柳町通 東二番丁通 すいりん 営 11 ○ :30∼14:30、17:00∼22:00 られているほど重要な食材、乾物。 国料理界では貨幣と同じ価値を認め ﹁乾貨﹂という名が示す通り、中 かかれないような食材もある。素材 用蟻といった満漢全席でしかお目に その中には、熊の掌やサソリ、食 るのだ。 と手間がかかる。高価な上に何日も 実際、これらの調理にはえらく時間 とすらない、という人も多かろう。 ば、その名をメニューに見かけたこ 牡蠣やキヌガサタケの乾貨ともなれ が、魚の浮き袋や豚のアキレス腱、 つ人気の食材として名が通っている 煎ナマコ︶などは、日本でも高級か プで 分煮込み、オイスターソース 2時間蒸す。凝縮感のある白湯スー ヒレを、金華豚とモミジのスープで 何日もかけてもどしたアオザメの るのだから不思議なものだ。 う食欲の方がぐいぐいともたげてく うち、 ﹁うまそう﹂ ﹁食べたい﹂とい なるが、その調理法を羽田から聞く まれた俵物三品︵フカヒレ、干し鮑、 だけ見れば気持ちはやや引き気味と 日本から貿易によって中国に持ち込 貴重なアオザメのヒレを使った 「フカヒレの姿煮込み」 。10人前 はあろうかという超S級の逸品。 る。年に数度しか扱わないような食 験を積んでほしい、という親心もあ は、若い料理人たちにたくさんの経 そう羽田は言うが、その胸の奥に んですよ﹂ 用意しておかないわけにはいかない 文なさるお客様が一定数いるので、 せんが、予約なしでも当たり前に注 ﹁表メニューにこそ載ってはいま しい存在といえよう。 満が統べる﹃翠林﹄は、よっぽど珍 すか?﹂とこともなげに言う羽田 も、すぐできますよ。煮込みにしま だ。だから、 ﹁浮き袋もアキレス腱 前からのオーダー制にするのが当然 大抵の料理店は仕入れも含め何日も かけて仕込まねばならぬとくれば、 を見て、 ﹃翠林﹄の厨房に流れる時 それらが卓上へと現れるまでの過程 風味や食感、旨みを得た素材たち。 干すことで、生鮮のときにはない ない、チャーミングな味わい。 生鮮のときの異形からは想像もつか 海老の風味、しゃくしゃくのクワイ。 む。とろとろぷるぷるとしたナマコ、 のすり身を詰めて上湯スープで煮込 煎ナマコは水のみでもどし、海老 上海料理の帝王だ。 みたスープとソースの旨さ。まさに れてゆく小気味よさ。たっぷりとし ざわりのよい繊維にはらはらとほぐ した噛みごたえの後、つるつると舌 カヒレの姿煮込み﹂だ。ざくざくと ㎝、直径 ㎝はあろうかという﹁フ と醤油のソースで仕上げる。厚さ3 20 材では、いつまでたっても使いこな 熊の掌は上海風の煮込みや、軽く燻製にして前菜に。蟻は 炒飯などのアクセントに。サソリは姿揚げなどで。 SS30 5F 中国料理「翠林」 北目町通 ● 河北新報社 住 宮城県仙台市青葉区中央4-6-1 ⃝ ☎022・268・1111 (代表) www.tobu-skh.co.jp/ 仙台国際ホテル 仙台国際ホテル ツバメの巣、干牡蠣、干朝鮮人参、干キヌガサタケ、豚のアキレス腱、調理法によっ て使い分けるフカヒレ。丁寧に扱ったものであれば、紹興酒やワインのヴィンテージ 。乾 のように、古いほど価値が上がってゆく。3 _「ツバメの巣 蟹と玉子入りスープ」 貨のなかでも特に高価なツバメの巣は、スープやデザートで味わえる。4 _とげのある 上質な煎ナマコを使った「海老のすり身詰めナマコの煮込み」 。上湯スープの旨みを たっぷり含んで。5 _3日間かけてもどしたスルメを旬野菜とともに炒めた「干しスル メの唐辛子炒め」 。食感は生鮮のイカに近いが、旨みの濃さが段違い。 ● セブンイレブン 1 _『翠林』羽田満料理長。調味料や漬物、そして乾貨づくりなども自ら手掛ける実践 の料理人。干す・漬けるなどの手法によって生まれる熟成の旨みを研究する。2 _干鮑、 仙台 逓信病院 ● ローソン● 高級食材の価値に す下ごしらえの時間。わずか数秒の 時間もかけてベストの状態を生み出 る食材が俎上に乗 は日常的にあらゆ ﹃翠林﹄の厨房で の料理はうまいのだ。 すべて大切にするからこそ、 ﹃翠林﹄ 入れの時間。進みかたの違う時計を センスを磨くため、 タイミングに料理人の魂を懸ける火 見合う調理技術や すことはできない。 間についてつくづくと考える。何十 30 1 4 5 悠久の玄奥、一瞬の鮮明。 「乾貨」 の真髄を 『翠林』 で愉しむ 2 3
© Copyright 2024 ExpyDoc