大人に… H27.7.29 第１９１号 肩を組んだり、手を繋いだりするの が好きだ。身体中を巡っている何か熱 いものが、互いが互いにこうやって繋 がることで伝わって来るように感じる からだ。何年間も生きて来てこうやっ て繋がるという一瞬は、何度も何度も 経験できるものではない。 だからこんな映像を一度でも撮った ら、なかなか捨てることはできない。 野球部の県選のときの映像だって、女 子バスケットボール部の映像だって、 ずっと捨てられないでいる。 こんなふうに仲間と肩を組んだり手を繋ぎ合ったりすることは、きっと心を 一つにすること。互いが互いの心を感じ合い、互いに感じた想いを尊重し高め 合うこと。こんな経験は貴重で美しい。 こう考えるとスポーツはその時々 に、人に忘れられない記憶とステキな 想いのプレゼントを残してくれる。そ んなものに、ちょっとでも触れること ができた子供たちは幸いである。きっ と人の一生は、美しさで満ち溢れてい るのだと知ることが出来たはずだから …。よかったね。 今朝のある新聞の読者コーナーに、 あるお母さんが「弁当」について書い ていた。部活動に明け暮れている息子 にいつも手作り弁当を持たせている。 そんな息子の弁当を、いつものぞきに 来る友だちが 、「いいなあ、作ってもらえて」と羨ましそうに言う。息子がそ の友だちに、「お母さんに頼めばいいじゃないか」と言う。 友だちの答えは、「そういうことが出来ないタイプなんだよ、僕の親は。頼 むとしばらくは出来るけどね。続かないことがわかっているんだ。母親を傷つ けたくないんだ。かわいそうだろ。だから学食でいいんだ」 その友だちの母親は、いつも弁当持参を嫌がると言っていたそうだ。だが、 実は息子はそこまで母親の立場を考えてそうしていたのだ。その話の中にそこ まで相手の気持ちを「忖度できるとは」との表現があった。 久々に目にする「忖度」という言葉に、子供が大人になるということはどん なことなのかを今一度考えさせられた。他人の気持ちを忖度できるような大人 になるには、もしかしたら中学生くらいのときに心を一つにして肩を組んだり 手を繋いだりする経験が必要なんじゃないかと、何の脈絡もないのだが突然そ んなことを思った。 きっとそれは一度でも肩を組み、手を繋ぎ互いに互いの気持ちを一つにした ことがあれば、必ずや自分のことの前に相手のことを慮ることができるに違い ないと感じたからだ。出中生には、そんな大人に成長してほしいと思っている。 -1-
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