設計・施工を実施しても問題はない。さらには,道路と異なる性能が要求される場合におい
ても,それを満足した上でテールアルメを使用することには何ら問題はない。
高さ制限が「盛土高 20m程度」から「盛土高 20m」に変更となったのは,マニュアルの責任
範囲を明確化するために曖昧な表現を避けたことによる。大規模なテールアルメの設計・施工方
法等は,周辺環境や様々な条件により非常に多岐にわたるため,マニュアルとして画一的に記載
することは非常に困難である。いいかえれば,大規模な土構造物であるほどその安定性に影響を
与える外的要因が増え,建設されたテールアルメが将来的に不安定となる可能性を排除するため
には,画一的な設計・施工とならないよう配慮する事が重要となる。
なお,マニュアル p28 では,「本マニュアルの適用を超えるテールアルメを建設する場合もあ
る。このような場合には,本マニュアルの基本的な考え方を踏まえて計画,調査,設計,施工,
維持管理に関する詳細な検討を行うこと」と示されている。
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2. 盛土高さとテールアルメ適用上の課題
2.1 盛土高さについて
ここでいう盛土高とは,地表面から上のテールアルメ壁高と嵩上げ盛土高との和(図-2.1,HB)
であり,道路盛土における盛土高の定義 1)に合わせたものとなる。
道路においては,一般的に 15m~20m 以上の規模のものが「高盛土」として取り扱われ,標
準勾配
2)
の適用に制限が設けられている。高盛土は低・中規模の盛土に比べて,万一崩壊した
場合の社会的影響度合いが大きく,安定性の照査を行うなど計画にあたっては慎重な検討が行わ
れているところである。同様に,20m を超える規模のテールアルメは,大規模な土構造物とし
て識別され,高盛土と同様にその安定性について慎重に検討しなければならない。
道路面
嵩上げ盛土
HB
H4
テールアルメ
Ha
H
ここに,
HB:盛土高
H :テールアルメ壁高
H4 :笠コンクリートの高さ
Ha :テールアルメ仮想壁高
Df :根入れ深さ
Df
図-2.1 嵩上げ盛土を有するテールアルメ
ここで,図-2.2 に示した様に盛土高が同一であっても,テールアルメ壁高と嵩上げ盛土高の
構成比率が異なる場合がある。両者は安定性や修復性の面から見れば,同一の評価はできない。
特に,図-2.2 a)の場合は構造物自体の安定性に加え,施工中から維持管理における作業の安全
確保,万が一損傷が生じた場合の修復性などへの影響度合いが大きいといえ,一般的な高盛土
とは同一視できない側面もある。一方,図-2.2 b)は盛土高さが 20m を大きく超えるケースも
あり,崩壊時の社会的影響を考慮すれば,より慎重かつ十分な検討が必要となる
H4
HB
HB
H
H4
H
Df
Df
a) 単独で高壁高なテールアルメ
b) テールアルメは低いが高い嵩上げ盛土を有す
図-2.2 大規模構造となるテールアルメ
2
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2.2 高壁高テールアルメでの課題
構造計算の上では,一つの壁面で 20m の計画も可能であり,条件にもよるがテールアルメの
内的安定検討における仮想壁高(Ha)が 21~25m 程度まで対応可能となる。さらに,壁背面よ
り tan-10.3 または壁高の 1/2 より背面側の嵩上げ盛土高は内的安定計算に影響しないため,高壁
高かつ高盛土の構造も外的安定計算条件を満足することで設計は可能である。しかしながら,高
壁高なテールアルメには,維持管理における課題が残されている状況にあり,安易に計画するこ
とは避けなければならない。例えば,壁面の取り替え・補修技術は提案されているが,高所での
補修作業を行うには,前面に足場工を設置できるスペースが確保されていなければならない。急
峻な箇所での計画では維持管理のためのスペースがとれないことも多いであろうし,資機材の搬
入性なども補修の難易度に影響を与えることを加味しておかなければならない。また,テールア
ルメ壁高が 20m 規模となれば,少なくとも 14m 以上(L≧0.7Ha)のストリップが敷設されること
になり,部分的な再施工を行おうとした場合でもその影響は広範囲となる。
したがって,高壁高テールアルメの計画にあたっては,まず修復性に関する事項について十分
な検討を行うべきである。
2.3 その他のテールアルメにおける課題
テールアルメと嵩上げ盛土では,それぞれで安定性に影響を与える要因が異なると考えられ,
盛土高に占める擁壁高(テールアルメ壁高)の割合によって,検討すべき課題が異なると考えら
れる。例えば,図-2.3 a)のようにテールアルメ壁位置と道路位置が近い場合には,テールアルメ
の挙動が道路に直接的に影響を与えるため,テールアルメの安定性に主眼を置いた検討が必要と
考える。一方,図-2.3 b)のように擁壁高が低い場合には,テールアルメ背面盛土の比率が高くな
るため,壁面挙動の影響は少なくなるものと考えられ,盛土の安定性に主眼を置いた検討が必要
となる。したがって,高盛土となる場合の安定検討を行おうとする場合には,壁位置と道路位置
との相互関係を踏まえ,いずれのモデルに該当するかの判断を定量的に行うことが必要となる。
W1
W2
道路面
道路面
H4
HB
HB
H
H4
H
Df
Df
a) テールアルメに道路が近接する場合
b) テールアルメと道路の離隔が広い場合
図-2.3 擁壁高さと道路位置との相関
3
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3. 課題への対応について
3.1 高壁高テールアルメ
盛土高が 20m を超え,かつテールアルメ壁高が 15m を超える適用に関し,以下のことが困難
である場合には,計画自体の見直しも含めて検討しなければならない。
① 点検の容易さ:壁面を目視あるいは測量による観測が可能
② 壁面の修復性:壁前面での足場設置スペースの確保が可能
③ 盛土部の修復性:ストリップ敷設範囲の掘削が可能か,あるいは盛土材料として
沈下や変形の少ない剛性の高い材料の適用が可能
1 段のテールアルメで対応が困難な場合には,多段形式の適用が可能かどうかについて検討す
る。多段形式とすることで壁面の点検,修復性を補えることもある。
なお,テールアルメ壁高が 15~20m を超えて,さらに高い嵩上げ盛土を積載する計画は,修
復性等の面からすればリスクが高いと考えられ,リスクの取り扱いについて関係者間で共有する
ことが肝要と考える。
3.2 テールアルメの挙動の影響について
テールアルメの挙動の影響の有無を,壁面と道路位置の関係のみで示すことは難い面もあるが,
少なくとも道路が十分に離れた位置にあれば相互の挙動による影響は少ないと考えられるため,
図-3.1 で示したように,最下段ストリップにおける構造細目上の最小ストリップ長より 45°の
影響線を引いたときにその内側に道路端(もしくは構造物等)が入るかどうかを,一応の目安と
して判断するものとする。すなわち,W≦w の関係であればテールアルメの安定を主眼とし,W
>w の関係であれば盛土の安定を主眼とした照査項目について検討するものとする。
w
=
Lmin+HB+Df
ここに,W :壁裏面より道路端部までの距離(m)
w :影響範囲(m)
Lmin : 構造細目による最小ストリップ長(m)
HB :盛土高(m)
Df :根入れ深さ(m)
w=Lmin+HB+Df
W
W
w=Lmin+HB+Df
道路面
道路面
H4
HB
HB
Ha
Df
H
45°
Lmin
H4
Ha H
Df
a) テールアルメに道路が近接する場合
45°
Lmin
b) テールアルメと道路の離隔が広い場合
図-3.1 擁壁高さと道路位置との相関
4
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※Lmin は 0.4Ha かつ 4.0m とする。
3.3 テールアルメに主眼をおいた照査項目について
1) 立地条件に応じた設計上の留意点
テールアルメの設置場所によっては,通常のテールアルメを設計する場合に加えて以下に列挙
する事項について別途検討する。
なお,別途検討とはマニュアルと別の設計法を採用することを意味するのでは無く,土質定数
の設定や設計地震動レベルの設定など設計条件をより詳細に検討することであり,基本的な設計
方法が変わるものでは無い。
①
仮想壁高に応じた根入れ深さを検討するものとし,マニュアル表-5.9(p176)を参考にし,
洗掘や凍上等の影響が無いように留意する。
②
前面に貯水池等の水位がある場合,その高さまで基盤排水層とするとともに,腐食代
1.5mm 考慮するものとする。
③
地下水位が確認された場合など,テールアルメの一部が浸水する可能性が無いか検討を
加え,懸念がある場合は②と同様の配慮とする。
④
外的安定および全体すべりの検討においては,道路横断方向のみならず,嵩上げ盛土の
方向や谷埋め盛土であれば谷筋の方向などから,解析上不利な条件となるよう解析モデ
ルの妥当性について検討する。
2) テールアルメの挙動に対する照査
テールアルメに近接して道路が位置する計画では,テールアルメの挙動が道路に直接影響を与
える事が考えられ,テールアルメの変位が許容変位以下であることが照査項目となる。
ここで,擁壁工指針 3)では,
「通常の地盤では補強土壁自体の安定性の照査項目(滑動,転倒,
支持)について所定の安全率を満足することで,変位の照査が省略できる」とのみなし規定が適
用されている。したがって,テールアルメ壁自体の安定性の照査が行われ,所定の安全率を満足
していることが必須となる。また,みなし規定の条件として基礎地盤の選定が重要となるので,
地盤調査により基礎地盤の性質と支持層の位置を把握するとともに,安定照査結果に応じて改良
地盤等の適切な対策を講じるなど,確実に支持力が得られることを照査する。
なお,変位の制限が厳しい場合などでは,変形解析の適用も考えられるが,その場合はテール
アルメ以外の地盤も含めた設計諸定数について詳細に検討する必要がある。
3.4 テールアルメと道路の離隔が広い場合
盛土高 20m を超えて道路面との離隔が広い場合(図-3.1,b)),嵩上げ盛土の比率が高くなるた
め,主として盛土の安定照査行うこととし,通常は高盛土・大規模盛土 4)としての検討項目を参
考とする。
安定照査においては円弧すべり検討に主眼を置くが,所用の安全率に満たない場合には,補強
材により不足抵抗力を補う対策のみとせず,盛土のり面の勾配,盛土のり面補強,良質盛土材の
使用,抑止工・抑制工等の対策工について検討する。
1) のり面の安定
嵩上げ盛土は上載荷重としてテールアルメに作用するため,嵩上げ盛土が不安定な状態となる
と,テールアルメ上端部の補強材への荷重分担が増加する懸念が考えられる。補強材の配置には
限界があるため,のり面補強(ジオテキスタイル等)による対策等を別途に検討するのが望まし
5
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い。のり面が不安定になる要因としては間隙水圧の上昇,すべり面の侵入が考えられ,のり面の
排水対策も含めた検討とする。
HB
雨水浸透
のり面内での
すべり発生
H4
H
上段部補強材
への負荷増
図-3.2 のり面内すべりによるテールアルメへの影響
2) 盛土深部の安定
高盛土の安定の上では,テールアルメのみではなく背面の盛土材料についてもせん断強さの大
きな材料を適用することが望ましい。細粒分の多い現地発生土を適用する場合には,下層および
のり面に粗粒材料を適用するなど,ゾーニングにより間隙水圧や地下水の影響を受けにくくなる
ような対策もあわせて検討する。テールアルメに対する安定性を向上させるためには,図-3.3 に
示す様な形状でテールアルメ背面でのゾーニングとし,テールアルメ盛土と同様の品質管理を行
うものとする。
最上段敷設長
余裕幅
背面盛土
テールアルメ
ゾーニング
注 1) 原地盤との境界は表土の除去や段切等の適切な
処置が行われているものとする。
注 2) テールアルメを先行して施工する場合,ゾーニング
部の勾配を 1:2.0 とするなど施工に配慮する。
注 3) 余裕幅は 1.0m 程度を見込むが,施工機械等を
鑑みて適宜設定するものとする。
図-3.3 テールアルメ背面でのゾーニングの例
3.5 共通した留意点
1) 水の影響
前述のように,嵩上げ盛土の浸透水に対する排水対策はテールアルメの安定性の面でも重要で
あり,高盛土としての排水計画に留意が必要となる。
また,テールアルメの設計では水の影響を考慮しておらず,地下水位が上昇する状態であれば,
外的安定における安全率が低下することに加え,常時水位がある状態となると,ストリップの腐
食による耐久性の低下が懸念されるため,盛土深部の排水計画は慎重に行う必要がある。必要に
応じて腐食しろを多く見込む等の対策についても検討する。
6
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2) 盛土材料
テールアルメの盛土材料は良質土とされるが,背面盛土については設計時の想定と施工時の差
異が生じる可能性が考えられる。特に高盛土となる場合は土量が大規模となり,実施工に当たっ
ては様々な土質材料が使用される可能性があるため,予め使用可能な盛土材料の範囲を明確にし
ておくことが望ましい。
円弧すべりによるテールアルメの安定への影響度合いが高いため,土質定数の設定を慎重に検
討する必要がある。一般的に盛土は時間の経過と共に次第に土のせん断強さが増し,施工後,数
年で安定性が向上する。しかし,長期間経た盛土であっても,降雨等によって盛土内水位(間隙
水圧)が変動し,土のせん断強度の低下や,スレーキングによって土が細粒化すれば,盛土の沈
下・変状により安定性の低下が懸念されることから,盛土材料の性状に応じた土質定数を設定す
ることが課題とされる。
3) 1 層のまき出し厚
盛土施工において薄層転圧とすることで,盛土の剛性を高めることができるため,200mm 以
下のまき出し厚とする事が望ましい。
一般に,テールアルメでは壁高が高くなると,補強材の取付本数が増え,8 本取り以上のスキ
ンではストリップ鉛直間隔が 375mm(標準 750mm)となる。これにより,盛土 1 層の仕上がり
厚は 188mm(標準 250mm)となる。
4. テールアルメの設計手順について
前項で示したように,盛土高 20m を超える様な計画においては,単にテールアルメの設計の
みで対処するのでは無く,背面の盛土あるいは基礎地盤を含めた周辺の地盤の調査,設計が適切
になされていることが肝要と考える。
その上で,テールアルメ壁の規模(擁壁高)に対して部材の照査を行い,上部道路への影響に
ついて検討する。立地条件に応じてテールアルメの設計仕様について検討し,排水計画について
標準設計で対処可能かどうか照査するものとする。テールアルメの排水対策については 5 項にて
詳述する。
図-4.1 に盛土高 20m を超える計画におけるテールアルメの設計手順例として取りまとめた。
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盛土高 20m を超える
壁高は
15~20m 以上か
Yes
No
Yes
維持管理は容易か
計画の見直し
は可能か
No
No
Yes
修復性等に対する検討
ストリップ配置検討
(内的安定・外的安定)
① 点検の容易さ
② 壁面の修復性
③ 盛土部の修復性
No
問題無いか
道路との位置関係検討
・壁位置変更
・多段形式の適否検討
etc.
適用の取り止め
Yes
W,w=Lmin+HB+Df
Yes
W≧w の関係にあるか
高盛土として検討
NEXCO 設計要領等参照
No
盛土部の安定検討
テールアルメの挙動
に対する検討
No
・外的安定条件を満足すること
・基礎地盤の適切な評価
・必要に応じて変形解析を適用
円弧すべりの安全率
を満足する
対策工検討
3.4 項による
補強材延伸以外での対策
・盛土のり面補強
・ゾーニング
高盛土部の排水計画
・抑止工,抑制工
etc.
テールアルメの仕様照査
3.3 項による
立地条件を考慮しているか
テールアルメの排水計画
総合検討
No
Yes
END
Yes
必要な項目にもどる
図-4.1 盛土高 20m を超える計画におけるテールアルメの設計手順例
8
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5. 排水対策について
5.1
テールアルメの排水計画
マニュアルに記載されている一般的な排水施設だけでなく,計画地の条件に即した排水計画
を行わなければならない。高盛土では,道路土工-盛土工指針(平成 22 年版)などを参考とし
て,盛土全体系の排水計画が適正かを検討する必要がある。
施工時においても現場の状況(湧水の量)や構造物の重要性に応じて,排水施設を追加・変
更することを特記事項として定めておく必要がある。
マニュアルにおける標準的な排水計画は以下の通り。
図-5.1 テールアルメにおける標準的な地下排水施設の例
背面側からの浸透水が懸念される計画では,浸透水を補強領域内に浸入させないことが重要
で有り,マニュアルの記述以上の配慮が必要である。以下に背面排水層を追加した事例を示す。
水平排水層
排水材
浸透水
背面排水層
(ドレーン材)
0
0
地山
排出管
水たたき
じゃかご等
基盤排水層
図-5.2 テールアルメ背面での排水層設置例
9
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5.2
谷埋めテールアルメの排水対策
テールアルメにて山地部の沢部を埋め立てる計画の場合においては,地表面の湧水の有無や,
地中の浸透水の動きを事前の調査のみによって正確につかむことは難しいため,流水や湧水の有
無にかかわらず旧沢地形に沿って地下排水工を設置する。沢埋め盛土における地下排水溝の設置
例を以下に示す。
図-5.3 沢埋め盛土における地下排水溝及び基盤排水層の設置例
「道路土工-盛土工指針(平成 22 年版)
,p161-163」より抜粋
5.3
嵩上げ盛土の排水対策
嵩上げ盛土における排水対策としては,盛土の一定厚さごとに水平の排水層を挿入する。水
平排水層により降雨浸透による間隙水圧の上昇を防止できるため,特に高盛土となる場合にのり
面の安定化対策として有効である。
また,テールアルメ領域内への雨水浸透を防護する目的で,テールアルメとの境界部に遮水
シートまたは排水シートを面状に設置することでテールアルメの安定対策とすることができる。
図-5.4 水平排水層及び基盤排水層の例
「道路土工-盛土工指針(平成 22 年版)
,p163」より抜粋
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6. 施工における留意点
6.1
盛土の締固め管理
盛土材料については,圧縮性の小さな盛土材料であるか施工段階においても確認した上で,所
定の締固め密度が得られるよう品質管理に努める。締固め管理基準はマニュアル(p250~251)
に示された目安値を参考として,橋台アプローチ部の管理基準を適用することも考えられる。
なお,仕上がり層厚に関しては使用する盛土材料の締固め特性に応じて適宜に設定することと
するが,盛土の残留沈下を最小とするためには,試験盛土により転圧回数とともに設定すること
が望ましい。
表-6.1 締固め管理基準の目安
施工部位
一般部
橋台背面
アプローチ部
6.2
仕上がり厚
25cm
試験方法
JIS A 1210
A,B 法
C,D,E 法
一般の橋台背面
インテグラルアバット
構造の橋台背面
20cm
C,D,E 法
締固め度
Dc(%)
95%以上
90%以上
平均 92%以上
かつ最小 90%以上
平均 97%以上
かつ最小 95%以上
壁面の出来型管理
施工時は通常の管理に加え,壁面の出来型について精度良い管理が要求される。
施工中の状況把握はもとより,施工精度に影響を与えた要因の把握も必要で有り,そのために
は動態観測を行うことが望ましい。
6.3
盛土工事全般
基礎地盤の調査の重要性は 3 項で述べたが,施工段階においても必要に応じてチェックボーリ
ング等の調査を行い,床堀面の直接観察および支持力確認の確実な実施を徹底する。
掘削背面が不安定であると判断された場合は,ロックボルト等の斜面安定対策を図る等して,
施工時の安定性確保に努める。
背面が緩勾配である場合には,表土層の排除と段切り施工を徹底し,湧水が確認された場合に
は排水対策を追加する。
テールアルメ以外の各種構造物も含めた施工管理を行うにあたり,各種チェックシートや施工
管理用の写真記録等に関する仕様書を定めておき,施工における問題が発生した場合の原因究明
の一助となるよう努める。
11
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7. 維持管理における留意点
7.1
テールアルメの安定性
長期的な安定性を確保するためには,ストリップと盛土材との間の摩擦抵抗力が十分に発揮さ
れていることはもとより,長期的な観点からもその安定性を検証できるようにしておくことが望
ましい。テールアルメの安定性はストリップとの間で所定の摩擦力が確保出来ているかが重要で
有り,それを検証するためにストリップの引抜試験を実施することが行われている。この方法は
試験用のストリップを事前に設置しておくことで,維持管理の観点からも安定性の評価を行おう
とするものである。
また,壁面の挙動観測も安定性を評価する上での重要な情報となる事から,長期観測に適した
ターゲットを設置するなど各種測量により壁面の挙動観察計画を立てるものとする。
7.2
テールアルメの保全
テールアルメの保全を考える上では,附帯構造の機能低下についても検討しておくことが必
要である。例えば,排水設備について経年変化による機能低下の問題が考えられるが,機能低下
によるリスクを回避する目的で,設計時に地下水排水系等の複線化を計画することは,長期的な
安定性をはかる方法の一つである。
以上
参考文献
1)
日本道路協会:道路土工 盛土工指針(平成 22 年度版),p105,解図 4-3-2,H22.5
2)
同書
3)
日本道路協会:道路土工 擁壁工指針(平成 24 年度版),p253,H24.7
4)
NEXCO:設計要領 第一集,第6章,H25.7
,p106,解表 4-3-2,H22.5
12
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