3,発泡石膏ブロックの作成と重金属類除去効果の評価

発泡石膏ブロックの作成と重金属類除去効果の評価
10ME222 :姜 東(キョウ トウ)
背景
(担当教員: 藤野 毅)
廃石膏ボードの排出量(推定値)
世界中、湖底や地下水にヒ素などの重金属類が高濃度で含まれているこ
とが報告されている。特に、地下水を生活用水として利用する途上国では、
長期にわたる摂取により人体に重大な影響を与えているものの、これを安
価で簡易に取り除く方法がないため、問題はますます深刻になっている。
本プロジェクトは、年々廃棄量が増加する石膏の有効利用法として、ヒ素
をはじめとする重金属除去のためのフィルターとして活用することを試みる。
ここでは、細粒化した半水石膏を発泡させ、ブロック状にすることで、透水
性を確保し、速やかに除去するための工夫を考える。
3500
年間排出量(千t)
3000
2500
解体系排出量
新築系排出量
年間総排出量
2000
1500
1000
500
0
2010年3月 (社)石膏ボード工業会
石膏の基本特性
リサイクル石膏の製造過程例 ((株)クレーバーン技術研究所)
石膏の物理的性質 (技法堂:セメント・石灰・石膏ハンドブックより)
項目
α-半水石膏
β-半水石膏
II-無水石膏
比表面積 (cm /g)
3,490
5,790
7,840
比重
2.74
2.59
2.93
標準混水量(%)
36.7
84.7
35
フロー値(mm)
226
276
170
2
147.7
45
82.1
2
398
73
381
2
曲げ強度(kg/cm )
圧縮強度(kg/cm )
無水石膏は比表面積が大きく、難溶性である。利用後の処理が簡単な物
理吸着を考える
リサイクル石膏の製造過程例
石膏の組成分析
市販石膏(半水)とリサイクル石膏(無水)の表面構造
市販石膏
炭素平均値%
0.14
60℃加熱
0.20
160℃加熱
0.00
650℃加熱
cps/eV
高分解能走査型電子顕微鏡 FE-SEM (HITACHI S-4100)による撮影
倍率:2,500倍
10
8
6
S
C
O
Si
S
Ca
廃石膏
炭素平均値%
Ca
4
60℃加熱
160℃加熱
650℃加熱
2
1.19
1.20
0.00
0
0.5
市販石膏(半水)
リサイクル石膏(無水)
吸着後濃度 mg/L
0.24
0.2
0.18
0.23
0.18
0.19
0.18
0.21
2.0
2.5
keV
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
振とう時間による影響
吸着剤として、リサイクル石膏、市販石膏の他に、竹炭など6種類1g を取
って 濃度0.3 mg/L のひ素溶液 40mlの24時間振とう実験を行いました。
下の図は振とう後の砒素濃度を表します。
0.25
1.5
超高分解能走査型電子顕微鏡
FE-SEM (HITACHI S-4800) による成分分析結果
水中ヒ素除去の振とう実験
0.3
1.0
市販石膏とリサイクル石膏を対象に、振とう時間による吸着の違いを調べた。ここでは、
純水中に砒素を入れたものと、硝酸ナトリウムおよび炭酸カルシウム溶液中に溶かした
ものを比較した。どちらもリサイクル石膏で吸着量が多い。また、10分以降、大きな変化
は見られなかった。
0.18
0.15
0.1
0.05
竹
炭
粉
末
竹
炭
備
長
炭
粉
末
備
長
炭
原
料
大
谷
石
粉
末
大
谷
石
焼
却
品
市
販
石
膏
廃
石
膏
0
吸着材
水中ヒ素除去の振とう実験
発泡石膏の作り方
PHは吸着効果への影響
振とう時間による影響
発泡石膏の成分(重量比):石膏(半水)CaSO4 · H2O 94%、硫酸アルミニウムAl2(SO4)3 5% 、炭酸水素
ナトリウム NaHCO3 1% これを、紙コップに入れて、水 H2O 75%を加えて、すぐに5秒間、すばやく攪
拌する。攪拌後、乾燥炉内(80℃)で24時間乾燥させる。
(10mM Na2SO4+10mMCaCl2)の溶液を濃度0.3mg/Lの砒素溶液にいれてpHを8.5に調整した。 同じ条件でpH
調整をしていない条件(7.5)と比較した。振とう時間は24時間 吸着剤質量は1g.
結果は下図に表す。特に、石膏とリサイクル石膏において、アルカリ化でより多く砒素濃度を低くすることができ
る。
写真: 攪拌直後の状態
写真:出来上がった発泡石膏
発泡中の化学反応式
Al2(SO4)3+6 NaHCO3=3 Na2SO4+2 Al(OH)3↓+6 CO2 ↑
発泡石膏の透水試験
発泡石膏フィルター材としての水中重金属の除去の効果
L Q
K  
h A(t  t )
透水率。同様の試験を砂とローム土で行い、比較を行った結果、発泡石膏は砂
とローム土の間に位置し、フィルターとして適度な範囲に収まってる。
60
50
40
除去率
KT:透水係数(cm/s)
定水位法:水位差hを一定に保持し、土試
h:水位差(cm)
料を通過した水量(透水量Q)を測定する Q:透水量(cm )
2
方法で、透水係数kは下の式を使って求め (t2-t1):測定時間(s)
た。
A:供試料の断面積(cm2)
L:供試料の長さ(cm)
L=4.8cm, h=6cm,
T
2
2
A=πr
=3.14*5.76=18.09cm
2 1
(t2-t1)=180秒の場合は
Q=54ml
KT=0.0132(cm/s)
対照するために砂と土の透水係数も測りました」
砂の場合:
(t2-t1)=60秒 KT=0.0376(cm/s)
土の場合:
(t2-t1)=300秒 KT=0.000147(cm/s)
30
系列1
20
10
0
1回
10回
濾過回数
図 ひ素の濾過実験
今後の課題
20回
発泡石膏フィルターとして(底面半径2.5センチ
×高さ6センチ)濃度0.2mg/Lのひ素溶液1Lを
そのフィルターで濾過する。ひ素除去の効果を
評価する
1回濾過の場合:0.165mg/Lになりました
除去率は17.5%
10回濾過の場合:0.12g/Lになりました
除去率は40%
20濾過の場合:0.1mg/Lになりました
除去率は50%
石膏・リサイクル石膏は、主成分であるカルシウムを多く含んでいるため、pHを調整
して、砒素をアパタイトCa5(AsO4)3OHとして固着させることも可能である。
しかし、いずれ、吸着後の処理、廃棄物管理の面で問題が生ずる。
*発泡石膏の作成には、(株)クレーバーン技術研究所の後藤優一研究員にご協力いただきました。