「エーデルワイス」の意外な事実

リリオだより
雑学シリーズ 113
ールで、ギターを奏でながら一人静かに歌い始めます。
2015/7/14
「エーデルワイス」の意外な事実
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ミュージカルシリーズ、今年は「サウンド・オブ・ミュージック」からの6
曲です。この歌は、10 年前の第 3 回リリオコンサートでもやりましたが、今年
は山口聖代先生編曲によるニューバージョンです。
どれも楽しい歌ばかりですが、私はとりわけ「エーデルワイス」が好きです。
美しく清楚な花を讃える歌として、小学校で習うほど馴染み深い歌です。
エーデルワイスという花は、アルプスの2~3千メートルの高地の岩陰で、
ナチスの侵攻により存亡の危機に瀕した祖国オーストリアへの想いが高まる
あまり、途中から声をつまらせて歌えなくなってしまいます。それを助けるよ
うにして妻マリアと7人の子供たちが大佐のもとへ歩み寄り歌に加わります。
その時、トラップ大佐が観衆に向かって手を振り上げ、共に歌うようにと誘
いかけた、そのとたん「エーデルワイス」は大合唱へと変わります。
その力強い歌声は会場中に響き渡り、観衆の心をひとつにしていきます。
感動的シーンです!
日本で広く歌われている歌詞は“輝け 永久に”で結んでいますが、元歌では
Bless my homeland forever(祖国に永遠の神の加護を祈る)と結んでいます。
白い花を咲かせる高山植物で、厳しい自然環境の中でつつましく咲く姿から、
つまりこの歌は、日本の歌詞のような単に花を愛でる歌ではなく、ナチスに
花言葉は「忍耐」です。そしてオーストリアとスイスの国花になっています。
侵略されたオーストリア国民の愛国心を、国花エーデルワイスに託して歌って
いるのです。
あたかもオーストリアで広く歌われている愛国歌のように聞こえますが、作
詞者のオスカー・ハマースタインⅡと作曲者のリチャード・ロジャースという
二人のユダヤ系アメリカ人による歌です。
この歌を当のオーストリアではどう受け取られているのでしょうか?
意外なことに「エーデルワイス」の歌をはじめ、
「サウンド・オブ・ミュージ
ック」という作品自体が、オーストリアではあまり知られていないし、知って
「♪雪のように」白いエーデルワイス
「咲くやこの花館」のエーデルワイス
鶴見緑地公園の「咲くやこの花館」にもあるので、写真に撮ってきました。
Edel weiss とはドイツ語で「高貴な白」という意味ですが、鶴見で咲いてい
たエーデルワイスは、枯れそうで汚れて可哀そうな姿でした。
「♪悲しいこころ慰める花~」ですが、1965 年の映画「サウンド・オブ・ミ
ュージック」では緊迫したクライマックスシーンで歌われます。
時代はナチスドイツが、オーストリアを併合した 1938 年、即ち第二次世界大
戦前夜です。場所はザルツブルグ。
ナチスに反抗する愛国者トラップ大佐が、スイスへ亡命する前の音楽コンク
いる人たちからは嫌われているそうです。
オーストリアでは、ザルツブルクを除いてウィーンでは 21 世紀に入るまで、
この映画は一度も上映されていません。
オーストリアの愛国歌ともいえる「エーデルワイス」の歌が、なぜオースト
リアの人々に受け入れられないのか!?
その原因は、この映画が当時のオーストリアの現実と全く異なるものである
ことに起因します。そこにはナチスによるオーストリア併合を素直に受け入れ、
ナチスに協力したオーストリア国民の後ろめたさが根底にあります。
このことについては次回にもう少し詳しく考察したいと思います。
亀岡弘志(記)