かん 乾せんをコントロールする 1. 「乾せん」とはどのような病気ですか。 皮膚が赤くなって「りんせつ」というかさかさとしたふけのようなものがつく病気 です。赤い発しんは頭,体,腕,あしなどいろいろな部分にできますが,肘・膝など こすれやすい場所にできることが多いです。乾せんの発しんは治療によりひきますが, また出てくることが多く慢性の経過をたどります。乾せんが原因で死亡することはあ りません。乾せんは他人には伝染しません。 2. 「乾せん」の原因は何ですか。 乾せんの根本原因はまだよくわかっていませんが,皮膚でどのようなことが起きて いるかは徐々にわかってきています。乾せんは皮膚の一番表面にある「表皮」という 部分が増殖して厚くなっています。その皮膚には血液中のリンパ球という細胞がはい ってきてサイトカインという物質を出し,それが乾せんの皮膚を作り出しているので はないかと考えられています。乾せんの原因は遺伝子の異常にあるという考えもあり ますが,家族や親子で遺伝しやすいわけでもないのでこの点ははっきりしません。 3. 「乾せん」の治療 今のところ乾せんを根治させる確実な方法はないので,皮膚の症状をコントロール することを治療の目標としています。これは糖尿病や高血圧の治療と似た考え方です。 以下の治療法があり,当科ではこれらの治療を単独あるいは組み合わせてコントロー ルしています。 (1) 塗り薬 まず最初に行う治療です。これにはステロイドという塗り薬とビタミン D3 という 塗り薬の 2 種類があります。ステロイドはいろいろな強さの薬があります。 (2) 紫外線治療(あとで説明します)。 (3) 免疫抑制剤(シクロスポリン) もともと,臓器を移植したときに体がそれを拒絶しない目的で作られた薬です。皮 疹が非常によく消えますが,薬を減らすと再発します。飲んでいるときに腎機能障害 や高血圧を起こすことがあります。 (4) エトレチナート(商品名チガソン) ビタミン A に似た薬で,皮膚の隆起を減らします。肝障害や子供に奇形を起こす危 険性があります。 金沢医療センター Kanazawa Medical Center National Hospital Organization 〒920-8650 金沢市下石引町1番1号 Tel (076) 262-4161 FAX (076) 222-2758 (5) 生物学的製剤 乾せんを起こすのに関係するサイトカインという物質の働きを抑える注射です。よ く効く薬であり,2009 年 9 月以降に発売予定です。 4.医療センター皮膚科で行う「乾せん」の紫外線治療について 乾せんの紫外線治療には,PUVA(プバ)とナローバンド UVB という 2 種類の方法が あります。当科では両方の機械を持っており治療効果をあげています。特にお風呂に 薬液を入れてから紫外線を当てるバス-PUVA 療法は,紫外線がむらなく当たり,色素 沈着などの副作用が少ないよい治療法です。外来に入浴設備がないとできないので, 北陸では当科以外で行っている施設は少ないです。 5. 「乾せん」の生活上の注意 先ほど述べたように乾せんの根本原因はわかっていませんが,乾せんを悪くする要 因が知られているので避けるようにしたほうがよいでしょう。 ・乾せんはストレスで増悪することがあるので過労をさけ,規則正しい生活を心がけ ましょう。 ・肉類や脂肪分の多い食事が関連することがあるので魚や野菜主体の食事のほうがよ いとされています。肥満した方は乾せんが治りにくいので,食事の量,運動などに留 意しましょう。 ・乾せんは,皮膚のこすれる場所にできやすくなおりにくいので,入浴時などに強く こすることは控えましょう。「りんせつ」を無理にはがすことも乾せんを悪くするこ とがあります。石けん,入浴剤などに特に制限はありません。北海道の豊富(とよふ) 温泉は乾せんに効くと言われ,患者さんが訪れているようです。残念ながら北陸地方 に乾せんに効くといわれる温泉はありませんが,温泉に入ってリラックスすること自 体は乾せんによい影響を与えると思います。 6. 「北陸乾癬友の会」について 乾せんの患者さんが病気について知識を得たりお互いの体験を語ったりすること を目的とした「乾癬友の会」があり,年 1 回勉強会を行っています。医療センター皮 膚科に事務局がありますので関心のある方はお尋ねください。 金沢医療センター皮膚科 平成 21 年 1 月作成
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