器用貧乏を武器に“与に権るべし” と言われる人を目指す

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動
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ー
とも
器用貧乏を武器に
“与に権るべし”
と言われる人を目指す
浜松医科大学 知財活用推進本部
産学官連携コーディネーター・特任助教
阿部 紀里子
知財業界から産学官連携の世界に飛び
込んで7年。3つの大学で多様な業務を経
験し、多くの人に出会って、最近、ようや
く自分のやるべき仕事や立ち位置が見え
てきたような気がしています。
〒431- 3192
静岡県浜松市東区半田山1- 20- 1
TEL 053- 435- 2677
FAX 053- 435- 2179
Email kiriko@hama- med.ac.jp
■キャリア
■コーディネーターとしての強み
母親のイチ押しの人生プランは、
オルガン教室の先生→
好奇心まかせの人生を歩んできた結果、
私には誰にも負
人生のきっかけはいつも
「好奇心」
専業主婦でした。
小学生までは疑問もなく受け入れていた
のですが、
中学・高校と経る中で父親譲りの好奇心が湧き出
し、
人生が大きく揺らぎ始めました。
そして、
高校3年生の時に魅了された
「分子生物学」
を学ぶ
ために大学へ進学しました。
学部卒で就職するはずが研究
の面白さに目覚めて、
修士課程へ進学。
学生にも飽きて研究
職への就職を希望するものの難航し、
たまたま最先端の科
学技術に触れる
「特許の仕事」
に出会い、
直感的に特許事務
所に就職しました。
7年目に企業の知財部へ転職を決意した
ものの、
山梨大学の求人を見て
「そっちの方が面白そう」
と
方向転換。
以来、
任期付き雇用となるも、
幸運にもキャリア
アップしながら、
現在3つ目の大学で働いています。
■活動とネットワーク
ネットワークとバランス感覚が大事
現在の主たる業務は、
右記の医工連携による地域の活性
化です。
これは、
関係機関や同じ志をもって活動する人達と
のネットワークが何より大切です。
私は、
浜松・東三河地域
に縁のない若輩者なので、
平成22年4月の着任時は、
地域に
馴染めるか不安でしたが、
外部の人間を排除しない地域の
短所だった
「器用貧乏」
が強みになる?
けないと胸を張れる専門性がありません。
コーディネータ
ーとして致命的と言う人もあるかもしれませんが、
実際の
ところは、
これまで経験で身に付けた素人技が思いのほか
役立っています。
「器用貧乏」
は自分の短所と思っていまし
たが、
最近、
幅広い知識やスキルを要求される産学官連携の
現場では、
逆に強みにできるのではないかと考え直し始め
ています。
■目標
「与に権るべし」
と言われる人に
とも
はか
標題の
「与に権るべし」
は、
論語の子罕第九の
「与に学ぶべ
ゆ
トワークを構築することができています。
平成23年度より、
地域イノベーション戦略推進
(旧・地域
中核産学官連携拠点)
において
「健康医療領域」
のコーディ
ネーターの世話役も担当しています。
地域の構想や取組み
がすべて大学にプラスになるとは限りません。
しかし、
大学
の立場ばかり主張ばかりしていてはうまく行きません。
そ
のあたりのバランス感覚が求められる仕事です。
に立つべからず。
与に立つべし、
未だ与に権るべからず。
(一
緒に学んでも同じ目標に進めないし、
目標が同じでも信念
までは共有でない。
信念を共有できても立場や利害を超え
て協働はできない。
)
」
に由来します。
まだ何の実績もなく頼りないコーディネーターですが、
器用貧乏を磨いて、
「与に権るべし
(どんな困難も一緒に乗
り越えれる人)
」
と評される人になることが目標です。
主なネットワーク
福岡県出身。岡山大学大学院生物応用工学専
攻(修士課程)を修了後、大阪の特許事務所に就
職。平成17年2月に山梨大学知的財産経営戦略本部・知的財産マ
ネージャーに転職後、平成22年6月に慶應義塾大学知的資産セン
ター・技術移転マネージャー(iPS細胞研究知財戦略担当)を経
て、平成22年4月より現職。
中部地域コーディ
ネーター会議・
ネッ トワーク
静岡大、豊橋技科大
近隣の大学等
元同僚&その転職先
光産創成大、国立遺伝研
東海iNET
これまでの職場
山梨大学
(U CIP)
慶應義塾大学
浜松・東三河地域の企業、
自治体、商工会議所
支援機関 ほか
大学技術移転協議会
研修等の勉強仲間
知財コンサル、TIMS、GTEC
あべ きりこ
ゆ
し、
未だ与に道に適くべからず。
与に道に適くべし、
未だ与
気質と持ち前の環境適応力に助けられながら、
順調にネッ
26
はか
浜松医科大学
阿部 紀里子
医療機器開発の関連
知的財産学会
産学連携学会
大阪商工会議所
国立循環器病センター
信州メディカル産業振興会
ICTの利活用
Website、
Blog、
ML
Facebook、
tw itter
構築済
浜松医工連携
研究会
構築済
海外の医療機器市場
ボストン、ミネソタほか
構築中
浜松医科大学
医工連携による新産業の創出
ものづくり技術と医療との
融合による事業化
今後の課題は、
成功事例を積み重ねて医療機器業界への
参入ノウハウを蓄積することと、
地域で生み出された優れ
た医療機器を海外展開できる仕組みを構築することの2点
である。
平成21年度独立行政法人科学技術振興機構地域産
学官共同研究拠点整備事業に採択された『はままつ次
世代光・健康医療産業創出拠点』では、ものづくり地域
「浜松」の技術開発力と、医療ニーズ・医学シーズとの
異分野融合による健康医療産業の事業化を推進して
いる。
●きっかけ
「健康医療産業」
を地域の基幹産業に
平成21年度地域中核産学官連携拠点
『光・電子技術イノベ
ーション創出拠点事業』
において、
浜松・東三河地域で基幹
産業化を目指す4つの新産業の1つとして掲げられた
「健康
医療産業」
の推進を担う事業として開始された。
地域企業による「医療現場」の見学会。大学附属病院の
手術室の医療機器類の説明を受けている様子。
●技術内容
連鎖的・継続的なイノベーション創出
*5項目の合計は100
浜松・東三河は産学官連携が盛んであり、
医工連携も数多
く実施されているが新産業の創出に至る事例は少ない。
『は
30
ままつ次世代光・健康医療産業創出拠点』
(以下
「はままつ医
工連携拠点」
)
は、
連携開始から事業化を視野に入れたマッ
チングや戦略展開を支援することにより、
連鎖的・継続的な
地域連携
40
20
ニーズとの
マッチング
知財化
10
事業化イノベーション創出体制を構築し、
健康医療関連産
0
業の基幹事業化による地域の活性化を目指している。
●コーディネート活動
医療機器業界へ新規参入する企業を支援
医工連携に参画する地域企業のほとんどは、
医療機器業
界への新規参入を希望する企業である。
医療機器業界は、
薬
事法の規制などから新製品開発は既存メーカーでも容易で
はない。
障壁が多く高コストを理由に承認(認証)が必要な製
その他
(臨床医の協力)
インキュベーション
技術移転のバランスチャート(成功要因)
コメント 医療機器業界への参入を希望する「浜松医工連携研究
会」
(浜松商工会議所)との密な連携がポイント。
品開発は止めた方がいいとアドバイスするコーディネータ
ーも多いが、
浜松・東三河地域の企業はそんな回答を求めて
はいない。
どう進めれば誰と連携すれば実現できるかを示
進 捗 表
すことが、
コーディネーターの仕事である。
事業化レベル
現在、
地域企業を知り尽くした拠点長、
医療機器の開発・
事業開始&体制整備 WG(月1回)の設置,キックオフ会議の開催など H22.5∼23.2
状況
開始年月
事業化に詳しい事業総括、
臨床医であり医療機器開発の経
本格始動
験を有する産学官共同研究センター長とともに、
最終製品
事業化課題の特定 支援対象課題の募集&選定、事業化シーズ&ニーズの発掘 H 23.4∼
や市場を見据えた医工連携のマッチングや事業化支援に取
第1号製品の事業化 スーパー特区課題の事業化
り組んでいる。
健康医療産業の育成 共同研究の推進、医療機器メーカーの誘致、海外展開など H 25∼(予定)
基幹産業化
第1回事業運営委員会、
拠点事務局の設置
H 23.4∼
H 23∼24(予定)
健康・医療関連産業の集積、ベンチャー創出、雇用の増進 H32年度(10年後)
●今後に向けた反省と課題
成功事例の蓄積と海外展開
■所属機関
浜松・東三河地域は、
作れないものはないのではないかと
浜松医科大学
思うほど、
ものづくり技術が集積した世界的にもポテンシ
昭和49年設立。
医学科と看護科よりなる
単科大学。
優れた臨床医・独創的な研究者の
養成、
新しい医療技術の研究開発、
患者第一
主義の診療を建学の理念として地域医療に
貢献。
平成23年に地域連携を推進する
『産
学官共同研究センター』
を新設。
ャルの高い地域である。
はままつ医工連携拠点は平成23年4
月に本格始動したばかりで事業化の実績はまだ少ないが、
今後の可能性にワクワクする毎日である。
ホームページ http://www.hama- med.ac.jp/
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