「教授を魅了した大地の結晶-北川隆司鉱物コレクション-」開催報告

大阪市立科学館研究報告 25, 125 - 126 (2015)
「教授を魅了した大地の結晶-北川隆司鉱物コレクション-」開催報告
江 越
航
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概 要
2014 年 11 月 15 日 ~2015 年 1 月 12 日 、当 館で開催 した企 画 展 「THE 結晶 展」の中で、「教授を魅
了 した大 地 の結 晶 -北 川 隆 司 鉱 物 コレクション-」と題 した鉱 物 コレクションの展 示 を行 った。これは、故
北 川 隆 司 広 島 大 学 教 授 が収 集 した鉱 物 コレクションで、全 国 を巡 回 している展 示 会 である。本 稿 では、
この企画展 の概 要 について報 告 する。
1.はじめに 
調査に伺った。
当館では、2014 年 11 月 15 日(土)~2015 年 1 月
こ ち ら の 博 物 館 で は 、 資 料 展 示 の た め に 120 ×
12 日(月)の間、企 画 展「THE 結 晶 展」を開 催 した。こ
60cm の大きさの展示ケースが 11 台 、85×60cm のケ
の中の1コーナーとして、「教 授 を魅 了 した大 地 の結 晶
ースが7台、180×100cm のケースが3台 使用されてい
-北川 隆 司 鉱物 コレクション-」と題 した展 示 を行った。
た。また、巡 回 展 で最 初 に企 画 展を実 施した広 島市こ
これ は 、故 北 川 隆 司 広 島 大 学 教 授 ( 1949-2009) が
ども文化科学館では、150×60cm で2段の展示ケース
収 集 した鉱 物 コレクションをもとに、全 国 を巡 回 してい
を6台、180×60cm で2段の展示ケースを 10 台 使 用 し
る 展 示 会 であ る 。北 川 教 授 は 、鉱 物 学 の 基 礎 か ら 地
たとのことであった。
震・災 害・環 境 問 題 まで幅 広 く研 究 するとともに、熱 心
これより、展示ケース全体の面積としては 17 万 cm 2
な鉱 物 収 集家 でもあり、その生 涯 にわたって世 界各 地
程度が必 要と見積もった。展 示 は2ヶ所に分けることに
におもむいて収集 した鉱 物コレクションは 2000 点余り
し、地 下 一 階 の無 料 コーナーに一 部 を展 示 、メインの
にのぼる。今回の展 示 会 は、膨 大 なコレクションの中か
展示は4階のサイエンスギャラリー前で行うこととした。
ら、自然 の造形 美 ・不 思 議 を感 じることができる標本約
200 点を特に選んで展 示したものである。
使用した展示ケースは
○4階メインコーナー
この展示会は、2013 年 6 月 での広 島 市こども文化
・
140×60cm のケース6台 。すべて LED 照 明 付き。
科 学 館 での開 催 を皮 切 りに、国 立 科 学 博 物 館 が中 心
・
140×50cm で2段 のケース2台。ただし、実際には
となって、全国の博 物 館を巡 る企 画 展である。
以 下 にこの展 示 会 の概 要 、特 に当 館 で実 施 するに
安全性を重視し、1段で使用した。
・
あたり、準備したことがらについて報 告する。
古 代 の宇 宙 観 のコーナー、およびその横 の古 代 ・
中 世 の科 学 の「古 代 の科 学 技 術 」「時 と暦 」 の常
設展示ケース
2.展示ケース準 備
今 回 の企 画展 では、鉱 物 200 点 余りを展 示するケ
○地 下 一 階
・
ースが必要になる。
展 示ケースには朝に直 射 日 光が差 し込むことから、
この企画展は巡 回 展 であり、当 館 での開 催の前 にも、
他の博物館において開 催されていた。4 月 19 日 ~6
月 1 日までの期間 に、豊 橋 市 自 然 史 博 物 館 において
開催されていたことから、事 前 にここでの展 示 の様子を
サイエンスギャラリーの常 設 ケース2台 。なお、この
ケース前 面に UV カットフィルムを貼った。
・
展 示 場改 札 横 の大 型 常 設 展 示ケース。ここには、
コレクションの中でも主に大 型の鉱物を展示した。
以 上 の展 示 場 所 を、実 際 に 列 品 する日 までに準 備 し、
必要な展示ケースをあらかじめ配置した。
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大 阪 市 立 科 学 館 学 芸 グループ
e-mail:[email protected]
江越 航
3.搬入
素 組 成 、原 産 地 が記 載 されたプレートを配 置 するにと
資料は、11 月 6 日(木)に前 展 示 場 所 である香 川 大
学博物館より科学 館 に運び込まれた。
資料の数は、段ボール箱 70 箱 分(うち 64 箱のサイ
どめた。これは説 明 が詳 しすぎると、かえってそれを読
むのに注 意 が 向 いてしまうためで、解 説 ではなく標 本
そのものをじっくり眺めてもらうようにするためである。
ズは 44×31×31cm)で、これに梱 包 材 等 が入 った段
ボールが 30 箱あり、合 計 100 箱ある。資 料の数が多い
ことから、搬 入 計 画 についても事 前 にシミュレーション
を行った。
5.おわりに
以 上 のような経 緯 を 経 て、 標 本 の 破 損 もなく、無 事
企画展を実施することができた。
実 際 に列 品 するまでに、これらの梱 包 資 料 を 2段 積
み以 下 の 状 態 で数 日 間 保 管 する 必 要 があ る 。このた
来 館 者 の反 応もよく、展 示 ケースの間 近から熱 心に
鉱物を見ている様子がうかがえた。
めのまとまった場 所 が 必 要 になることから、必 要 となる
北 川 先 生 の 収 集 の理 念 として「学 術 的 な希 少 性 だ
スペースを 検 討 した 結 果 、オムニマックス 映 写 室 に 保
けでなく、自然の造 形の不 思議と美 しさを追い求める」
管 用の場所を確保 した。
ということがあった。
一 方 、搬 入 は通 常 の営 業 時 間 内 に行 う必 要 がある
実 際 、展 示 された 資 料 はと ても 美 しいものや、形 が
ことから、来 館 者 との接 触 を避 けるため、トラックからの
不 思 議 なものなど、感 性 に訴 えるものが非 常 に多 かっ
荷 物 は、一 旦 工 作 室 に搬 入 した。その後 時 間 帯 を見
た。
計 らって、同 日 中 にオムニマックス映 写 室 に 移 動 させ
た。
こう した 一 流 の 資 料 を 展 示 する 機 会 を 得 た こと で、
今 回 の企 画 展 は、実 物 資 料 を通 して来 館 者 に訴 えか
けるという、博 物 館 と して基 本 となる 目 的 を 果 たすこと
4.列品
ができた。
標 本 の 開 梱 、列 品 は、標 本 を熟 知 している 国 立 科
学 博 物 館 の 宮 脇 律 郎 氏 、 門 馬 綱 一 氏 、北 川 研 究 室
の卒業生である大 阪 大 谷 大 学 の地 下 まゆみ氏 に作 業
していただいた。
これは、標 本 には多 くの易 損 品 があり、直 接 触 れて
良 い部 位 、底 部 にしても良 い部 位 があって、その部 位
を守 らないと 、標 本 を 破 損 、 汚 損 する 恐 れ があるため
である。
列 品 作 業 は 、標 本 の 破 損 事 故 の ないよう 、科 学 館
の休館日である 11 月 10 日 (月)に行った。
標 本 の配 置は、こちらで用 意 した展 示 ケースの配 置
を元 に、適 宜 、単 体 ・元 素 鉱 物 、硫 化 物 、珪 酸 塩 、炭
酸 塩 等に分かれるよう並べていった。
列 品にあたって標 本に関する解 説は、鉱 物 名と元
写 真1 列 品された資 料の一 部
写 真2 来 館 者の様 子