1 糸藤「Mg有無白銑試料のFE

Mg 有無白銑試料の FE-SEM 観察
宇部スチール
1.
緒言
黒鉛球状化理論「サイト説」では,Mg 気泡が球状黒鉛
の生成・成長サイトとしている. その痕跡は、発光分光分
析用の白銑試料で金属 Mg(フリーMg=FMg)として検出
され,ボイドとして観察される. 従って,FMgのない元湯
の白銑試料には,ボイドが存在しない事を報告した. し
かし,ボイドの有無は,両者のCE値差に起因の凝固形態
の違いによって,起り得るとの疑問が寄せられた.
そこで,Mg 有無の他は同等の化学成分にした白銑試
料を採取し,ボイドの有無を観察した.
○糸藤春喜
み観察された. ボイドは,溶湯内中に存在したと推定さ
れる Mg 気泡の痕跡と,みなす事が出来る.
表1 白銑試料の化学成分
主要化学成分 (mass%)
No.
試料名
C
Si
Mn
P
S
TMg
FMg
CE
1
元湯
3.43
1.46
0.31
0.051
0.012
0.000
0.000
3.92
2
接種処理のみ
3.43
2.19
0.31
0.053
0.013
0.000
0.000
4.16
3
Mg・接種処理
3.38
2.26
0.31
0.054
0.008
0.045
0.042
4.13
2.
実験方法
20t 低周波誘導炉にて元湯を 22t溶製し,スーパーヒー
ト後に,金型に鋳込んで白銑試料を採取した. 次に,
3,500kg を出湯して,置注ぎ法により Fe-Si のみで接種し,
同様に白銑試料を採取した. 引き続き10,000kgを出湯し
て,Fe-Si-Mg 及び Fe-Si で置注ぎ法により Mg・接種処理
を実施し,同様に白銑試料を採取した. 二回の出湯に
おける溶湯の化学成分は,Mg の有無以外は同等となる
様に調整した. 各試料は,発光分光分析後に,分析面
を#240~1500 のエメリー紙で研磨し,更にダイヤモンド・
ペーストにて研磨仕上げした. 各試料は,腐食すること
なく,そのまま FE-SEM に挿入して観察した.
3.
結果
各試料の化学成分は,ほぼ目標通りとする事が出来た
(表1). Mg は,その殆どが FMg として存在していること
が分かる. FE-SEM 観察結果は,図1に示す. 元湯の
試料には,介在物のみでボイドは観察されなかった. Fe
接種処理のみの試料についても同様に,介在物のみで
ボイドは観察されなかった. これらに対し,Mg・接種処理
した試料では,従来の観察結果と同様,ボイド,微細黒鉛
球,介在物が観察された. ボイドは,CE の違いによるの
ではなく,Mg の含有により発生することを確認した.
FE-SEM による WDS 分析では,ボイド壁より Mg が検出
された. 従来と同様の分析結果であり,再現性がある.
この Mg は,FMgに相当すると考えられる. 他に,研磨の
影響のない FIB 加工面の観察・分析結果も報告する.
4. まとめ
白銑試料において,ボイドは,Mg を含有する場合にの
介在物
No.2 接種処理のみ
微細黒鉛球
ボイド
介在物
No.3 Mg・接種処理
写真1 白銑試料の FE-SEM