平 成 27 年 12 月 3 日 ( 木 ) 各 位 株式会社百五経済研究所 代表取締役社長 荒木 康行 ポストサミットの経済効果の試算 2016 年 5 月 の 主 要 国 首 脳 会 議 「 伊 勢 志 摩 サ ミ ッ ト 」( 以 下 : サ ミ ッ ト ) 開 催 ま で 残 り 6か月を切り、三重県では市町、企業、住民等も加わり開催に向けてのPR活動や来 訪者の受入態勢の整備などを急ピッチで進めており、急速に機運も高まっています。 サミット開催の決定後、三重県への来訪者数は増加しており、既にサミット効果が現 れていると見られます。 サ ミ ッ ト 開 催 に よ り 、三 重 県 や 伊 勢 志 摩 地 域 の 国 際 的 な 知 名 度 向 上 、上 質 な リ ゾ ー ト 地としての認知度の広がり、外国人や国際会議の受入態勢整備などが見込まれ、開催 後の外国人観光客を含めた来訪者数の増加や国際会議の開催件数の増加などが期待さ れます。 このようなことから、今回、弊社ではサミット開催後に期待される経済効果(ポス トサミットの経済効果)について取りまとめましたのでご報告いたします。貴社にて お取り上げいただければ、幸いに存じます。 なお、ご質問、ご意見などございましたら、下記までお願いいたします。 <担当> 地域調査部 中 畑 ( な か は た )、 津 谷 ( つ た に ) 〒 514-8666 津 市 岩 田 21 番 27 号 TEL: 059-228-9105 FAX: 059-228-9380 <要 旨 > ・ サミット開 催 後 に期 待 される経 済 効 果 として、「外 国 人 観 光 客 数 の増 加 」、「国 際 会 議 の開 催 件 数 の増 加 」による経 済 効 果 について試 算 した。 ・ 三重県の外国人観光客数は全国的に見ても少なく、割合も低いが、その分サミッ ト開催の効果による伸びしろは大きいと考えられる。 ・ 外 国 人 観 光 客 数 については、延 べ宿 泊 者 数 が年 間 73 万 人 (泊 )増 加 すると想 定 し、観 光 消 費 額 の増 加 額 は 131 億 円 増 加 、その経 済 効 果 について 185 億 円 と試 算 した。 ・ 三 重 県 における国 際 会 議 の開 催 件 数 は、平 成 21 年 ~ 25 年( 5 年 間 )の 年 平 均 回 数 は 2.6 回 と 近 隣 府 県 に比 べて低 い水 準 となっている。 ・ サ ミ ッ ト 開 催 後 、数 百 人 規 模 の 国 際 会 議 の 開 催 件 数 が 増 加 し 、年 間 30 回 開 催 す る こ と に よ る 経 済 効 果 を 37 億 円 と 試 算 し た 。 ・ 上 記 経 済 効 果 は 総 額 222 億 円 、 5 年 間 の 累 計 で は 1,110 億 円 と な る 。 -1- Ⅰ.外国人観光客数の増加による経済効果の試算 国 際 的 な 知 名 度 が 高 ま る こ と か ら 、海 外 か ら の 誘 客( イ ン バ ウ ン ド )に つ い て は 、 サミット開催による効果が特に大きく期待できる。 三重県の外国人観光客数は全国的に見ても少なく、割合も低いが、その分サミッ ト開催の効果による伸びしろは大きいと考えられる。 三 重 県 よ り 全 体 で の「 延 べ 宿 泊 者 数( 国 内 客 、外 国 人 客 )」が 少 な い に も 関 わ ら ず 、 「 外 国 人 延 べ 宿 泊 者 数 」が 三 重 県 よ り 多 い 県 と し て 、山 梨 県( 94 万 人 )、岐 阜 県( 59 万人)などがあるが、観光資源の状況などから勘案すると、これらの県に対して三 重県は見劣りしないと考える。 1.観光消費額の増加額の想定 (1)三 重 県 に 来 訪 す る 外 国 人 数 ( 述 べ 宿 泊 者 数 ) の 想 定 ・ 観 光 庁 「 宿 泊 旅 行 統 計 調 査 」 に よ る と 、 平 成 26 年 の 三 重 県 の 「 年 間 外 国 人 延 べ 宿 泊 者 数 ( 観 光 目 的 ・ ビ ジ ネ ス 目 的 含 む )」( 以 下 : 宿 泊 者 数 ) は 17.8 万 人 ( 泊 ) ( 前 年 比 + 36.4% ) で 増 加 率 は 全 国 ( 同 + 33.8% ) を や や 上 回 っ た 。 ・ 平 成 27 年 1 月 ~ 8 月( 8 か 月 間 ) の 三 重 県 の 宿 泊 者 数 は 21.9 万 人 ( 泊 )( 前 年 同 期 比 + 114.3% )と 既 に 平 成 26 年 の 年 間 宿 泊 者 数 を 上 回 っ て い る 。特 に 、伊 勢 志 摩 サ ミ ッ ト 開 催 決 定 後 の 6 月 ~ 8 月( 3 か 月 間 )の 宿 泊 者 数 は 10.3 万 人( 泊 ) (前 年 同 期 間 比 + 200.5% ) と 全 国 1 位 の 伸 び 率 と な っ て い る 。 9 月 ~ 12 月 ( 平 成 26 年:7.6 万 人 )に お い て も 、6 月 ~ 8 月 と 同 水 準 の 伸 び 率 が 続 く と 仮 定 す る と 、平 成 27 年 の 年 間 宿 泊 者 数 は 45 万 人 に 達 す る と 想 定 さ れ る 。 ・ 前 回 開 催 地( 洞 爺 湖 サ ミ ッ ト : 平 成 20 年 )で あ る 北 海 道 の 平 成 26 年 の 外 国 人 宿 泊 者 数 は 389 万 人( 泊 )で 、サ ミ ッ ト 開 催 前( 平 成 19 年:186 万 人 (泊 ))と 比 較 し て 約 2.1 倍 と な っ て い る 。 ・サ ミ ッ ト 開 催 後 は 、こ れ ま で 以 上 に 国 際 的 に 三 重 県 や 伊 勢 志 摩 の 知 名 度 が 向 上 す る こ と 、ま た 、近 年 は 全 国 的 に 外 国 人 来 訪 者 数 が 増 加 し て い る こ と も 追 い 風 で あ る 。こ の た め 、三 重 県 の 宿 泊 者 数 に つ い て 、「 観 光 ・レ ジ ャ ー 目 的 」 の 宿 泊 者 数 が 年 間 73 万 人 ( 泊 ) 増 加 す る と 想 定 し た 。 平 成 26 年 の 17.8 万 人 ( 泊 )( ビ ジ ネ ス 目 的 も 含 む ) と 比 較 す る と 約 5 倍 ( 年 間 宿 泊 者 数 90 万 人 (泊 )) と な る 。 (2)観 光 消 費 額 の 想 定 ・ 観 光 庁 「 訪 日 外 国 人 の 消 費 動 向 」 に よ る と 、 平 成 26 年 の 「 観 光 ・ レ ジ ャ ー 目 的 」 の 訪 日 外 国 人 の 「 1 人 当 た り 旅 行 中 支 出 」 は 109,897 円 、 滞 在 期 間 で あ る 「 平 均 泊 数 」 は 6.1 泊 と な っ て い る 。 ・上 記 か ら 、「 1 泊 あ た り 旅 行 中 支 出 」は 18,016 円 ( 109,897 円 ÷6.1 泊 )と な る 。 -2- (3)観 光 消 費 額 の 増 加 額 (年 間 )の 算 定 (1)の 外 国 人 来 訪 者 数 の 増 加 数 73 万 人 に 、(2)で 想 定 し た「 1 泊 あ た り 旅 行 中 支 出 」 18,016 円 を 乗 ず る と 、 観 光 消 費 額 の 増 加 額 は 131 億 円 と な る 。 【三重県に宿泊する外国人の増加による観光消費額の増加額試算】 (1)来 訪 す る 外 国 人 数 ( 宿 泊 者 述 べ 数 ) の 増 加 数 ( 年 間 ) (2)訪 日 外 国 人 の「 1 泊 あ た り 旅 行 中 支 出 」 ( 観 光・レ ジ ャ ー 目 的 )」 「 1 人 当 た り 旅 行 中 支 出 」 109,897 円 ÷「 平 均 泊 数 」 6.1 泊 (3)観 光 消 費 額 の 増 加 額 ( 年 間 ) 73 万 人 18,016 円 131 億 円 2.経済波及効果の試算 (1)経 済 波 及 効 果 は 、「 平 成 17 年 三 重 県 産 業 連 関 表 ( 36 部 門 )」 に 投 入 し 試 算 し た 。 (2)効 果 が 大 き く 現 れ る 部 門 と し て は 、「 対 個 人 サ ー ビ ス 」、「 商 業 」、「 運 輸 」 な ど と なる。 (3)サ ミ ッ ト 開 催 後 は 、外 国 人 観 光 客 は 一 定 水 準 以 上 が 毎 年 、継 続 的 に 来 訪 す る こ と が期待され、今後長期にわたって経済効果がもたらされると考える。 【経済波及効果】 直接効果(最終需要増加額:観光消費額の増加額) 131 億 円 経済波及効果(総合効果) 185 億 円 Ⅱ.国際会議の開催件数の増加による経済効果 サミット開催により、三重県や伊勢志摩地域は国際会議の開催地にふさわしい場と して、認知度が上がるとともに、会場・施設整備やノウハウの蓄積ができることで、 国際会議の誘致に優位となり、開催件数は増加すると期待される。 これまで三重県ではこの部分はごく僅かであったこと、来訪目的が観光目的とは異 なることから、観光客の増加による効果とは別枠として試算を行った。 1.三重県における国際会議の開催件数、参加者総数の想定 ・観光庁「国際会議統計」によると、三重県で開催された国際会議の件数は、平成 21 年 (2009 年 )か ら 平 成 25 年 (2013)の 5 年 間 の 年 平 均 回 数 は 2.6 回 と な っ て い る が 、 平 成 21 年 (2009 年 )に 6 回 開 催 さ れ た ほ か は 、 年 間 1~ 3 回 に 留 ま っ て い る 。 ・ 近 隣 の 府 県 を み る と 、 愛 知 県 の 年 平 均 ( 5 年 間 ) は 139.8 回 、 岐 阜 県 は 10.2 回 、 滋 賀 県 は 5.4 回 、 京 都 府 は 171.0 回 、 奈 良 県 は 30.2 回 と な っ て い る 。 ・府県による差が大きいが、三重県は近隣の県の中でも、特に開催件数が少なくな っている。経済・人口規模や大学等研究機関の集積状況、国際会議施設や宿泊施 設の状況などが関係すると見られるが、奈良県や岐阜県と比べても、三重県での 国際会議の開催件数は大きく見劣りするものとなっている。 -3- ・北 海 道 で の 国 際 会 議 開 催 件 数 の 推 移 を み る と 、平 成 20 年 (2008 年 )の サ ミ ッ ト 開 催 以 前 、 平 成 17 年 (2005 年 )か ら 平 成 19 年 (2007 年 )の 間 は 年 間 40~ 50 回 で あ っ た も の が 、 サ ミ ッ ト が 開 催 さ れ た 年 は 87 回 と な り 、 そ れ 以 降 も 80~ 90 回 で 推 移 し ている。サミット開催を通じて知名度が上がるとともに、会場・施設整備、国際 会議開催のノウハウの蓄積が出来たことが、その後の継続につながっていると見 られる。 ・大都市部で巨大な施設がないと開催できない大規模な国際会議の誘致は難しいも の の 、 奈 良 県 で の 開 催 件 数 ( 5 年 間 平 均 30.2 回 ) な ど を 参 考 に 、 数 百 人 規 模 ( 平 均 500 人 と 想 定 ) の 会 議 の 開 催 件 数 を 年 30 回 、 参 加 者 延 べ 人 数 は 45,000 人 に な ると想定した。 【 国 際 会 議 の 開 催 件 数 、 参 加 者 総 数 の 想 定 ( 年 間 )】 開催件数 30 回 ( 参 加 者 数 平 均 500 人 規 模 ) 参加者延べ日数 45,000 人 2.経済波及効果の試算 先 の 前 提 を 基 に 、 観 光 庁 「 MICE ※ 開 催 に よ る 地 域 経 済 波 及 効 果 測 定 モ デ ル 」 を 利 用して、経済波及効果を試算した。なお、同モデルにある開催地「伊勢志摩」の推 計を利用した。 【経済波及効果】 全国 110 億 円 うち三重県 37 億 円 うち伊勢志摩地域 27 億 円 ※ MICE: Meeting( 会 議 ・ 研 修 ・ セ ミ ナ ー )、 Incentive tour( 報 奨 ・ 招 待 旅 行 ) , Convention ま た は Conference( 大 会 ・ 学 会 ・ 国 際 会 議 ) , Exhibition( 展 示 会 ) の 頭 文 字 を と っ た 造 語 -4- Ⅲ.総括 サミット開催後の経済波及効果は、 ・ 外 国 人 観 光 客 数 の 増 加 に よ る 効 果 185 億 円 ・ 国 際 会 議 の 開 催 件 数 の 増 加 に よ る 効 果 37 億 円 ・ 総 額 で は 222 億 円 と な る 。 ・ 上 記 の 年 間 ベ ー ス で 5 年 間 を 累 計 す る と 、 1,110 億 円 と な る 。 但し、今回行った試算の実現には、国内外での情報発信や誘客、マスメディアやネ ット上を含めた情報発信機関、旅行エージェントへの働きかけ、外国人観光客の受入 態勢整備、地域や関係事業者によるもてなしの強化などを、積み上げることにより始 めてできるものと考える。また、インバウンドにおいては、外国為替の動向や海外情 勢などの影響が大きいことを付け加えておきたい。 6 か 月 を 切 っ た 短 い 期 間 で は あ る が 、地 域 の 産 学 官 民 の ベ ク ト ル を 合 わ せ て 、一 段 の 取り組みを行っていくことが求められる。 以上 -5- <ご参考> 過 去 を 振 り 返 る と 、三 重 県 の 観 光 客 数 は 伊 勢 神 宮 式 年 遷 宮 後 、減 少 す る 傾 向 に あ る 。 式 年 遷 宮( 平 成 25 年 )前 後 の 高 い 水 準 に あ る 観 光 客 数 か ら の 減 少 幅 を 少 な く 抑 え ら れ れば、その多くの部分はサミット開催による効果と考えられる。 そこで、サミット開催による国内観光客数の増加による経済効果についても参考に 試算した。 国内観光客数の増加による経済効果 1.観光消費額の増加額の想定 (1)三 重 県 の 観 光 客 数 ( 三 重 県 「 観 光 レ ク リ エ ー シ ョ ン 入 込 客 数 : 実 数 」) は 、 平 成 25 年 の 伊 勢 神 宮 式 年 遷 宮 前 後 、 高 水 準 ( 24 年 : 37,868 千 人 、 25 年 : 40,799 千 人 、 26 年 : 38,243 千 人 ) を 維 持 し て い る 。 (2)直 近 の 平 成 26 年 の 観 光 客 数 は 38,243 千 人( 県 内 観 光 客 割 合 36.1% 、県 外 観 光 客 割 合 63.9% ) と な っ て い る 。 同 年 に お け る 県 外 か ら の 観 光 客 数 ( 約 24,400 千 人 ) の 1 割 に 相 当 す る 240 万 人 程 度 に つ い て 、 サ ミ ッ ト 開 催 に よ る 誘 客 効 果 と し て 上 乗せできると想定した。 (3)上 記 240 万 人 の 観 光 消 費 額 の 増 加 額 に つ い て 、 三 重 県 「 観 光 客 実 態 調 査 報 告 書 」 のデータに基づき推計した。 ① 観 光 客 数 240 万 人 ( 宿 泊 客 数 : 104 万 人 、 日 帰 り 客 数 : 136 万 人 ) ② 観 光 客 1 人 あ た り 平 均 利 用 総 額 ( 宿 泊 客 : 28,041 円 : 日 帰 り 客 : 5,184 円 ) 【 観 光 消 費 額 の 増 加 額 ( 年 間 )】 全体 宿泊客 日帰り客 240 104 136 ② 観 光 客 1 人 あ た り 平 均 利 用 総 額 (円 ) ― 28,041 5,184 ③ 観 光 消 費 額 の 増 加 額 ( 億 円 ) ① ×② 361 291 70 ①県外からの観光客数の増加数(万人) 2.経済波及効果の試算 (1)1 .で 推 計 し た 観 光 消 費 額 の 増 加 額 を 基 に 、 経 済 波 及 効 果 は 、「 平 成 17 年 三 重 県 産 業 連 関 表 ( 36 部 門 )」 に 投 入 し 試 算 し た 。 「 対 個 人 サ ー ビ ス 」、 「 商 業 」、 「 運 輸 」、 「石油・ (2)効 果 が 大 き く 現 れ る 部 門 と し て は 、 石炭製品」などとなる。 【経済波及効果】 直接効果(最終需要増加額:観光消費額の増加額) 361 億 円 経済波及効果(総合効果) 495 億 円 -6-
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