申入書(PDF)

2015 年 7 月 31 日
様
申
入 書
戦略 ODA と原発輸出に反対する市民アクション(COA-NET)
ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン
原子力資料情報室
平和と民主主義をめざす全国交歓会
日印原子力協定締結交渉において、日本政府がインド側の要求に応じて使用済み核燃料の再処理を容認する方向に転じたと報道
されています。インドに輸出される日本製原発の使用済み核燃料から取り出されたプルトニウムが軍事転用されるのではないかと
私たちは危惧しています。
福島第一原発の事故は、原発が人類と環境に壊滅的な被害をもたらす危険性を持つことを明らかにしています。12 万人にも及ぶ
避難者がいまだ故郷に帰れず、巨額の賠償をめぐる紛争や汚染水の垂れ流し状況等が続き、事故原因すら明らかになっていない現
在、事故はまったく収束していないと言わなければなりません。そうした中、日本政府がベトナム、トルコをはじめ諸外国、特に
核拡散防止条約(NPT)の未締約国であるインドに原発・原子力技術を輸出しようとしていることに、私たちは重大な疑問を感じて
います。その上、政府が ODA(政府開発援助)等の公的資金によってこうした原発・原子力技術の輸出を後押ししていることは到
底容認できません。このような立場から、以下の通り申し入れます。
なお、《 》内は、前回交渉(2014 年 12 月 12 日)時の政府側の回答内容です。
1. インドとの原子力協力協定の締結交渉を中止すること。(外務省軍縮不拡散・科学部、アジア大洋州局南西アジア課)
1) 《NPT 条約を支持し、その体制強化をはかる》という日本政府の立場に変更はないか。
2) 《インドは NPT 体制の枠外にあり、NPT の普遍化(インドの加盟)を求める》という日本政府の立場に変更はないか。NPT
に未加盟のままインドとの原子力協力を進めるのは政策上の矛盾と考えるがどうか。
3) インドとの原子力協力協定交渉の現状と見通しを明らかにすること。
4) 日本からインドに輸出される原発について、その使用済み核燃料の再処理を日本政府が容認できるという根拠を明らかに
すること。
2. 原発輸出の後押しに公的資金を支出しないこと。
(経済産業省、外務省国際協力局、国際協力機構)
1) 原発関連の ODA 支出について
(ア) 原発輸出関連の ODA 予算の支出は、《原子力発電基盤整備計画研修のみ》ということだったが、その状況に変化はない
か。上記研修以外に原発輸出関連の ODA 支出が存在する場合は、その予算と執行状況を明らかにすること。
(イ) 上記研修について、開始(1985 年)以降の支出額、受入国・人数、研修内容等を年度別に明らかにすること(前身で
ある「原子力発電基礎研修」等を含む、「海外電力調査会」委託事業すべて)。
(ウ) 上記研修に使用されているテキスト・資料等は公金を使用しているものであるから公開すること。
(エ) 上記研修については、基本的に原発輸出推進の立場から、原発導入見込み国の政策担当者等を受入れているものと理解
される(参院 ODA 特別委の質疑(本年 4/6)等から)。原発事故が「開発」とは正反対の結果をもたらすことは福島の
惨状を見るまでもなく明白である。こうした研修は中止すべきと考えるがどうか。
(オ) 原発本体への ODA 支出は「OECD 公的輸出信用アレンジメント」の「了解」により事実上禁止されているものの、周辺
インフラ等には支出され得るとの指摘がある。今後、そうした原発輸出関連の ODA 支出は一切しないと確認せよ。
2) 日本貿易保険(NEXI)による原子力関連の付保について
(ア) NEXI がこれまでに引き受けたすべての原子力関連案件について、引受年・仕向地・輸出品目・保険金額を明らかにす
ること。
(イ) 貿易保険制度の改定案に関して、NEXI の資金調達が困難になった場合、限度額の規定もなく国民負担で補うとの報道
があった。原発輸出のリスクを国民に負担させる NEXI の原子力関連の付保については禁止するよう求める。
3) 国際協力銀行(JBIC)による原子力輸出関連の融資について
(ア) JBIC がこれまでに実施したすべての原子力輸出関連融資について、承諾年・相手国・借入人・案件内容・融資額を明
らかにすること。
(イ) 政府の出資による原発輸出支援は認められないとの立場から、JBIC による原子力輸出関連融資についても禁止するよ
う求める。
3. ODA(政府開発援助)について、
「開発協力大綱」における「国益」重視の戦略的運用、インフラシステム輸出支援、軍事的部
門への適用(他国軍にも支援可能、PKO 連携等)を見直すこと。
(外務省国際協力局、国際協力機構)
1) ODA については、政府として《貧困削減が最重要課題であると認識している》とのことだったが、実際の予算配分上は疑義
がある。国内 NGO 等からも指摘があるとおり、ODA 事業の中で教育・医療・人道支援(各 2~3%程度)と比較して経済イン
フラ関連の割合が異常に高い(40%程度)ことが OECD DAC の統計で示されている。この比率は少なくとも逆転させるべきと
考えるがどうか。
2) 「開発協力大綱」では、外国の軍隊等についても「実質的意義に着目し、個別具体的に検討」して ODA を供与し得ることが
明記されたが、これについては軍事・非軍事の線引きが曖昧であるため、撤回・削除し、他国軍関係への協力を全面禁止す
るよう求める。
3) フィリピンに対する巡視船 10 隻供与は ODA 案件(有償資金協力)とされているが、この巡視船は機関砲を装備した武装船
であり、明らかな武器輸出である。同国が中国等と対立関係にあることを考えると、
「開発協力大綱」の適正性確保原則(「国
際紛争助長への使用を回避する」)に抵触すると考えるがどうか。
4) 安倍首相は昨年、第 13 回アジア安全保障会議における演説(5 月 30 日)の中で、ASEAN 諸国に対する武器輸出に関連して、
「ODA、自衛隊による能力構築、防衛装備協力など」、さまざまな「支援メニュー」を組み合わせて海洋軍事力の増強を支援
すると「約束」している。ASEAN 諸国に対しても、その他の諸国に対しても、武器輸出には ODA を適用しないと確認せよ。