静岡県金融経済トピックス 2016 年 4 月 14 日 日本銀行静岡支店 大河ドラマ「おんな城主 直虎」の経済波及効果 1.はじめに 2017 年に放映される大河ドラマ「おんな城主 直虎」は戦国時代の遠江国(現 在の静岡県西部)の井伊家当主、井伊直虎を題材としている。県西部には井伊直虎 とゆかりの深い史跡などが存在していることから、当県の観光客の増加等による経 済波及効果が期待されている。 本稿では、過去の大河ドラマの事例を踏まえ「おんな城主 直虎」の放映による 観光客の増加に伴う当県への経済波及効果を試算した。 2.経済波及効果(試算値) 当店の試算では、「おんな城主 直虎」の放映年(2017 年)の静岡県経済への波 及効果は、179 億円となった。 ―― なお、試算結果は、あくまで一定の条件の下での値であり、ある程度幅を 持ってみる必要がある。 経済波及効果(A+B) 179 億円 直接効果(A) 間接効果(B) 113 億円 66 億円 「直接効果」 : 大河ドラマ放映により、当県を訪れる観光客数が増加するこ とに伴い、観光消費額が増加する効果。 「間接効果」 : 観光消費額の増加によって生じた雇用者所得の増加分が消費 に向けられることなどによってもたらされる間接的な波及効 果の合計額。 ―― 経済波及効果の試算の前提や計算方法は、別添の通り。 3.経済波及効果の引き上げや持続への期待 今回の大河ドラマの舞台となる県西部は、全国的にものづくりの地域として知ら れているが、豊富な自然や、自然環境に恵まれ様々な農水産物の産地であるなど、 1 観光面での魅力も有している。当県全体でも、豊富な観光資源や農水産物の産地と いった特徴を有し、交通網についても新幹線・鉄道のほか、高速道路、空港の整備 が進んでいる。また、2016 年 2 月には新東名高速道路浜松いなさJCT-豊田東 JCT間の開通により、アクセスの利便性はさらに高まっており、今回の大河ドラ マは、県西部や当県全体で観光客をさらに増やすことなどの好機となっている。 既に、 「おんな城主 直虎」の放映決定を契機として、「 『おんな城主 直虎』推進 協議会」が中心となり、 「大河ドラマ館」の設置が決定されるなど、観光客の拡大等 を企図した動きが本格化しつつある。今後も、当県の魅力を活かし、官民一体で、観 光客数の拡大、滞在期間の長期化、リピーターの創出、観光時の消費額の増加、観光 客集客の点から面への広がり、などに結びつくような諸施策を推進していくことで、 今回の試算結果以上の経済波及効果を生み出していくことや、放映効果を中長期的な 観光振興に繋げていくことが期待される。 【ご参考】 ・ 経済波及効果の面では、日帰り客および宿泊客の増加数が 1 割上乗せさ れると、経済波及効果は 18 億円増加する。 また、観光客 1 人当りの消費支出額が 500 円増加※すると、経済波及効果 は 15 億円増加する。 ※ 宿泊客の 1 人当りの消費支出額(26,822 円)の 2%弱、日帰り客の 1 人当り の消費支出額(5,313 円)の 1 割弱。 以 当資料は当店ホームページ(http://www3.boj.or.jp/shizuoka/)に掲載しています。 当資料に対するご意見やご質問は、当店営業課(054-273-4106)までお寄せください。 2 上 (別 添) 経済波及効果の試算方法 1.「直接効果」の試算方法 ○ 「直接効果」の計算式は、次の通りとした。 直接効果=予想される観光客増加数 (宿泊客増加人数+日帰り客増加人数) × 静岡県を訪れる旅行客 1 人当り消費支出額 ・予想される観光客増加数の前提 予想される観光客増加数については、過去、静岡県内が舞台となった大河ド ラマ「功名が辻」の放映時(2006 年)の県中東遠地域1における 1 年間の宿泊 客、日帰り客の増加人数と同じと仮定した(宿泊客増加人数:48 千人、日帰り 客増加人数:1,889 千人2) 。 ・静岡県を訪れる旅行客 1 人当り消費支出額の前提 静岡県を訪れる旅行客 1 人当り消費支出額については、宿泊客は 26,822 円、日帰り客は 5,313 円と仮定した。 ―― 宿泊客と日帰り客毎の消費支出額は、「旅行客の 1 人当り消費支出 3 額」 (宿泊客、日帰り客別)と、 「静岡県日本人観光客入込客数4」 (宿 泊客、日帰り客別)を使用し、次の計算式で求めた。 ▽旅行客の 1 人当り消費支出額 ▽静岡県日本人観光客入込客数 消費支出額(2012 年度) 県内客 宿泊客 日帰り客 県外客 宿泊客 日帰り客 24,084 円 A 3,476 円 B 27,495 円 C 6,934 円 D 観光入込客数(2013 年) 県内客 宿泊客 日帰り客 県外客 宿泊客 日帰り客 2,252 千人 a 12,555 千人 b 9,159 千人 c 14,236 千人 d ▽宿泊客、日帰り客別の静岡県を訪れる旅行客 1 人当り消費支出額の計算式 宿 泊 客:((A×a)+(C×c))÷(a+c)=26,822 円 日帰り客:((B×b)+(D×d))÷(b+d)=5,313 円 1 2 3 4 磐田市、掛川市、袋井市、御前崎市、菊川市、森町 「静岡県観光交流の動向」 (2006 年度、静岡県) 「静岡県における観光の流動実態と満足度調査」 (2012 年度、静岡県) 「共通基準による観光入込客統計」 (2013 年、観光庁) 1 2.「間接効果」の試算方法 ○ 「間接効果」は、 「直接効果」の値を基に、静岡県が提供する「環境・経済統合 型波及効果分析ソフト 一般波及 34 部門(環境負荷型) 」 (2005 年基準)を用い て計算した。 ―― なお、上記ソフトを用いて「間接効果」を算出する際に必要な「直接 効果」の値の業種毎への振り分けは、 「旅行客の 1 人当り消費支出額」の 内訳構成比を基に次表の業種へ案分した。 ▽旅行客の 1 人当り消費支出額の内訳と直接効果の値の案分 金額 構成比 産業連関表の業種 直接効果の 値の案分額 消費支出額 15,802 円 100.0% → 合計※ 113 億円 交通費 2,569 円 16.3% → 運輸業 18 億円 宿泊費 6,576 円 41.6% → 対個人サービス業 47 億円 飲食費 2,386 円 15.1% → 同上 17 億円 買い物代 3,263 円 20.6% → 商業 23 億円 入場料等 805 円 5.1% → 対個人サービス業 6 億円 その他 203 円 1.3% → 分類不明 1 億円 ※一部四捨五入の都合上、内訳と合計は不突合。 以 2 上
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