底堅い設備投資が銀行貸出の増加を促す

景気循環研究所レポート
底堅い設備投資が銀行貸出の増加を促す
2015 年 8 月 13 日
設備資金貸出が堅調
銀行の設備資金貸出が順調に伸びている。日本銀行が 11 日に発表した
貸出先別貸出金(四半期調査、6 月)によると、15 年 4-6 月期の設備資金
新規貸出額(製造業+非製造業、当研究所季節調整値)は前期比 1.2%増
加した。設備資金貸出は 11 年秋以降、増加基調で推移しており、15 年 1-3
月期には 4 四半期ぶりに減少したものの、4-6 月期に持ち直したかたちと
なっている(図 1)。
6 月の機械受注は減少
一方、内閣府が 13 日に発表した 6 月の機械受注統計によると、設備投
資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」は前月比 7.9%減少した。
四半期ベースでみると、4-6 月期は前期比 2.9%増加したものの、機械メ
ーカーの受注見通しに直近 3 四半期の平均見通し達成率(104.0%)を乗
じて算出した 7-9 月期の内閣府見通しは前期比 0.3%増にとどまっている
(図 1)。業種別にみると、製造業が 4-6 月期に前期比 12.1%増加したも
のの、7-9 月期には同 3.6%減が見込まれており、4-6 月期の同 1.7%減か
ら 7-9 月期に同 1.7%増の反転が見込まれている非製造業(船舶・電力を
除く)とは対照的な動きとなっている。今年春先から年央にかけての輸出
と生産の弱含みが、製造業の機械受注の減少見通しに繋がった模様だ。
嶋中 雄二
景気循環研究所長
もっとも、製造業の減産は短期間で終了した可能性が高い。7、8 月の
製造工業生産予測指数は、それぞれ前月比 0.5%増、同 2.7%増と堅調が
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
見込まれている(図 2)
。また、輸出減少の主因である海外景気の減速に
シニアエコノミスト
標(製造業 PMI など)が持ち直しの動きを示している。日本の輸出は早晩、
宮嵜
増加基調に転じ、製造業の機械受注も回復基調を取り戻すとみられる。
浩
シニアエコノミスト
03-6213-6573
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
福田
ついても、世界経済のけん引役であるアメリカやユーロ圏の景気の先行指
圭亮
シニアエコノミスト
03-6213-2608
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づき、宮嵜・
福田が執筆を担当しています。
景気循環研究所
東京都千代田区丸の内 2-5-2
三菱ビルヂング
180
170
160
150
140
130
120
110
100
90
80
(10年=100)
図 1. 機械受注と設備資金貸出の推移
設備資金新規貸出額
内閣府
見通し
機械受注(船舶・電力を除く民需)
92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(注)設備資金新規貸出額は国内銀行銀行勘定(製造業+非製造業)。当研究所季節調整値。
(資料)内閣府「機械受注統計調査報告」、日本銀行「貸出先別貸出金」をもとに三菱UFJ
モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
(年、四半期)
2015 年 8 月 13 日
なお、製造業の設備資金貸出の規模は相対的に小さく、15 年 4-6 月期時点
不動産業が設備資金
で非製造業の 10 分の 1 以下に過ぎない。設備資金貸出のトレンドを形成して
貸出を押し上げる
いるのは非製造業であり、なかでも不動産業向け貸出は、非製造業全体の約
半分を占めている。4-6 月期における設備資金貸出の増加の大半は、不動産
業向け貸出の増加で説明できる(図 3)。
マネーストックと
7 月のオフィスビル空室率(東京ビジネス地区、三鬼商事)は、前月より
非製造業の設備投資
0.23%ポイント低い 4.89%となり、08 年 12 月(4.72%)以来、約 6 年半ぶ
りの低水準を記録した(図 4)。オフィス需給の改善は、量的・質的金融緩
和による良好な金融環境と相俟って、事業用不動産の建設を促している模様
だ。今後についても、マネーストックの増勢が続く中、非製造業向けの設備
資金貸出は、不動産業向けを中心に増加ペースを速める可能性が高い(図 5)。
潤沢なマネーに支えられた非製造業の設備投資は、今後も銀行貸出の増加に
大きく寄与するとみられる。
図 2. 製造業の機械受注と鉱工業生産指数の推移
240
(10年=100)
(10年=100)
内閣府
見通し
機械受注(製造業、左目盛)
200
図 3. 不動産業向け設備資金貸出が好調
140
25
130
20
10
110
120
5
100
80
鉱工業生産指数(右目盛)
40
0
95
00
05
10
0
90
-5
80
-10
70
-15
(%)
-2
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
(10年=100)
オフィスビル空室率(左逆目盛)
その他の寄与
10
15
11
12
不動産業の寄与
13
14
15
(年、四半期)
(注)設備資金新規貸出額は国内銀行銀行勘定(製造業+非製造業)。
(資料)日本銀行「貸出先別貸出金」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
(年、四半期)
(注1)機械受注の直近は内閣府見通し。
(注2)鉱工業生産指数の直近は製造工業生産予測指数の伸び率をもとにした試算値。
(資料)内閣府「機械受注統計」、経済産業省「鉱工業指数」をもとに三菱UFJモルガン・
スタンレー証券景気循環研究所作成
図 4. 非製造業の機械受注と
オフィスビル空室率の推移
設備資金新規貸出額
15
120
160
(前年比、%)
200 90
図 5.マネーストックは非製造業向け貸出の
持ち直しを示唆
(前年比、%)
(前年比、%)
広義流動性(右目盛)
180 60
160
30
140
120
内閣府
見通し
機械受注(非製造業、右目盛)
100
0
-30
非製造業向け設備資金新規貸出額(左目盛)
80 -60
98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
95
00
05
10
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
15
(年、四半期)
(注1)広義流動性は平残、直近は15年7月。
(注2)設備資金新規貸出額は国内銀行銀行勘定、直近は15年4-6月期。
(資料)日本銀行「貸出先別貸出金」、日本銀行「マネーストック」をもとに
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
(年、四半期)
(注)空室率は東京ビジネス地区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)、新築+既存。
直近は15年7月。 機械受注は船舶・電力を除く。直近は7-9月期内閣府見通し。
(資料)内閣府「機械受注統計」、三鬼商事資料をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
(以
上)
みやざき
ひろし
(15.8.13 宮嵜
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
2
浩)
2015 年 8 月 13 日
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