数の循環 2015 年 6 月 4 日 (木) . 合同式の意味と基本性質 本章では、”数の循環”を定式化する ”合同式”を学ぶよ! ∼復習∼ !合同式 a,b を整数とし、m を負でない整数とする。a − b が m の倍数のとき a と b は m を法としての合同である といい、記号で ≡ と表す。このように ”≡ ”で結 ばれた式を合同式 という。 例 4.1)94 − 55 を合同式で書くと?? 94 − 55 94 ≡ 55 (mod 13) = 39 = 13 × 3 または 94 ≡ 55 (mod 3) !例 4.2 a と b が m を法として合同であるためには、a を m で割った余りと b を m で 割った余りが等しくなる ことは必要十分である。 説明 a と b は次のように表せる。 0 ≤ s, t < m a = mp + s、b = mq + t このとき a − b = m(p − q) + (s − t) −m<s−t<m が成り立つ。したがって a − b が m で割り切れる(つまり、合同である)た めには、s − t が m で割り切れることが必要十分である。ところが、 −m < s − t < m s−t=0→s=t 以上より 合同 ⇐⇒ 余りが等しい 1 例 4.1 を振り返ると・ ・ ・ 94 = 13 × 7 + 3 94 55 = 13 × 4 + 3 ≡ 55 (mod 13) または 94 = 3 × 33 + 1 94 55 = 3 × 18 + 1 ≡ 55 (mod 3) ・m を法とする合同式は一種の等式である! 一種の等式というからには、 等式の基本性質も満たしている ハズだよね?? !定理 4 m を法とする合同式に関して次のことが成り立つ。 (1)a ≡ a (mod m) (2)a ≡ b (mod m) ならば b ≡ a (mod m) (3)a ≡ b (mod m), b ≡ c (mod m) ならば a ≡ c (mod m) (4)a ≡ b (mod m), c ≡ d (mod m) ならば、 (i)a + c ≡ b + d (mod m)・ ・ ・和 (ii)a − c ≡ b − d (mod m)・ ・ ・差 (iii) ac ≡ bd が成り立つ。 (mod m)・ ・ ・積 この定理の (1) を反射律、(2) を対称律、(3) を推移律と呼ぶ。 証明 (1)、(2) は明らか。 (3) を証明する。 a ≡ b (mod m), b ≡ c (mod m) とする。 a − b = mk, b − c = ml(k, l ∈ Z) と表せる。 このとき a − c = a − b + b − c = mk + ml = m(k + l) と変形できる。 以上より示せた。 2 (4) を証明する。 a≡b (mod m) , c≡d a − b = mk , c − d = ml(k, l ∈ Z) (i)(a + c) − (b + d) = a−b+c−d (mod m) = mk + ml = m(k + l) (ii)(a − c) − (b − d) a − b − (c − d) = = mk − ml = m(k − l) (iii) a = b + mk , c = d + ml ac = (b + mk)(d + ml) = bd + mbl + mdk + m2 kl ac − bd = m(bl + dk + mkl) m(bl + dk + mkl) は 、 m で割り切れるから ac − bd = mk1 ac ≡ bd (mod m) 加法、減法、および乗法に関して、合同式は、 等式と全く同じように取り扱うことができる! ! へぇ∼ (例 4.4) 10n ≡ 1 (mod 9) が成り立つ。 (例 4.5)19410712 を、例 4.4 を使って、9 で割った余りを求めよう! 19410712 = 1 × 107 + 9 × 106 + 4 × 105 + 1 × 104 +0 × 103 + 7 × 102 + 1 × 101 + 2 ≡ 1+9+4+1+0+7+1+2 = 25 = 2 × 10 + 5 ≡ 2 + 5 (mod 9) = 7 (mod 9) !整数 9 で割った余りは、その数の各位の数字の和を 9 で割った余りに等しい。 つまり、各位の数字の和が 9 で割り切れば、その数は 9 で割り切れることになる! 3 (mod 9) 以外でも同じような計算 できないものかねぇ・ ・ ・。 10 ≡ 1 (mod x) 10 ≡ −1 (mod x) x ≡ 3 のとき、10 ≡ 1 (mod 3) となるので、 例 4.4 と同様に 10n ≡ 1 (mod 3) が成り立つ! !整数を 9, 3 で割った余りは、その数の各位の数字の和を 9, 3 で割った余りに等しい。 x ≡ 11 のとき、10 ≡ −1 (mod 11) となるので、 例 4.4 と同様に 10n ≡ (−1)n (mod 11) が成り立つ! !整数を 11 で割った余りは、その数の数字を (1 の位をプラスとして) 交互に符号を変えたものを 11 で割った余りに等しい。 . 合同式の簡約・合同式の両辺を同じ数で割ることを簡約と いう。 法 m に関する 2 つの合同式は辺を、 足したり、引いたり、掛けたりできたけど、 簡約することはできるのかな?? =⇒ 必ずしも成立しない! では、c がどのような条件を満たすとき、 ac ≡ bc (mod m) の両辺から c を簡約できるのか?そのためには準備が必要である。 !定理 5 既約分数 (1) 任意の分数 dc (d > 0) に対して ab = dc となる既約分数 ab (b > 0) が存在する。 (2) ab (b > 0) を既約分数とする。 ab = dc (d > 0) ならば c = ak, d = bk(k は整数) と表せる。 つまり c は a で割り切れる、d は b で割り切れるということ。 ⋆(3) 整数 a, b(b > 0) に対して、 ab が既約分数であるためには、 a と b が互いに素であることが必要十分である。 4 !定理 6 (1)bc が a で割り切れ、a と b が互いに素であれば、 c が a で割り切れる。 (bc = ak(k ∈ Z)、a と b が互いに素 =⇒ c = ak(k ∈ Z)) (2)ac ≡ bc (mod m) で、c と m が互いに素であれば、 a ≡ b (mod m) が成り立つ。 証明 (定理 6) (1)bc が a で割り切れるので、 ad = bc すなわち、 a c = b d となる d(∈ Z) が存在する。 a が b は互いに素であるから、 定理 5(3) より ab は既約分数である。 したがって、定理 5(2) より、c は a で割り切れる。 (2)ac ≡ bc (mod m) であるから、(a − b)c は m で割り切れる。 c と m は互いに素なので、定理 6(1) より a − b が m 割り切れる。 すなわち a ≡ b (mod m) が成り立つ。 重要! ! 等式の簡約では、 ac = bc, c ̸= 0 ならば a = b だけど、 合同式の簡約では ac ≡ bc (mod m) で c と m が互いに素ならば a ≡ b (mod m) なんだね! ! ・ボールパスゲーム・ A0 ∼A7 の 8 人が、反時計回りに、等間隔で同一円周上に並んで ボールパスゲームをする。A0 から始めて、反時計回りに (k − 1) 人飛ばしのパス”K”を続けていくとき、8 人全員にボールは回る であろうか?(略図参照) なげるよー あ、ちょうちょだ 5 パス2 A1 A0 パス1 A7 A6 A2 略図 A5 A3 A4 パス1・ ・ ・A0 , A1 , A2 , A3 , A4 , A5 , A6 , A7 , A0 ・ ・ ・全員に回る。 パス2・ ・ ・A0 , A2 , A4 , A6 , A0 ・ ・ ・全員に回らない。 パス3・ ・ ・A0 , A3 , A6 , A1 , A4 , A7 , A2 , A5 , A0 ・ ・ ・全員に回る。 パス4・ ・ ・A0 , A4 , A0 ・ ・ ・全員に回らない。 パス5・ ・ ・A0 , A5 , A2 , A7 , A4 , A1 , A6 , A3 , A0 ・ ・ ・全員に回る。 パス6・ ・ ・A0 , A6 , A4 , A2 , A0 ・ ・ ・全員に回らない。 パス7・ ・ ・A0 , A7 , A6 , A5 , A4 , A3 , A2 , A1 , A0 ・ ・ ・全員に回る。 パス8・ ・ ・A0 , A0 ・ ・ ・全員に回らない。 !定理 7 n 人が等間隔で同一円周上に並び、反時計回りに (k − 1) 人飛ばしのパス”K”でボールをまわしていく。 互いに素であれば、ボールは n 人全員に 1 回ずつ渡った後、最初にパスを出した人に戻る。 今日のキーワードだね! ! お疲れ様! ! 6
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