小テスト (5/18) [2](3) 解答の注意点 このような証明で始めの頃ありがち

小テスト (5/18) [2](3) 解答の注意点
このような証明で始めの頃ありがちなミスについて、コメントしておきます。数列に関
する他の証明(和や積等)や今後紹介される関数の極限、連続性等の証明でも同様です
ので、よく確認してください. 典型的なあまりよろしくない証明の例1:
∀ε > 0 をとる. ...(*)
仮定 lim an = s より
n→∞
∀ε > 0, ∃No ∈ N s.t. ∀n ≥ No , |an − s| < ε ... (**)
このとき N ∈ N をこの No を用いて N = No と選ぶと ...
示したい事は「∀ε > 0, ∃N ∈ N s.t. ∀n > N , ||an | − |s|| < ε」ですので, まず ∀ε > 0 を
とるところ (*) は正しいです. ですがこのあと (**) のところで再び ∀ε > 0 をとってい
ます. このように書かれますと, 1 つ目の「ε」と 2 つ目の「ε」の関係はよくわかないの
で (一般的にはこの2つの「ε」は別のものと見なされます), 仮定より (2 つ目の「ε」に
対して) 選んだ No を用いて N = No ととった N が, 1つ目の「ε」に対し妥当な N な
のか判断できなくなります. また次のような場合も同様です.
典型的なあまりよろしくない証明の例2:
まず仮定 lim an = s より
n→∞
∀ε > 0, ∃No ∈ N s.t. ∀n ≥ No , |an − s| < ε ... (***)
∀ε > 0 をとる. ...(****)
このとき N ∈ N をこの No を用いて N = No と選ぶと ...
これも, 仮定で出てくる「ε」(***) と証明で出てくる「ε」(****) の関係が不明なので, N
の妥当性が判断できません.
また, 示したい事は「∀ε > 0, ∃N ∈ N s.t. ∀n > N , ||an | − |s|| < ε」ですので, 証明もこ
の順序に従って事実を述べていく必要があります. そこでまず「∀ε > 0」をとります.
証明では, 実際に「∀ε > 0」を1つとると それに対して必ず具体的な「N ∈ N」が存在
して ∀n > N , ||an | − |s|| < ε であることを言います. そして仮定が言っている事は「ど
んな『正の実数』を選んでも, ある『自然数』が存在し, ∀n >『(そのある) 自然数』 に
対し |an − s| <『(選んだ) 正の実数』である (つまり ∀ε′ > 0, ∃N ′ ∈ N s.t. ∀n > N ′ ,
|an − s| < ε′ )」です. ということで, 「解答」+「頭の中」は以下のような感じになりま
す.(解答には「頭の中」の内容を書く必要はありません.)
∀ε > 0 を (1つ) 取る.
lim an = s より
n→∞
(頭の中: どんな「正の実数」を選んでも, ある「自然数」が存在し,
∀n >「(そのある) 自然数」 に対し |an − s| <「(選んだ) 正の実数」である (つまり「∀ε′ > 0, ∃N ′ ∈ N s.t. ∀n > N ′ , |an − s| < ε′ 」) ので、
仮に「正の実数」として, 始めに任意にとった ε と選んでも
(頭の中終了) )
∃No ∈ N s.t. ∀n ≥ No , |an − s| < ε
が成り立つ.
このとき N ∈ N を, この No を用いて N = No と選ぶと, ∀n ≥ N に対して ...
となります.
このように, 「∀ε > 0 を取る」のは一番始めに 1 回 だけです.
三角不等式 | |an | − |s| | ≤ |an − s| について:
この公式(あと |an + s| ≤ |an | + |s|)はもう証明されているものとして, 事実 (公式) を
そのまま使用して構いません.(証明は各自確認)
ですが先日の解答中に「|an | − |s| ≤ |an − s| < ε, よって | |an | − |s| | < ε」
のように書いているものが多々ありまして, これだと
|an | − |s| ≤ |an − s| より両辺に絶対値記号をつけて
| |an | − |s| | ≤ | |an − s| | = |an − s|
が成り立つ, と思っているように疑われます. (実際そのように明記されている.)
これは論理として飛躍があります. (絶対値をつける前に成り立つ不等式が、絶対値をつ
けた後にも必ず成立するかは, 自明ではありません. (a ≤ |b| ならば |a| ≤ |b| ですか?))
実際このような事を述べるなら
|an | − |s| ≤ |an − s|, |s| − |an | ≤ |an − s| より −|an − s| ≤ |an | − |s| ≤ |an − s|.
つまり | |an | − |s| | ≤ |an − s|
とでもするべきです.(先の言及では足りません.) 以後ご注意ください.
採点の事ですが, 今後上記のような誤解の疑いが見られる場合 (| |an | − |s| | ≤ | |an − s| | =
|an − s| の真ん中 ( | |an − s| | ) ように二重の絶対値をつけた記述がある場合等), 三角不
等式が分かってないと見て, 大幅減点になる予定です.